忍者ブログ

馬房

小説は妄想と捏造甚だしい。 原作のネタばれ、都合の良い解釈。 R18、グロ(精神的にも)、暴力表現などが含まれます。 冒頭にざっと注意を書いてありますので、それを読んだ上での 閲覧を宜しくお願い致します。何かあればご連絡いただければ幸いです。 基本的に右ジャンしか書きません。 萌が斜め上です。無駄にシリアスバイオレンス脳です。 拙い文章ですが、少しでもお楽しみ戴ければ嬉しく思います。 右ジャン、ジャン総受けしか書きません。あしからず。

月が綺麗ですね:リヴァジャン

リヴァジャン
月が綺麗ですねネタ1短い
2020年04月08日の



 月が綺麗だな。

 スーパームーンとやらで月が大きく、良く見える夜だった。
 ふと見上げた空が、あまりにも綺麗だったから残業の帰りのエントランス立った際、共に帰宅途中のジャンへなんとなしに話題を振った。
「えっ⁉」
「ほら、満月だし、少し赤みがかって、いつもと違うようだ」
「あ、あー、あぁ……」
 ジャンが空を見上げ、どこか落胆したような声を出した。
 不慣れな上司との会話など大体はつまらないもの。だが無言も気不味いもので、緊張を解すために、どうにか共通の会話を捻り出しては見たが、失敗に終わったようだ。近くの駅までの道程が少しばかり長く感じそうだった。
「残業、付き合わせて悪かったな……」
「い、いえ、勉強になる事ばかりでしたので、寧ろありがとうございました!」
 生意気そうな見目にそぐわず、ジャンの真面目で懸命に学ぼうとする姿勢は好感が持てた。上司に媚びようとする新人や部下は多いが、とことん生真面目な人間は幾分、珍しい。根っこがどこまでも誠実な人間なのだろう。
 駅までの無言の道を歩き、ホームで別々の電車を待つ。その間、側に立つジャンが、そわそわ足を動かして落ち着かない。不愛想な上司と一緒は緊張するだろうな。乗る電車が違うだけがせめてもの救いか。悪いが、後五分ほど耐えて欲しい。
「あ、あの……!」
「なんだ?」
 ジャンが顔を赤らめ、勢い良く話しかけてきた。
 何か忘れ物でもしたものか。
「お、俺も、月が綺麗だと思ってます!」
「ん、あぁ……?」
 先程の会話を曖昧に終わらせた事を悪いと思ったのか、ジャンは言葉を発した後、『失礼します』とだけ言って、折良く来た電車に飛び乗った。程なくしてやって来た逆方向へ向かう電車に俺も乗り込み、気になってジャンが乗った電車を顧みる。
 そこにジャンは居なかった。
 別の車両に移ったのか。

 逃げるように去られてしまい、一抹の寂しさが胸に過る。
 可愛い部下ではあるが、真面目過ぎて変な所でこけてしまわないか気がかりでもあった。俺が面倒見れる間は見てやるか。そう思う。苦手な上司に目をつけられて、あいつには迷惑かもしれないが。
「月……」
 電車の窓から空を見上げ、ぽつりと呟いた。
 不意にジャンの真っ赤な顔が浮かび、また一緒に見れればいい。と、なんとなく思った。

拍手

PR