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馬房

小説は妄想と捏造甚だしい。 原作のネタばれ、都合の良い解釈。 R18、グロ(精神的にも)、暴力表現などが含まれます。 冒頭にざっと注意を書いてありますので、それを読んだ上での 閲覧を宜しくお願い致します。何かあればご連絡いただければ幸いです。 基本的に右ジャンしか書きません。 萌が斜め上です。無駄にシリアスバイオレンス脳です。 拙い文章ですが、少しでもお楽しみ戴ければ嬉しく思います。 右ジャン、ジャン総受けしか書きません。あしからず。

ジャンのテラリア日記31~35日目

ジャンのテラリア日記31~40日目






・三十一日目
 アルミンから貰った棒の先端に作り物の花がついた道具は、箪笥の中に服と一緒に入っていた。何故こんなとこに仕舞った、俺。

 使い方は至極単純、振ってみたらいいよ。だそうだ。言われた通り、自室で振ってみたら掌よりも大きな蜂が出て来た。あの一件で、少々、蜂恐怖症気味だった俺は悲鳴を上げて逃げ回った。どこへ行っても付いてくるもんだから、物投げたりしてたが効果がない。最終的に助けてくれそうな奴。ライナーだけど。の部屋に逃げ込んで、まだ寝てる奴から布団を奪いつつ抱き着いてしまった。

 まぁ、逃げる必要性皆無だったんだけどな!ライナーの隣部屋になってたアルミンが、騒ぎを聞きつけて説明してくれた。
 これがミニオンって言う、特殊な仲間を召喚する道具だったんだ。アルミンに諭されて、そう言えば着いてくるけど、一回も攻撃されてない事に気が付いた。光りながら着いてくる玉のように補助をしてくれる味方、外敵が現れた際に自動で攻撃してくれる護衛のようなものみたいだ。
 こんな仕様もない事で起こされたライナーは不機嫌になっているように見えた。怒られない内に退散しようとアルミンにくっついて出て行こうとしたら、名指しで呼ばれてしまい、戻らざるを得なくなって気不味かったが、ただ、怒られると言うよりは、説教?諭す?に近かった。

・驚いたからと言って安易に人のベッドに潜り込んではいけない
・相手が女なら問題だし、男でも大問題になる事もある

 とかなんとか。流石に、逃げ込む相手は選んでいる。と、言えば、あまり信用し過ぎてくれるな。だそうだ。何かあったら普通に叩き起こせとも言われた。うん、本当に悪かったと思っている。
 今日も特に出かけずにアルミンの持って帰って来た物を調べたり、話を聞きながら、参考になる物がないか書庫で本を探したりしていた。ライナーも途中から参加して、コニーは開始十分で飽きてどこかに遊びに行った。家事はユミルとクリスタに任せて、座りっぱなしだったから若干腰が痛い。

 瓶と他の薬や、石を合成して攻撃対象に追加攻撃を与える薬、様々な毒を調合した猛毒と銃の薬莢を合成して毒を与える弾丸、本来は一匹しか召喚出来ないミニオンを複数体召喚するための装備や道具。今直ぐには無理だが、将来的に有用そうな道具が色々あった。
 また、リザードの本拠地でもある湿地帯、ジャングル地帯とも言うそうだが、その地下、奥深くにはリザード神殿と言うものがあり、中にはリザード達が崇めるゴーレムと言う神?のような者が居るようだ。
 そこには貴重で、強力な武器、身を護る装身具などの品々が奉納されていると言う。貴重なのは解かったが、黙って持っていったりしたら泥棒じゃないのか?そう言うと、アルミンが借りるだけなら大丈夫だよ!なんて抜かした。
 アルミンって奴は、こんなにも手段を択ばない奴だったのか。
 この世界に居ると、仲間の意外な一面が見えてくるな。

 ずっと調べ物をしていたら、眼が疲れたのか痛くなってきて、一旦休憩を挟んだ。
 温かいお茶や、甘い物を出すと皆、嬉しそうに表情が綻ぶ。たっぷり二時間くらいは思い思いに過ごしていたと思う。

 【日記追記】
 休憩の後はライナーが持っていた新しい銃も見せて貰った。
 UGと言う刻印がされていて、一度引き金を引けば弾を連続で放つ銃だ。
 使わせて貰ったが、ショットガンのように吹っ飛ばされるまではいかずとも、連続の衝撃で銃を固定していた肩が滅茶苦茶痛いし、振動で手が痺れたみたいに力が入り難くなった。これ扱えたら格好いいだろうに。

 やっぱり俺には剣が向いてるみたいだ。

 だが、どうも最近、光る剣では力不足が目立ってきた。
 現時点の材料でも作れる武器は無いか、調べているとひょっこり戻って来たコニーは手に二振りの剣を持っていて、どっちがいい?などと訊いてくる。話を聞けば、ジャングルの地下に独りで行って来ていたらしい。一つは例の巨大蜂の死骸の傍に落ちていた黒い剣。もう一つはジャングルにのみ生成される特殊な草から出来る剣で、見た目は緑で刺々しい。

 黒い剣を振ってみると蜂が飛び出して来て思わず投げた。
 緑の草の剣一択みたいだ。黒い剣はコニーに、お前が使え。と、渡しておいた。

 コニー、俺が蜂怖いの分っててやったんなら、後からでもぶん殴ってやるからな。武器の新調はありがたいが、行くなら一言言え、心配する。最低でも、行先は言っておかないと、いざって時に助けに行けない。
 なんて事は俺は口が裂けても言わないが、まぁ、必要な事はライナーやアルミンが説教してたんでいいだろう。

 マルコ、早く帰って来ないかな……。馬鹿の行動力は侮れない。あいつのお守りは俺だけじゃ無理だ。

・三十二日目
 ここ数日天気がいい。硝子部屋の香草もすくすく育っている。
 同じく雑草もすくすく育っていた。何でも成長が早いんだよなここ。木を切っても、種になる木の実を植えておけば、直ぐに背を越す高さになる。野菜でも二三日で食べられるくらいの大きさになる。木も常に果物が鈴生りだ。その変わり雑草も凄い。きちんと管理しないと直ぐに雑草だらけだ。それが少しめんどくさい……。

 雑草をバケツに移して外に持っいって、枯らした草は外に置いて、枯れたら土に混ぜ込んでやればいい土になる。って、書いてあった。外の小さい畑にも雑草が生えていたので、同じようにしておく。
 朝はパンと卵料理の軽めの朝食だったから、昼は何にしよう。コニーが昨日、魚釣って来てたから魚の蒸し料理にするかな。香草どれ使おうかな。なんて土弄りながら昼ご飯の事を考えてたらマルコ達がサシャを連れて帰って来た。
  開口一番、人に詰め寄って、美味しい肉はどこですか⁉ってどんな挨拶だ。

 交渉自体はドライアドが口添えしてくれて、すんなり進んだそうだ。
 話を聞くに、ドリアード達は水と太陽光さえあれば、ほとんど食物を必要としないそうで、一日の量も、ほんの少し穀物などを口にするだけ。当然、人の食事を奪うほど食い意地の張ったサシャが、そんなもので満足する訳もなく、村の食料の備蓄が深刻なのもあっただろう。腹を空かせ過ぎて、自前で弓矢を作成して森で狩りをしようとしたそうだが、森の獣は神聖な生き物である。とかで、邪魔をされて狩りは出来なかったようだ。木の実や、野草を取ったりして腹を誤魔化していたとか涙ながらに語られた。

 そんな話を聞きながら食事をしていたんだが、確か、蒸して、焼いて作った十五匹ほどの魚料理と、それ以外のパンや、玉ねぎとベーコンのスープ、白身魚とエビのグラタン。食後の南瓜パイも机の上の料理をサシャが凄まじい勢いで掻き込んでいって、見事に平らげ皿はすっからかん。確かに大人数ではあるが、相応の量は作ったはずだ。
 相変わらず凄まじい食いっぷりだ。胃袋が四つくらいありそうな勢いだった。クリスタなんかは自分の分も分けていた気がする。ユミルの時も言ったが、あの細い体のどこに、あの食料が収納されてんだ?謎過ぎる。もう食べれませんー。って当たり前だろ!

 あれ、ちょと待て、うちの備蓄も危なくないか?
 畑広げて裏に備蓄倉庫でも増築した方がいいかも知れない。

 そうそう、ライナーとリザード神殿探してみたんだが、それらしいものは見つけた。しかし、外壁が硬くて手持ちのつるはしでは傷一つつかない。扉らしいものも見つけたが、どうやら専用の鍵があるらしく、開きそうにもない。もうちょっと別の所から探索した方が良さそうだ。

 本に書いてあった、マグマと灰と岩だらけの『地獄』と、呼ばれる地下世界に行ってみようかと思う。
 そこなら兎に角、地下を下っていけば着くそうだから行けるだろう。

 『地獄』、名称が怖すぎないか……。
 ライナーもついてきてくれるし、まだ何とかなるかな。

・三十二日目
 怖かった。死ぬかと思った。
 ライナーが居なかったら本当に死んでた。

 順調に地下を進んでいったのはいいんだが、どんどん溶岩だまりが増えて来て、蒸し暑くて堪らなかった。
 汗で顔も背中もびしょ濡れだったが、気にしている余裕はなかった。骸骨だの、変な土の中から出てくる蟲だとか怖いし、気持ち悪かったし。それよりも、もっと怖かったのは壁の化け物だ。

 一応、ライナーの助けもあって、無事に地獄までは行けたんだ。
 泥からざらざらした木灰のような質感の土に代わりだして、掘ったらぼこっと穴が開いた。
 縄を垂らして地獄に降りたら、火を纏った蝙蝠、火の玉を飛ばしてくる鼠、蝙蝠みたいな翼を背中につけて、頭に角を生やした人型の怪物が大量だ。そいつらを倒していたら、地鳴りがして、壁が動いた。人に伝えれば何言ってんだ。と、頭の具合を疑われるかも知れないが、本当に壁が動いたんだ。
 赤銅色の壁が蠢きだして、ぬるっと眼玉と牙の生えた口が現れ、ぐじゅぐじゅと、気味の悪い音を立てながら牙が付いた触手がこちらへ伸びてくる。それらが壁ごと動いて襲ってくるんだ。

 魂消るってのは、あの事だと思う。
 頭の中が真っ白になって、体が縛られたように、ぴくりとも動かなくなる。呼吸すら忘れて、目の前に化け物の牙が迫って来るのが見えているのに、逃げる事も、それを避けようとすら考えられない。
 更に大きく真っ赤な口が開いて、ぼんやり、あぁ、俺、食われるんだ。って思った。でも、その瞬間、破裂音が間近で響いて、眩暈を起こしたような、眼の奥がちかちかして、へたり込むみたいに岩の上に転んでやっと状況が掴めた。
 ライナーがショットガンで、牙の付いた触手を粉々に吹っ飛ばしてくれたんだ。化け物にも痛覚があるのか、先端を失った触手が痛みに喘ぐように、ぐねぐねと激しくうねり、切り口から化け物の体液が飛び散った。
 粘り気のある、ぬるっとした感触の液体が肌を伝って流れて、酷く気持ち悪かったのがやたら印象に残ってる。

 滑る感触に、ぞわり。と全身に怖気が巡って、気持ち悪い!と反射的に頭に浮かんだ。
 目の前での衝撃と、これのお陰で意識がはっきりしたと言えばそうかも知れない。次いで、襲い掛かって来た牙付きの触手を迫って来る壁から逃げながら、剣で叩き落せば、ライナーに吹き飛ばされた触手と同じように体液を飛び散らしながらうねった。悍ましい。とはああ言うのを表すんだろうと思う。

 直ぐ傍で、ライナーが次々に触手を吹き飛ばし、武器を持ち替えて応戦している。
 壁の攻撃手段は、時々飛ばしてくる何か?と触手しか無いようで粗方、切り落とすと更に勢い良く迫って来た。牙を失い痛みにのたうっていた触手は、再度動き出し、鞭のようにしなって獲物の俺達を捕まえようと襲い掛かって来る。
 剣では近づき過ぎて危険だ。マスケット銃では連射力がない。そこで、鞄に入れっぱなしになっていた例の水の矢を撃ってみると縦横無尽に飛び交い、次々に壁を崩していく。
 ライナーの打った銃弾、俺の水の矢、当たる度に、肉片と体液が飛び散って溶岩で焼ける。ただでさえ汗が蒸発する水準の熱気に襲われているのに、激しく動き回りながらの攻撃に加え、腐った血のような吐き気を催す臭気が辺りに充満して呼吸も苦しい、溶岩を避け、岩の上を飛び回り、体力も尽きかけた頃に、ぐらりと壁が揺れたかと思うと、途端に崩れだし、溶岩に呑まれていった。
 暫く待ってみても、再度襲い掛かってくるような様子はなく、一気に力が抜けた。ライナーも流石に辛かったようで、岩の上に座り込んで荒くなった呼吸を整えていた。二人共に探索するような気力は無く、大人しく帰る事にした。

 服は岩に引っ掛けたのか、所々破れて、得体の知れない液体でどろどろ、鼻の奥に残った臭気が中々取れず、具合が悪くて、何となく頭がふらふらする。鏡でライナーと一緒に帰ったら自力では動けず、マルコに引き摺られて体を綺麗にして貰った。
 ライナーは、体液を浴びてなくて、灰の汚れと、少々の火傷と切り傷、負傷も少ないから、まだ動けたらしいが、それでも消耗が激しく、着替えたら倒れ込むように寝たと後から聞いた。

 吐き気がして腹の中がもやもやする。水飲んでも吐く。
 寝付くまでマルコが傍に居てくれてた。優しい奴だよな、ほんと。

・三十三日目
 昏々と、半日は寝てしまっていた。
 戦闘や緊張からの消耗もあっただろうが、やっぱり、魔法って奴を使うと疲労感が激しいようだ。

 起きると幾らか眩暈がするが動けないほどでもない。
 マルコから寝ていろと言われたが、正直、寝ている方が、あの、ねとっとした液体の感触や、臭いを思い出して気分が悪くなる。暖炉部屋に本を持ったまま向かって、マルコと寝てろ、大丈夫の押し問答。
 病気じゃないんだから大丈夫。と言っていると、コニーが、ジャン、孕んだのか?などと、ほざいた。持ってた本で殴っといた。男が孕んでたまるか。どうも、コニーの母親と父親が弟や妹が出来た時に、同じような押し問答をしていたからだと、だからといって一緒にするなって話だ。エレンが誰との子だよ!なんて怒って、掴みかかって来たらライナーに引き摺られていった。
 それを女性陣が憐れみの目で見ていた気がする。と言うか、孕んでたりしたら化け物が腹の中にいるんじゃねーか。出くる時は、腹食い破ってあのにょろにょろしたのが出てくんのか。阿呆か。そんなのを想像したら具合が更に悪化した。考えなきゃ良かった。

 昨日の今日じゃ食欲も湧かなくて、肉を口に入れたら凄い吐き気が込み上げて、食べられずにいると、コニーがまた何か言っていたが無視した。ライナーも食べれてなかったようだから具合が悪いんだろうな。適当に果物を切り分けて、少し食べてから外の風に当たりに行く事にした。
 湖に足を浸けてぼんやりしていると少しばかり気分も良くなってきて、持って来た本を捲って例の地獄の項目をじっくり読んでみた。どうも、あの化け物を倒すと不浄や真紅の大地が活性化し、他の大地を侵食し始める。それともう一つ。聖域と言う神秘の大地が出来るそうだ。

 どうも、穢れが侵食し始めると、それに対抗するものが現れて、それに比例するように化け物共も強くなるようだ。

 どう言う原理なのだか。
 これ以上、強い化け物が現れるのも困る。

 草の上に横になって、本を腹の上に置いて、目を閉じながらぼんやり考えていた。
 あの家で、これを書いた人は今はどうしているのだろう。別の町に移り住んだのか、それとも化け物共にやられてしまったのか。この辺りも、大分、使い易いように整地したりしたお陰で化け物の数も減ったと思うが、また増えるんだろうか。また、あの赤い月が昇るんだろうか。もっと、怖い奴が出るのか?

 別に、俺は争いが好きでも、武闘派でもない。
 優れている部分と言ったら立体機動装置の扱いが上手い程度だ。
 ライナーのように力が強く、全体を見る指揮能力に優れている訳でも、エレンのように人を惹き付け、人の闘争心を引き出すような扇動が出来る訳でもない。アルミンやマルコほど頭が良い訳でもなく、ミカサやベルトルトのように、何でも卒なくこなせる訳でもない。コニーのように人を笑わせて和ませるなんて無理で、クリスタのように他人を気遣い優しく接したり、サシャのように他人を励まし、元気を分け与えるような行動も出来ない。他の奴らだって、俺には無いものばかりだ。

 特に突出したものもなく、平々凡々。
 出来る事なら平穏無事に安穏と暮らしたい。

 ぐだぐだ考え事をしていたら、顔に影がかかって、瞼を上げるとマルコが立っていた。大丈夫か。ってまた心配して来たから、もう大分いいから心配するな。とだけ返した。マルコが当たり前のように隣に座って、特に話す事も無く、無言で過ごした。不思議と、マルコと一緒だと、無言でも気不味いどころか心地良い。不安だとか、悩みだとか、そう言ったものが和らぐ気がする。
 ちら。と、マルコを見たら、何が楽しいのかにこにこ笑っていた。ジャン、何を悩んでいるのかな?なんて訊いてくる。俺が解かり易いのか、こいつが敏いのか。最初は口籠ったが、次第につい今し方、考えていた事をぽつりぽつりと伝えてみれば相も変わらずに穏やかに笑っていて、たった一言。

 ジャンは優しいね。だと。

 反論しようとしたら、何故か頭を撫でられて、慰められた。
 誰にも傷ついて欲しくないんだろう?死んで欲しくないんだろう。本当に自分だけが可愛いなら、一人でさっさと逃げればいいのにしないじゃないか。そう、子供に言い聞かせるように言われて、何も言えなくなった。まぁ、いいや。マルコだったら子ども扱いされても。と、思えるから不思議だ。
 マルコの持つ雰囲気お陰なのか、一緒に居ると落ち着いてくる。下らない意地や見栄を、感じないでいられる。横になっていたら、また寝てしまったようで、気が付いたら自室のベッドの上だった。
 賑わう声と、食事を作る匂いに誘われて階下へ行ってみたら、夕飯はサシャ製で、見事に大量の肉と芋ばかりで、まだ食欲が戻っていない俺は匂いだけで胸焼けがしてパンだけ食べて退散した。
 ライナーも同じだったようで、廊下で鉢合わせしてへらっと笑い合い、氷部屋から、凍らせた果物持って来て二人でこっそり食った。気分が悪い時に冷たい物ってすっきりするな。

 気分が落ち着いた後は、銃の整備を見せて貰った。
 これから化け物も強くなるかも知れない事を伝えると、じゃあ、もっと火力のある武器が要るな。と、考え込んでいた。アルミンがくれた蜂は飽くまで補助的な物だし、俺も何か考えないと。

 剣は有用だが、どうしても近づかなければいけない。俺の腕力や体力的にも化け物の硬い装甲を貫いて振り回し続けられるとは思えない。
 そう言えば、俺だけが魔法を使える本を読めるんだよな。体調が回復次第、また地獄に行って、探索したら新しい発見もあるかもな。

・三十四日目
 起きたら昼とまではいかなくても、ほぼ太陽は真上に近かった。
 顔洗ってから恐る恐る暖炉部屋に行くと、マルコがご飯出来てるよ。って笑ってくれて良かった。具合良くなかったから大目に見てくれたのかな?

 今日は肉と野菜をほとんど煮溶かしたようなスープを出してくれて、昨日よりじんわり胃に馴染んで美味かった。昨夜、ライナーと話したような事をマルコとも話した。そうしたら、どうも同じような話を朝にライナーがしたらしく、午前中の内に、皆で分散してあちこち探索に行っているようだった。
 俺もだらだらしてられないな、そう思って、魔法関係の資料みたいなのは無いか?と訊くと書庫に入って探して来てくれた。マルコが持って来てくれた本には、『武器』との括りで、様々な物が書かれていた。剣も、普通の切りつける剣から、特殊な力を持った不思議な剣もあって、銃や弓の項目もある。補助攻撃をしてくれるミニオンにも様々な種類があるようで、空を飛ぶ者、地上から対空攻撃をする者、地上のみの攻撃しか出来ない者。

 魔法は敵を狙って飛んでいく物、振った方向に一直線に飛んでいく物、飛ばした後に敵や障害物にぶつかったら拡散する物。炎や水、毒、氷、光線何て物もある。今の所、一直線に水を飛ばす奴。水の矢くらいしか持っていなかったから面白い。
 中でも、打てばそのまま敵に向かっていく物は便利そうだ。逃げながらでも、打ちさえすれば勝手に化け物を倒してくれるって事だろ?そんな便利なものなら使わない手はないだろう。

 問題は、どうやって手に入れるかだ。
 強い化け物が自らの宝として所持している場合が多いみたいだし、さて、どうしよう。なんて頭を悩ませていると外がにわかに騒がしくなった。騒がしい。と言うと違うか、静かは静かなんだが、多数の人間が息を殺している気配。細い枯れ木や、落ち葉を踏む音が聞こえたり、さっきまで聞こえてたはずの動物や虫の声が急に聞こえなくなった違和感。木の影にでも隠れているんだろう。話もそこそこにして、マルコを窓のない倉庫に押し込んで外から扉の前に重しを置いた。
 護るって決めたからな。確実に後で怒られるだろうが。と言うか、その時点で、開けないと怒るぞ。って宣言されてたけど。

 ドリアードか?いや、きちんと和解したと言っていた。ならゴブリンか?必死で考えて、外を探って、緊張と恐怖で背中や手から嫌な汗が流れて気持ち悪かった。木の影に見た事がない黒い装束が見えて、心臓が痛いくらいばくばく鳴って苦しかった。
 こんな時、ライナーならどうするだろう。エレンならどうやって自分を奮い立たせるんだろう。問うても答えない、居もしない連中の思考まで考え出す始末だ。どれだけ効くか判らない武器で倒せる相手なんだろうか。

 どれだけ時間が経ったか、短かったかもしれないし、長かったかも知れない。
 外から土を踏む音が近づいて来て、もっと心臓が痛くなった。窓から見えた人間は真っ黒な服に、長い外套、目元が隠れる大きな鍔を立てたような帽子、口元だけ鮮やかな赤のマフラーを着けてて人相も判らなかった。
 いつでも攻撃出来るような体制で待ち構えてたんだけど、家の側まで来たそいつは凄く控えめに扉を叩くもんだから、あれ?ってなって、でも、扉を開けた瞬間、蹴破ってくるかも。銃や剣が飛んでくるかも。とか緊張したのが馬鹿馬鹿しくなる結末だった。

 前置きが長かったが、出来るだけ逃げられるようにそっと扉を開けたら、そいつと一瞬目が合って、次の瞬間には抱き竦められてた。当然俺は、訳が分からなくて暴れたが、びくともしない。あまりにも俺が抵抗したからか、壁に叩きつけられて、そいつの指がすっげー、肩に食い込んで痛いくらいで、敵が目の前に居るってのに、怖くてぎゅって目閉じちゃって、マルコの大声と、ごわんって音が響いた後に、人が床に倒れる音。
 目を開けたらマルコが鉄鍋持って肩で息をしてて、僕の目が黒いうちはどうたら。つってて、床に座って頭を抑えてたそいつは、ベルトルトだった訳で……。マルコを閉じ込めた部屋を見たら、重しなんて関係ないほど扉がぶっ壊れてた訳で……。

 何この茶番。
 もう、阿呆臭いやら、情けないやらで本気で涙止まんなくなって、小さな餓鬼みたいに大泣きしてしまった。あぁ、だせぇ……。ベルトルトには、マルコにきついの一発貰ってたようだったから、殴るのは勘弁してやった。俺が暴れるから落ち着かせようとつい力が入って、ごめん。って言われたから許してやるし。

 どうやら、大勢の人の気配はベルトルトの部下とやらだったそうだ。
 ここを知った経緯を聞けば、以前、空から俺を見つけて、今まで探してたんだそうだ。言ってる意味が解らないでいると、外に出てベルトルトが指差した先には、百人、いや二百人は優に乗れそうな巨大な船が空に浮いてやがった。
 海に浮かぶ事も出来て、空も飛べる船なんだそうだ。動力は蒸気だとか?凄いもん見た。と言うか乗せて貰った。あっという間に家が豆粒だ。はしゃいでいると、風に煽られて、ふらっと体が動いた途端、両脇からマルコとベルトルトの手が伸びて来て、捕まえてくれた。二人同時に高い所は風が強くて危ないんだから。そんな同じ注意をしてきて面白かった。笑ってる場合かって怒られたけど。

 息ぴったりだな、こいつら。
 機関室では見た事も無い機械が蒸気を噴きながら忙しなく動いていた。
 豊富な水と、何でも良く成長するこの世界だからこそ燃料を賄えてるんだろうな。屈強な男達が、焚口に燃料をくべて、蒸気の圧力を計測器で見て調節してる様を見ていたら、ここが船の心臓部で、これが壊れると船はただの木の塊になってしまうと説明してくれた。
 燃料は木炭のようで、上の階に漏斗のような形の部屋があって、木炭をスコップですくうと、箱形の燃料入れに同じ量が上から落ちて来るから取りに行く手間は無く、次々と投入が出来る。その燃料を入れる所が火室と言い、覗くと轟々と火が燃え盛っていて、近くに寄るだけでも熱気で肌が焼けてしまいそうなほどに熱が伝わってくる。
 機械の反対側には巨大な水槽があって、床下を通って常にそこから水が供給され、火室を覆うように設置され管に熱された気体が触れる事で蒸気が出来て、動力になる。そして、火室の下には燃えない灰を落とすための部屋が設置されて、不要な物はそこに溜まっていく仕組みのようだ。

 効率的に良く作られていると感心した。
 簡単に説明してくれたけど、本当はもっと複雑で、操作するためには細かい気配りとか、熟練者にしか判らない部分も多いんだろうな。もう凄い凄い、ってしか言えなくて、見た目怖いけど良い人達だと思ってたら、反抗的な奴はこの火室に入れて燃やしちまうんだよ。なんて焚口を開けて、中身を指差しながら言ってたけど、冗談だよな?大事な心臓部にそんなの入れないよな?
 あと、坊が頭の知り合いじゃなけりゃあ、皆でまわすのにな。ってどういう意味だろう。船のあちこちで働かされるんだろうか?飯くらいなら作れるけど、こんな作業は一朝一夕じゃ覚えるのは無理だ。思ったままに伝えたら、何故か笑われた。
 俺と話してたおっさんがベルトルトに呼ばれて、息を飲んだかと思ったら、すまん。冗談だから。とか急に狼狽え出して、マルコが帰るよ。って短く言った。そのまま、一緒にベルトルトも船を降りて、船はどこかに行ってしまった。良かったのかと訊いたら、飽くまで臨時の頭領だったから良いそうだ。でも、空を見上げながら、叩き潰しておくべきだったかな。とかベルトルトが言っていたがどうした、お前。そんな不穏な事を言う奴だったか?

 降りた後は、「快活な人達ではあるけど、本質は賊だから、良い人達ではないからね?僕も最初、殺されそうになったんだから。誰にでもあんなに懐いちゃ駄目だよ?」
 だとか、ベルトルトに説教された。その上、案の定、さっきの行動をマルコにも叱られた。起きた時は怒られなくてほっとしてたのになぁ。まぁ、反省はするが、後悔はしてない。

 夕方になると、少しずつ皆も戻って来て、ベルトルトの姿に驚いて、無事を喜んでた。
 やっぱりと言うか、特にライナーが嬉しそうに笑ってた。エレンが姿が見えないから皆に訊いたら、また旅立ったんだと。もう少しくらい、ゆっくりして行けばいいのに、落ち着かない奴だな。
 皆が揃ったら、お前はどうだった。との、いつも通りの質問攻めで、口下手なベルトルトはおろおろしていた。

・気が付いたら、あの海賊船の上で倒れていた。
・不審がられて化け物じゃないか?と、海に落とされた
・船を鷲掴みにしてどーたら?この辺、いつも以上に不明瞭で良く解かんなかった。ライナーだけは解かってたみたいだけど。流石、親友だな
・仲間がどこかに居るかも知れない、探すのを手伝ってくれと頼んだ
・襲い掛かられたので、その船の猛者を全部倒した
・仲間が見つかるまで臨時の頭領になった

 ベルトルトの下手糞な説明を纏めるとこうだな。
 気弱そうに見えて、やっぱり頭は回るし、するべき事は、しっかり判断して実行するよな。あの船の上のおっさん共をぼこぼこにしたってのは驚いたけど。でも、そうでもしないと一時的にでも仲間に入れて貰えなかったんだろう。仲間になっても、扱き使われるだけの下っ端じゃ意味ないし。凄い奴だなぁ。何にせよ、怪我も、病気もしてないみたいだし、無事で良かった。

 食事が出来るまでの間、林檎やらの果物を剥いて置いといたら、良く食べる。
 腹が減っていた訳じゃないそうだが。果物や野菜を優先的に食べる癖が船の上でついたんだそうで、理由訊いたらぞっとした。
船の上の食事は長い航海になると新鮮な物が少なくなるのが必然で、果物や野菜を取らないと、壊血病と言うものになるそうだ。幹部の者はまだいいが、下っ端になると干し肉や干し米ばかりで、次第に衰弱、口の中もぼろぼろになって、古い傷が開いて治る事がない。体中から血を流し、骨と皮のように痩せ細って、痛みに呻きながら死んでしまう。座学で何となく習った記憶はあるけど、自分には無関係の物、って思いこんでたな。
 ベルトルトが船に乗ったばかりの頃もその病人が居たそうで、隔離されて閉じ込められていたそうだ。彼らには壊血病の知識がなく、船の女神を怒らせた報いの呪いだとか、伝染病のように扱い最悪、船から海に落としていたんだとか。恐ろしい話だ。知識って大事だな。聞きながららしみじみ思った。

 船員を説き伏せ、出来るだけ森を見つけたら果物がないか探しに降りたり、町に着いた際は、本当に必要な物を買うに留めて、荷物を軽くして、日持ちのする果物や、野菜の瓶詰を多く船に置き、皆に配る事で最初に居た船の病人も何とか快方に向かったらしい。本来だったら、置いて行ってもいい部外者である僕の命令を、一応なりとも聞いてくれていたのは、恩でも感じてくれてたのかも。だって。
 しかし、そこは賊。町に着いたり、他の船を見つけたら、すかさず襲って物資を横取りして、人を捕まえ、少しでも逆らったら命を奪おうとするから、それを止めるのが大変だった。とも零していた。
 快活ではあるが、良い人達ではない。なるほどなぁ……。ベルトルトが居なかったら、俺達も丁度いい獲物だったって事だな。あの背筋がぞわぞわして、うなじがひり付く緊張は強ち間違ってもいなかったのか。ライナーが居た街もそうだけど、こいつら修羅場慣れしてるよな。確か、自分達の村が巨人に滅ぼされたんだっけ、嫌でも肚が坐るか。いいや、一々、人と比較したってしょうがない、出来る事からやっていこう。

 今日の夕飯はベルトルトの要望で、パンと野菜のスープに、鳥肉のレモンのソースをかけた奴と、果汁のジュース。仕上げに林檎パイ。他の奴らもあれこれ手伝ってくれるし、作業はぐっと楽になった。毎日、こうやって平和だったらいいのにな。

 【日記追記】
 夜中、便所に行ったらライナーの部屋に明かりが点いてて、積もる話もあったのか、ずっと話してたみたいだ。
 表に出さないだけで、心配してただろうしな。長くなるだろうと思い、夜食要るか?って扉を叩いたら滅茶苦茶、焦った感じで出迎えられた。腹が減ったら自分達でするからいいって断られたけど。それより、話聞こえてた?と、訊かれた。
 失礼な、俺に人の会話を盗み聞きする趣味はない。聞かれたら困るような下衆な会話でもしてたのかあいつらは。俺より年上だし、色々知ってんだろうな。今度、教えて貰おうかな。

 体の作り方とか……。
 あいつらの横に並ぶと自分が小さく見えるし、
 薄っぺらいのが更に薄っぺらく見える。由々しき問題だ。

 明日、色々訊こう。

・三十五日目
 朝、起きてきたライナーとベルトルトが相当、眠そうにしてて、質問しても、寝惚け頭で変な回答されても困るから、きちんと起きるまで待つ事にして朝食を作ってた。
 二人より遅くに降りてきたユミルが昨夜はお楽しみですかー。とか言って下衆な笑い方してて、ライナーが軽口を返して遊んでた。何か面白い事でもあったのか?って訊いたらお前は知らなくていいと言われた。

 楽しい事なら俺もやりたい。
 仲間外れは良くないと思うんだ。うん。

 昼前くらいに頭がはっきりしてきたらしい二人に呼ばれて、話し掛ける機会を窺う手間が省けた。ベルトルトがいい物があるから。と、差し出してくれたのは一振りの剣と、杖の先に小さな頭蓋骨の飾りが付いた物をくれた。剣は幅が広い片刃の長剣で、異様に軽くて鋭い。俺の腕力でも容易に振り回せる。外に出て、ライナーに手合わせをして貰ったが使い易い。一先ず、これを使ってみて。だって。

 それと、頭蓋骨が付いた杖はミニオン召喚の杖らしい。振ってみると、二、三歳の子供くらいの大きさの奴が出てきた。人型かつ短剣で攻撃するからか、遠距離攻撃や、対空攻撃は出来ず、地上でしか動けないが、その分、動きが機敏で、敵に対して素早く向かって行ってくれる、格好はベルトルトが着ていた服装と似ている。白い襟付きのシャツに、黒いズボンと大きな帽子。腰には長く垂らした布を巻いている。お洒落だな。
 じっと見上げてたかと思ったら膝の上によじ登って、胸の所に頬ずりして来た。可愛いかったな、撫でたら頬っぺたがふにふにしてて気持ち良かった。ちょろちょろ動き回るし、小さい子供が家に増えたみたいで、ちょっと騒がしくなった。クリスタなんかにも直ぐ懐いてたし、俺が使わない時は渡してもいいかもな。
 ユミルがクリスタについて回るちびを鬱陶しがって突き回してたけど。あんなちびに、やきもち焼いてんじゃねーっての。

 他の連中からの報告は、ユミルとクリスタからはダンジョンにも変化があった。と聞いた。新種の化け物が増えているようで、以前より強くなっているとの事だ。
 コニーとサシャも、どうも新しい鉱石が各所に増えているようだと言っていた。他にも、地下に潜ると、灰色だった石が白色に光っていて、その上に透明の宝石のような石が生成されていたそうだ。確認してみると、それが聖域への変化の一つらしい。
 ミカサは、真紅の大地を見に行っていたようなんだが、そこで大きな箱の化け物に襲い掛かられて、倒したら今使っているよりも、上位の武器が出てきたとかでご満悦だった。真紅や不浄にはあまり近づいて欲しくないんだが、ミカサが嬉しそうで何よりだ。他にも、針を打ち出す銃も入ってたみたいで、それはコニーにやったみたいだ。そして、コニーは新しい鉱石で作った弓をサシャにやってた。

 アルミンは湿地帯の地下まで行ってきたみたいだ。
 また、あの珍奇な仮面を被って、呪術師の服を着てから行ったらしい。確かに、それを着てれば襲われないんだろうけど、凄い匂いなんだよな。アルミンに薬草臭いぞお前。って言ったら焦って風呂に行ってた。それは置いといて、湿地帯も凶暴な肉食の魚や、巨大な亀、硬い装甲を持った虫が増えていたみたいだ。
 各地で急激な変化が起こってるようだ。出来得る限り、強化された敵に対抗するために対策しないとな。うぅ、怖いな。こっちから手出さなきゃ、穏便に済ませてくんねぇかな……。
 食料も保存食を沢山作っておいた方がいいだろうか。サシャが積極的に狩りをしてくれてるお陰で肉には困らないが、魚や、果物、野菜も、万が一に備えて乾燥させたり、塩漬けにしたり、煮詰めて置いた方がいいだろうか。パンも保存できるように水分を少なく固くするか。考えれば考えるほど、兵団のそっけない食事に近づいていく。まだ味があるだけ、兵団の食事よりはましな気はするが、折角、色々あるのに、またあれを食べるのか……。

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