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馬房

小説は妄想と捏造甚だしい。 原作のネタばれ、都合の良い解釈。 R18、グロ(精神的にも)、暴力表現などが含まれます。 冒頭にざっと注意を書いてありますので、それを読んだ上での 閲覧を宜しくお願い致します。何かあればご連絡いただければ幸いです。 基本的に右ジャンしか書きません。 萌が斜め上です。無駄にシリアスバイオレンス脳です。 拙い文章ですが、少しでもお楽しみ戴ければ嬉しく思います。 右ジャン、ジャン総受けしか書きません。あしからず。

怖い夜

・スクカでも普通の現パロでもどっちでもいい
・巻き込まれ棚ぼたフロ
・お互いに不貞腐れジャ&フロ
2021年09月06日




 やってらんねぇ。
 暑い。
 虫に刺された最悪。
 なんで俺がこんな目に……。

 ぶつぶつぶつぶつ、フロックが隣で不貞腐れて文句を言っている雑音を聞きながら、ジャンは遠くに視線を投げつつも自分に非があるため、溜息を吐きたい心地になりながらも耐え忍んでいた。
「もう、うっさい」
 それだけを言って買いおきの虫除けスプレーをフロックに吹きかけ、黙れとの圧をかける。
「そもそも俺は巻き込まれただけだろうがよ……」
 フロックがスプレーの薬剤を吸い込んでしまい、咳き込みつつも更にジャンに向かって文句を垂れた。

 二人が何をしているのかと言えば、肝試しのお化け役である。
 ジャンはシーツを被り、フロックはホッケーマスクをつけたお化けに扮していた。二人とも身長があるため、追いかけられれば中々に恐ろしい。が、一つ付け加えるならば、やる気は全く無いので自分から獲物を探しに行くなどの面倒な真似はせず、共に茂みに隠れたままだった。

 お化け役のこの二人、もっと言えば、ここには居ないエレンと共に学校で騒ぎを起こした罰として子供のためにボランティアをせよ。とのお達しが出て現在ここに居る。
 全く不憫な事に、本人の言の通り、フロックは喧嘩をするジャンとエレンに巻き込まれてしまっただけで、ただの被害者である。あの時、あんな所を通らなければ。そう後悔するような不運な出来事だ。
「何回も謝ってんだろうがよ。あんま責められっと、しおらしい気持ちもなくなってくんだけど……」
「うるせぇ、お前等があんな所で喧嘩してなきゃ、今頃、俺はクーラーの効いた部屋でごろごろしてたんだよ」
 くそ。と、止まらないフロックの悪態。
 やはり溜息こそ押さえるが、自身も不機嫌になっていくジャン。

 経緯を説明するならば、このたびの出来事は、犬猿の仲とされるジャンとエレンに原因がある。
 毎度、毎度、下らない事で喧嘩に発展するエレンとジャン。今日も今日とて学校の廊下での言い合いから始まり、掴み合いになった。両者一歩も引かず、睨み合いつつの攻防戦。最終的にエレンの手によって投げ飛ばされたジャンが偶然通りかかっただけのフロックにぶつかり、一緒に教室の出入り口である引き戸に突っ込んだ。二人分の体重に耐えきれなかった引き戸は見事に倒れ、嵌められていた硝子は粉々、扉は真っ二つに割れて使いもにならなくなった。
 引き戸自体が経年劣化により脆くなっていたのは事実だろう。しかし、壊れた原因は紛れもなくぶつかった際の衝撃であり、その大本は喧嘩をしていた二人。そしてフロックである。教師はそう判断し、ついでとばかりに人手が足りなかった地元のレクレーションに参加する事で親への連絡をしないと約束してくれた。

 本当に不運な出来事だった。文句を言いたい気持ちも分かる。
 自分だって巻き込まれた挙げ句に、なんの非も無いのに一緒くたにされてボランティアなどを命じられれば不機嫌なままだろう。気持ちはとても理解出来た。出来たのだが、恨みがましく延々と終わらない悪態を傍で聞かされ続ければ、幾ら自分に非があれども多少なりとはうんざりもしてしまう。
「お前を巻き込んだのは本当に悪かったと思ってるよ。心の底からそう思ってる。だからもう責めるのは止めてくれ……」
 お化けに扮するためのシーツを捲り上げ、隣に座るフロックをじ。と、ジャンは見詰める。
 言葉に嘘は無い。ただ、このたらたら文句を鬱陶しく感じ始めてしまっているので止めたい気持ちもあった。どうにか、この不運な被害者を宥められないかジャンは悩む。
「お前の謝罪って口だけにしか聞こえねぇんだよ。誠意ってもんが足りねぇんじゃねぇの?」
「誠意……?そんなのどうしたらいいんだよ。土下座でもしろってか?」
「それは要らない」
 フロックははっきりと土下座は拒否をする。
 形ばかりの謝罪は要らない。お前の下げる頭にどれだけの価値があるんだ。なんて新たな文句が剛速球で投げられ、ジャンはシーツを被り直し、これ以上刺激しないよう、ひっそりと大きな溜息を吐いた。
「もう、なんでもするから、どうしたらいいか言ってくれ……」
 謝るのも疲れ、ジャンの口からついつい出てしまった言葉。
 フロックが仮面の下でにんまりと眼を細める。
「なんでも?」
「なんでもいいよ……、学食奢れでも、宿題変われでも……、言っとくけど俺が出来る範囲でだぞ」
 ジャンは一応なりとも牽制はするが、フロックは既に聞いていない。
「なんでもな。ふふ……」
 突然機嫌が良くなったフロックに、嫌な予感がしつつも、ジャンは一度出した言葉を引っ込められないでいた。
 どんな要求をされるのか、相当な辱めを受けたらどうしようか。流石に、そこまで倫理観や道徳心が欠如しているとは思いたくない。祈るような心地になりながら。ジャンはフロックを見詰め、その視線をフロックは不穏な笑みを浮かべて受け止めた。

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