忍者ブログ

馬房

小説は妄想と捏造甚だしい。 原作のネタばれ、都合の良い解釈。 R18、グロ(精神的にも)、暴力表現などが含まれます。 冒頭にざっと注意を書いてありますので、それを読んだ上での 閲覧を宜しくお願い致します。何かあればご連絡いただければ幸いです。 基本的に右ジャンしか書きません。 萌が斜め上です。無駄にシリアスバイオレンス脳です。 拙い文章ですが、少しでもお楽しみ戴ければ嬉しく思います。 右ジャン、ジャン総受けしか書きません。あしからず。

ジャンのテラリア日記36~42日目

ジャンのテラリア日記36~42日目




・三十六日目
 昨日、色々考えてたら嫌になって、一心不乱に飯を作り過ぎ、食い過ぎた。
 朝起きても何だか腹が重い気がして食事も進まなかった。まぁ、玉子をパンで挟んだだけでも結構美味い。後はお茶ばっかり飲んでいた気がする。

 野苺あったよな、腐る前にジャムにしちまおう。そう思って、台所に立ってたらサシャとコニーが嗅ぎ付けて来て、味見、味見、煩かったから食わせてたら半分くらい無くなった、せめてパン持って来いよ。林檎とかもジャムにしといた。そしたら、ベルトルトとライナーがパン持って来て、食ってから外に出て行った。ユミルは出来た奴を問答無用で持って行った。
 何だ皆、飯は食ったはずなのに、甘いもんにでも飢えてるのか。それなら明日、ケーキでも作ってやるかな。クリーム作って、果物乗せよう。

 そう言えば、化け物共が強くなったって話だが、家の周りはそうでもないな。
 森林地帯。って言ったらいいのかな、木が多くて、水が豊富で、どちらかと言えば危険な動物も少ないし。前は夜になると、腐った死体が沢山うろついたり、眼玉が飛んでいたが、最近はそこまでの数はいない。昼間も色とりどりの、スライムだっけ、丸っこいのが跳ねてるかな?くらいになった。地上だったら夜中に遠出しなきゃ、そこまで危険ってほどじゃないんだよな。前の人も、それで拠点にしてたのかな?
 化け物が落とした要らない道具を売ったり、宝石を拾って来たりすればお金も足りない訳じゃない。贅沢言わなきゃ普通に生活する分には、
早々、困らないとは思う。時間はかかるが調べものしたかったら、書庫で調べれば大概の事は解かるし。

 考え込みながら、明日用に牛乳、卵黄、砂糖でクリーム作ってた。
 小麦粉を少し加えて加熱していると、ジャムとは違う甘い香りが台所に充満しだした。
 果物入れるから甘さ控えめで作ったけど大丈夫かな。と、味見していたら、扉越しに美味しそうな匂いがします!開けなさい!とかサシャが喚いて煩かった。明日の分までやたら食われてたまるか。台所の扉に鍵付けておいて良かったと心底思う。
 保存庫にも鍵が要るかも知れない。全く、あいつは……。クリームは冷やしておけば明日には十分使える。簡単に食べられる軽食作ってからユミルとクリスタに保存庫をサシャから守ってくれと伝えて、俺も外に出る事にした。

 【日記追記】
 地下に潜ると、確かに化け物も、雰囲気も様変わりしていた。
 コニーの言う通り、石から青や、赤っぽく光る水晶かな、沢山岩から生えている。先が尖ってて、結構鋭い。転んだらえぐい事になりそうだ。何かに使えるかな。取り敢えず、沢山生えてるし、綺麗だから換金出来そうだし、見える所にある水晶は持って帰る事にした。
 蜂も結構助かってたけど、ベルトルトから貰ったちびも良く働いてくれる。俺が採掘や、採集に夢中になってても、化け物に果敢に向かって行って、迅速に倒してくれて、誇らしげに胸を反らしてる姿は頭の一つも撫でたくなる。
 高い所から降りる際は、どこから出てきたのか鸚鵡が出て来てちびを捕まえて飛んでいた。面白いなー。一生懸命、俺の後ついてくるのも可愛いし。サンドイッチをやったら口一杯に頬張って食べてるのもいい。
 ただ、トイレは所構わずでなく、ちゃんとしたとこでしようなと言い聞かせた。人型だと、こう言うのもあるんだな。

 一通り探索を終えて夕方になって帰ると、ライナーとベルトルトが帰ってて怒られた。独りで出歩くなって。他の奴に出先は伝えたし、ちびが居たから平気だって言っても、今度は出る時は絶対言えって言われた。お前等が先に出て行ったのに。と、理不尽に怒られた気分になってむすっとしてたら、家事をしていたから今日は出ないと思った。だとか言っていた。
 二人で地獄の探索に行っていたとかで、なんか紫色の本を渡されて、今日は夕飯作りは良いからって暖炉部屋に追いやられた。する事がないっていうのも、暇で嫌なんだがなぁ。
 一旦、庭に出て、貰った本を読んでみたら、紫色の蔓みたいなものが体の周りを飛んでから、目の前の対象物に向かって飛んでいく魔法だった。体の周りを飛んでいる時は、飛んできた化け物を弾いてたから、化け物の攻撃を防いでくれる盾になるみたいだった。
 便利な物を貰った。

 【日記追記二】
 凄い化け物が現れた。
 一通り魔法を試して日記書いたら、直ぐにする事が無くなって、庭の畑弄ったり、草むしりをしてたんだけど、突然、家よりも大きくて、蛇みたいに長くて、気持ち悪い虫みたいな機械が地中から出てきた。地面に穴を空けて、土塊をばさばさ落としながら、物凄い速さで空を飛び回って、当然みたいに俺に襲い掛かって来た。
 必死で逃げ回りながら無我夢中で、魔法で応戦してたら、騒ぎを聞きつけた皆が来てくれて、解らないなりに応戦した。途中、胴体から丸い目玉みたいなのが出てきて、それが独立して攻撃してくるとか嫌過ぎだ。
 動かなくなったから安心してたら、また急に動いて襲い掛かってくるみたいな嫌な感じ。障害物に隠れながら飛ばしてくる変なのを避けて何とか倒した。
 土弄ってたから、なんか変な地鳴り?振動がするなとは気づいてたけど、まさかあんなのが地下から飛び出してくるなんて……、本当に驚いたし、焦ったけど皆、怪我も少なそうで良かった。

 で、今日も頼りになる本棚、資料庫。
 どうも、以前、倒した事がある大型の化け物が、機械を体にくっつけて、復讐しに掛かって来るらしい。来るのは必ず日没後。マルコが不浄で同じ奴と戦ったらしいんだけど。(て言うか、やっぱり危ない事してんじゃねーか馬鹿)それと似てたらしい、虫の名前は『世界を食らう蟲』とか仰々しい物だった。さっき出てきたのは『破壊者』だって。やっぱり仰々しい。いや、強くて怖かったけどさ。
 しかし、復讐って、理不尽にもほどがないか?向こうから襲い掛かって来たのに、撃退したら復讐しにくるって。犯罪犯して憲兵に捕まったのに、捕まえた憲兵を逆恨みして報復。みたいな。思考回路が、まんま性質の悪い犯罪者と同じじゃねーか。まぁ、性質の良い犯罪者とか聞いた事ないけど。
 後は、来るとしたらクリスタを捕まえてた骸骨野郎と、急に襲ってきたデカい目玉か……。しっかし、ベルトルトが攻撃に使ってた小型の大砲みたいなの、凄かったなー。当たったら一瞬で化け物が粉々になってんの。使わせろ。って頼んだけど、下手に撃ったら、使った本人も爆風に巻き込まれて危ないから駄目。と、断固として断られた。意思強いじゃねーか、この野郎。
 ライナーも特殊な弾を使ってたみたいで、連続で打ち出す弾が散弾銃みたいになって、コニーが使ってた針も、跳ね回って凄い挙動してた。果たして俺は役に立ってるんだろうか。ミカサも新しい武器で地上から襲ってくる化け物、叩き潰してたしなぁ。

 若干、落ち込んでたらベルトルトに護るからね。なんて言われたけど、夢見るか弱いお姫様じゃないんだから嬉しくはない。
 それよりも、ちゃんと戦える体と、皆に負けない武器が欲しい。有耶無耶になったけど、またゆっくり戦い方とか教えて貰おうかな?
 戦ってる時も怖かったが、あの化け物の後片付けも、また大変だった。あっちこっちに化け物の破片が飛び散ってるし、家に体当たりされたから、家具が倒れたりしてたし、食事を作ってる途中で慌てて出てきたのか台所も酷い有様だ。食器とかは割れたりしたけど、家が壊れなかったのが不幸中の幸いかな。化け物の体を作ってたのが普通の鉄じゃ無いみたいで、アルミンやマルコが掻き集めた鉄は捨てるな!って言ってた。何に使う気だ、あんなもん……。
 化け物の襲来に、壊れたもん確認して、片付け兼鉄集め、物凄く疲れた。飯も結局、簡単に出来るのを一緒に作ったし。皆で騒ぎながら食うのは楽しいからいいけど。

・三十七日目
 ベルトルトに手合わせ頼んだら、明らかに手抜きされて、腹立って喚き散らしてしまった。
 俺が転んで腕に擦り傷作ったくらいで、おろおろして心配して来やがって。エレンの方が負けても思いっ切りやってくれる分すっきりする。一番腹立つのは、あいつの動きに着いていけない自分だけど。対人格闘術、もっときちんとやっておけば良かった。あー、八つ当たりみっともねぇ。

 飯食った後、部屋に籠って武器関連の資料読み漁ってたらマルコが来て、お前は前線に立って戦うよりも、後方から全体を見て指揮を飛ばす方があってるんじゃないか。と、言われた。戦いながらの咄嗟の判断はライナーの方が優れている。でもね、戦いながらでは全部の動きを見て指揮を飛ばすのは難しい。お前にはその役割をして貰いたい。直接戦わなくても、皆を護れる方法はあるんだよ。なんて諭された。
 そう言うのはマルコの方が向いてるだろ。性格悪くて嫌われもんの俺と違って人望もあるから耳を傾けてくれる人間も多いはずだ。
 「その内、解かるよ」って何が解かるんだ。マルコが友達ってだけでも奇跡なのに。
 もやもやして収まらないから、ちび連れて近くを散歩する事にした。昼間だし、地下に潜らなきゃ大した化け物も居ないしな。機械の化け物共は日没後にしか現れないみたいだし。
 森の中をぶらぶら歩いて丁度いい倒木があったから座ってぼんやりしてた。ちびが膝の上に乗りたがったから抱っこしたまま、これからの事とか考えてたら、悲鳴っぽい声が聞こえた。振り向いたらエレンで、どう表現したらいいもんか……、兎に角、眼も、口もかっぴらいた凄まじい形相して、固まってたんだよな。良く見たら小刻みに震えてたし。気持ち悪かったんで無視する事にした。

 でも、家に帰ろうと思ったらエレンの横に人影が見えて、そいつに呼び止められた。
 そいつが小さくて、エレンの陰に隠れて見えなかったんだな。美人だが、俺と変わらん眼つきの悪さとぶっきら棒さ。エレンがアニを連れて来てたんだ。挨拶もそこそこに家に連れて帰る事にした。
 エレンがやっぱり餓鬼出来てたんじゃねーかとか、誰との子だ。マルコか、ライナーか、まさかコニーか⁉とか頭の沸いた事を喚いてたら隣に居たアニが蹴り飛ばして黙らせてた。良くやった。でも、よくよく考えたら、こいつが仲間集めの一番の功労者かも知れない。少しは労わってやった方がいいんだろうか。そう考えながら気絶したエレンをおぶって行ってやった。

 帰ってアニの事を伝えると皆、嬉しそうに出迎えてた。
 特にベルトルトが控え目には見えたが涙ぐむくらい喜んでた。絶対あいつアニが好きだろ。俺もミカサが無事だって解かった時、心の底から嬉しかったしな。アニは更にむすっとした表情になってたけど、耳が真っ赤になってたから、実際の所、照れてただけだと思う。
 聞く所によると、何と機械技師の町に住んでいたそうだ。ユミルが行った場所の目と鼻の先じゃねぇか。気付かないもんだな。エレンも良く見つけたもんだ。

 そして、アニも、また珍しい物を沢山持っていた。
 サシャが持っていた不浄や真紅に汚染された大地を、正常な大地に戻すための粉を液状にして、噴霧するとの事で、浄化するための銃なんてものがあった。ちょっと使ったが、攻撃するための物じゃあないな。飽くまで汚染を浄化する物だ。ただ、不浄であれ、何であれ、粉があれば弾は作れるそうだ。だから、わざと汚染された地域を作り出す事も可能であると言っていた。わざわざ汚染させて何の得があるのかは良く解からないが。
 他にも、今使ってるフックショットよりも長く延び、早く撃てる物や、機械で組まれた翼、テレポーターと言う乗った瞬間、別の場所に移動できる機械。仕組みはそう難しくなく、機械同士を回路で繋いで、作動させるスイッチを着ければ、直ぐに使えるようになった。離れた距離を縮めてしまう機械。凄い物があるもんだ。
 エレンが言うには、大きな町同士であればテレポーターで繋がっていて、古い街道は廃れている所も多いんだとか。無論、繋がっていない村や、エレンのような旅人も居るから街道が一切不要と言う訳でもないようだけど。

 ただ、便利だからこそ、きちんと決まりもあるようで、設置されているテレポーターは、犯罪者や、不審者が出入りしないよう、各所に門番が滞在しており、門番に交通費を払わないと使えず、混線や犯罪を防ぐために個人での購入、設置は基本的に町の法律で禁止されているそうなんだ。ここの土地なら俺たち以外は居ないし、別に誰に迷惑かける訳でもないからいいよな?いいよな……、多分……。

 機械で組まれた翼は、作り物ではなくて本当に空を飛べるようだ。
 貸して貰って飛んでみたけど、機動力も上がるし、何より気持ちいい。立体機動は得意だし、不安定な空中でバランスをとるのは心得たものだ。凄いのは特に操作をしなくても、考えるだけで飛ぶ、降下、滑空、が出来る事だな。面白い物もあるなー。と思いながら返そうとしたら、やるって言われた。高そうだし、要らねぇよ。って言ったんだが、アニが自分で作ったものだから良い。だって。こんなもん組めるのかあいつ。凄すぎないか。でも、考えたらアニも立体機動や、それに付随する機械の整備なんかは上手かったな。
 例の馬蹄と風船?だっけ、あれはもう使わなくてもいいかも。皆が苦労して手に入れたものだし、あれには結構、助けて貰ったからちょっと勿体ない気もするが。羽根は使えるものだし、ありがたく貰う事にした。
 クリスタも楽しそう、って言ってたから使わせたけど、上手く同調出来ないみたいで、ひっくり返ったりして危なっかしいから、はらはらした。ユミルなんかは悲鳴上げるし。それ見てたからか、マルコが天使が居た。って言って興奮してた。
 マルコってクリスタ好きだったんだな。親友気取ってる癖に、全然気が付かなかった。いつも一緒に居たのになぁ。マルコが隠すのが上手いのか、俺が鈍いのか。これからは邪魔しないようにしなきゃ。

 そう言えば、作ったケーキはあっという間になくなってしまった。
 カスタードクリームも滑らかに出来上がってたし、ケーキもふんわりしてて上手くいった。今度はもう少し多く作ろう。とてもじゃないが足らん。

・三十八日目
 朝にマルコとクリスタに頼んで一緒にご飯作って貰った。
 親友想いな俺、偉いよな。あいつ糞真面目だから、誰かがきっかけ作らないと自分から行けなさそうだし。ユミルがちょっと拗ねてたっぽいが、俺は親友の恋路を応援するんだ。
 マルコが声かけてきたけど、出来るだけクリスタと一緒に居させようと思って後で。などと断り続けて外に出たら、庭にベルトルトが居て、昨日の詫びも兼ねて一緒に出掛ける事にした。出かけるって言っても、どっかに探索か、森を散歩するくらいしかないんだけど。何でも好きな物を作ってやるから。って言ったからいいよな?

 ベルトルトやライナーはエレンと仲がいい事を思い出して、エレンが好きな物とか知らないか?と、森で木の実や、山菜を取りながら訊いた。ベルトルトが言うには、俺がくれるものだったら何でも喜ぶんじゃないか。との返答だが、いつも喧嘩を吹っ掛けるほど嫌いな奴に、直接、何かを貰った所で喜ぶか?ベルトルトの奴、考えるのが面倒臭くなって好い加減な事言っただろ。俺が納得してないのが、表情に出てたのか苦笑してやがったが。

 アルミンかミカサに訊いた方がいいか?
 武器や道具なんかはエレンが持ってくる物の方が珍しいくらいだ。今回も凄い銃や弓持って来てたしな。うーん、食い物?ずっと、あちらこちらを放浪してるから、温かい出来立ての食い物が喜ぶってベルトルトは言いたかったのかね?そんなのだったら、毎日やってるから、特に考える必要なくて楽だけどなぁ。
 そのまま、だらだら森をうろついてたんだが、森を散策中に敵に襲われたら嫌だから、ちびを出しといたら桃をせがんできた。周り見ても、スライムが跳ねてるくらいだし、休憩にして皮剥いてやった。可愛いんだが、人の膝の上に座って食ったり遊んだりするのどうにかならんのかね。お陰で、シャツやズボンが桃の果汁だらけになって、帰ってから即、風呂行く羽目になった。ちびも風呂に入れようとしたら杖の中に逃げやがった。汚いだろ。

 杖振って強制的に出して洗ってみた。涙目になってたけど、俺はすっきりした。洗われるのだけが嫌いっぽいな。湯船浸かってる時は大人しかったから。胸んとこぺたぺた触るのがくすぐったかった。
 上がったら、また直ぐに杖に戻ったけど、タオルで体拭いたくらいだし、服も乾かさないで大丈夫かな。ベルトルトが言ってたが、今まで甘えたり、物をねだったりした事は無いそうで、特別、飲み食いする必要はないらしいし、ミニオンってのは、良く解からん生き物だなぁ。

 【日記追記】
 風呂から上がってエレンを部屋に呼んでみた。
 もう、回りくどいの止めて本人に直接聞く事にしたんだけど、そしたら、頭どうかしたのかだの、しおらし過ぎて気持ち悪いだの、散々言いやがって、じゃあ、何もやらねー!って俺も意地になっちまった。何でこうなるかなぁ。エレンがからかってくるのは解かり切ってたのに、切れて部屋から叩き出してしまった。俺も駄目だな。やっぱ纏め役とか、指揮とか向いてねーわ。幸い、化け物も出なかったし、飯食うのも面倒だし、もう寝よ。

・三十九日目
 早朝と言うか、深夜と言うか、兎に角、まだ月が空で踏ん反りがえってるような真っ暗な時間帯にエレンが来て、俺も眠くて頭動いてないから良く覚えてないけど、何喋ったんだっけ、エレンが俺も悪かったとか言ってたか?それだけのために、寝てる人間叩き起こすか、あの野郎。駄目だ、全然、思い出せん。

 それよりも不思議だったのが、暖炉部屋に降りて行ったら、エレンがやけに、ぼろぼろになってたって事だな。
 寝惚け頭で喧嘩出来るほど元気ねぇぞ、俺は。アルミンが何故か謝って来たし。ただ謝られても、何に対して謝ってるのか判らんから困る。謝ってる理由が判らないんじゃ、そんなの許しようがないだろ。良く分からんまま、パン焼いて、玉子焼いて、野菜切って、普通に朝食作って、食って、エレンに中途半端に起こされたせいか眠かった。
 マルコに怒られたくないから、頑張って起きたが、日が昇って、体温が上がってくると抗い難い眠気に襲われ始めた。ちょっとだけ!と思い、硝子部屋まで上がって、昼寝ならぬ朝寝をする事にした。ソファー置いといて良かった。

 惰眠を貪っていると、エレンが上がって来て、また起こされた。
 俺の睡眠を妨害するような恨みでもあるのか、あいつは。起きたらエレンが俺のシャツの裾を握ってて腹が出てたな。腹出して寝てたのかな。ある意味、エレンで良かったのか?マルコかライナー辺りだと、だらしない。って叱られそうだし。黙って直してくれるなんて、意外といいとこあるんだな。本当に意外だけど。
 まだ眠かったが、起こされたもんは仕方がないから、何の用事で来たんだと訊いても、しどろもどろで答えずにどっか行った。奇怪な行動が多い。何がしたいんだ、何が。
 良く判らないエレンは、もう放っておく事にして、またソファーに寝転がった。ここに居る限りは平和そのものだから、ついぼけっとしてしまう。せめて、どっか行かないと。そう思いつつも、やっぱり寝てた。寝て起きたら、この世界は夢でした。とかならないよな。夢の中で寝たらどうなるんだろ。夢の中の夢を見る?どう言う感じなんだろう。

 昔、読んだ本で、蝶になった夢を見たけど、それを夢だとは全く思ってなくて、ひらひら楽しく飛んでたら目が覚めて、目が覚めてみれば自分は、やっぱり人間で、でも、これは蝶が人間になった夢を見てるだけなんじゃないか?本当に自分は人間なのか。そんな風に考える話があった。

 これも、ただの長い夢なんだろうか。
 巨人って言う脅威が得体の知れない化け物に置き換わっただけで、自分にとって、都合のいい優しい世界を作り上げてしまってるだけなのか。本当は、あの真っ暗になった日に、俺は重傷でも負って、生きたまま眠り続けてるんじゃ。
 顔をつねってみれば痛いし、体を触ってみても、違和感はない。夢の中とは思えないが、どうなんだろう、現実的過ぎる夢を見てるだけ?怪我をすれば痛い、時間が経てば腹も空く、匂い、感触もある。きっと大丈夫だ。頭可笑しくなったりなんかしてない。よな。
 ちょっと汗掻いたし、風呂でも入ってすっきりしよう。

 【日記追記】
 汗を流して体拭いてたら、また脱衣所にエレンが来た。広いから邪魔にはならないが、ちょろちょろと何がしたいんだか本当にもう。マルコがどうとか、ここ数日、一緒に居ないのは何故だって訊かれたかな。
 当然、マルコのためだ。俺なんかが一緒に居たらクリスタと進展しないだろ。服着たいのにエレンの奴、全然出て行かねーし、「そうかー、マルコとは切れたんだな」とか訳解からん事を言ってるし、恋を応援したいだけで別に友達止めたつもりはねーぞ。
 それを伝えたら、「振られたのに、友達続けるって辛くないのか」とか、縁は切られてねぇ!つってんだろ。って怒った。取り敢えず、馬鹿にされてると言うか、無駄な同情されてるのは解かった。ので、ぶん殴ろうとしたけど、腰にタオル巻いただけの、ほぼ全裸で、片手でタオルを抑えてて大きくは動けないもんだから、女みたいな平手打ちをしてしまった。思い返すと、それはそれで恥ずかしいような……。

 えーっと、それから何かをエレンが喚いて、風呂上りに落ち着くために置いていたソファーの上に押し倒されて、喧嘩したら絶対、誰かしらはくるから騒げない。全裸を人前で公開する趣味は俺にはない。仕方なく、出来るだけ怒鳴らないように出て行けつって、エレンを押し返してたら、あいつも押してくるもんだから力比べになった。何で俺と背もあんま変わらないのに強いんだ。
 そうこうしてたら、いつの間にかちびが杖から出てて、エレンの背中に乗ってたんだ。手に持ってた短刀をエレンの首筋に当てて、刀身に明かりが反射してきらきら光ってたな。ちびに驚いたのか力が緩んだ隙に、エレンを椅子から蹴落とした。「糞ちび、また邪魔しやがって」とか言ってたか?朝ぼろぼろになってた原因はちびのせいか?
 うーん、覚えてないけど、やっぱり喧嘩したのかな。それで、ちびが俺を援護しようとエレンに襲い掛かったのか?エレンが近付こうとしたら、すかさず武器振りかざして威嚇してるし。流石に危ないし、仲間内で刃傷沙汰は駄目だ。

 ちびが興奮するから、エレンを追い出して、どこかに行こうかと思ったが、特に思いつかなくてやっぱり本ばかり読んでた。独りで出歩くな、と言ったベルトルトとライナーもいつの間にか居ないし。サシャとコニーは狩りに行き、アニは一人でふらっと消えて、家に居るのは、アルミン、ミカサ、マルコ、ユミル、クリスタ。
 食事の下拵えも終わってる。木の実は昨日大量に取って来た。畑は昨日ある程度やった。マルコの様子見に行ったら、ユミルとクリスタと何か話してたから、俺が入っちゃいけない気がして、そっと部屋に戻った。もう一度、屋上のガラス部屋に戻って、香草の手入れをしてたんだが、暇でしょうがない。ちびを出してても、敵が居ないから退屈そうに欠伸してたし。
 昼も適当済ませて、釣りでもするか。そう思って倉庫に行ったけど、エレンに貰った釣り竿がどこにあるのか俺知らない。そういや釣り餌もどこにあるか知らねぇわ。って気が付いた。
 暇過ぎて、普段は他の奴らに任せてた掃除を軽くしてた。いや、最低限自分の周りは自分でしてたぞ。洗い物とか洗濯も……。
 俺は誰に言い訳してんだ。

 昼過ぎるとライナーとベルトルトが服も体も傷だらけのぼろぼろで、アニが二人を引き摺るように帰って来たのが見えて、慌てて降りて行った。厚みがあって、生半可な攻撃じゃ裂けないベルトルトの外套が切り裂かれてて、ライナーも思い切り石壁にでも叩きつけられたのか、打撲と酷い擦過傷があった。自然に傷が回復するはずなのに、じくじくと血が滲み続けてて、傷を洗っても止まらない。アルミンの見解では、どうも血が止まらなくなる毒を食らっていたようで、薬を飲ませて、包帯を何度も変えた後は、二人共、死んだように眠っていた。
 失血死とかないよな。血を流し過ぎたら体温が下がるんだよな。座学で習った医療知識を必死で思い出しながら、どうにか看病してた。二人が寝ている部屋を出来るだけ暖めてたけど、こんなので良かったんだろうか。
 温めるなら風呂に浸けといた方が良かったんだろうか。いや、それだと血が余計に止まらないか。飲み水は枕元に用意してたけど。

 傷の手当て、薬作り、寝床の用意と、午前中の暇さが嘘みたいな上に下にの大騒ぎだった。
 取り敢えず、交代で見に行って、二人が起きた時に食べられそうな食事を作っておこう。と、決まって、落ち着きはしたが、夕暮れ時になるとコニーとサシャが帰って来て、二人の有様に驚いて動揺していたようだった。無理もない。日没が迫ってくるにつれ、外を見に行ったり、そわそわし出したりして、皆、緊張感が半端なかったが、幸い、化け物は出てこなかった。ライナーやベルトルトは攻撃の要だから、こんな時に来られたら、恐らくただじゃ済まない。動けないあいつらを庇うのだって、出来るかどうか……。情けない話だ。

 夜に様子を見に行ったら丁度、意識は戻っていたようで安心した。
 汗を掻いていたようだから、ライナーの熱を測るために首を触りながら顔に頬をくっ付けたら、急に暴れ出して驚いた。そして、痛みに呻いていた。
 毒のせいで治りが遅くなってるんだから安静にしておけよ。と言ってからベルトルトも診たけど、毒のせいかな?熱が少し出てるっぽかった。汗もかなり出てたから、風呂は無理でも、せめて拭いてやろうかと提案したら豪い勢いで断られた。汗が冷えて風邪でも引いたら困るんだけど、嫌ならしょうがないよな。
 二人には軽めのスープを食べさせて、万が一、夜中に容体が急変したら怖いので、男達だけで交代して寝ずに着いている事になった。摩り下ろした林檎とかやったら喜んでたけど、栄養的に……、まぁ、食べないよりいいか。
 看病なんて風邪引いた時に、母さんにして貰ったくらいだから、やり方が良く判らん。偶に、顔とか首の汗拭いてやったりしたけど、それでいいのかなー。

 二人共寝てるから話相手が居ないし、ぼんやりしてたら嫌な想像ばかりする。容体は落ち着いているようだから、トイレに立ったら、マルコが交代する。と言ってくれたから甘える事にした。

 明日は平和がいいな。

・四十日目
 回復が通常よりも遅いとは言え、朝になればベルトルトもライナーも自力で動ける程度には回復しており、話を聞く事が出来た。
 一体、どんな化け物にあそこまでやられたんだ。ってのは気になる所だ。二人が寝ている部屋に俺と、マルコとエレンとアルミンが居た。主にライナーが説明して、時にベルトルトが補足する。話を簡単に纏めると、出先は湿地帯。例のリザード神殿に赴いて、ベルトルトの武器で、扉か壁の一つくらい壊せないだろうか?と思って試しに行っていたようだ。……神殿壊そうとか、リザードに喧嘩売る気満々だな。

 まぁ、結局、神殿の壁は壊せなかったようなんだが、その直ぐ傍に生えていた大きな桃色の花の蕾らしき物に爆風が当たってしまい、その蕾が吹き飛んだ瞬間、直ぐに何かが這って近づいてくる音が聞こえ始めて、蕾をそのまま大きくしたような、花の姿をした化け物が現れたのだそうだ。ぬかるんだ狭い通路で戦うのは不利と見て逃げ、何とか多少なりとも開けた場所に出たが、そこで追いつかれ、戦う羽目になったと言った。
 確かに、植物の化け物を湿地帯で見かけた記憶があるが、それらは生成された場所以外に移動する事は出来なかった筈だ。恐らくは、植物の化け物の上位種か、更に強く変異した種なんだろう。巨大な蕾の形をした頭、先に鉤爪のついた花から伸びる大小の刺々しい蔓。全長は二〇メートルはあったようで、花は人間程度なら容易く一飲みに出来る巨大さだったそう。
 湿地帯の地下にある通路は、そいつが作ったものなんだろうか。気を付けなければ。話を聞いて、思わず緊張したのが伝わってしまったのか、それを和らげるためか、的はデカかったから倒し易かったと冗談めかしてライナーが嘯いていた。

 しかし、強ち完全に冗談とも言い難い。流石はベルトルトとライナーだ。とでも言おうか、そんな強力な化け物を相手にして、苦戦しつつも倒してしまったのだそうだから。
 けらけらと笑いながら冗談を言っていたが、急に表情を引き締めて俺を見ると、「倒しはした。だがな植物と言うものは土の中でどう繋がっているか判らない。俺達が倒したのは、無数にあるあの化け物のほんの一部かも知れん。花の蕾は勿論、出来れば湿地帯自体にもう近づくな」と、真剣に忠告された。

 射貫く様な真剣な眼差しだった。
 「俺達だから、まだこれくらいで済んだんだ」とも。ライナーの雰囲気に気圧されながら部屋から出たんだが、俺も、マルコもエレンも無言で、それぞれ考え込んでいるようだった。
 俺は何となくライナーの言い方が気になった。ミカサもそうだが、ライナーやベルトルトは、自分の優秀さをひけらかす人間じゃあない。寧ろ、更に上に上に、と研磨するような種類の人間だと思っていた。それが『俺達だったから』と、来たものだからどうにも引っかかって、俺は一人で首をかしげていた。ライナー達にとっては、何か別の意味があるんだろうか。
 考えても、所詮、そんなものは本人達に訊かなければ真意は解からない。少ししたら考えるのを止めて、気にしない事にした。俺達を心配してたのは本当だろうし。

 それ以外に、気になった植物の化け物と、神殿の詳細を調べてみる事にした。
 書庫で確認してみれば、その化け物の事を書いた本の記述には、こんな解説がしてあった。

『湿地帯に住み着く強大な化け花は、大地には根を張らず、他の動物を糧とする。太く、棘の付いた蔓を器用に使って壁を伝い、地面を這い、我が物顔で地下を闊歩する。動き回るための蔓は鞭のように素早くしなり、獲物に巻き付き放さない。蔓に生えた鉤爪や棘は生半可な鎧など、容易に切り裂き、引き千切る。花弁の中には獲物を閉じ込めるための、檻の如き無数の牙。そこから零れる液体は、骨まで溶かす消化液である。恐ろしい事に、その化け花は完全に死滅させる事が出来ない。倒しても、またどこからか奴等は湧きだしてくるのだ。植物の中には、水さえあれば茎を千切られても、またそこから根を伸ばし、繁殖していく種がある。それと同じような物なのか、繁殖力が凄まじいのだ。奴等は無数に存在する。薄紅色に発光する花の蕾は全て化け花の分身である。注意されたし』

 何度も湿地帯には赴いたが、今まで出会わなかったのは運が良かっただけなんだろうか。
 湿地帯地下の至る所に自分の分身である蕾を蒔いて獲物を待ち、獲物がかかれば、狭い空間に蔓を張り巡らして、退路を塞ぎ、追い詰め捕食する。植物の癖に、まるで狡猾な罠を張る蜘蛛のような奴だ。

 リザードの崇める神の事は、実に簡潔に『石で出来た巨人』と書かれていた。
 巨人と言う言葉に、何となく懐かしさを感じてしまったが、あんなもの懐かしむもんじゃないな。
 化け花と同じく、強大なものである。とは書かれているが、敢えて神殿に入り込まなければ敵対する必要もない。人ならずといえども、こちらが害しなければリザードも、神もこちらを害する理由は無い。本当に簡潔だ。ただ、この人は戦ったんだろうな。このつるはしめっちゃ使える!とか追記する形で書いてるし。他の文字は読み易く丁寧で、文章もお硬い雰囲気で書かれているのに、何故、この字だけ浮かれてるみたいに、ごちゃっと書かれているんだろうか。

 本を読んでいる途中で、書庫にアニが訪ねて来て、懐から鍵を出して見せた。
 アニが瀕死のライナーとベルトルトを回収した際に、倒れた化け花の傍に、消化液に塗れた鍵があったそうで、何に使うかまでは判らないが、もしかしたら重要な物かも知れないと思って持って帰って来た。と渡された。あの化け花が湿地帯でしか活動しないなら、鍵が必要な場所は一つしか在り得ない。触ってみれば、錆びたり、溶けたりはしていないようで、十分に使えるように見えた。ちらりとライナーの言葉が脳裏を過ったが、これ以上あいつらに任せっぱなしも男が廃る。

 仕様もない意地だが、俺だって出来るんだって事を少しは見せたい。
 直ぐに出かける準備をして、出て行こうとしたら、マルコに呼び止められた。お前は、ベルトルトとライナーの話を聞いてなかったのか。だって。聞いてたけど行きたい。わざわざ危ない事をするな。出入り口前で、少しばかり口論っぽくなって、行くと行くなが平行線を辿っていた。最近、俺の事避けてるし、何考えてんだお前は。との、思ってもみない言葉まで出て来て詰め寄られて、避けていた理由も白状させられてしまった。
 そして呆れられた。マルコはクリスタを好きなのかな?気を利かせよう。は、完全に俺の心得違いのようだった。でもなぁ、顔合わせただけでお互い笑い合ったりして、いい雰囲気だったし。それを伝えると、仲間なんだから当たり前だろうが。と、怒られた。叱られたんじゃなくて怒られた。
 叱る時は、諭すように言うマルコが、少し言葉が荒くなって、強く言い始めると怒ってるんだ。こういう時のマルコに逆らってはいけないと俺の脳には刻み込まれている。逆らえないので同然ながら、準備も空しく、マルコの部屋に引き摺られて行ってしまった。

 何を勘違いしているのか知らないが、俺が大事なのはお前だ。
 こんな事を延々と説かれた。何故、マルコはこんな言葉が、簡単に出てくるんだろうか。解かったからもう止めてくれ。そう懇願して、恥ずかしくて、頭が煮えそうになった頃に危ない事はしない。絶対に単独では行かない。と約束させられて、やっと解放された。神殿に行く事だけは何とか許可して貰えたんだが、変な気分だった。こう書くと可笑しいんだが、時々マルコが母さんや父さんに見えて来る。

 そこまで長い時間でもなかった筈だが、やたらと体力を削られて、ふらふらしながら部屋を出たら、ユミルと、エレンとコニーが、揃いも扉の傍で聞き耳を立てていた。盗み聞き何ていい度胸してるよな。殴られても文句は言えないよな。と言っても、捕まえられたのは一番手前に居たエレンだけだったんだが。盗み聞きの罰として神殿探索に着いて来い、と言ったら案外素直に承諾した。俺のどうしようもない口が、素直で気持ち悪い。と、ついぽろっと言ってしまったが、これまた意外に得意げに笑って、ライナーにあんな挑発されちゃ行くしかない。だと。
 エレンはライナーの言葉を挑発と受け取っていたようだ。ついでに、呑気に暖炉部屋で寛いでいたコニーもとっ捕まえた。逃げといて俺等が出て行く時に、必ず通る暖炉部屋に居るとか馬鹿なのか、そうだ、馬鹿だった。

 コニーの武器はこの間見たが、エレンが武器を使ってる姿は見た事なかった。
 持って来ていた弓はサシャに渡したと言っていたが、エレン自身は銃と剣を使うようだ。地面を走って来る敵だけじゃないから、遠距離、近距離、両方を、と必然的にそうなるか。剣はごくありふれた刀身が分厚く、全長が細い片刃の両手剣だったが、銃は引き金を引くと、連続して弾が射出されて敵を薙ぎ倒していくものだった。
 ライナーが持っていたものと動作は似ているが、それよりも一回り大きくて弾が広範囲に広がる物だった。両手で持たないと、とても持てない、連続でくる反動も凄まじいから常に全身に力を入れていないと銃の力に振り回されて立ってすらいられない。こんなもん毎度毎度、振り回してたら、嫌でも力がつくってもんだなぁ。

 マシンガンは集弾率が悪く、広範囲に弾がばらけるため、小さい物を狙うには向かない。
 真価を発揮するのは巨大な敵や、複数の敵が纏まって襲ってきた時だと言っていた。狭い所から襲ってくる奴や、小さい虫はちびや俺、コニーが担当し、エレンには纏まって襲ってくる骸骨何かを倒して貰いながら、神殿に向かって行った。

 神殿に入ると、中は真っ暗なのに、ざわざわと生き物が蠢いている気配がした。
 松明を持って手が塞がっていると危ないんじゃないか。こそこそ話していたら、コニーが何かを思い出したようで、慌てて鞄を漁って、小さい鐘を取り出し、それを鳴らすと、赤っぽく光る光体が出て来て、周囲を照らしてくれた。
 光体の中に、良く見ると虫の羽のような物が付いていて、生き物みたいだった。

 ちら。と、ちびを見たが、ちびと違って攻撃に向いている感じはしない。
 どうも種類が違うようだ。マルコに貰った、紫の玉と似たような物なんだろう。結構明るい。因みに、それは暗すぎて今一、神殿の中では上手く機能してくれなかった。コニーの奴の方が明るいんだから当然か。
 下へ下へと降りる通路を進んでいけば、槍が飛び出て来る罠、火を噴く罠、針が飛び出てくる罠、棘の付いた玉が降って来る罠。とんでもない所だ。それに加えて、リザードや、蝙蝠のような羽の生えた蛇が、どこから湧いてくるのか、無尽蔵に襲い掛かって来る。
 罠は、エレンが罠が見えるようになるポーションを持参していたので、ほぼ回避出来たが、なにせ、敵の数が多過ぎる。撤退する事も考えたが、エレンがまだ大丈夫。と言い張り、引こうとしない。確かに、魔法やエレンの銃のお陰で、倒せてはいたんだが、本当に死に急ぎ野郎だ。

 襲ってくるリザードを倒しながら、どうにか最深部に辿り着くと、攻撃が不気味なくらいぴたりと止まった。上がり下りが続く、じぐざくの階段に体力を削られて、途中で少し休憩を入れて、一息吐いた。
 敵が来ないのが幸いして傷も治せたし体力も回復出来た。襲い掛かられても困るが、全く来ないのも不気味だった。

 奥へ進むと、ぼんやりと光る台のようなものが見えて、近付いて良く見てみれば、何かを祭るための祭壇のようだった。台に彫られた文様が金色の光を放っていて、神々しいと言えば神々しい。ダンジョンもそうだったが、周辺を探ると捧げられた動物や、中には人間の骨らしいものもごろごろ転がっている。嫌悪に呻く声が誰からともなく漏れて、コニーが後退りをして、祭壇に手をつくと、地の底から吼えるような声が聞こえて、地響きで体が揺れた。何が出て来るか判らないから、階段の所まで撤退して、成り行きを見守っていたら、何かが出たんだ。壁に隠れて少々、見え辛かったが。書いてあった通りの石の巨人。

 動いてはいるようだが、攻撃してくる気配がなくて見に行った。
 衝撃的な光景だった、神殿内は俺達にとっては通路も部屋も見上げるほどに大きかったけれど、石野郎は体の大きさに対して通路も部屋も狭かったんだろうな。
 通路に挟まって動けなくなってて、頭なんかは、壁の中に埋まってたんだ。もう、緊張した分、笑いが堪え切れなくて、一生懸命、こっちに向かって攻撃してるみたいなんだが、それも一切届いてないし、もだもだもだもだ腕とか足が動いてる。一しきり三人で笑い転げて、申し訳ないと思うが、一方的に倒させて貰った。崩れた石の巨人の中からは、つるはしだとか腕輪が出て来たので持って帰った。本当に、笑い過ぎて腹筋が攣って、酸欠起こすかと思うくらい笑った。
 マルコ達に成果報告してる時も、あのもだもだした動きを思い出してしまい、笑いが止まんなくて困った。いやー、あんな間抜けな化け物、初めて見た。やっと笑いが収まったかと思ったら、コニーが石野郎の動きを真似して見せるもんだから堪ったもんじゃない。
 エレンも咽るくらい笑ってたし、俺も涙が出で、本当に勘弁してくれ。ってなった。ユミルがそんなに面白いもんなら自分も行けば良かった。なんて残念そうにしてたのは、本気なのか、冗談なのか良く判らん。確かに、落ちはこんなもんだったが、途中の罠や、リザードの群れは中々きつかったからな。

 こんな和やかな雰囲気も、日没後に機械眼玉が来たせいでぶち壊された訳だが。

 最初に現れた時と違い、一体ではなく、二体で一対の化け物になって表れた。一体は変化後の目玉が真っ二つに割れて、牙を剥きだした姿で、もう一体は、眼玉の中心から光線を出しての遠距離攻撃。厄介は厄介だったが、アニから貰った翼で機動力が上がったお陰で、避ける事は困難ではなかった。やっぱり基本的に俺を狙って来てくれるから、俺が時に攻撃して気を引いて、回避に徹していれば、他の奴等が攻撃をしてくれる。次第に機体が崩れ出して地面に落ち、火花と煙を噴き出して動かなくなって、その化け物の機体をアルミンがわくわくしながら拾い集めていた。

 だから、何に使うんだ。と訊いても、いい事だよー。だけで教えてくれないし。
 看病したり、笑いまくったり、逃げ回ったり、疲れる日だった。書くのも疲れた。

・四十一日目
 朝、起きたら体中が滅茶苦茶痛い。動かすと関節がぎしぎし悲鳴を上げていた。
 筋肉痛なんて、訓練兵団に入ってからはほとんど無かったんだがなぁ。主に腹筋辺りが痛いのは気のせいじゃあないな。暫く、家の事ばかりで運動らしい運動をしていなかったせいか。まぁ、じっとしていればその内、治って来るだろう。そう思ってゆっくり寝ていた。少し経つと、叩き起こしに来たマルコに動けないほどの筋肉痛を伝えると食事を部屋まで持って来てくれた。いい奴。
 でも、別に食べさせてくれなくても良かった。

 昼前くらいには普通に動けるようになって、外に出てみるとライナーやベルトルトが手合わせをしていた。
 昨日の夜以外は寝っぱなしだったから、解す意味でやっていたらしいが、動くのは散々、眼玉相手に昨日やっただろ、どれだけ体力馬鹿なんだあいつらは。
 二人の手合わせは、お互いに遠慮せずにやり合えるからか凄かった。頭じゃなくて、感覚でお互いの攻撃や、護り方の癖とかも解かってるみたいで、一進一退で決着は中々つかない。やり合う内に本気になりだしたようで、攻撃が当たると、骨と骨がぶつかってるような、痛そうな音がして、ちょっと身が竦んだ。直ぐ治るからって遠慮しないにもほどがある。怪我が痛くない訳じゃないのに。
 手合わせ止めて、休憩してるベルトルトとライナーと雑談してたら、アルミンが円盤のような物を持って来て、それを投げて見せたら、目の前にあった木が切断されて、音を立てて倒れた。木の太さは両手で掴めるくらいだったから、直径は十センチくらいかな。その円盤は三十センチはあって、投げるだけで自動で手元に戻って来る面白い武器だ。

 非力な自分でも、これなら敵を倒せる。とはしゃいでいた。
 円盤は五枚くらいあって、それを次々に投げて攻撃をするようだ。俺も使わせて貰ったが結構楽しい。でも、素材があの化け物の体だと聞いて返却した。無茶はするなとだけ言っておいたが、アルミンはひ弱そうな見た目に反して根性あるし、ここぞって時の度胸もあるからな。頼りになる奴だ。蘊蓄が始まると、中々終わらなくて、ちょっと疲れる時もあるけど。

 ついでなんで、昼食までライナーに体術を教えて貰っていた。
 アルミンとベルトルトもやってたが、簡単にあしらわれてたし、両腕を掴まれて吊るされてた姿は、あれだ、大人と子供と言ってもいいくらいだ。ずるずる上に伸び過ぎだと思うんだ、あいつ。

 今日の食事はユミルとサシャとクリスタが当番していたが、不安しかなかった。
 サシャが作ると、食事が途端に肉肉しいと言うか、腹が重くなるんだよなぁ。ご飯が出来たとクリスタに呼ばれて陳列された食事を見た瞬間、案の定の料理で、サシャがエレンがくれた弓で熊獲って来たんですよ。なんて胸を反らしてた記憶が走馬灯のように脳裏を駆け巡っていた。
 机の上には幾層にも積み重ねられた、焼いた肉の塊が中央に据えられていて、肉スープに、奇跡のような葉物のサラダ。これはクリスタかユミル製だろうな。パンにも肉がしっかりと挟んであって、半分も食べ切れなかった。ジャンは食が細いですねぇ、そんなんじゃ大きくなれませんよ。じゃねぇよ。ライナーですら動揺してたわ。
 もう無理、ってなった時、ちびがうろうろしてたから膝に乗っけて一口分に分けながら俺のを食わせてたら、その行動をユミルが、お前は、そいつのかーちゃんか。ってからかってきて、罰が悪かった。似合わない事するもんじゃない。
 結局、ちびも全部食べ切れなくて、俺もどんどん肉の油で具合悪くなってきたから途中で退席したが、全部食べ切れた奴は居たのかあれ。幾ら美味しくても程々の量が一番だ。そう言えば、ミカサは昨日、エレンが黙って神殿に行ったせいか、片時も離れないくらいべったりで、食事もやたらと手を出してたなぁ。
 食べろ食べろとやたらと口に詰め込まれていた気がするが、大丈夫かあいつ。最終的に、トイレまで着いてこられて、ぐったりした表情をしていた。流石に、トイレは一人で行きたいな。うん。
 アニも早々に食べ切るのを諦めていた気がする。でも、隣に居たベルトルトに残りを全部押し付けるのはちょっと酷い。積まれた肉の山に、ベルトルトの冷や汗がやばかった。食い過ぎで死んでないだろうか。

 ちょっと腹が落ち着いたくらいに、マルコが胃腸に効く薬草を煎じた奴を持って来てくれた。
 皆に配って回ってたそうだけど。やっぱり気が利くいい奴だなぁ。お陰で、具合はだいぶ良くなった。傷や疲労は直ぐ治るけど、こればっかりはな。
 他には、クリスタに言われてユミルが面倒そうに掃除をしてたかな。ユミルは相変わらず、飄々としてて掴みどころがなくて、クリスタが口を出してはからかわれたりして遊ばれているのがいつもの光景だ。ユミルは実力はあるはずなんだが、それを追及されそうになると、相手を怒らせたり、別の方向に話を逸らして煙に巻くのが常だ。
 ここでもそれはあまり変わらないな。普段、何をしてるんだかさっぱり掴めないのは、ユミルと……、アニもだな。ふらっと何処かへ行って、ふらっと帰って来る。野良猫みたいだ。

 今後、この世界で暮らすとしたら、ずっと一緒って訳にはいかないよな。
 もし、誰かがくっつくなら、それぞれの生活もあるんだし、結婚とかなったら、誰と誰がくっつくんだろうなー。
 サシャとコニーは歳食っても一緒に馬鹿やってそうだし、マルコは、俺としてはクリスタみたいな、大人しい子と付き合って貰いたいんだが。でも、ライナーがクリスタ好きだし、ユミルとは軽口叩き合う悪友っぽいから、恋人ねぇ?難しいかな。エレンとミカサは必然的にくっつくだろうし、むかつくわー。
 アニ自身はベルトルトの事どう思ってるんだろう。今日見た感じじゃ、嫌ってはいないようだが。
 アルミンはどうなんだろ、一生研究とか没頭してやってそうかなぁ。でも、あいつだって男だし、気になる女くらい居るんじゃなかろうか。そうだな、ミーナとか気が利いて、優しいし、ほのぼのした夫婦になりそうだ。居ない人間を数えてもしょうがないが。その内見つかるかも知れないし?聞くにここ以外の土地なら人も居るそうだから、旅に出た時に誰かいい人を見つけてくるかも?
 俺……、俺はどうなんだろう。嫁探しにでも行かないと一生独り身かも知れない。皆が結婚して出て行ったら、この家、馬鹿みたいに広くなるんだろうなぁ。どうしよう、寂しくなってきた。
 胃も落ち着いたし、鈍らないように外走ってこよう。

・四十二日目
 硝子部屋で香草に水やりながら、手伝ってくれてたマルコにお前の好みってどんなの?と、訊いてみた。

 今までこんな話した事がなかったから驚いていたけど、真剣に考えて、照れながら教えてくれた。
 えーっと、ちょっとつんとした所あるけど、笑うと可愛くて、料理が上手くて、やるって決めたら何でも一生懸命やるような性格で、現実的な考え方をしてて、理想が高くて、自分にも他人にも厳しい所がある。でも、冷酷と言う訳じゃない。傷つき易いけど芯が強いしっかり者で、素直じゃなくて表現が下手だから誤解されるけど、凄く優しくて、人を思いやれるような子なんだ。だとかなんやら。

 随分、具体的だなぁ。
 クリスタじゃないにしろ、好きな奴が居ると見た。
 誰だろー。今いる連中の中にいるのか?って訊いたら、まぁ……。って濁して照れてたから、この中に居るんだろうな。じゃあ、本当に余計な事してたんだな、俺。
 つんとしてるねぇ、アニくらいしか思い浮かばないけど。いや、総合するとアニっぽい気もする。うん、アニに違いない。一緒に、当番とかやってたからな、マルコと居る時は笑ったりしてたのかも。しかし、そうなるとベルトルトが……、うーん。俺の親友の為に泣け。これ言ったら、酷いよ!って本気で泣きそうだな。

 アニにも訊きに行ったら、別にマルコの事は嫌いじゃないそうだ。まぁ、マルコを嫌ってる奴の方が、あんまり居ないけどな。
 ライナーとベルトルトにも好きな奴居るか?って聞いてきた。顔、真っ赤にして誤魔化されたけど、全く、解かり易い奴等だな。アルミンにも訊いたけど、考え込んでたから、特定の誰かは居ないのかなぁ。豪い俺の事じろじろ見てたけど。俺には言いたくない感じかな?別に言い触らしたりしないけどなぁ……、信用されてねぇのか……。
 エレンとコニーはしょーもない返事が返ってきそうで端から訊いてない。つかお前はサシャと仲良くしてろ、うん。って感じ。他の女にはちょっと訊き辛いから、男だけだな。
 俺も、ミカサと……、なんてな!ぜってー無理だろうけど。夢くらい見たい。別に好きでいるだけなら迷惑にはならないはずだ。サシャには、今日は肉勘弁してくれ。とだけ言っといた。

 独りでも、しっかり自分護れるようにならないと。
 俺は今の所、魔法と機動力くらいしか特筆出来る武器がないから、もっと練習しないとな。

拍手

PR