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馬房

小説は妄想と捏造甚だしい。 原作のネタばれ、都合の良い解釈。 R18、グロ(精神的にも)、暴力表現などが含まれます。 冒頭にざっと注意を書いてありますので、それを読んだ上での 閲覧を宜しくお願い致します。何かあればご連絡いただければ幸いです。 基本的に右ジャンしか書きません。 萌が斜め上です。無駄にシリアスバイオレンス脳です。 拙い文章ですが、少しでもお楽しみ戴ければ嬉しく思います。 右ジャン、ジャン総受けしか書きません。あしからず。

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事故で死んだかと思ったら、嫁の腹にいた自分の子に転生してた=その五=

・フロック(大人)の死にネタ入る
・悪夢見るジャン君
・ジャンママが色々でばる
・ドングリ虫のネタが入る
・赤子が漏らしたりもする






 暗闇から呻き声が聞こえ、ふ。と、目を覚ました。
 どうやら、ジャンが魘されているようだ。
「やー」
 睡眠を妨げず、ぼんやりと周囲が見える程度の常夜灯に照らされたジャンの顔を小さな手でぺたぺた触れば一気に覚醒し、飛び跳ねるように起きて両手で口元を覆い、ひゅーひゅーと、音がする変な呼吸をしていた。
「じゃー」
 ジャンが文字通り、飛び起きた動きに体勢を崩した俺はころころベッドマットの上を転がり、引っ繰り返ってしまった。動こうと思えば自分で動けるが、うつ伏せの体制のまま、現実と夢の境目を彷徨っているジャンへ呼びかける。
「あ、あぁ、フロック……、ごめん、驚かせたな。どっか打ったりしてないか?」
 俺の声に反応し、焦点の定まらない目をしていたジャンが手を伸ばしてきた。
「だーじょ」
 大丈夫。そう伝えたいが舌が上手く動かず、変な発音になるが、ジャンには言いたい事が伝わったようで、ほっとした様子で俺の頬を撫で、抱き上げてくれた。だが、ジャンは声をかけるでも、あやすでもなく俺に頬を寄せ、少々苦しいほどに抱きすくめながら小刻みに肩を震わせ、時に鼻を啜っている。

 相変わらず、悲しみ方が下手な奴だ。
 どんな悪夢を見て魘されているのかは判らないが、赤子の俺ではない俺の名を呟き、声を上げずに静かに涙を流している姿を見るに、原因は俺なんだろうな。
 忘れないで欲しいとは思うが、忘れないように苦しめとは思っていないんだけど。まぁ、妊娠が発覚して喜んだのも束の間、待てども待てども帰って来ず、挙句に伴侶の死を聞かされる衝撃は、トラウマを抱えても可笑しくはないが。
「じゃー……」
 大人の体であれば、しかと抱き締め返してやれるが、赤子の体ではどうにも、もたもたしていけない。
「フロック……」
「んにゃ」
「お前……、だけは、絶対に俺が護って、やるからな……」
 詰まりながらの濡れた声。
 決意はいいが、お前が死んだら元も子もないからな。
 俺を独りぼっちにするな。

 赤子の小さな手では涙に濡れた頬を擦ってやるが精々で、碌に拭ってもやれない。
「んい……」
「うん、ごめんな、めそめそして、大丈夫だから……、だいじょうぶ」
 別に怒ってねぇよ。謝るな。どう前向きに考えても大丈夫なんて言える状態じゃないのに、無理矢理、顔を上げようとしてるのがばればれだ。なんか体も熱いし、いつも以上に表情も険しいし、嫌な夢は獏にでも食って貰ってさっさと寝ろ。
 ぐいぐいとジャンの体を押し、布団に寝かせると布団を引き上げ、俺もジャンの脇腹辺りに横になり、ぴったりくっついて胸辺りを軽く叩く。もう大分肌寒くなってきたし、悪夢なんか見ないように一緒に寝てやる。
「なんだよ、寝かしつけようってのか?」
「ぬん……」
 小さくジャンが笑い、くしゃくしゃと俺の頭を撫でる。
 現状、夫婦ではなく親子であるため、色っぽい空気には一切ならないが、どっちみち赤子の体では嬉し恥ずかしいやらしい事も出来ないので、適当に返事をしてジャンを落ち着かせるようにする。
 何度も思った事だが、青い狸の時間を進めたり戻したりする風呂敷ってどっかに売ってねぇのかな。ジャンが俺を抱き枕にして頭を撫でながら、小さく歌を歌ってくれる。涙は止まったようだ。良かった良かった。
 暖かい温もりと、優しい歌声にいつの間にか眠ってしまい、起きたら義母に抱っこされていた。
「おはようフロックちゃん、ママはちょっとお熱出てるみたいだから、今日はおばあちゃんで我慢してね」
「んんー……」
 俺が唇を尖らせて呻ると、義母は困ったように笑う。ジャンにそっくりだ。本当は逆なんだろうが、俺はジャンの方を先に知ったんだから仕方ない。
 俺が寝こけている間に変えてくれたのか、いつの間にかおむつはすっきりしてるが、腹減った。義母のおっぱいを吸う趣味は俺にはないし、ジャンは熱出して寝込んでるらしいし困ったな。
「お腹空いてるわよね?今ミルク作るからね」
 空腹で何やら切なくなって来てしまい、すんすん泣き出すと、俺をソファーに座らせてから義母がいそいそミルクを作ってくれた。
「自分で飲めて偉いわねー」
 哺乳瓶を自分で持って飲んでいれば、褒められて喜んでいいやら何なのか。
 赤ん坊っていいな。まともに呼吸してるだけでも褒められる。ジャンと居れば、早く大人になりたい気持ちが高まるが、こうして離れると『永遠に赤ん坊で居たい』などの欲求が高まる。
「ジャンは甘えん坊で、いつまでも私にべったりだったのに、フロックちゃんはなんでも出来るようになるのが早いわねぇ」
「うーえ?」
 そんなに甘えただったのか。
 学校での気取った姿や、共に暮らしだしてからは厳しくも優しく俺を甘やかしてくれるジャンしか知らない俺には新鮮な情報で、ミルクを中断して義母を見上げた。
「あら、ジャンボの話聞きたいの?」
「ん……」
 俺がしっかりと頷くと、義母は面白かったようでジャンの子供の頃の話をどんどん暴露していく。
 多分、俺に話しても、どうせ覚えてないと思ってるんだろう。
「もうねぇ、ジャンは五歳になっても乳離れできなくて、無視するとままー、ままーっていつまでも泣いてるし、ミルクだと不貞腐れるし、あれには参ったわねぇ。それに、外では格好つける癖に、家の中じゃコアラみたいに足にしがみついてきてたのよ。あれは筋力鍛えられたわ」
 義母はけらけら笑って話す。
 ここにジャンが居たら、顔を真っ赤にして怒るんだろうな。
「そんな子がねぇ、子供産んで立派に親やってるんだから、時間の流れって凄いわ……、フロックちゃんは、大きくなったらどんな大人になるのかしらねぇ」
 じ。と、見上げている俺を義母は優しく撫でてくれ、懐かしむように遠い目をした。
「運命って、本当に解んないものね。好きな人と一緒になって、幸せにやれてるのか心配してたら、貴方が出来たってこっそり報告してきて、かと思ったら……」
 義父に知られたら連れ戻されると考えてか連絡を絶っていたようだったが、義母とは密かに連絡を取り合っていたらしい。マザコンのジャンらしい。俺との付き合いにいい顔をしてなかったのは、ジャンが傷つく結果にならないか心配だったのかな。俺の想像でしかないが。
「事故で亡くなった遺体が貴方のお父さんじゃないか。確認して欲しい。そんな連絡が来た。って酷く取り乱してて、怖い、どうしよう。まま。なんて、子供に戻ったみたいに泣いて……」
 そこまで言うと、義母は大きく溜息を吐いて額に手を当てると頭を左右に振った。
「ごめんなさい、子供に聞かせるような事じゃないわね。よし、今日はおばあちゃんといっぱい遊びましょうね」
 俺の体を抱き上げ、義母は笑って見せた。
 強がった笑顔の作り方はやはりジャンと似ている。
「ん……」
 肩に乗り上げる形で義母の背中をぽんぽん叩き、外を指差せば散歩に行く事になった。
 秋晴れの爽やかな空。寒くないように着せられたもこもこのフード付きパーカーは若干熱いくらいあるが、義母の好意として受け取っておこう。
 公園に行けば義母に手伝って貰いながら沢山ドングリを拾い、綺麗な色の葉っぱを集めて熱を出して苦しんでいるであろうジャンのお土産にした。この身で喜ばせられるだろう行動なんて、これくらいだろうしな。我ながら、ちょっとあざといか?

「お帰り、買い物?」
 自宅に帰れば居間のソファーに座り、寝ぐせだらけで額に冷えピタを這ってお茶を啜っているジャンが居たため、大分具合が良くなったのだろうと知れる。
「じゃー!」
 俺がジャンに向かって手をばたつかせれば、義母は苦笑して俺を隣に座らせ、散歩をしてきたのだと伝えた。
「ん、んー」
「あー、もうこんな季節か」
 俺が差し出したドングリや葉っぱを掌の上で転がし、ジャンは懐かしそうに微笑む。
「ありがとな……」
「うい!」
 俺が満足げに頷くと、ジャンは薄らと目に涙を浮かべ手の甲で擦った。
「あの公園のドングリ?」
「そうよ、今年もいっぱいだったから、今度行きましょ」
 口ぶりからして、ジャンもあの公園で、幼少時にどんぐり拾いをしてたのだろう。懐かし気に掌の上で転がし、葉っぱの付け根を持ってくるくる回して手遊びをしている。
「そう言えばさ、ドングリ集め捲って箱に仕舞ってそのままだった気がするんだけど、あれどうしたんだっけ?」
「あ、あー……」
 ジャンが思い出を懐かしみ、振り返っていれば、先程まで笑顔だった義母が気不味そうに頬に手を当て、目を逸らした。俺もジャンも何事かとじ。と、見詰める。
「あれ、ねぇ……、あんたが宝物みたいに大事にしてたから、悪いとは思ったんだけど……、なんか箱から音がするから開いたら、その、蛆みたいなのとか、変な虫が沢山湧いてて……、ぞわっとして勢いで袋詰めにして捨てちゃったのよね」
「げぅ……」
 箱の中でうぞうぞ蠢く白い芋虫を想像し、俺は思わず呻いた。全くの無知な子共なら、嫌悪や恐怖を知らない分、逆に面白がるのかも知れないが、残念ながら俺は虫が好きではないため、想像だけで気分が悪くなってしまった。
 ジャンも俺と同じ想像をしたのか、掌の中身を凝視してから俺とドングリを何度か見比べる。
「ちょっと待ってて、保存方法ないか調べてみる……」
 義母がコートからスマートフォンを取り出して調べた結果、茹でれば良いらしい。
 ジャンが静かに立ち上がり、カウンターキッチンに入るとざっとドングリを洗って鍋に入れ、茹でだした。
「それで乾燥させれば何年も持つらしいから、クリスマスリースでも作りましょうか?」
「あぁ、いいな。そうしようか」
 台所に義母とジャンが仲良く立ち並び、あれこれとドングリで出来る飾りを話し合っている。
 あれを握り締めて帰ってきた俺は、自分の手を見て何とも言えない気分になる。もし、虫が出てきていたら、投げ捨てた挙句、我慢出来ずに大泣きでもしていた可能性も高い。心は大人と言えば大人だが、赤ん坊の本能なのかどうしようもない衝動もあって結構難儀しているんだ。

 虫が出て来なくて良かった。
 しかし、気持ち的に洗いたくて仕方がない。
 乗せられたソファーから、短い脚で足場を探りながらそろそろと慎重に降り、台所へと壁伝いに歩いて行けばジャンと義母はリースデザインの話で盛り上がっていた。
「あー……」
 手を洗わせてくれないか。
 洗い場を指差しながら言ってみたが、伝わらずに抱き上げられてあやされた。違うんだよなぁ。
「ん、んー……」
「鍋は駄目だぞ、あちちだから」
 ジャンが幼児に対する解り易い擬音を使って説明する。
 だからそうじゃない。
「んんー!」
 さっきから俺は洗い場を指差してるだろうが、方向を見ろ方向を。
「手を洗いたいとか?」
「あぁ、外出た時は出来るだけ洗うようにしてたからかな?お前偉いなー」 
 半ば泣き出しそうになるまで必死に主張した結果、やっと理解して貰えて俺はジャンに支えられながら無事手を洗え、すっきりした。
 すっきりした後はソファーに戻り、義母に構われながら機嫌良くしていれば、ジャンが茹で終わったドングリをタオルの上に広げ、庭に面した硝子戸の前に置いて乾燥させているようだった。
 ジャンは結構、小器用だから、案外いいものが作れるかもしれない。
「そろそろお昼寝の時間かな」
 どんなリースが出来るのか楽しみにしつつ、散歩に手遊びにと体力を消耗してしまったのか、遊びながら舟を漕ぎだした俺をジャンが抱きかかえ、眠りを促すように背中を叩き出した。
 俺は抗えず、瞼を落として夢の中へと入り込む。

 そして、大量の芋虫に追いかけられ、まだまともに走れない足で懸命に逃げる夢を見て、起きた瞬間、漏らしてるわ、怖いわ情けないわで大泣きする羽目になってしまった。

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