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馬房

小説は妄想と捏造甚だしい。 原作のネタばれ、都合の良い解釈。 R18、グロ(精神的にも)、暴力表現などが含まれます。 冒頭にざっと注意を書いてありますので、それを読んだ上での 閲覧を宜しくお願い致します。何かあればご連絡いただければ幸いです。 基本的に右ジャンしか書きません。 萌が斜め上です。無駄にシリアスバイオレンス脳です。 拙い文章ですが、少しでもお楽しみ戴ければ嬉しく思います。 右ジャン、ジャン総受けしか書きません。あしからず。

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事故で死んだかと思ったら、嫁の腹にいた自分の子に転生してた=その四=

・平和だけどフロックだけが大変
・ジャンのお父さんが出張る






 頑張れ頑張れ。
 遠くでジャンが手を広げて俺を待っている。
 低い机に捕まり、足を震えさせながらじわじわ近寄って行けばジャンの笑顔は深くなる。
 なめくじのように床を這い回っていた時も、良く動くな。と、楽しそうに言ってくれ、掃除関連は最低限、綺麗であれば良い。程度だった奴が床掃除に熱心になった。俺と住んでいたアパートは狭い事もあり、壁が薄いために掃除機などをかけると苦情が入る事もあってクイックルワイパーなどを使って掃除していたが、俺も潔癖ではないため頻繁ではなかった。
 掃除機は毎日かけるし、拭き掃除も良くやっていたし、這い回って薄汚れた俺の服を見て、『雑巾でも縫い付けるか?』などと真剣な面持ちで呟いて悩んでいた。
 義母が面白半分で妙な突起物が沢山ついたような赤ん坊服を買って来て、着せられた俺はモップ扱いされている事実に気付き、それを着せられている間は一切動かないようにしていたら病院に連れて行かれた挙句に、突起物だらけの服を医者に笑われるわ、ついでと言われて色々検診を受ける羽目になった。
 やられる前、検診が嫌だから逃げようとしたらジャンに捕まえられ、それでも抗おうとぶら下げられた体制で、足をびよびよ動かしていたら、蛙と揶揄られた屈辱も忘れんぞ。丸眼鏡の髭面糞医者め。

 モップ扱いに憤った俺は、必死で立ち上がる練習を始めた所、昨日くらいからどうにか何かに捕まれば立てるようになった。歩けるようになれば、この糞のような服ともおさらばだ。
「凄いぞフロック、ほら、おいで」
 得意げに鼻を鳴らし、ずり足でジャンに近づいていく。
 上手く足が持ち上がらない感覚がもどかしくて堪らないが、どうにか距離は縮んでいる。
 あと少し、俺は手を伸ばすが、ジャンは手を伸ばさないよう我慢しているようだ。机から手を離すと足の筋肉が限界なのか、力が徐々に入らなくなってきて、体がよろけた。その瞬間、耐え切れなかったのか、手を伸ばしてジャンが抱き留めてくれた。
「よしよし、頑張ったな」
「んー、むぅー」
 思ったよりも出来なかった。
 結果に満足出来ないでいると皺の寄った眉間に口付けて、ジャンは幸せそうに微笑んだ。
「少しずつ大きくなればいいんだよ。時間は一杯あるんだから焦るな」
 そうは言ってもな、俺はお前の子供であると同時に夫な訳で、俺にも男の矜持とかが色々ある訳で、あぁ、糞、上手くいかないな。
 直ぐ傍にあったジャンの唇に自分から口付けると、ませてきたな。と、笑った。
 赤ん坊じゃ知識はあっても字も上手く書けないし、正直、余りにも書かな過ぎて若干、書き方を忘れつつある。簡単なものなら、ジャンが読んでくれる絵本でどうにかなるか。早く成長しても馬鹿では仕様がない。

 別の日に、思い立って俺に与えられたお絵かき帳とクレヨンで絵本を見ながら字を書いたが、ミミズがのたくった痕か?と、言いたくなるほど悲惨な謎の線が出来た。書いた本人ですら、時間が経てば何と書いたか思い出せないだろう。
「フロック、お絵かきかい?」
 今日、ジャンは居ない。
 育児疲れを起こしている義母とジャンに、気晴らしでもしてきなさい。今朝、義父が言っていた。俺が黙って抱っこされているからと調子に乗っている。
「ぬいっ!」
 お絵かき帳とクレヨンを投げ出し、はいはいで素早く小さな自分の部屋へ逃げ込む。テントの中に、赤ん坊が喜びそうな玩具が沢山ぶら下げられたものだ。なんと言うのか俺は知らない。
「うーん、どうやったら君に好かれるのかなぁ……」
 今は、好きではないが嫌いではないくらいの位置に義父は居る。
 義父が本音を打ち明けて以来、ジャンとの会話も増えたようだった。話した夜、思い出したように、『俺が出て行く時、父さん居たはずなんだけど、何も言わなかったな』と、語った。
 ジャンが出て行こうとしている事に気付いていながら、幸せを願いつつ不穏な行動に気付かぬ振り、知らぬ振りをしていた事になる。本人にとっても、よくよく思い返してみれば。の出来事なのだろう。
 家族として過ごして愛された記憶があるジャンは、既に義父に対するわだかまりは溶けているようだが、彼の人となりも父としての愛情も全く知らない俺は、未だどう接すればいいか判らない。
 素直に孫として愛想の一つでも振りまいていればいいのだろうが、残念ながら俺はそこまで器用な性格でもない。
 義父が俺を懐柔しようとする呼びかけを、中にあった音の鳴る玩具を手で弾き、激しい大音量を出して聞こえないようにする。ジャン、気晴らしをしているところ悪いが早く帰って来てくれ。義父と二人っきりは正直、気不味い。
「そんなにおじいちゃんが嫌いかい?抱っこ出来るようになっても」
 腕が疲れてきたころ、義父が悲し気に話しかけてきた。
 ジャンの親だけあって、やはり面差しが似ているため、辛そうな表情をされると俺も気分が悪い。
「にぅ……」
 俺は一言呻き、仕方なしにテントから顔を出せば義父は、ぱ。と、表情を明るくさせ、手を広げて抱き上げてきた。ジャンの歌の上手さは母親譲りだろうか。機嫌良さげに口遊む歌はどこか調子が外れていて下手とも言える。
 だが、この程度で機嫌を直す様子は、やはり単純で、ジャンの父親だな。とも思う。

 兎に角、ジャン。
 早く帰って来てくれ。

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