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馬房

小説は妄想と捏造甚だしい。 原作のネタばれ、都合の良い解釈。 R18、グロ(精神的にも)、暴力表現などが含まれます。 冒頭にざっと注意を書いてありますので、それを読んだ上での 閲覧を宜しくお願い致します。何かあればご連絡いただければ幸いです。 基本的に右ジャンしか書きません。 萌が斜め上です。無駄にシリアスバイオレンス脳です。 拙い文章ですが、少しでもお楽しみ戴ければ嬉しく思います。 右ジャン、ジャン総受けしか書きません。あしからず。

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いい夜ですね

・ワンドロの夜。
・事後描写とモロだしがあるのでR15くらいです。
・吸血鬼のジャンと、人間のフロック。






 いい夜だな。
 雲一つない星空を眺めながら、ふと頭に浮かんだ言葉。
 おんぼろで狭苦しい1Kアパートの唯一ある窓からなんとなしに見上げた空が綺麗だったから。

 『いいか、フロック。うちは大学にやる金なんかないから、卒業したら直ぐに働く所を見つけないと駄目だぞ』と、ねちねち言われ続けた俺は、高校を卒業してから言われたとおりに直ぐ就職し、親から逃げるように引っ越した。
 最初こそ、喧嘩ばかりで嫌味や愚痴しか言わない口を持った親から逃げられた開放感で一杯だったが、今や飯は閉店間際のスーパーに残された半額弁当や惣菜、借りた部屋には寝に帰るだけ。楽しみらしい楽しみもなく、何のために生きているのか解らなくなってきてしまった。
 なんだか疲れて、買ってきた揚げ物だらけの弁当も食欲が湧かず、半分も食べないまま座卓の上に置きっぱなしだ。煙草は吸わないし、ビールは冷蔵庫にあるけれど、手を伸ばす気にもなれず、室内のどこか油臭い籠もった空気が嫌になって窓を開けた。

 ここは二階。
 下はコンクリート。
 上手く落ちればこんな生活とはおさらば出来るかな。
 不意に空虚で疲れ切った頭が、碌でもない考えを過らせた。いや、死にたい訳じゃない。疲れてるだけなんだ。と、直ぐに思い直して顔を上げれば空は雲一つない星空が広がり、そよぐ初夏の風も程よく肌の熱を奪ってくれて心地好かった。
 だからだろう。『いい夜だ』なんて柄にもない言葉が浮かび、ぼんやりと見上げていれば気持ちがすっきりしていた。食って寝るだけじゃ、やっぱり人間駄目なんだ。なにか浄化してくれるものが必要なんだ。そんな結論をだした俺は、そのまま煌めく空を見続けていた。

 綺麗だけど、ここは都会だから星があんまり見えないんだよな。
 今度有給でもとって、田舎の高原にでも行ってみようか。
 叶うかどうかも解らない先の予定を想像して楽しくなっていた俺は、久々に上機嫌だった。きっと、アドレナリンだかドーパミンだか知らないが、まぁ脳内麻薬的な物質でも出てたんだろう。だから、可笑しな闖入者も喜んで受け入れてしまった。

 空からふわ。と、降ってきて、
「いい夜だな」
 俺に微笑みかけた、とんちきな野郎を。
 そいつは名前をジャンだと名乗り、食事を探しているのだと俺に言った。
 生憎だが、飯は半端に食べた半額弁当しかない。弁当を指しながら教えてやったが、ジャンは可笑しそうに笑い『俺の食事はそんなもんじゃねぇよ』。そう言いながら、細い指を俺の頬に触れさせ、首元に顔を寄せてきた。
 すると、ちく。と、首筋に小さな痛みが走った。
 そこからは今一、記憶が曖昧だ。
 気がついたらベッドの上だった。
 本当だ。
「悪かったってー……」
「うるせぇ、酷い……、酷い……」
 隣では、素っ裸のジャンが両手で顔を覆ってめそめそ泣いていた。
 心なしかすっきりしている体。と、言うか主に下半身と、精液臭い匂いを発するジャンを見れば、何をしでかしたのかは一目瞭然。そこまで俺は初心じゃない。
「なんかこう、わーっとなったんだよ。わーっと……」
「意味分かんねぇ。最低だ……」
 ジャンが端に寄っていた布団を奪い、頭から被って俺に文句を言っている。
 催眠を使うまでもなく警戒心はないし、若くて血も多そうだったから幸運だと思ったのに、血はどろどろで油臭くて不味いし、いきなり鼻息荒くして襲いかかってくるし、最悪だ。最低だ。畜生。だとかなんとか。
 首に手をやれば、ちり。と、痛んで指先に血がついていた。俺は血を吸われたらしい。
「お前、蚊の妖怪かなんかか?」
「はぁー!?ふざっけんな!高貴な吸血鬼を蚊だと!?お前、本当に最低だな!」
「夜中だぞ、静かにしろって」
 勢いよく振り返り、俺を睨み付けてきたジャンを何様かの如く窘め、肩を叩く。
 吸血鬼、血を吸う化け物だっけ?あまりホラーは好きじゃないから良く知らないが、血を栄養にするという点で、鬱陶しい蚊が人間の形になっただけと大差ない気がする。が、現状、吸血鬼な自分を誇りにしているジャンをこれ以上、激高させたり、なんなら人間の形をした蚊に手を出したのかお前は。などの事実に気付かれても面倒臭い。
「安心しろ。責任はとる。結婚しよう。出会いは最悪だったが明日からは最高の毎日にしようじゃないか」
「は、はぁ……?」
 ジャンはあからさまに困惑をしているが、逃げる様子はない。
「とりあえず、風呂でも入るかー」
「え、いや……、いい……」
「何言ってんだよ、洗い流した方がいいだろ」
 腰が立たない様子のジャンを引っ張りながら強引に風呂に連れて行き、シャワーを浴びせたらもっとぐったりした。普通、風呂に入ったらさっぱりして多少なりとも元気になるものじゃないだろうか。
「せ、せめて、溜めたのなら……」
「いや、今から溜めてもな、ここ追い焚きねぇし」
 へろへろのジャンが俺に懇願する姿は、謎に楽しい。シャワーをかけながら狭い風呂でせっせと洗ってやり、俺もざっと洗って濡れたまま部屋に戻ると、ジャンは瀕死も瀕死だった。
「大丈夫か?」
 声すら出せないのか、唇を動かして『無理』と、俺に伝えてくる。体が弱いのか、不憫だな。

 バスタオルでお互いの体を拭き、ベッドのシーツやマットは剥ぎ取って、ジャンをそこへ転がす。
 外は朝日が昇り始めていて、寝不足なのは間違いないが、諸々のすっきり感のせいか、『いい朝だな』と、思った。

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