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馬房

小説は妄想と捏造甚だしい。 原作のネタばれ、都合の良い解釈。 R18、グロ(精神的にも)、暴力表現などが含まれます。 冒頭にざっと注意を書いてありますので、それを読んだ上での 閲覧を宜しくお願い致します。何かあればご連絡いただければ幸いです。 基本的に右ジャンしか書きません。 萌が斜め上です。無駄にシリアスバイオレンス脳です。 拙い文章ですが、少しでもお楽しみ戴ければ嬉しく思います。 右ジャン、ジャン総受けしか書きません。あしからず。

月が綺麗ですね:フロジャン

月が綺麗ですねネタ
スーパームーンが話題だった時書いた。
2020年04月08日



「なぁ、月が綺麗だな?」
「スーパームーンだっけ?そうだな」
 ジャンがスマートフォンから顔を上げもせずに適当に相槌を打つ。
「なぁ、月が綺麗だな?」
「そうだな」
 スマートフォンを無理矢理奪い、幾分酔って揺らぐ琥珀色の瞳を覗き込む。宅呑みでだらだらと会話し、程良く酔いも回った所で切り出してみたが、残念ながら俺が求める答えは返ってこない。理屈っぽい割に、妙に乙女趣味なジャンなら絶対にこの言葉の意味を知っていると思ったのに。
「外、明るいな」
「あー、雲もないしな……」
 自分でウィスキーを炭酸水で割り、作ったハイボールを一口。別に月の話題で盛り上がりたい訳じゃない。なのに、今度は窓から月を見上げながらワインを簡素なコップに注いで飲みだした。月見酒って奴か。
「ほろ酔いで眺める月はどうだ?」
「綺麗だな。なんか少しピンクだし」
 特にしたい話題もなく、適当に訊いてみればうっとりした様子でジャンは月を眺めている。今日の月が豪くお気に入りのようだ。
「月って不思議だよな。幻想的だったり、妙に怖かったり……」
「そーか?ホラー映画の見過ぎじゃねぇの?」
「そうかなー」
 ホラー映画は夜がメインで、良く月も題材になっている。それは恐怖を煽る演出であったり、救いを表す神聖性であったり用途は様々だ。ジャンが月に対して何を思い、どんな感情を寄せているのかは知らない。というか、どうでもいい。重要なのは、俺の告白が失敗した事だ。
 絶対通じると思って、ロマンチストなこいつなら喜ぶと思って、二人きりの宅呑みの約束を取り付け、程良く思考が鈍って来たであろうタイミングで告げたと言うのに、驚きもしなければ感動もない、無反応とは恐れ入った。

 俺は不機嫌になりながらコップの中身を空にし、新しく氷とウィスキー、炭酸水を入れて新しく酒を作る。全く以てつまらない。次の手を考えるのも面倒臭くなるほどつまらない。
「なーに不貞腐れてんだよ」
「別に……」
「月、綺麗だな?」
「あぁ?」
「な?」
 ハイボールを半分ほど飲み下し、何度か目を瞬かせていきついた考えに苛立った。
「死んでもいいなんてぜってぇ俺は言わないからな」
「はは、自分から言い出しといて捻くれもんが」
 からからとジャンは笑い、してやられた感に腹が立って堪らず、俺は一気にハイボールを飲み干した。

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