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馬房

小説は妄想と捏造甚だしい。 原作のネタばれ、都合の良い解釈。 R18、グロ(精神的にも)、暴力表現などが含まれます。 冒頭にざっと注意を書いてありますので、それを読んだ上での 閲覧を宜しくお願い致します。何かあればご連絡いただければ幸いです。 基本的に右ジャンしか書きません。 萌が斜め上です。無駄にシリアスバイオレンス脳です。 拙い文章ですが、少しでもお楽しみ戴ければ嬉しく思います。 右ジャン、ジャン総受けしか書きません。あしからず。

確認作業

・ちょっと?ストーカーチックなフロックです。
・ジャンは普通に友達と思ってます。
・フロ→ジャン的な感じです。
・ワンドロのお題スポーツです。
2021年06月07日






 グラウンドを蹴りつける音が校庭に響く。
 砂埃を舞い上げながらしなやかな体が地上を離れ、設置されたバーを背面跳びで超えて的確に怪我をしないよう置かれたマットに落ちる。陸上競技の一つである高跳び練習で、実に見慣れた光景だ。
「もう自分の身長より低いバーなら楽勝だな」
「おう」
 息を吐いて柔らかいマットから起き上がり、体についた砂埃を払いながら俺の記録表を満足げに覗き込んでくるジャンと目が合う。
「あ、そうだ。スマホで飛ぶとこ撮るか?そしたら自分がどんな飛び方してるか解るし、弱点も解りやすいんじゃねぇ?」
「流石マネージャー、気が利いてんな」
 ジャンの賛同を受け、やる気があるのかないのか、小さな折り畳みの簡易椅子に座ったまま、走り込みをする部員達をただ眺めているだけの顧問にスマートフォンの持ち込みを許可して貰い、撮影を開始する。
「いいぞー」
 顧問ではなく、ただのマネージャーである俺が片手を挙げて合図を出せば、ジャンを最後尾にして、地上から一メートル五十センチの高さに設置されたバーを部員達が次々に飛んでいく。だが、ジャンの前に飛んだ部員が引っかかり、バーを落としてしまった。悔しそうに表情が歪む様までしっかりとスマートフォンには映っている。
「ほら、悔しいのは解るが、早く退いてマットを開けろ、危ないぞ」
 顧問が口を出すと、マットの上で悔しさからもだもだしていた部員が起き上がる。
 高校生であれば、決して難易度的に高くはないだろうに、やる気と実力は比例しない。記録表に×を書き込み、落とした奴と一緒に二人でバーを設置し直す。
「じゃ、もう一回、最後尾に並び直してくれ」
 自分でもこんな高さが跳べなかった事が悔しいのか、そいつは小走りにジャンの後ろに並び直し、屈伸したりと柔軟で気分を誤魔化しているようだった。
「行くぞー」
「おー」
 宣言に対してスマートフォンを構え直し、適当に返事をする。
 画面の中には最初は大きく、最後の三歩ほどは小さな幅で助走して綺麗な体制で跳ぶジャンが映っている。
「つぎー」
 難なく跳び終えたジャンを尻目に最後の部員へと合図を出せば、そいつは大きく助走し、再びバーを落とした。体が硬く、勢いだけで跳ぼうとしてるのが動画で見ると良く解る。
「じゃあ、動画確認するから集まってくれ」
 他の部員に励まされながら、そいつは不機嫌な面持ちになりつつも他の連中と同じように半円状に並び、俺の小さなスマートフォンの画面を凝視する。
 こうして順に見ると、各々の癖や余裕のあるなしが見えてきた。
「やっぱジャンは高いな」
 優秀な奴なら、身長に対してプラス五十センチでも跳べるそうで、ジャンは明らかに一メートル五十センチのバーを跳ぶ際、背中側に大きく空間が空いている。隣に居た上級生から褒められつつジャンが小突かれ、得意げに鼻を鳴らす。ジャンにレギュラーを取られて腹を立てている上級生も居るようだが、小突いて来た奴とは比較的仲がいいようなので放っておいた。
「ぎりぎりや跳べてない奴は、助走の段階で力み過ぎたりしてるみたいだな」
 後ろから覗き込んでいた顧問がぼそりと呟き、皆が彼に注目する。
「最初は大きく助走して、跳ぶ前は歩幅を小さくして踏み込み位置を調整した方がいいみたいだ。フロックは後でいいからグループで動画を共有しといてくれ」
「はい、解りました」
 熱血でもない、かといって放任過ぎもしない、朴訥な雰囲気の助言を受け、皆が一様に練習に戻る。
 見てないようで一応、見てるんだよなこの人。
 お陰で、部活内では陰湿な苛めなどはない。

 一通り練習を熟して部活は終わり、片付けの後、外の水道で体についた砂埃を流して部室へと戻る。
 顧問は体を冷やすなよ。とだけ伝えてさっさと職員室へ帰っていった。
「じゃあ、動画は帰ってから共有するんで」
 着替えて部室から出れば、外はもう赤く、東側の空は夜が迫ってきていた。夏に入る前の冷たい風が肌を撫でていく。運動で体が温まっていた連中はともかくとして、マネージャーとして記録をとっていただけの俺はあまり暖まっていない。
 鼻に溜まっていた砂埃も相まってくしゃみを連発し、鼻水を啜れば後ろからポケットティッシュを持った手が伸びてきた。
「おー、あんがと」
「ん」
 ジャンに貰ったティッシュで鼻水を拭き、ゴミは適当に丸めて手に持つ。帰り道が一緒であるためジャンと並んで帰り、下らない雑談に花を咲かし、途中で別れ、明日の再会を約束して家に入った。
 家に置いてあるWi-Fiを利用し、部活内のグループラインで動画を共有した後、スマートフォンの中の動画は適当に編集してジャンの映っている部分だけを切り取っていく。
 しっかりとバックアップもとり、ジャンの走っている姿、綺麗な体制で跳ぶ姿や、また別の動画を飽きる事なく眺めていればあっという間に外は暗くなった。

 高校に入学した当初、帰宅部は許されず、なにかしらの部活には所属しなければならない。と、言われた時はうんざりしたが、ジャンが所属する陸上部のマネージャーとなり、今日も新しい動画を手に入れられて心はウキウキしている。
 明日も堂々と撮影許可して貰えたら楽なんだけどな。
 クラウド保存した大量の動画や写真を眺め、うっそりと目を細めながら明日を心待ちにする。

 あ、そうだ。
 そろそろ、部室のカメラの電池、確認しておかないとな。



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