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馬房

小説は妄想と捏造甚だしい。 原作のネタばれ、都合の良い解釈。 R18、グロ(精神的にも)、暴力表現などが含まれます。 冒頭にざっと注意を書いてありますので、それを読んだ上での 閲覧を宜しくお願い致します。何かあればご連絡いただければ幸いです。 基本的に右ジャンしか書きません。 萌が斜め上です。無駄にシリアスバイオレンス脳です。 拙い文章ですが、少しでもお楽しみ戴ければ嬉しく思います。 右ジャン、ジャン総受けしか書きません。あしからず。

怖い肝試しのその後に

・若干ホラー描写あり
・ホラーにありがちなお化け表現あり
・フロック→ジャンの無理矢理描写あり(R18
・どっちも泣きまくる
・現パロ






 良くある大学サークルでの悪乗り肝試し企画。
 廃墟の一番奥に置いてある証拠品を持って帰る。
 極々単純で、平凡な日常にささやかなスリルを味わえる遊びのはずだった。

「大丈夫だって」
「う……」
 俺とペアになったフロックが、自らの体を抱き締めながらがたがた震えていた。
 くじで偶然ペアになっただけだが、こうも怖がる人間が側に居ると、自分の方がしっかりしなければ。との意識が湧いてしまう。
「お前、良く、そんな平気で……」
「別に平気じゃねぇよ……」
 廃病院らしく、ベッドが並べられた大部屋の隅に身を隠しながら俺達はじっとしていた。
 震えながら既に泣いているフロックの肩を抱き、頭を撫でて落ち着かせようと試みる。

 ここに逃げ込むまで恐怖の連続だった。

 最初は順調だったはずなんだ。
 屋上にある熊のぬいぐるみを持って帰る。
 何の問題もなく目的を達し、帰り道に何を食べようか話していたはずが、いつまで経っても一階にある入り口に辿り着かない。違和感を感じ始めた俺達の目の前に、ざんばら髪で顔を隠し、真っ白な病院服を着た女が現れた。
「うわ、びびった。クオリティ高いな」
 けらけら笑いながら近づいて気付いた蛋白質が腐ったような、吐き気を催す嫌な臭い。
 髪の隙間から、ぎょろ。と、見えた眼はどう考えても友人知人の誰かではなく、人間とは思えない声を上げ、俺を捕まえようとしたから咄嗟に飛び退いて踵を返して逃げ、フロックの手を掴んで走った。
 フロックは現時点では何も理解しておらず、俺が友達の仮装に怯えて逃げ出したのだと思い込んで笑っていたが、次の瞬間に現れたモノに盛大な悲鳴を上げた。

 全身が有り得ない方向に体が折れ曲がった血塗れの化物が地面を這って襲い掛かってきたからだ。どんなに脳内が快適な人間だって、アレを見ればとんでもない状況であると理解するだろう。
 走っても走っても辿り着かない出口、割ろうとしても割れない窓、扉が開いたかと思えば底が見えない奈落に落ちそうになり、フロックが俺を引き上げてくれた。こいつが俺よりも腕力がある奴で良かった。
 他にも人間の首や頭蓋骨が階段の上からごろごろ転がって来たり、赤ん坊の泣き声がどこからか聞こえてきたり、断末魔のような悲鳴も聞こえた。何がどうなっているのか。
 とても、現実とは思えない。

 襲ってくる化け物を撒いてここへ逃げ込めば緊張が途切れたのか、フロックが大泣きを始めてしまった。
 ポケットに入れていたハンカチを渡し、せめての慰めになるかと撫でてやっているが、これはいつまで続くのか。朝になれば解放されるのか。心臓が苦しくて堪らない。
 俺のスマートフォンの電池はライトに使っていたため、もうほとんど残っていない。時間を見れば全く進んでおらず、連絡をつけようにも圏外。お腹が空いたような気もするし、トイレはどうしたらいいんだろう。
 まだ大丈夫ではあるが、トイレなんてごりごりの心霊スポットだろうに。
「大丈夫、帰れるって……」
「うん……」
 泣いてぐずぐずになっているフロックの頬を撫で、根拠のない慰めを口にする。俺も帰りたい。

 本当にここが安全なのかの保障もなく、どうすれば逃げられるのかも分からない。
 助け合える人間が側に居るからこそ何とか精神が持っているが、万が一、はぐれたりしたら俺も平常心では居られないだろう。
「俺、このまま死ぬのかな……」
「死なないって、今だってこうして生きてるだろ?」
「じゃあ、どっから出られるんだよ……」
 カーテンのない窓から見えていた外は、今や真っ暗な奈落しか見えず、脱出の糸口は見えない。俺が黙り込むと、フロックは鼻を鳴らして膝を抱えてそこに顔を埋める。
 今はライトではなく、画面の灯りだけで自分達が見える程度に周囲を照らしているが、お互いのスマートフォンの充電がなくなってしまえば真っ暗闇。見えない場所で化け物に食べられる想像をして身を震わせた。
「なぁ……、俺、童貞なんだよ……」
「そ、そうか……?」
 こんな告白をされて俺はどうしたらいい。
 脱出の事ばかりを考えていた脳が、予想外の言葉を受けて若干混乱し、言葉が詰まる。
「俺もだから気にすんなよ。こっから出たらいい人見つかるよ」
 背中を叩いて俺もしたくない告白をして元気づけようと試みるが、じ。と、フロックが俺を見詰めてくる。
「まじで?」
「う、うん、まぁ……、多分」
 目つきが悪く、悪人面。なんて揶揄られる顔立ちがきついせいか、正直、女受けは良くないと思う。破れた初恋引き摺って誰かと付き合おうと言う気も特に起きなかったし、考えた事もなかったけど、これなら玉砕覚悟で告白でもしておけば良かったかな。いや、付き合ってる人が居るんだから迷惑か。
 頼りなくなってきたスマートフォンの充電を見て、周囲を確認する。今の所、化け物は居ないようだが、ここもいつまで安全なんだろう。
「どきどきしてんな」
「ん……」
 泣き止みはしたが、それでも怖いのか今度はフロックから俺に抱き着いてきた。
 緊張しっぱなしで疲労が激しい。フロックの頭をもふもふしてると若干、気分が解れるせいか余計にしてしまう。本人が嫌がってないからいいんだろうとは思うが、傍目から見たら気持ち悪い光景だろうな。
「ジャン、地面じゃなんだし、ちょっと立てよ」
「んあ?」
 一体どうしたのか。
 もしや化け物が近くに?
 慌てて立ち上がり、室内を見渡してみるが、それらしいものは居ない。もしや薄暗過ぎて見えない天井か。俺が上ばかりを凝視していると腕を引かれ、尻がベッドの上に落ちる。
「なんだ。移動すんじゃねぇの?」
「ここじゃ嫌だってんならそうするけど」
 言いながら、フロックは俺のズボンのベルトに手をかけ外していく。ちょっと意味が解らない。いや、ちょっとどころじゃない。
「え、なに?何やってんのお前」
「童貞のまま死にたくない」
 俺の質問の答えになっていない。それに死ぬかどうかもまだ判らないのに、希望を捨ててはいけない。フロックへの説得を試みるが、全く話を聞いてくれない。
「怖いからって自棄になるのは良くないっつーか」
「大丈夫、いざって時のためにコンドームとかも持ってるし」
 フロックはポケットから財布を出すと、中から童貞には縁のない袋を二つ出してくる。
「あの、もしかして、俺のけつ使わせろっていう……」
 フロックはきょとんとして、寧ろそれ以外になにがある。とばかりに俺のデニムパンツを脱がそうとした。
 何の汚れかも解らない染みが付いたベッドの上で俺は暴れ、フロックから逃げようと背を向けた。が、それは間違った判断だったようだ。背中から押さえつけられ、デニムパンツをずらされると腿が動かせなくなり、どろ。と、した感触のものが肌を伝ったかと思えば、指らしいものが尻に入ってくる。
「いや、ほら、汚いっつーか、そこは入れる所じゃないから!正気に戻れよ⁉」
「あ?お前だって童貞なんだろ?」
「だからなんだよ⁉」
 俺が暴れようとしてもフロックはぐちぐち指を動かしてくる。化け物よりも怖いものが直ぐ側に居た。
「俺は経験ないまま死にたくない!」
 最低の主張過ぎて聞きたくなかった。
 力任せに腕を伸ばし、ベッドの向こう側まで逃げようとすれば、目の前に血塗れで目玉が飛び出した女の顔が現れ、俺は思い切り悲鳴を上げた。
「そんなに叫ぶほど痛かったか?ごめん……」
「ひっ、い、ぐ……」
 尻にも突っ込まれ、目の前には化け物。俺は、このまま食われて首なし死体になるんだろうか。
「ぅ、んぎ、うぅ……」
 怖い痛い気持ち悪い。ぎしぎしベッドが揺れ、異物が出入りする感触がする。
「お前、案外おっぱいあるな」
 フロックが俺のシャツの中に手を入れ、胸を揉んできた。背後を顧みれば、フロックの後ろにも半身がない男の化け物が立って俺達を覗き込んでいる。
 なんてこった。友達に強姦されながら死ぬなんて、俺の人生設計にはなかったのに、肝試しなんぞしなければ良かった。
「あー、いきそう……」
 どうせ死ぬなら。
 フロックもそう思っての行動なんだろうが、そこで良く俺をやろうなんて発想になったな。最初に会ったざんばら髪の方がよっぽどましじゃないのか。
「ん、んぐ、ぅー、この、ばか……ぁ」
「馬鹿でいいよ。なんかお前の事好きだと思ったし」
「はぁ⁉」
 俺がぼろぼろ泣きながら罵倒すれば、フロックは俺が好きだなんてほざいた。好きな奴にこんな真似をするな。言葉を詰まらせながらも俺がぎゃんぎゃん怒鳴っていれば、うなじに噛みつかれた。猫の交尾じゃあるまいし。ちり。と、した痛みに言葉が止まり、生暖かい吐息がかかってフロックが震えた。
「あー、ジャン、なんかごめん」
「ごめんじゃねぇよ、ばかぁ……!」
 どうやら達して頭が多少冷静になったようだ。
 血塗れの目零れ女、半身のない男、更には首だけの髪で顔が隠れている奴、部屋の隅には最初に会ったざんばら髪の女が蹲り、隣のベッドには体が有り得ない方向にねじ曲がった化け物も居た。俺達の周囲には化け物だらけで、最早、恐怖も麻痺して叫びもしないが、絶望感だけは心に広がっていった。
「はぁ、ジャン、お前可愛いな……」
 なんだかフロックまで化け物に見えてきた。お前、フロックの皮被った化け物だろ。いつの間に入れ替わりやがった。
「う、くそが……、ふざけんな……」
 化け物達と目を合わせないように、ベッドに付着した黒い染みに視線を落とし、ぼろぼろ泣いていた。なんなんだよ可愛いって。自分が満足すればそれでいいのか。
「そんなに泣くなよ……」
「こんな状況でこんな真似されたら泣きたくもなるだろ!さっさと抜けよ!この強姦魔……!」
 直ぐ真後ろにあったフロックの頭を掴み、喚いて突っ込んだものを抜くように怒鳴ってやれば、ぬる。と、抜けて行く感触に、変な寒気がした。
「うー……」
 周りが怖いわ、尻は痛いわ、心も痛い。べたべたして気持ち悪いがデニムパンツを引き上げ、フロックの頭を一発殴った。手の甲で涙を拭い、汚い床にへたり込む。立っていられない。
「ジャン、あの……」
「うるさい、よんな……」
 俺がこう言っているのに、今度はフロックが俺を抱き締めて背中を撫でてくるが、強姦してくるような奴に慰められても嬉しくもなんともないし、気も休まらない。化け物も周りに集まっている。フロックは気づいていないのか、気づいていて無視しているのか。
「あれ?」
 フロックを思いつく限り罵倒し、べちべち叩いたりしていれば、外が明るくなってる様子が目の端に映り、同じく窓の外に目を向けたフロックと共にふらつきながら寄っていくと、朝日が雑草の生い茂った中庭を照らしていた。
「朝?」
 フロックが信じられない心地で呟き、俺も周りを確認してみたが化け物達もおらず、埃に塗れてはいたが、謎の黒い染みが付着した壁や床、ベッドは存在しなかった。なら、俺が見ていたものは一体。恐怖が見せた幻覚か?
 しかし、尻の痛みは現実のようだ。
「生きてる?」
 自分の頬を抓りながらフロックが俺に訪ねてくる。
 訊きたいのは俺の方だ。
「多分」
 信じられない心地のまま、出口に向かえば難なく出られて暖かい朝日が俺達を出迎えてくれ、出ると同時に通知が激しく鳴り響き、俺のスマートフォンは儚い寿命を全うして死んだ。
「充電切れた……、お前のは?」
「俺のは半分くらい残ってたから何とか……」
 フロック経由で心配してくれていた皆に無事を伝え、もう一発フロックの頭を殴って帰宅した。
「ジャン……」
 帰る道すがら、フロックが俺の服の裾を掴んで上目遣いに見遣ってくるが、敢えて無視して自宅に帰れば、力が抜ける気分だった。
「ジャン……」
 再度、名前を呼び、服の裾を引かれて俺が背後に立っているフロックを顧みれば涙を浮かべながら、憐れを誘うようにめそめそしている。
「泣きたいのこっちなんだけど……」
「いや、うん……」
 多くは言わず、フロックを伴って自宅に入ると直ぐに服を脱いで浴室に入り、冷たい水で体を流していくとさっぱりした心地になる。と、共に苛々してきてしまう。端から肝試しなどしなければ、行かなければ。などと考えるのは結果論。化け物に殺されなかったのは行幸。ならばフロックに犯されたのはなんなのか。浴室から出れば、フロックは玄関に膝を抱えて座っていた。
「風呂、入りたいなら入れば?服なら貸すし」
「あ、うん……」
 不安げだった表情がほんの少し和らぎ、フロックがいそいそ風呂に入っていく。冷蔵庫から水のペットボトルを出し、俺は一気に飲み干して喉を潤し、フロックが出てくるまで、貸すための服を出して待っていた。
「あ、悪い、な……」
「うん」
 フロックにも喉が渇いているだろうと水を渡してやる。双方落ち着いた所で、それで。と、話を切り出す。
「俺にあんな真似した責任はどうとるんだ?」
「はい……」
「はいじゃ解んねぇよ、はいじゃ、なぁ?」
「うん……」
 埒が明かない。
 フロックは正座をしたまま俯いて、返事しかしないのは、言葉もない。との表現だろうか。万歩譲って、恐怖からの吊り橋効果で、うっかり俺に惚れたとしよう。だが、あれはないだろうあれは。
「せめて、俺から許可貰ってキスするくらいで止まっとけよ。なんで化け物に見られながらレイプされなきゃなんねぇんだよ」
「ずっと俺を抱き締めてくれてるし、もう死ぬんだと思ったら……」
 俺が盛大に溜息を吐くと、フロックの肩が揺れてすんすん泣き出した。良く泣くな。無言でティッシュ箱を差し出し、寛ぐために床に転がる。
「ったく、とち狂い過ぎだろ」
「ごっ、ごめん、好きなのはまじだから、どんな償いでもするから、嫌いにならないでくれ……!」
 フロックが目を擦り、俺に懇願してくる。
 吊り橋効果は未だ続いているようだ。
「ふーん……」
 気がない返事をしてやるが、吊り橋効果は俺にも若干あった訳で、フロックがあんな真似をしなければ、俺も気分が盛り上がって今頃いい感じになっていたかも知れない。
「ジャン……」
 フロックが這い蹲って俺に近寄ってくる。
「仕方ねぇな、今後は暴走せずに俺の言う事聞けよ?」
 俺の言葉にフロックは激しく首を上下に振り、首元に顔を埋めるようにして抱き着いてきた。
「じゃあ、眠いから寝る」
 懐いてくる背中を撫でながら、温かい体温に包まれて眠気が襲ってくる。日が昇り切ってしまえば、この部屋も暑くなって鬱陶しくなるのだろうが、風呂上がりで幾分体温が下がった体には心地好く、クッションを引き寄せ、枕にして目を閉じる。

 無遠慮に唇に触れてきた体温は後で叱るとして、今後どう躾けるかを考えなければならない苦労に思いを馳せていた。

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