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馬房

小説は妄想と捏造甚だしい。 原作のネタばれ、都合の良い解釈。 R18、グロ(精神的にも)、暴力表現などが含まれます。 冒頭にざっと注意を書いてありますので、それを読んだ上での 閲覧を宜しくお願い致します。何かあればご連絡いただければ幸いです。 基本的に右ジャンしか書きません。 萌が斜め上です。無駄にシリアスバイオレンス脳です。 拙い文章ですが、少しでもお楽しみ戴ければ嬉しく思います。 右ジャン、ジャン総受けしか書きません。あしからず。

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初めての強奪

・104期できゃっきゃ
・時期外れのクリスマス
・強引なフロック
・2020/02/19






 仲間内で食料や飲み物を持ち寄った俺の自宅でのクリスマスパーティ。
 余興でカードゲームをしようとコニーが言い出し、そこへ罰ゲームもつけよう。なんて、余計な発案をしたのは誰だったか。それぞれが罰ゲームを書いた紙を空いた段ボールの中に入れ、投入していった。

 結果、俺が負けた。
 場所を提供しているんだからちゃらにしろ。との抗議はさりげなく無視をされ、箱の中から引かれた罰ゲームの内容は、『ビリと、ビリから二番目の奴がキスをする』なんて実にふざけたもので、ビリになった俺は絶望の眼差しでビリから二番目の人間、フロックを見やった。
「じゃ、罰ゲームはフロックとジャンがキスな」
 クリスマスパーティでやる余興にしても、あんまりではないだろうか。
「もっと違うのにしねぇ?引き直したら駄目か?」
「足掻くな足掻くな、甘んじて受け入れろ!」
 ビリから三番目のライナーは、自分が免れたとあって対岸の火事は面白い。を、体現するかの如くはしゃいでいる。当事者でなければ面白い余興。実に殴ってやりたくなる。
「覚悟決めろって一瞬、ちゅってやりゃ終わるから」
 俺の実に嫌そうな顔つきが面白いのか、コニーが笑いながら碌でもない指図をしてくる。自分が対象になったら。の、想像力が欠如しているに違いない。対象であるフロックは、と、言えば、呑気にジュースを呑んで口を潤していた。
「なんだよ。せめて香り付きリップでも塗って来てやろうか?」
「要らん……」
 そんな物、どうせ持っても居ない癖に、碌でもない。こいつとするのか。そう思うと、余計に苦々しく口角が下がっていく。挙句に茶化すような提案をされ、機嫌は下降の一手を辿る。
「そうか、じゃあ、覚悟も決まったみたいだしやるか」
 のそ。と、フロックが立ち上がり、俺に近寄ってくる。
 まだ覚悟は決まってない。決まってないが、既にエレンは余興動画を黙って撮り始め、女子も男子も固唾を呑んで見守っている。誰か邪魔してくれないかな。希望も空しく、やる気満々のフロックを睨んでも全く怖じず、引かず、顧みず。
「こういう時は眼を閉じるのがマナーじゃないか?」
 などと、放言して来る。
 マナーなんて知るか。俺は、こんなもので初めてを終わらせてしまうのか。フロックの顔が近づいて来ると、冷や汗が吹き出し、目先数センチまで迫ると固く目を閉じた。

 一瞬だけ、ふに。と、思ったよりも柔らかい感触が唇に触れ、甘い香りを残しながら離れていく。終わったのか。色んな意味で。
「ジャン、お前、涙目過ぎだろ」
「大丈夫?」
 そばかす女と女神こと、ユミルとヒストリアが声をかけて来る。一方は馬鹿にしてくるが、女神は心配してハンカチを差し出してくれた。
「だ、だいじょう、ぶ……」
「ジャン、取り敢えずお茶でも飲みな?」
 俺が息も絶え絶えに言葉を発すれば、マルコが飲み物を片手に頭を撫でてくれた。俺の親友は優しい、最高。
「ジャン、お菓子……」
 おずおずとベルトルトが差し出してくれたチョコレートを食べ、俺の初めてが余興によって消費されてしまった事、その上、初恋の相手でもあるミカサに見られた事実が俺を打ちのめす。
「エレン、ジャンが可哀想では?」
「うん、ネタばらししてあげようよ……」
 ミカサとアルミンが、一位になったエレンへ抗議していた。ネタばらしとは。不意に思い返してみればフロックはエレンに呼ばれて何やら耳打ちをされており、頷いていたような気がする。
「ジャン、良かったですね?」
 ニコロ特製のケーキを口に頬張りながら、サシャが俺を慰めて来る。本気で慰めているのかは謎だが。
「あんたの唇はまだ無垢なままって事。安心しなよ」
 アニがソファーに座った状態で、特に関心もなさそうな無表情でマシュマロを貪っている。何がどうなっている。
「ほら、これ見ろよ」
 エレンが俺の前に差し出してきたスマートフォン。
 再生される動画。俺が目を閉じたタイミングでフロックが顔を離し、後ろ手に隠していたマシュマロを俺の唇へと押し付け、そして直ぐに自分の口に放り込んで証拠隠滅を図っているものだった。余興は、本当に余興。
 俺の尊厳を奪うまではいかなかったらしい。小馬鹿にされている感はあるが。
「お前が中々、目を閉じないから、本当にしなきゃいけないかと思った」
「うっせーな……、どっきりとか性質わりぃわ」
 フロックが俺に文句をつければ、唇を尖らせながら抗議する。
 どうするかの余興自体は何種類か考えられていたようで、内容は多少のはらはら感はあれど、本気で仲間を傷つけようとするものではなくて安心した。ぐだぐだと愚痴りながらもクリスマスパーティは終わりに近づき、皆、程良く酔い、笑って楽しんでいた。
「ちょっと外の空気吸ってくる」
 酒を呑んで熱くなり、頭がふわふわしている。冷たい空気でも吸って、少しでもすっきりさせたかっただけだが、酔ってて危ないから。との理由で飲酒をしていないフロックがついてきてくれた。
「何だお前、俺の事大好きかよ。やっさしー」
「はいはい……」
 わざとらしくしなを作り、腕を絡ませながら一緒に外に出て行く。
 バルコニーから庭へ出て胸いっぱいに十二月の冷気を吸い込む。雪が降り出しそうな気温だ。振り出せばホワイトクリスマス。実にロマンチックだが、俺は兎も角、他の連中は帰りの足を心配しなければいけないので、降るなら降るでもう少し待って欲しい。
「お前は帰りどうすんの?」
 同じ区内ではあるが、降り出せば帰宅に少々難儀しそうなフロックに顔を向けて話を振れば、返って来たのは言葉ではなく唇だった。
「は?」
「ずっとくっついてるからしたいのかと」
 確かに、俺は寒さもあってずっとフロックの腕にしがみついてはいたが、そんな気はさらさらなかった。危機感を感じて離れようとしても、今度はフロックががっちりと俺の肩を抱き込み、寒いな。なんて言いながら白い息を吐き出した。
「あの、離して貰っても宜しいでしょうか……」
「なんで?酔ってて足元危ないだろ」
 さも恋人然として肩を抱くこいつは一体、何のつもりなのか。罰ゲームの嫌がらせが続いているのか。
「別にキスするような仲じゃないだろ」
「今日からなればいいだろ。ちょうどクリスマスイブだし」
「意味が解らん……」
 酔った頭でもフロックの言い分は可笑しいと理解出来た。腕から逃れようともぞもぞ動けば拘束は更に強まり、先程の罰ゲームを彷彿とさせるほどフロックの顔が近づいてくる。
「おい……」
 俺の制止などには耳を貸さず、唇を食われた。
 本当に『食われた』と、表現するに相応しく、言葉を発するために口を開けていたせいで、咥内を舐められ、舌まで食まれる始末。
「っざけんな……!」
 フロックの唇が離れた隙に、思い切り頭突きをかましてやり、腕の中から逃れ、元の室内へと駆け込む。
「ジャン……」
 マルコが沈痛な表情で俺を見詰めてくる。
 窓から庭は良く見える。フロックの凶行も良く見えた事だろう。
「多分、酒の匂いだけで酔ったんだろ……」
「そっか……、取り敢えず、歯磨きして来ようか?」
 部屋の中は妙な空気になっており、誰もが俺に同情的な眼差しを向けている。

 俺はマルコに背を押されて洗面所へ行くと、しっかり歯磨きとうがいをした後に自室まで連れて行かれ、
「片づけは僕らに任せて、ゆっくり寝るんだよ」
 そう言われてベッドに押し込まれ、寝かしつけられた。
 全てが面倒になっていた俺は甘んじて受け入れ、布団の中へと潜り込んで目を閉じた。俺の初めてが、意味も解らず強奪されてしまった事を忘れるために。

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