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馬房

小説は妄想と捏造甚だしい。 原作のネタばれ、都合の良い解釈。 R18、グロ(精神的にも)、暴力表現などが含まれます。 冒頭にざっと注意を書いてありますので、それを読んだ上での 閲覧を宜しくお願い致します。何かあればご連絡いただければ幸いです。 基本的に右ジャンしか書きません。 萌が斜め上です。無駄にシリアスバイオレンス脳です。 拙い文章ですが、少しでもお楽しみ戴ければ嬉しく思います。 右ジャン、ジャン総受けしか書きません。あしからず。

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せいなる夜に

#フロジャン
・前提にモブ♀ジャン
・うちのジャン君は永遠の童貞
・結構最低な俺様傾向フロック
・ワンドロにするつもりだったけど時間過ぎたし、モブジャン長過ぎだしで止めた
・2019/12/27
   ◆ ◇ ◆ ◇

・フロックがチャラい調子くれの最低男
・ヒモっぽい捻くれフロック
・酔わせて致しちゃう系
・ちょろしゅたいん







 イブの夜が過ぎ、クリスマスの十二月二十五日の朝。
 今年は平日であったため、本来であれば幾分残った酒の余韻をシャワーで流し、うんざりしながら大学へ行く支度をして、勉強に遊びにアルバイトにと忙しく一日が過ぎていく予定だった。
「もう朝……?」
 隣で眠っていたのは可愛い彼女ではなく、一九〇センチの俺と体格もそう変わらない男。
 クリスマス前に、彼女と別れた男同士で呑んでいた記憶はある。それからどうしたのか、思い出すべきか、思い出さざるべきか悩んでは見たが、体に残る鈍痛が記憶の回想をするなと邪魔をする。
「お前、本当に開発済みだったつーか、エロいな。滅茶苦茶具合良かった。ごっそさん」
 頭を掻きながら、欠伸交じりに吐かれた言葉。
 友人、フロックが記憶を思い出す前に回答を出してしまった。
 ベッドで一糸纏わず同衾しているからには、答えは一つしかないのだが、悪足掻きくらいはしたかった。
「しゃわー……」
「おう、もうちょっとねる……」
 俺がふらふらしながらベッドから出て浴室へ向かうと、フロックは遠慮なしに布団の中へと潜り込んで暖かさを堪能していた。俺のベッドで。

 浴室へ行くとシャワーの取っ手を捻り、お湯が出るまでの間、大きく深呼吸し、肺から酒と疲労を交えて絞り出した。
 暖かいお湯を浴びていれば、昨夜の汚れと、酒臭さが洗い流されていく心地好さ。
「切れてないよな……」
 頭を洗い、体に泡をたっぷり塗りつけながら、恐る恐る確認すれば、俺の健気な尻の孔は若干腫れてはいるが、傷はついていないようだった。最悪の事態は避けられた。しかし、酒に酔った上ではしたなく、淫らな行為をした事実は変わらない。
「なんでこんな事に……」
 呑み過ぎたのか、頭が痛み軽い二日酔い状態でもある。
 フロックも言及してくるつもりはなさそうだったし、このまま何もなかった事にしてしまおう。そう決意して浴室から出て、着替えていれば入れ替わりに風呂に入っていった。まるで我が家のように。

「お互い、女も居ねぇし、このまま付き合おうぜ」
「は?俺ゲイじゃないんだけど」
「俺も違う」
 風呂から上がったフロックが、腹が減った。と、煩かったから、トーストと卵を焼き、珈琲を淹れて簡単な朝食をとる事にした。そしたら唐突にこんな提案だ。何をとち狂ったのか。
「いいじゃねぇか、お前、けつ感じるんだろ?お前相手なら勃つし」
「気持ち悪い事言うな……」
 俺が睨んでも、フロックはけけ。と、せせら笑っただけで全く効果はなかった。
 体を開発されてしまってるのは事実だからだろう。

 珈琲を飲みながら、昨夜の経緯ではなくクリスマス前に別れた彼女を俺は思い出していた。
 大学に入ってからの話だ。二つほど年上の女性だった。講義室で偶然隣り合っただけだったのに、一度挨拶をしてからというもの、彼女は面倒見がいいのかなにくれとなく世話を焼いてくれ、助けになってくれた。
 快活で、はきはきと物を言い、本当の意味でさっぱりとした女性だったため一緒に居て居心地が良かった。好意も少なからず持っていた。だから、好きだと求愛され、あっさりと絆され頷いたが運の尽きと言えばいいのか。
 聞くも涙、語るも涙。

 付き合い始めて一週間で彼女が独り暮らしをしている自宅に呼ばれ、俺はどきどきしていた。
 なんと言っても女性の家だ。女友達の家に行った経験がないと言えば嘘だが、毎回、仲間と一緒に遊ぶために行っていたのであって、『恋人』としてではない。
 十九歳になっても童貞だった俺は、作法も解らずソファーに座ったまま、出されたお茶に手も付けずに固まっていた。そんな俺を、彼女は可愛いと言い、頬を包まれて口付けたのがファーストキス。
 年上の女性に翻弄されまくり、あれよあれよと寝室に連れ込まれ、ベッドに押し倒された。緊張は最高潮に達し、どもりつつも『優しくします』。そう言うと、彼女はにっこりと美しく微笑み、『えぇ、優しくするからね』。と、返してきた。
 俺の頭は混乱し、有り体に言うと、そのまま『可愛がられてしまった』。因みにこの時点でも脱童貞はしてない。

 終わった後に放心していると、彼女はバイセクシュアルだとかで、いわゆる『タチ』体質なのだと告白された。事前に知っておきたかった情報だ。
 別にそれで彼女が嫌いになった訳じゃない。彼女は賢く、何でも自分から行動して、魅力的で、精力的で、素晴らしい人だったんだ。悲しいのは俺のお尻が処女喪失した事だけで。

 それから、家に呼ばれると別の意味で緊張するようになった。
「最初は小さいのから慣らしていこうね」
 だなんて、沢山種類のある男性器の形をした玩具を見せられ、彼女はそれを使って俺を抱いた。ペニバンだか何だか知らんが、この世にそんなものがあるなんて事すら俺は知らなかった。
 未知の行為過ぎて、最初はされるがままで怖かった。でも、彼女は俺を可愛い、好きよ。そう言ってくれたし、股を開くのも彼女が好きだったから怖くても我慢してたが、どんどん行為が激しくなってきて困るようになった。
 行為の際に縛られたり、ディルドバイブを入れたまま家で過ごして。なんて要求されるようになり、偶々調べたいものがあって彼女のパソコンを借りブラウザを立ち上げたら前回開いていたのであろう頁がそのまま出てきて、『フィストファック』なんて聞き慣れない語句と共に、恐ろしい写真がでかでかと表示されており俺は情けなく泣いて別れを切り出した。

 もう無理、ついて行けない。
 ごめんなさい。
 別れて下さい。
 あんなの無理。
 死んじゃう。

 あの時の俺はどれだけみっともなかっただろう。
 彼女はそんな俺にも優しく諭してくれたが、あの恐ろしい行為を俺にやりたい意思は覆らなかったようで、『道具も揃えてあるのよ?』と、肘まであるゴム手袋や、拡張道具を見せられたらもう逃げるしかなかった。
 人として終わるだろあれ。そう、思った。彼女の部屋に私物は殆ど置いてなかったから、家にあるものは好きに処分して下さい。それだけの要望を送ったら、やっと、もう俺に気持ちがない事を理解して貰えたのか了承してくれた。

 その日付が十二月の二十四日。
 実に昨日の事だ。多分、夜まで呑気に彼女の家に居たらやられてたんだろう。
 とぼとぼ街中を歩いていたら、大学は別になったものの、高校の時に同級生だったフロックと遭遇し、懐かしさに声をかければ頬に見事な紅葉を散らしており、彼女と別れたばかりだと言う。理由は違えど親近感が湧き、宅呑みに誘ったはずだったと記憶している。
 なのに、何故俺はこいつと寝たのか。
「物欲しそうな顔してんな?もう一発やりてぇのか?」
「はっ!?ちげぇし!」
 ぼんやり考え込み、ちら。と、フロックの顔を覗き見ただけだ。
 ちょっと調子くれと言うか、あざとい俺様な感じで迫って、性夜を楽しもうと彼女を押し倒したら打ん殴られたんだったか。その前にも色々やらかしてたんだろうなこいつは。フロックの恋人になる人は大変そうだ。
「がっこ行く前に一発やろう、お前相手なら避妊も要らねぇし楽でいい」
「はぁ?最低過ぎるだろ」
 俺はお前の性欲処理道具じゃねぇ。
 絶対、彼女もこんな感じで扱ってたんだろうな。
 俺が『女性は大切にしろ』『愛のない行為なんて最悪だ』と、持論を展開していれば、フロックは面倒臭そうな表情で首を撫でた。そう言う所だぞお前。
「別にさ、すっきりするなら愛だのなんだのどうでも良くねぇ?お前は違うってのか?」
「腹に入れば何でも一緒。みたいに言うな。相手が好きだから気持ち良くしてやりたいとか、抱き締めたいって思うんだろ、お前のは動物の発情と一緒、最低!一生右手を恋人にしとけ、相手が可哀想だ!」
 彼女の性的嗜好に俺が恐れをなして受け入れられなかっただけで、俺と彼女の間には、きちんと愛はあったと思う。別れはすれ違いが招いた悲しい結末であって、こいつと同じにされたくない。
「はー、めんどくせ……、女にディルドで掘られてた奴に言われてもなぁ」
 かぁ。と、顔が熱くなった。
 酔った俺は、何故こんな奴に彼女の事を漏らしたんだろう。
「もう帰れ!馬鹿!」
 朝からぎゃあぎゃあ怒鳴り、まだ食いかけだったフロックの皿を奪って台所へ持って行く。
「起きたらうるせぇし、可愛くねぇな。昨日のお前は可愛かったのに」
「煩い。さっさと帰れ」
 ワンルーム故に廊下に併設された炊事場で、朝食に使った食器を片付けていれば、フロックが俺の背後に回り、腰を抱いてきた。
「なぁ、付き合おうぜ」
「嫌だね」
「可愛がってやるし」
「して貰わなくて結構です」
「けつに突っ込まれて、『気持ちいい♡』って泣いて喜んでたのに?」
 羞恥と憤りがないまぜになり、濡れた手で俺はフロックの頬を張った。
 フロックの頬には、昨夜よりも一回り大きな真新しい紅葉が咲き、そのまま勢いで叩き出した。

 もうあんな奴と二度と会うものか。
 そう思っていたのに、昨夜の俺は本当に何を考えていたのか、しっかりフロックと連絡先を交換していたようで、次の日からしつこく電話にメール、在宅時に訪問して来るようになり、前途多難な日々を過ごす羽目になってしまった。

   ◆ ◇ ◆ ◇


   ◆ ◇ ◆ ◇

聖なる夜は愉しむ時間

 最低、二度と顔見たくない。
 女の甲高い怒声と共に頬を張られ、俺は目を瞬かせた。
「もう、出てって!」
 ぐいぐい背中を押されてマンションの一室から靴下のまま外廊下へと追い出された挙句、スニーカーを投げつけられ、鍵を閉められた。

 取り敢えず、靴履くか。
 足の裏が冷たい。

 恋人達がいちゃつく聖夜。
 俺は一人空しく歩き、白い息を吐きながら当て所なく歩いていた。
 実家暮らしなのだから、さっさと帰ればいいだろう。俺を知る他人は何も考えずにそう言うが、誰しも家族仲がいい訳ではない。
 親の希望する大学に落ち、滑り止めの二流大学に入った俺は、面と向かって『がっかりした』と、言われ、両親との関係はぎこちないものになった。俺の偏差値で一流大学の法学部や医学部に受かると思ってた自体が間違ってんのに。

 親と顔を合わせる事が苦痛になり、大学に行く以外は合同コンパで知り合った女の家に泊まり、小遣いを貰ってぶらぶらするのがお決まりの行動だった。包容力があり、金を持っている年上の女が好きだったが、やはり相手がよっぽどのお人好しでない限り、ヒモ生活は厳しいものがある。
 最近、説教が多くなって鬱陶しくなってきた女の機嫌を取るために、クリスマスプレゼントと銘打って適当に見つけた日雇いアルバイトで金を貰い、女が好きそうな装飾品を買って贈ってみたが、その時点で表情が曇っていたし、一発やれば機嫌も直るかと思えば逆に怒らせてしまった。
 やっちまった。今晩の宿はどうしようか。
「ん?」
「あ……」
 どうせ明日は平日。
 嫌でも実家に帰らなければいけないのだが、今はまだ両親が起きているだろう時間帯で帰りたくなかった。どこへ行こうか。悩みながら歩いていれば、どこか見覚えのある顔に、お互いに声を上げて視線を合わせた。
「フロ……ック?」
「ジャンか?」
 面影はあっても幾分雰囲気が変わっていたため確信が持てなかったんだろう。
 二人揃って疑問符をつけた名前の確認。俺は渦を巻いたような癖っ毛の髪型からストレートパーマをかけて真っ直ぐに伸ばしていたし、ジャンは髪を伸ばして九対一くらいに分けて流している上に髭まで生やしていやがった。
 高校までの容姿しか知らない相手を、寧ろ良く気づいたと褒めたいほどだ。
「えっと、独り、か?」
「あぁ、お前……、顔どうした……」
 俺が窺うように訊けば、ジャンは自分の頬を指差して逆に訊いてきた。どうも、ジャンから見て俺の頬には綺麗な手形が出来ているようだ。
「見ての通り、打ん殴られてクリスマス前夜に振られただけ、お前も随分しょぼくれた顔してんな」
「俺も、さっき別れて……」
 ジャンをよくよく見れば、泣いたのか目が赤い。
 こんな厳つい風貌で良くもまぁ。いや、待て。そんなに簡単に泣くような奴だったか?涙目くらいなら記憶にあるが、どうだったか。
「ふーん、ま、合わなかったんだろ。仕方ねぇよ。誰も悪かない」
 俺の適当な慰めの言葉に感銘でも受けたのか、ジャンがきらきらした眼で俺を見てくる。気持ち悪いな。なんだよ。
「そうだよな、誰も悪くはないんだ……、ただ、ちょっと擦れ違っただけで……」
 立ち話もなんだ。と、俺が近くにあったバーガーショップを指差せば、ジャンは大人しくついてきて、目を伏せながらぽつぽつ零す。
 女に未練たらたら。そんなに具合も都合もいい女だったのか、俺もそんなのと一発宜しくしてみたい。
「随分、いい彼女だったみたいだな」
「あぁ、俺には勿体ないくらいだったよ……」
 これは、他の男に寝とられたのか。
 ご愁傷様。
「ポテトL二つとホットコーヒー二つ」
 カウンターで注文すれば、アルバイトだろう若い男が不貞腐れた様子でレジを打つ。
「あ、俺金持ってない」
「財布忘れたのか?仕方ねぇな」
 女の所に行く時は、財布を持って行かない主義なもんで。とは、言わない。ジャンのような根っこが糞真面目な奴は、こんなの受け付けないだろうしな。

 そして、勝手に頼んだ注文をしっかり俺の分まで払ってくれた。
 キャンセルすればいいのに、馬鹿だなこいつ。
 別にいいけど。
「どうぞー」
 明らかにやる気のないアルバイトが俺達のポテトとコーヒーを一纏めにしてお盆に乗せて寄越してくる。少しでも仕事を端折りたいんだろうな。
「ありがとうございます」
「あ、ども……」
 相変わらずしょぼくれてはいるが、へにゃ。と、ジャンが笑い、愛想良く接されたせいかアルバイトの男が急に背筋が伸ばして頭を下げた。
「ま、お互いクリスマス直前に振られるとはついてねぇな」
 席へ移動しながらぼやいていればジャンは緩く首を振った。後悔はないらしい。
 いつもやってる事だとは言え、クリスマスに夜通しやるのは興奮すると思うが、ジャンは淡泊な方なのか。同級生の女を好きになり、相手にされてないのに延々片思いをしていたような人間だし、がつがつしてないんだろう。
 そんなジャンが、どうやって初恋を吹っ切って女と付き合うようになったかが気になった。
「お前の彼女ってどんな人?あ、元」
「えー……、凄く魅力的な人だったかな。はきはきしてて前向きで、うん……、きっと、俺より相応しい人が居ると思う……」
 もそもそポテトを掴みながら呟くようにジャンが言う。
 劣等感?彼女に自分が釣り合わないと思った。なんでだ。
 靴を履けば二メートルはありそうな高身長。モデルのような長い手足、顔も美形と言える、体系も意識して維持しているのかだらしなくはなさそうだ。頭だってかなりいい大学に行ったと聞いている。それに相応しくない女ってどんな女傑か我儘女だ。
「お前は……、あ、いやいいわ」
 俺の顔を見て、喧嘩別れをしたと察せれない奴は居ないだろう。深く訊くべきではないと判断したのか、ジャンは黙り、俺に渡された分まで砂糖とミルクを使って甘くしたコーヒーを啜った。俺は使わないから構わないが。
「この後予定は?」
「この面見てあると思うか?」
「いける口?」
 自虐的に頬を指差しながら俺が言えばジャンは苦笑し、呑む動作をしながら自宅に誘ってきた。こいつが女ならな。
「泊まっても大丈夫か?」
「別にいいけど、家の人とか大丈夫なのか?」
「あぁ……、連絡してあるし」
 してないけどな。
 嘘でもそう言えばジャンは納得したようで、食べ終わったゴミを捨て、寒い中外に出て駅へ向かう最中、俺の電車代まで出してくれた。本当に阿保かこいつ。
「貸しだから後で返せよー」
「はいはい」
 後で肩でも揉んでやるか。
 ジャンに連れられて行ったのは簡素なワンルームアパートメント。
 実家から通うのは大変であるため近くに借りたらしい。それを許してくれる親と、期待に応える息子。羨ましい構図だ。喧嘩なんてしないんだろうな。
「ワイン呑めるか?」
「あー、ビールがあればそっちがいい」
 玄関に入って直ぐ側に置いてある冷蔵庫をジャンが呻りながら漁り、ビールの缶とワインの瓶を一本出してきた。ビールはありふれたものだが、ワインはコルクで締めてある上等そうな物。ジャンは居間に移動するとコルク抜きで丁寧に抜き、ラベルをじっと眺めながら溜息を吐いていた。
「彼女からのプレゼントか?」
「そう、俺の生まれ年のワインだってくれたんだ。二十歳になったら呑もうって……」
 ワイングラスも一緒に贈ってくれたのか、二つグラスを出して悲し気な面持ちで注ぎだす。
 ナッツ類のつまみ袋を開け、暫くお互い無言で呑んでいたが、暫くすればジャンが酔った様子で彼女の事を語り出した。別に興味はないが適当に返事をしてやる。

 相手からの求愛で始まった付き合いは、最初は順調で、彼女の素晴らしさをジャンは語って聞かせてくる。のろけかよ。しかし、向こうから求めて来たのに浮気とは、最低な女だから別れられて良かったんだろう。人として出来ているとは言い難いが、俺は浮気だけは嫌いだな。
「結構しっかりしてるように聞こえるけど、ちやほやされるのが好きな女だったのか?」
 男女共に、股が緩い奴はおだてられたり、ちょっと粉をかけられれば浮かれて調子に乗る。特定の相手がいるのに、他人と火遊びをするスリルも手伝って興奮するんだろう。そんな股も頭も緩い輩は、自分から面倒ごとに飛び込んでいく馬鹿としか思わないけど。
「ちやほや……?友達は一杯居たみたいだけど、いつも俺と居てくれたし……」
 おや。原因は浮気ではないのか。
 なら何故、そんな一途でいい女と別れた。
「性の不一致系?」
 不貞行為、性格以外で思い当たる事柄と言えばこれになる。
 思い付きで言ってみれば、酒でほんのり赤かっただけの顔が一気に紅潮した。初心過ぎないか。面白い。
「彼女が積極的過ぎたか?毎回搾り取られてたとか」
 淡泊そうなこいつが音を上げるのなら、相手が性豪だったとしか思えない。会えば毎日求められた。激しい行為に疲労困憊。男としての自信を無くす。等々。
 堪らん女だな。俺なら喜んでヒモになるが、やたら責任感の強いジャンには無理だろう。
「それは……」
 ジャンは口籠る。
 酔い方が足りないな。
 ワインは既に一本空いているが、理性を開放するには達していない。
 勝手に台所を漁り、もう一本あったワインを開けてジャンのグラスに注ぎ、俺に飲ませる用に注いだのだろう、もう一個のグラスに入っていた液体も混ぜてやった。
「呑め」
「ありあとー」
 ジャンがへにゃへにゃ笑い、ワインに口をつける。
 酔ったままぐいぐい呑んでいく辺り、味が好きなんだろう。ワインは酸っぱくて渋くて俺は好きじゃないんだが。
「で、彼女とのセックスはどうだったって?」
「えっと……?」
 そんな所まで話したのか悩んだようだが、別れたばかりの傷心と酔いで心の箍が緩んでたんだろう、ジャンは『俺をいつも抱きたがって』なんて、意味不明な事を零した。女だよな。俺の聞き間違いでなければずっと、『彼女』と、言っていたはずだ。
「抱く。って……?」
「ペニバン?で、ちんこつけて、俺を……、はずかしくて……」
 更に目元が真っ赤になり、目が潤んできた。
 ジャンが女相手に抱かれる側だったとは驚きだ。
「って事は、お前……、けつ開発済みな訳?」
 俺が言えば、ジャンはワイングラスを両手で握り締め、腕の中に顔を埋めてしまった。女でも最近中々ない照れっぷりだ。
「ディルドでけつの孔犯されて、啼かされてた訳だ?」
 今日の寝床が確保出来ればいいと思っていたが、俄然面白くなってきた。
「一回も女に突っ込んだ事ねぇの?」
「げひんにゃことゆーな!」
 決して酔いだけではないだろう赤さに顔を染めて、舌が回らなかったのか噛み噛みでジャンが俺に怒ってくるが全く迫力はなく、知らず顔がにやついてくる。
「いやぁ、大事な事だろ。お道具で可愛がられちゃってた訳だ、お前は」
 中学、高校ではカースト上位に入っていたような奴が、大学に入ったら女からずこばこ犯されてただなんて面白過ぎる。ジャンのグラスにワインを注いでやりながら、詳細を聞いて行けば、エロ本で見るようなものは大体やられたらしい。ディルドバイブを入れっぱなしにして視姦されるなんて、アダルトビデオでしか見た事ない。
「じゃあ、もう完全にけつで感じるんだな、へぇ……」
 男には一切興味はないが、ジャンがそんな目に遭っていたなど想像すらしておらず、謎の興奮をしてきた。
「んで、別れた原因は?極太バイブでも突っ込まれそうになったか?」
「それどころじゃなくて……」
 頭も口もゆるゆるになったジャンが衝撃的な発言をして俺は爆笑してしまった。フィストファックって、そんなSMにまで発展していったなら恐れ戦いてしまうのも無理はない。犯される事を受け入れていた辺り、マゾヒストの気質はありそうだが、それはあまりにも上級者過ぎる。もう少し時間を置けば受け入れたかもしれないのに、ジャンの彼女はこいつが可愛すぎて一人で盛り上がり過ぎたんだろう。
「かのろのことは、すき……だったけど、あれは……」
 思い出して恐怖が蘇ったのか、すんすん泣き出してしまった。面白過ぎて、俺は床に転がりながら顔を覆い、腹がよじれそうになるほど声を殺して笑っていた。
「そ、か、うん、お前も彼女も、悪くねぇ……、性の不一致は仕方な……、ひひっ……」
 散々笑った後、にやつく目は隠しようがないものの、口元を手で覆って慰める振りをすれば、ぽやっとした眼でジャンが俺を見てくる。ちょろ過ぎてまた面白い。
「お前、そんだけ開発されたら、もう普通の女は無理だろ?」
「そんなこと、は……」
 机に突っ伏しながら、細い指先でグラスを弄り回してジャンは口籠る。
「そんな事あるって、けつでいったりしてたんじゃねぇの?」
「う……」
 あるんだな。
 もう、こいつの物は小便を出すためのホースとしての役割しかなく、男性としての役には立たないんじゃないかくらいある。面白可愛い可哀想。
「おっぱいとかは?弄られたりしたのか?」
 服の下にある体。腰が引き締まって細い割に、案外ある胸囲を目敏く見つけて指摘してやれば、もじもじしだした。
「おっぱいじゃない……」
「いやぁ、お前、Bくらいはあるんじゃないか?ブラジャー要らねぇの?」
「いらにぇー」
「いやー、要るだろこれ。触ってもいいか?」
「あぁ?いいけどいらにぇ」
 眉根は寄せているが、舌も回ってないし、もうふにゃふにゃだ。
 許可は貰ったとばかりに調子に乗り、背後に擦り寄って服の中に手を突っ込み、ジャンの胸部を下から持ち上げるように優しく揉んでやれば、可愛い声を漏らしだした。
「ん……、ゃ、さわんなー」
「お前がいいって言ったんだろ」
 酔って判断力がわやくちゃになってるらしい。本当に面白い。
 まだ開発途中だったのか、小粒の乳首を指で刺激すれば、ぴく。と、肩が跳ね、膝を擦り合わせ出した。興奮する。
「やめぇ……」
「止めない、ほら、けつに欲しくねぇの?」
 びたびたジャンが俺の手を叩くが、力は入っておらず、うなじを舐めたら小刻みに震えて股間が膨らんでいた。調教の効果はしっかり出ているようだ。
「あ、ぁ……」
 声も意外にいいな。
 これは、相手の女も大盛り上がりする訳だ。
「ほら、いい子にしとけよ。可愛がってやっから」
 さっき、転がった時に見えたローションのボトルをベッドの下から引っ張り出し、ジャンを俯せにさせてズボンを脱がすと尻にかけていく。
「ちょ、ま、ふろ……」
「大丈夫大丈夫、やり方は知ってるから」
「そうじゃにゃ……、ぅ」
 女とだが尻は経験済みだから、やり方は知っている。
 ローションを中に入れ、濡らしてから勃ったものを押し込めば抵抗する声は止まり、内壁を抉りながら擦るように動かせば、あえかな声で啼き出した。犯されまくってただけあって順応性が高いと言えばいいのか、俺の性器も難なく受け入れ、出し入れされたら気持ちいいようだ。
「頑張って女の子になろうなー」
「ちがー……」
 最後の矜持か、口で反抗はすれど体内は嬉しそうに俺の性器にしゃぶりついてくる。この落差も面白いし興奮して堪らない。
 ちょろくて面倒見が良く、気持ち良くやらせてくれるオンナ。まんま俺の理想だな。避妊もしなくていいし。
「あ、ん、んん……、……さ、ん」
 ぼそ。と、呟いたのは女の名前。
 こうやって後ろからばこばこ同じようにやられてたんだろう。
 俺は心が広いから怒ったりはしない。絶対に上書きしてやるけどな。
「あー、でそ」
「ぇ、う……?あ、っ……」
 ディルドで精液は出ないし、中に出されるなんて初体験だろ。目を白黒させている。
「はは、おっもしろ……」
 征服感が凄まじく、舌なめずりをしたいくらい興奮が止まらない。
「ほら、ベッドベッド、背中痛くなっちまうからな」
 ぐにゃぐにゃしているジャンを引き摺り、シーツが乱れているベッドに押し倒して半勃ちの性器を押し込み、ぐちゃぐちゃに中を掻き回してやればいい声で啼く。これはいいな。

 夢中でジャンを味わっていたら玄関が開く音が遠くからして、一瞬冷気が肌を撫でた。
 背後でビニール袋を落とす音がする。
「あ、どーも、ジャンの元カノ?」
 ジャンの顔に枕や布団を押し付け、耳や視界に女が入らないようにして振り返り、あっけらかんと対応してやれば、女は目も眉も吊り上げて、ぶるぶる肩を震わせていた。
「あ、あたしの、ジャン君を……」
「もう別れたんだろ?じゃあジャンは誰の物でもねぇな、敢えて言うならもう俺の可愛いオンナ?」
 ぐち。と、性器を押し込んでやれば、ジャンの長い脚が跳ねて足先が丸まる。苦しさに手をばたつかせていても感じるのは実に厭らしくて善い。あの女は、丹念に丹念にジャンの体を躾けて行ったんだろう。
「ほら、ジャンもディルドより本物のちんこの方がいいってよ」
 足をさわさわ撫でて刺激してやれば、布団の下でジャンがすすり泣くような声を上げた。女が来ている事には気づいていないようだ。
「相手を酔わせてなんて、最低ねあんた……」
「あんたがここに居るって事実の方がジャンは泣いちまうんじゃねぇかな」
 テーブルに広がるワインボトルを見て状況を察したのか、あるいは、俺が無理に酔わせた上で強姦でもしていると思ったのか、どうでもいいが。
「あんたの調教のお零れは貰ってるけど、もうこいつ俺のもん。あんたはお呼びじゃない。ジャンの私物でも持ってきてくれたならそこら辺に置いて帰ったら?」
「覚えてなさいよ……」
 女は悔し気に歯噛みして拳を握り、手のみならず全身を震わせながら出て行った。
 がつがつヒールを地面に叩きつける音が怖いと言えば怖い。
 俺、刺されたりしないだろうな。
 その時はその時か。
「ぐるじぃ!」
「あだっ」
 布団の中にあった酸素が無くなり、限界になったのかジャンが下から拳を突き上げ、俺の顎を殴った。
「しぬ……」
「そうかそうか、死ぬほど気持ち良くなれ」
 はがれた布団の下から出てきたジャンは、ぼろぼろ泣いて激しく胸を上下させている。その様は、中々悪くない感じだ。邪魔者も帰った事だし、まだ夜は長いんだから楽しむ時間は沢山ある。

 ジャンに覆い被さりながら腰を振れば、自分から抱き着いてきて中イきしたらしいと知る。
 中は俺の性器を美味そうにしゃぶり、きつく包み込んでくれるが、ジャン自身の性器はずっと半勃ちのままで、先端からだらしなく精液が出てるくらい。やはり、もう男の役には立つまい。
 にんまりと俺は笑い、胸に吸い付けばジャンは背を反らし、腰を跳ねさせた。いい女過ぎるだろこいつ。
「ぬい、ぬいて、も……」
 達して直ぐだから敏感になっているのか、擦られると感じ過ぎてやばいらしいが、何言ってんだ。ここからが本番だろうが。
「ひっ、あ、ぁ、ん、まって、ぁ……!」
 完勃ちした性器で中をぐりぐり苛めてやれば、ジャンは実にいい声で啼き、乱れてくれた。奥に出せばうっとり放心して俺に懐いてくるし、可愛いじゃないか。

 今後、俺の巣はここだな。
 もう決めた。
 ジャンは俺の。
 可愛がるのは俺。
「クリスマスに結ばれるなんて、中々ロマンチックでいいな」
 ベッドに置いてある目覚まし時計を見やれば時刻は既に零時を回り、イブからクリスマスになっていた。
「これから宜しくな」
「あ?あぁ……」
 俺がうっそり微笑んで宣言すれば、ジャンはぼんやりした表情で肯定的な返事をしてくれた。


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