忍者ブログ

馬房

小説は妄想と捏造甚だしい。 原作のネタばれ、都合の良い解釈。 R18、グロ(精神的にも)、暴力表現などが含まれます。 冒頭にざっと注意を書いてありますので、それを読んだ上での 閲覧を宜しくお願い致します。何かあればご連絡いただければ幸いです。 基本的に右ジャンしか書きません。 萌が斜め上です。無駄にシリアスバイオレンス脳です。 拙い文章ですが、少しでもお楽しみ戴ければ嬉しく思います。 右ジャン、ジャン総受けしか書きません。あしからず。

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

得難い手触り

・海を見た後くらい
・細かい事は気にしない人向け
・捏造諸々
・あれこれ勝手に勘違いしていくフロック
・ゲキタクやってないとなんのこっちゃかもだけど、ハンジさんの変な実験でジャン君に狼の耳と尻尾が生えた状態を想像して貰えれば間違ってません
2019/12/21






 それは唐突だった。
 訓練に於いての不名誉な負傷にて午後休を貰い、体を休めるべく宿舎に一人戻っている最中の出来事だ。
「うわ、ちょ……!」
 兵舎から外へ出た途端、飛び込んできた影。
 急いでいた誰かが前方確認もせずに兵舎へ入って行こうとしたんだろう。俺も全く構えていなかったため、激しくぶつかって縺れ合いながら転げた。その拍子に、背中を打って息が一瞬止まり、苦し気に呻けば、ぶつかってきた張本人が助け起こしてくれた。
「悪かった。大丈夫か?」
 俺を下敷きにしたお陰で、こいつ自身は大した傷を負っていないのだろう。
 全く、どこぞの馬鹿が雷槍の火薬量を間違えたせいで想定外の規模の爆発が起き、巻き込まれたせいで、ただでさえ耳が聞こえ辛く、粉塵でやられたのか目も霞んで見えないと言うのに、ついてないにも程がある。
「その声、ジャンか?」
「あぁ……?」
 今日、ジャンは特殊実験に駆り出されていると聞いていたが、何故こんな所に居るんだろうか。
「悪いが、雷槍の実験で大規模な爆発に巻き込まれてな、目が上手く開けられないんだ」
 医務室で目の洗浄はして貰ったが、それでもまだびりびり痛いし、耳もなんだか残響がして周囲の音が上手く聞き取れない。ぶつかった相手がジャンだと判ったの、良く見知った声だったから似過ぎない。それを伝えればジャンが俺の手を握り、引いてくれた。
「なんだ、ぶつかった詫びに宿舎まで連れてってくれんのか?」
 特段、連れて行って貰わずとも慣れた道だ。
 多少見え辛くても戻れない事はないが、誘導してくれる人間が居るのなら助かるのは事実。曖昧な返事を返すジャンに連れられ、宿舎へと移動していく。

 しかし、ジャンの格好は何だろうか。
 ぼんやり見える色合いは少なくとも兵団服ではない。
 頭には帽子を被っているのか?変装する必要もないのに何故だ。
 夕日のような色合いの随分と派手なジャケットに、握られた感触からして、革の手袋でも嵌めているのか、尻に部分見える太い塊は何に必要なのか。ジャンは一体何の実験に付き合わされたのだろう。

 宿舎の扉を潜り、廊下を歩く。
 迷いなく歩く動作に幾許かの違和感を抱き、口を開いた。
「俺の部屋知ってるのか?」
「当たり前だろ、仲間なんだから」
 仲間ね。
 残響が徐々に治まり、はっきりと聞こえ出した言葉のうすら寒い響きに鼻を鳴らして笑いそうになったが、口元を歪めるだけに止めた。また、あれこれ綺麗ごとだらけの説教をされては堪らない。
「駐屯兵崩れで、使い捨てるしか価値のない雑魚を気遣って下さってどうも」
 笑いこそしなかったが、ベッドに導かれ座らされて落ち着くと厭味が口を吐いた。
「またそんな事を……」
 きし。と、音が鳴り、ベッドが俺以外の体重で沈む。
 ジャンが隣に座ったらしい。
「目、痛むか?」
「結構な」
 細い指が赤くなっているだろう目元に触れ、思わず鼻白んだ。痛そうだと思うなら触るな。こいつ、やたら爪が伸びて尖ってないか、引っかかって余計に痛むんだよ。気遣ってくる指を無下に手で払い、上体をベッドに横たえれば、隣にあった重みが移動した。
「ちょっと待ってろ」
 短く告げて廊下へと出て行く音。
 流石にあのお人好しも嫌気が刺したか。
 眼を閉じていても尚、小さな刺激を目に感じ、今夜は上手く眠れないだろう予想をしながら両手で覆っていた。すると、戻ってこないと思っていた足跡が再び扉を開け、小さな水音が鼓膜を叩き、冷えた指が手に触れた。
「ちょっと手退けろよ」
「あ?」
 言われた通りに退ければ、冷たい長方形の布が目元に置かれた。
 濡れタオルか何か。わざわざリネン室までタオルを取りに行った上に、井戸から水を汲んできたらしい。冷たさが痛みに心地好く、ほんの少し和らぐ。
「どうもありがとう」
「あぁ……」
 礼を言えばどこかに行くかと思っていたが、側にある気配は一向に出て行く気配がない。
「お前は特別な実験に付き合ってたんじゃないのか?もういいのか?」
 暇潰しがてら問いかければ、うん。だとか、あぁ。との曖昧な返事がまた帰ってくる。正直者なこいつが濁すと言う事は、きっちり終了した訳ではなさそうだ。
「休憩中か?」
「いや……」
 有り得そうな想像を口にしたが否定されてしまった。
 では、なんだろう。
「ちょっと、逃げた……、みたいな……」
「お前が実験から逃げ出したのか?」
 糞真面目なこいつが途中で逃げ出すほどの酷い実験とはなんだ。拷問道具の開発。大勢をいっぺんに殺す毒薬。それとも雷槍に次ぐ新たな新兵器か。
「どんな実験なんだよ……」
 ごく。と、生唾を呑み込み、あの『敵』を一瞬で倒せるような兵器を空想し、食い気味に聞けば否定の言葉がもたらされ、がっかりした。
「とりあえず、お前の目が見えなくて良かったよ」
 ジャンは乾いた笑いを漏らし、謎の発言をした。
 目が見えなくて良かった。相当派手に汚れたかしたのか。
 目元に置かれたタオルをずらし、痛む目を凝らしてちら。と、見てみれば、ジャンの尻に何かもさもさしたものが見えた。
「着替えさせられた時点で、なーんか嫌な予感はしたんだよな。収穫祭の催しだか何だか知らんが……、つーか、こんなの物理的にあり得ねぇだろ……」
 ぶつぶつジャンが愚痴を言っているようだ。帽子の鍔を両手で掴み、縦方向にくるくる回しながらまた溜息を吐いた。俺の方は全く見ていない。
「ぎゃいん!?」
 そ。と、手を伸ばし、ジャンの尻にあるもさもさを掴めば珍妙な悲鳴を上げた。もさもさには中心に硬い芯が通っており、周囲を柔らかい毛が覆っている。中々いい手触りだ。
「これいいな。どこで買ったんだ?」
「買ってねぇよ!触るな!?」
 じゃあ誰かから貰ったのか。
 こんなにいい手触りで毛の長い動物。
 一体何だろう。身近であれば犬や猫になるが、結構な大きさと長さ。猫にしては若干硬いか。なら犬の毛皮か。
「止めろって……!」
「あとちょっと……だけ、なんか癒されるっつーか……、いい」
 ジャンが抵抗するが、滑らかな手触りにささくれて居た気分が和らいでいく。
 眼を開けていると再び痛み出したため、瞼を閉じているせいか余計に手に感じる感触が伝わってくる。本当にいい。これ欲しい。ポケット辺りに入れておいて、定期的にもさもさしたい。ジャンの体温なのか、ほんのり温かいのもいい。
「買ったんじゃねぇなら、誰から貰ったんだ?俺も欲しい。ハンジ分隊長か?まさかリヴァイ兵長か?」
 ジャンは訓練兵時代、同年代だとあけすけで、皮肉屋なせいか喧嘩やいさかいの原因を作り易くあったが、上官相手になれば従順で機転が利き、礼儀正しいため可愛がられる傾向にある。
「違うって……」
 若干、ジャンの声が弱々しくなった。
 後、思い当たる近しい上官と言えばエルヴィン団長辺りだが、上官と部下の道ならぬ情愛を築いた結果の形見だったりするのか。
「まぁ、深くは訊かねぇが、取り敢えずこれの出どころだけでも……」
 肩を叩こうとしたが、見えていないせいで頭に触ってしまったらしくジャンの髪と、尻についているものよりは短いが、同じくもさもさの感触がした。
「なんだこれ」
 やや歪な三角の塊。
 裏側はつるっとして、先端はひんやりしているが表側はふかふかの起毛に覆われている。
 なんだこれ。毛が長いのもいいが、これはこれで堪らん感触だな。
「え、まじでこれ欲しいんだけど……」
「だから、んな事言われても……」
 右手と左手を駆使して両方をもさもささわさわし続けていたら、ジャンが涙声になった。泣くほど形見に触られるのが嫌だったのか。そうだな。自分の大事な物に他人の手垢がつくのは嫌か。解らんでもない。
 しかし、団長の持ち物なら、中央貴族からの提供品だとか、個人的な付き合いのある商人からしか手に入らないような、さぞかし高級品なんだろうな。俺じゃ無理か。
「あ、居た居た。やっと見つけたよー」
 声からしてハンジ分隊長か。
 今度、団長に任命されるんだっけか。
 研究者気質の彼女には、組織を纏める団長は向かない気がするが軒並み死に捲って、他に適任が居ないんだから仕方ないか。その任命式の後にやる慰労のための催し企画していたのかな。で、ジャンが巻き込まれたと。憐れな。
「あ、フロック、君、雷槍の事故に巻き込まれたって報告が上がってたけど、痛みはどう?」
 姿は見えないが、声から気遣っているのは理解する。
 開発者としては気になる所か。
「直接的な爆破に巻き込まれた訳ではありませんので、動けないほどの怪我はありませんが強烈な閃光と、爆風で飛んできた砂や破片で一時的に目をやられました。刺激を与えないようにしてれば大丈夫だそうです。言い換えれば、人間相手であれば直接ぶつけずとも相応の被害を与えて一時的にでも戦力を削れる戦法もとれる事になります」
 そうか。と、静かなハンジ分隊長の声がした。
 海。俺はまだ見ていないが、外には広大な世界が広がっており、そこから大量の敵が来るそうだった。これからは巨人だけでなく対人兵器の開発も必要になる。雷槍も扱いを間違えれば味方に被害を与えるが、上手く使えるものがやれば敵を一掃できる兵器になる。
 それを伝えたつもりだが、あまり嬉しい報告ではなかったのか。
「目は大事だ。しっかり養生して回復に努めてくれ。あぁ、そのままで」
「分りました」
 立とうとすれば止められたため、眼を閉じたまま敬礼をした。
「じゃあ、ジャン、続きをやるとしよう」
「ん、ぅう……」
 酷く嫌そうな声。
 一体どんな状況なのか。
 眼がしっかり機能していれば、さぞかし面白い光景があったかもしれない。
 団長の任命式が少しだけ楽しみになった。眼が治ったら、あのもふもふの事を詳しくジャンに訊くとしよう。

 ジャンが連れ去られ、扉が閉まる音がした。
 静かだ。枕を探って寝ようとすれば、俺が放り出したタオルが上に乗っており、じっとり湿っていたため使いたくはならず、脇にある棚へと避けてベッドへ転がった。

 もう一度、触りたいなあれ。うっとりするほど手触りがいい感触を思い返すように両手を擦り合わせながら眠れば、もふもふを抱き締めながら寛ぐ夢を見て最高だった。
 何故かジャンも一緒に居たが。

拍手

PR