忍者ブログ

馬房

小説は妄想と捏造甚だしい。 原作のネタばれ、都合の良い解釈。 R18、グロ(精神的にも)、暴力表現などが含まれます。 冒頭にざっと注意を書いてありますので、それを読んだ上での 閲覧を宜しくお願い致します。何かあればご連絡いただければ幸いです。 基本的に右ジャンしか書きません。 萌が斜め上です。無駄にシリアスバイオレンス脳です。 拙い文章ですが、少しでもお楽しみ戴ければ嬉しく思います。 右ジャン、ジャン総受けしか書きません。あしからず。

事故で死んだかと思ったら、嫁の腹にいた自分の子に転生してた=その二=

・ジャンのお父さん捏造
・オメガバース
・のんびりくっちゃべってるだけ
・フロックの心の声が煩い





 やっと歯も生えたし、産まれ立てよりははっきり見聞きも出来るようになり、根性で寝返りもかなり早く打てるようになった。こんな形で自分の成長を実感する日が来るとは思わなかったが、生きているだけで、大人になれば当たり前の事をしただけで褒められるのは存外悪い気分ではない。
 良くも悪くも赤子生活に馴染みだした頃、今日はどうやら世間で言う休日らしく、ジャンは縁側に座りながら日向ぼっこ、その両親である二人は居間で寛いでいた。

 二階建ての一軒家。中流家庭でも、上の方に位置するジャンの家庭は、子供心に金持ちに見えて羨ましかった記憶がある。
 俺が唆したとは言え、ジャンも良くここを飛び出す決意をしたものだ。と、赤ん坊として一緒に暮らすようになって思った。両親、殊、義母は優しく情に溢れているが、駄目な事は駄目だとはっきり言う性格で、何気に俺も叱られている。
 義母が、ジャンの人格形成に多大なる影響を与えた事は間違いない。
「もう六ヶ月か……、時間経つのって早いなぁ」
「ういー」
「なんだ、返事してんのか?」
 俺はおしゃぶりを咥えたまま、ジャンに抱かれて寛いでいる。
 五月の日差しは穏やかで、ほかほか体が温まって実に心地好いし、ジャンに抱っこされていると言う事実が異様に落ち着く。
「お前、本当にあいつそっくりだなぁ、遺伝子ってすげーわ」
 ぷくぷくした俺の頬を突きながらジャンが笑う。
 独り言にも無意識に返事をしていた俺を思い出しているんだろう。もう、俺が死んで一年以上たっているのに、月命日には必ず墓参りに行くし、健気な奴。
「お前が大きくなったら、お父さんの話もしないといけないのかな……」
 ジャンが遠くを眺めながらぼんやり呟いた。
 別に話して貰わなくても知ってるからいいんだけど、お前が話したいのであれば吝かではないのでしてくれても構わない。敢えて言うならば、どう思っていたのか知りたいので寧ろ話せ。
「うい」
「ん?腹減ったのか?」
「んーやー」
 違う。
 腹じゃない。
「おむつは……、別に汚れてないなぁ……」
 あぁもう、伝わらないな。
 聞いてやるから話せって言ってんだよ。
「むい」
「なぁに不貞腐れてんだ。可愛いなー」
 おしゃぶりを吐き出してじたばたし出した俺を抱え直し、優し気に目を細めて抱き締めて背中を撫でている。そうじゃないんだけど、気持ち良くてどうでも良くなってきた。
「いつも元気だな」
「元気過ぎて困ってるよ」
 ジャンの実父。
 俺からすれば義父であり、祖父でもある人だが、仕事が忙しいのかあまり顔を合わる機会はなかった。正直な所、ジャンとお付き合いをしている事を挨拶しに行ったら『ジャンは、もう将来の相手が決まっているのだけど、それは知っているかい?』と、湾曲に別れを仄めかされたため、あまり好きではない。
「今日はご機嫌だね?せめて抱っこくらいさせて貰えないかな?」
 義父が俺に手を伸ばしてきたため、それを叩き落とす。
 やっぱり駄目かぁ。と、義父は頭を掻き、ジャンも困ったように笑っている。
「あの子に似て、根性があるね」
「はは、そうだな。頑固なとこはそっくりだよ」
 そっくりもなにも。これは言い出したら切りがないので考えるのは止めよう。
 義父がジャンの隣に座り、『気持ちいいね』そう言って空を眺める。
「また、見合いの話が来たんだけど、どうする?」
「ごめん、今はフロックの世話も大変だし、他の事は考えられないから断っといて欲しい」
 未だ、ジャンに群がる蠅が居るようだ。
 時に漏れ聞こえる様子から見て、取引先の重役であるアルファがオメガを欲しているため、ジャンを提供するための見合いを上司からせっつかれているようだ。大昔の政略結婚じゃあるまいし、どうせ、義父も昇進などの甘い汁を狙っているのだろう。やはり好きになれない。
「フロック君が、お前を連れて行ってくれた時は、ちょっとほっとしたんだけどね」
「なにそれ、初耳」
 俺も初耳。
「そうだな、お父さんも……、お前じゃなくて、オメガを欲しがるような人達が嫌いなんだよ。まぁね、相手も人間だ。顔を合わせれば、多少変わるかと思っていたけど、お前を見ながら話していても、お前の人格も、性格も、考え方も、何一つ内面を見ようとしない。ただ、アルファの子供を産む道具としか見ていない事に気付いた時は怖気立ったよ」
 義父は視線を庭に向け、義母が世話をしている色とりどりの花壇を眺めて溜息を吐いた。
「結婚出来る歳になったら直ぐにでも。とは言われていたんだけど、せめて卒業までは。って待ってもらったんだ。十八にもなれば、大人の考え方も出来るようになる歳だ。もしかしたら、誰か好きな人でも出来て自分で決断も出来るかも。なんてね、他力本願も甚だしいけれど……」
「それで、フロックと一緒に家を出てくれたから、ほっとした。に繋がる訳?」
 義父は頷き、俺を見やった。
 曰く、決まった相手を仄めかそうと俺がジャンの手を離さなかった事。オメガ云々ではなく、ジャン自身を見ていた事。オメガだからアルファに従わなければいけないなんて間違っている。との主張を真っ直ぐにした事が安堵の理由らしかった。
「そうだなぁ、俺がフロック意識したのも……、友達同士で恋愛話になったけど、俺は何も話せなくて、誰かを好きになっても無駄なんだ。って諦めてたのに『オメガだからアルファに嫁がなきゃいけない。なんて法律はない。あるのは決めつけ。お前の考えは間違ってる』なんて言って来たからなんだよな」
 言ったな。
 後で、調べたんだけど、本当にアルファとオメガがつがわなければならない決まりはないんだな。だなんて、糞真面目に返してきた事も俺は覚えている。それからどうしただろう。
 『ほらな』と、胸を反らせて、お前だって自由に誰かを好きになる権利があるんだ。なんて偉そうに言った気がする。それからなんとなく一緒に居るようになり、気がついたらジャンに惚れて連れ去った。恨まれているだろうと考えていたのに、よもや、それを感謝されているとは想像だにしていなかった。
 どうも、俺は、義父を誤解していたようだ。仕事の立場と子供への愛情の板挟みになり、上手く断る言い訳も思いつかない。ならばいっそ逃げてくれ。そんな風に考えていたら、俺が横からジャンを連れ去った訳だ。
 例の言葉も、俺がジャンを本当に好きなのかどうか試したかったのか。
 仕方ない、詫びとして抱っこくらいはさせてやろう。
「うえ、いー」
 身をよじり、ジャンの膝の上に下ろして貰い、義父に手を伸ばす。
「え、珍しいなお前……」
「さっき僕の手を叩き落としたばっかりなのに、やっぱり今日は機嫌がいいのかな?」
「俺と話してたから、家族と認識したとか?」
 様々な憶測が飛び交うが、これは詫びであって好意ではない。俺だって、急にそこまで素直にはなれない。
 今は甘んじて孫の振りくらいはしておいてやる。
 ただし、見合い話は持ってくるな。
 ジャンは俺のだ。
 浮気は許さん。

拍手

PR