忍者ブログ

馬房

小説は妄想と捏造甚だしい。 原作のネタばれ、都合の良い解釈。 R18、グロ(精神的にも)、暴力表現などが含まれます。 冒頭にざっと注意を書いてありますので、それを読んだ上での 閲覧を宜しくお願い致します。何かあればご連絡いただければ幸いです。 基本的に右ジャンしか書きません。 萌が斜め上です。無駄にシリアスバイオレンス脳です。 拙い文章ですが、少しでもお楽しみ戴ければ嬉しく思います。 右ジャン、ジャン総受けしか書きません。あしからず。

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

一本の糸

2p
【一本の糸】
・変な物が見えるようになって、言葉通りジャンと自分を紐づけしちゃったフロック
・巻き込まれ系主人公体質なジャン
   ◆ ◇ ◆ ◇
『ワンドロ恋の病』
   ◆ ◇ ◆ ◇
・どっちも真っ赤になっておろおろしてるばっかり
・フロックが好きすぎるジャンな感じ
・フロックもなんかジャンが好きになってる感
   ◆ ◇ ◆ ◇
・強引な割にもじもじフロック
・19歳処女ジャン君
・やってるばっかりR18
・といいつつ、だらだら喋ってたり
・ちょっとやきもちジャン君






   【一本の糸】

 ある朝、フロックが目を覚ますと左手の薬指から妙な細い糸が伸びていた。
 透明な糸は細い蜘蛛の糸に似て、日に透けてきらきら光り、とても綺麗だった。首を傾げつつも、興味本位で先が見えるまで手繰り寄せてみれば、直ぐに終わりが見え、どこにも繋がっていない事が解った。
 これは一体何なのか不思議に思い、兵士としての業務を熟す傍らで周囲をよくよく観察してみれば、同じように糸を垂らしている人間が沢山居た。疑問は深まるばかりである。

 奇妙な糸が見えるようになってから暫くして、確信はないものの、この糸がなんなのかの推測はおおよそ立った。愛し合う者同士の糸が透明ではなく、赤く色づく一本の糸になっている事に気が付いたからだ。
 恐らくは、想い合う者同士を繋ぐ目に見えない絆とやらなのだろう。フロックはそんな結論を出しつつ観察を続けていた。

 そんな中で、特定の恋人、伴侶がおらずとも長い赤い糸を垂らしている人間が一定数存在する事実を確認した。その糸はフロックのように途中で切れたりはしていない。もしや、どこかの誰かと繋がっているのかと考える。
 新たな気付きは新たな疑問を呼び寄せた。出会っておらずとも繋がりを持つ人間は、いわゆる、『運命の相手』が居るのか。それは必ずしも愛する人なのか。必ず出会い、運命を共にするのか。自身の指から垂れるこの一メートルもない透明な糸は、いつか、誰かと繋がり、赤く色づくのか。だが、己が誰かと添うなど全く想像がつかず、切れたものは一生切れたままなのだろう。と、物悲しい結末を夢想した。

   ◆ ◇ ◆ ◇

 奇妙な糸が見える状況に慣れ、疑問も興味も抱かなくなった頃、ジャンがあまりにもしつこく誘うので、仕方なく同行した酒場でフロックは後悔をしている最中であった。
 ジャンは一見して気難しそうで、威圧感のある見た目ではあるが、一旦打ち解けてしまえば懐が深く、面倒見がいい男だ。件の酒場では、それが良く知られているらしく、ジャンは誰彼となく声をかけられてしまい、誘った人間、フロックを放置中だ。
 気不味そうにちらちらとフロックへ視線は送っているが、話しかけてくる壮年の男性をあしらえないでいた。話題はおおむね、兵団に対する慰労であるため余計に無下に扱えないのだろう。

 フロックは提供されている酒を一口含み、コップで口元を隠しながら息を吐いた。
 話題を振られれば適当に相槌を打ちつつも、完全に暇を持て余し、帰りたい気持ちが溢れ返っている。これならば、さっさと身を清め、ベッドの上で体を休めている方が余程有意義に思えてくるのだ。
 呑みに誘った目的すら聞く事無く時間ばかりが浪費される無意味さ。話がないなら帰ってもいいか?そう問う機会を窺い続けているが、次から次へと捲し立てられる男性の言葉に遮られ、中々言い出せない。
 視線を落とせばジャンの薬指から延びる透明な糸が光って見えた。透明であるからには誰とも繋がっていないのだろう。暇に飽かして糸を手繰る。見えていない者には意味不明な行動にしか見えない机の下で行う手遊びは誰に咎められる事もなくあっという間に先端に辿り着いた。
 これでは暇潰しにもなりはしない。戯れに先端を弄んでいれば、暇と酒精に侵された脳は碌でもない遊びを思いつく。

 フロックはジャンの物だけでなく自分の糸も手繰寄せ、先端を掴むと二本の糸を結び付けてしまった。見えるからには切ったり結んだりが出来るのか、一度だけでも試したい気持ちがあったのだ。
 出来るもんだ。繋がった二本の糸を眺めながら、フロックは心の内で独り言つ。こんなものが出来たとて、誰に自慢しようもないが、ほんの少し面白かった。
 ただ、結ばれた糸を再度、解こうと試みて誤算が生じた。

 解けないのだ。
 最初から解くつもりで左程、固く結んではいないにもかかわらず。
 なのに、結び目は頑なに離れてくれない。あまつさえ、糸が絡み合った塊は混ざり合いながら溶けていき、繋ぎ目のない綺麗な一本の糸になってしまった。
「どうした?」
「え、あ、いや……」
 フロックが一人焦っていれば、様子が可笑しい事に気が付いたジャンが声をかけてくる。
「糸……、あ、いや、仕事が残ってたの思い出して……」
「まじか、付き合わせて悪かったな。手伝ってやっから許せよ。じゃあ、そろそろ、すみません」
 己意外に誰も視認出来ない物を説明したとしても、良くて冗談と思われるか、最悪、狂人扱いだ。フロックは誤魔化すためにありがちな言い訳を口にし、表情にこそ出さなかったが、好意的であっても酔っ払いに絡まれて辟易していたジャンはここぞとそれを利用した。
「仕事……、本当に忘れてたのか?」
 酒場を出て、兵舎に向かってしばらく歩いていると、ジャンが気遣わし気に訊いてきたため、フロックは俯きながら首を横に振る。
「そうか……、すまねぇな、俺から誘ったのに、気晴らしどころか気ぃ使わせちまって……」
 ジャンは明後日の方向を見て、何とも言えない表情をしたまま、伸ばしだした髪を自らの指で梳いて後方へと流すが、柔らかさ故に纏まらず、さらりと耳にかかるに留まった。
「いや別に……」
 曖昧に答えつつも、フロックの視線は一か所に固定されている。
 互いの指から延びる一本になった糸が、繋がった中央から少しずつではあるが、赤く色づいてきていたからだ。

 こんなはずでは。
 仕様もない手遊びで繋がってしまうなんて。

 フロックの頭の中は、こればかりがぐるぐる回っていた。
 兵舎に戻り、宛がわれた自室に戻って糸を力任せに引くが伸びるばかりで千切れてはくれない。刃物で切ろうとしても擦り抜けるだけで、何の用もなさなかった。
「どうすんだこれ……」
 フロックはベッドに腰を落ち着けたまま頭を抱え、今や完全に赤く染まった糸を呆然と眺めていた。

 ジャンと繋がってしまった赤い糸。
 それは生命を循環させるための血管のようにも見え、まるで、自分の体とジャンの体が一対の存在なったようにも感じられた。何とも訳が分からないが、糸が繋がってしまった効果なのだろうか。
「いやいやいや……、有り得ねぇだろ」
 胸の奥底から込み上げてくるものを拒絶するために、フロックは敢えて否定の言葉を口にする。が、脳裏に思い描いたジャンの姿に高揚すると同時に、ずっと軋んで重苦しかった心が穏やかになり、不可思議な心地良さに包まれていく己も自覚せざるを得なかった。
 先程別れたばかりだと言うのに、会いたくて、手を伸ばしたい気持ちになっていく。

 明日、どんな顔をして会えばいいのか。
 これからどうすればいいのか。
 フロックは困り果て、途方もない焦燥感に駆られてしまい、安らかな眠りが訪れない夜を過ごす羽目になってしまったのだった。




   【恋の病】

 最近、妙に調子が悪い。

 ジャンは執務室を出てから大きく息を吸い込むと天井を見上げ、息を吐きながら床へと視線を落としてく。
「おい、廊下のど真ん中で突っ立ってんじゃねぇよ」
「あ、悪い……」
 声かけてきた人物。フロックを顧みて、どく。と、跳ね上がった鼓動を宥めるように胸に手を置いた。
「なんだよ、俺に用でもあったか?」
「いや……」
 廊下の真ん中に立ってたとは言え、決して避けて歩けないほど狭くはないが、邪魔には違いない。ジャンは壁際に体を寄せ、フロックに道を譲ると、その背中に向けて密かに嘆息する。
 どうした事か、ここ最近の不調はフロックが原因であるらしいからだ。

 フロックが側に寄ってくれば、異様に緊張する。
 話しかけられれば動悸がする。
 何とはなしに姿を探す。
 妙に落ち着かない。
 近くに居れば視線が背中を追う。
 可笑しい、可笑し過ぎるのだが、実の所、自らの異常に思い当たる節がないでもなかった。訓練兵になったばかりの頃、ミカサに一目惚れをした際の状態と酷似している。しかし、何故フロックに。と、ジャンは首を傾げるばかり。

 ジャンは、シガンシナ区での戦いからフロックが気にはなっていた。なってはいたが、惚れた腫れたなど、そんな意味ではないのだ。組織を、他人を信じられなくなり、訓練や仕事は黙々とこなしていても、明らかに他人を避けて孤立しているフロックが気がかりだった。フロックからして、『見ていただけ』の無能でも、心配してはいけないなどの法はないだろう。
 こんな行動も、彼からすれば偽善や欺瞞でしかないのだろうが、ジャンは他の人間比べれば比較的、フロックとは交流を持っていた。
 果たして、心配が行き過ぎてこうなったものかジャンは頭を悩ませている。最近は呑みに付き合ってくれたり、自ら補佐買って出てくれる程度には打ち解けてくれたと言うのに、こんな感情を抱いてしまうとはなんとした事か。こんなもの、幾許かでも信じてくれたフロックへの裏切りのようにも思えて、ジャンは心痛の心地であった。

 ジャンが団長へ持って行く書類を手に背を丸めながらとぼとぼ歩いていれば、突然背中を叩かれて思わず背筋を伸ばし、敬礼の姿勢をとって振り返る。と、フロックが目の前に居るではないか。
 今しがた思い悩んでいた異常の原因が目の前に居るとあって、ジャンは挙動不審になり視線は右往左往。心なしか頬まで熱くなってくる始末であった。
「な、なんだよ……」
「お前こそ……、何だよ」
 用事があって声をかけただろうに、フロックまでジャンの動揺に釣られて一歩体を引く。暫しの間が空き、偶然近くを通った他の兵士に訝し気な視線を送られながら二人は立ち尽くしていた。
「あのっ……」
「なぁ」
 意図せずして発生が重なり、再び無言になってしまい、気不味い空気が流れる。
 暑さを感じて首を手で拭うが汗は掻いておらず、フロックは様子の可笑しいジャンが醸し出す空気のせいで居心地悪そうに窓の外へと視線をやっていた。
「なん、か、用か?」
「具合悪そうだったから気になって……」
 やっと絞り出したジャンの言葉は他愛ないもので、ようやく切っ掛けを得たフロックも安堵したように発言する。だが、気遣うような科白にジャンの心臓が跳ね上がり、ただでさえ熱かった体温が急上昇していく。そしてまた、フロックまで顔を赤らめてしまい、状況は悪化していくばかり。
「なんだよ……」
 フロックがぼやくように言えばジャンの胸はずきりと痛み、手元が緩んで書類を床にばらまいてしまった。
「何やってんだよ」
 ジャンが慌てて拾っていれば、呆れたように言いつつもフロックが回収を手伝ってくれ、余計に動揺は酷くなるばかりである。
「本当になんだよお前、そんな態度とられたら期待するから止めろよ」
 胸に押し付けるように書類を渡し、フロックはジャンを睨みながら言うが、伝えられた言葉に頬が緩みそうになってしまう。
「は、お前、俺が好きなのかよ」
「うるせぇな、悪いか」
 この空気を打破するために茶化したはずが、あけすけに放たれた科白にジャンの心臓は限界を迎えてしゃがみ込んでしまう。
「お前、俺が好きなのかよ?」
 ジャンと同じくしゃがみ込み、同じ言い回しでフロックが問うてくる。
 最早、ジャンの表情、態度、顔色が肯定しているも同じなのだが、敢えて質問してくる辺りが意地が悪い。と、感じてしまう。しかし、フロックも、確信が欲しくて堪らないからこそ問うてくるのだ。真っ直ぐに見詰めてくる眼は強くも、手元は焦燥感に駆られている事を表すように両手を組んで指を擦り合わせていた。
 兵舎の廊下でやるような物事ではないが、既に周囲が見えていない二人には今更である。
「そうみたい、だな……」
 照れを誤魔化すためにジャンは曖昧に答え、赤らんだ肌を隠すように片手で顔を覆っていた。
「ふぅん……、じゃあ、今日お前の部屋行くわ」
 一方的に宣言してからフロックは踵を返し、ジャンから離れていく。

 是とも否とも言えず、その背中を見送り、見えなくなればジャンはやっと空気を吸った心地になった。
 ふらつきながら立ち上がると、酷く疲れた気分に襲われ、今夜を思えばどうして良いのか判らず思考がぐるぐる回る。
 ただ、恐らく何を求められても拒絶は出来ないのだろう確信を抱き、ジャンは夜に怯えるのだった。




   【情動】

 体内で蠢く熱い物体に、ジャンは息も絶え絶えになりながら目を潤ませ、込み上げてくるものに耐えていた。
 体の上でフロックが呻き、体液を腹の中へと注ぎ込んでくる。やっと終わった。そう思っていたが、ぎらぎらとした目つきは変わらずジャンを見据え、飢えた獣の様相を呈していた。
 フロックはジャンの眦から零れた涙を指で拭い、そのまま頬へ滑らせ、首筋までなぞると太さを確かめるように片手で覆った。全く何を考えているか判らない。

 宣言通り、仕事の終わった夜に訪ねてきたフロックを迎え入れ、まるで幼い少年時代に戻ったかのように緊張で固まっていると、『お前も餓鬼じゃないんだから解るよな?』そう言いながら迫ってきた。確かに、もう初心な子共ではない。何年も共同生活をしてきたのだから、お互いの事も相応に知ってはいるが、あまりにも性急過ぎる行動に、驚きは禁じえなかった。
 いつも使っている寝床に押し倒され、雑に服を脱がされる。しかし、口では待て。と、言いつつも、突飛ばしたり、身を護るために張り飛ばそうとする気は起きなかった。寧ろ、心臓がどくどく煩く鳴るばかりで、大して柔らかくもないだろう胸を、顔を真っ赤にしながら触れてくるフロックが可愛くすら見えてしまっているのだから、最早、手遅れである。

 ベッドの上でする行為は概ね二通り。
 横になって休むか、他者と肌を合わせて睦み合うか。
 睦み合う行為に関しては、ジャンは知識でしか持ち得ていなかった。仕方ないと言えば仕方ない。若干、十二歳で訓練兵になり、十五歳で調査兵団へ入団し、生死をかけた怒涛の日々。生命を脅かされる機会が減った後も兎にも角にも忙しく、街の若者のように、青春などとは程遠い毎日だったのだ。性に関する経験の浅さは致し方なかった。
 フロックはどうだったのだろう。ジャンは窺うように、しつこく男の胸を触って呻っている童貞丸出しの彼を見た。如何にも経験がなさそうで、駐屯兵団も相応に忙しかったのかな。とも感じられる。実際は判らないが。
 肌を撫で、ちゅ。と、音を鳴らして乳首に吸い付く行動は、不慣れながらも愛撫をしてくれているつもりなのか。残念ながら、フロックの愛撫は特段、気持ち良くはないが間違いなく高揚感はあった。胸が詰まったような心地になり、抱き締めたい衝動に駆られてくる。
「フロック……」
 名を呼び、ごわごわした癖毛を梳くように指を差し込みながら撫でる。
 フロックが上目遣いに見上げてくる眼は、解り易く熱に浮かされており、知らず口角が上がりそうになった。こんなごつい野郎の体に良く興奮出来るな。常であれば、こんな悪態を吐いて笑いながら茶化し、妙な空気を誤魔化そうとしたかも知れないが、口付けて唇を塞がれてしまえば言葉など出せるはずもない。
 拙い触れるだけの口付けだったが、一生懸命さは十二分に伝わってくる。
「じゃ……」
 口付けてから、酷く掠れた声でフロックがジャンの名前を呼ぼうとしたが、喉が張り付いて音が上手く出せず、乾いた喉に唾を送り込んで潤し、再度挑戦しても空咳をしただけで終わる。どれだけ緊張しているのか。
 ジャンも心臓の鼓動や、呼吸が苦しく感じるほどではあるが、持ち前の冷静さや判断力故に、頭は先ずフロックを落ち着かせるべきだ。と、考えた。
「うん」
 要領を得ない返事をした上で背中に手を回し、自ら口付ける。
 フロック同様、経験のなさからぎこちなくはあったが、受け入れられている。との事実を認識して精神が安定したようで、まるで油を差し忘れた機械の如き動きはしなくなった。が、逆に火が点いてしまい、荒々しく衣服を剥がれ、フロックがズボンのポケットから取り出したのは小さなコルクで蓋をされた小瓶。
 ジャンは生唾を呑み込み、フロックの動向を見守る。どうせ抵抗はしないのだ。下手に動いてお互いに怪我などしてしまえば言い訳も立たず、あまりにも情けない結果になってしまう。
「指入れる……、から」
「あ……?」
 短く告げ、ジャンが返事をする間もなく、ぬる。と、体内に侵入して来る異物に身を固くする。同性間でも性行為は不可能ではない。程度の知識しかなかったジャンであるが、漠然と先を予想出来てしまった。要は、挿れる場所が違うだけなのだ。と。
 油で濡らした後、足を抱えられた。
「あんま、じろじろ見られっと恥ずかしいんだけど……」
 十分に濡れたかどうかの確認なのか、やたらと凝視されて羞恥が湧いてくる。
「お、おう……」
 フロックも指摘されて気恥ずかしくなったのか、僅かばかり視線を逸らし、がちゃがちゃと自分のボトムに嵌めてあるベルトを外し始めた。否応なしに『フロックに抱かれるのだ』との意識が湧いてくる。
 正直な所、体の関係まで意識していなかったと言えば嘘なのだが、やはり知識の浅さから、抱く、抱かれるの認識は薄かった。技術は拙いながらも、着々と用意をするフロックは、どこかで経験済みなのだろうか。
「なんだよ……」
「え、いや……、なんか、別に……」
「別にって面じゃねぇだろ」
 心に靄が張り、無意識に睨んでいたジャンに気付いたフロックが眉根を寄せて見下ろしてくる。過去の経験の有無など、現在に関係があるのか。そう訊かれれば『関係ない』そう、言える。が、どこの誰とも知れない相手がフロックを抱き締めていたのかと思えば幾許かの悋気が湧いた。
「気持ち悪いから言えよ」
 逸らした顔を掴まれ、真っ直ぐに見据えられてジャンはむにむにと唇を動かす。こんなみっともない感情をどう説明しろと言うのか、面倒な怒りまで湧いてくる始末である。
「いいって、さっさと突っ込めば……」
 顔を掴む手を押し退け、ジャンはやはり視線を逸らす。
 表情は言わずもがな、芳しくない。
「何怒ってんだよ、痛かったのか?」
「怒ってない」
 声まで不機嫌になり出し、苛立ちはフロックへも伝播する。
「なんなんだよ……」
「案外、慣れてんのかとか……」
 互いに牽制し合い、拉致の開かない状況に陥ってしまった事に気付いたジャンが、一端を口にすればフロックは目を瞬かせ、思考を巡らせるように視線を左右に動かす。
「は?ねぇよ……。お前こそ慣れてんだろ、平気そうな面してさ」
「はぁー⁉俺だってねぇよ!」
 懸命に平静であろうと尽力していた行動が、フロックの目には手慣れた様子に見えたらしい事を知り、ジャンは思わず声を荒げた。その直ぐ後に、余りにも馬鹿々々しい赤裸々な会話をした事に気付き、顔を覆う。
「あー、もう、萎えさせるような言うなよな……」
 気不味そうではあるが、場を仕切り直すようにフロックが呟き、再度ジャンに伸し掛かってくる。
「ぐだぐだ言ってねぇでやるぞ」
 自身の性器をジャンの孔に宛がい、ぐ。と、フロックが体を沈めれば、指とは違う硬い棒状の異物が侵入して来る。
 ジャンは敷布に爪を立てながら息を詰まらせ、襲い来る痛みと違和感に懸命に耐えた。殴られる。切りつけられる。叩きつけられる。圧迫される。今まで感じたどんな痛みとも違う。文字通り、裂かれるような痛みだ。
「いっつ……」
 ジャンが顔を歪め、声を漏らせばフロックは動きを止め、性器を抜いて油を更に垂らし、指で塗り込んでいく。行為自体を止める気はないようだ。
「少しずつやるから……」
 油を追加したお陰か、一度目よりは痛くないが、なくなった訳ではない。
 くちくち音を立てながら、先端のみを沈めて浅い部分を擦るフロックを見上げ、申し訳ない気分になってくる。
「ごめん、フロック、俺、無理かも、だから、手とか……」
 手淫であれば、自身の自慰行為で経験があるため、まだフロックを満足させられるかも知れない。そう伝えれば首を横に振られてしまう。どうしても抱きたいとの主張だった。妙な拘りがあるようだ。
「もうちょっと解してみる」
 油を塗り込み、濡らすだけでは足りなかった。
 フロックはそう考え、先程よりもじっくりとジャンの孔を指で解していく。凝視されると恥ずかしいとの言葉も既に忘れているようだ。
「どうだ?」
「判るかよ……」
「勃ってんのに?」
「だから知らねぇよ……」
 ねちねち中を弄られていると、妙に肌がざわつき興奮が込み上げてきた。結果、ジャンの性器も膨張し、解放を求めている。
「ふーん」
 フロックは唇を舌で舐め、ジャンの脚を抱え直すと性器を押し込んできた。短時間とは言え、何度も繰り返したためか、最初ほどの痛みはなく、フロックが油で濡れた手で性器を扱き出したため、直接的な快楽がジャンに襲い掛かってくる。
「あっ……、ぅ……」
「いい声だな」
 にんまりとフロックは口を歪ませ、顔を赤らめて声を押さえるジャンへ、褒めているのか揶揄っているのか判断がつき難い言葉を寄越す。
 ジャンに反論する魔を与えず、性器を握り込んで弄り、ぬるぬると腰を動かしていく様子はなんとも意地が悪いと言えるが、次第に考える余裕も奪われていく。
 フロックが腰を揺らせば握り込まれた性器も同時に揺れて刺激になり、息も上手く吸えなくなっていった。
「はっ、ふ、ぅ、ろ……、んっ……」
 もう少し手加減を。そんな懇願をしたくても、フロックが聞いてくれない。
 聞いてはくれないが、止めようとは思わない。奥歯をぐ。と、噛みしめながら眉間に皺を寄せ、余裕のない素振りでありながらも夢中で縋っている様子が可愛く見えた。痛みと快楽、苦しさに翻弄されつつも、ジャンはフロックを見詰め、視線が絡んでいるようで絡んでいない状態で互いの体温を混じり合わせた。
「やべ……」
 フロックは呟くと、ジャンを掻き抱き、背を丸めながら体を震わせた。
 じわ。と、腹の中に広がる熱。
「お前、中に出すとか……」
「別にいいだろ……」
 良くない。そう言いたかったが、抱き着いたまま、荒いだ呼吸を抑え込みながら耳元で囁く掠れたフロック声に、ジャンの腹の奥が切なく疼き、言葉が喉の奥で詰まる。
「お前、足離せよ」
 無意識に足をフロックの腰に絡めていた事に気付き、ジャンの体が、かっと熱くなる。
「あっ……」
 不意に零れ出た声。
 フロックがどろどろに濡れた性器を中から引き抜こうとした際の下腹部から込み上げてくる刺激に思わず出てしまい、ジャンは顔を背けて口を手で塞ぐ。フロックは喋っていないのに、『興奮した』そう語る視線が雄弁過ぎて煩い。
「もうすっきりしただろ……、離せよ」
 顔は依然背けたままで、ジャンはフロックを押し退けて逃げようとしたが、背を向けた瞬間、ずしりとした体重が伸し掛かってくる。
「離せよ。風呂行くし……」
「もうちょっとだけ」
 震える上擦った声が聞こえると同時に硬くなったものが再度挿入され、ぎしぎしとベッドを揺らす。
「けつだけで気持ちいいのか?」
「ちが……」
 否定をしても、中を擦られる度に背筋から這い上がってくる心地好さに、腰が勝手に揺れてしまい、フロックは面白そうに喉の奥で笑った。動きが徐々に激しさを増していき、触れても居ないはずのジャンの性器から白濁の体液が中から押し出されるように溢れてベッドを汚していく。
「お前に憧れてる部下に見せてやりたいな、けつにちんこ突っ込まれてあんあん言ってるとこ」
 ジャンの胸をねっとりとした動作で触り出したフロックは、実に楽しそうである。
「俺のもんだぞ、みてぇな……」
 意味不明な自己顕示欲の示し方に、ジャンの眉根に皺が寄る。
「お前、ふざけんなっ……!」
「ふざけてねぇよ。なんか、信じられないだろ、こんなの……、都合のいい夢みてぇ……」
 だから、人の目を借りて証明したいとでも言いたいのか。
 可笑しな事を考える馬鹿だ。

 ジャンは首元に埋まっていたフロックの頭を叩き、顔を上げさせて口付ける。背後から抱き締められながらのため、体をねじったきつい体制だが、泣きそうに表情が崩れているフロックの顔は見えた。
「信じらんねぇなら、俺がお前に突っ込んでやろうか、裂けるかと思うくらいいてぇぞ」
「遠慮しとく……、俺はこっちの方がいい」
 抱く立場は譲りたくないようで、フロックが子供のようにごねだした。
 痛い思いすんの俺だけかよ。そんな悪態を吐きつつも、ジャンも強行するつもりはなく、フロックが満足するまで甘えさせてやった。こんな抱き締め方もあるだろうと思いながら。

 その翌日。
 良くフロックと一緒に居る後輩に呼び止められ、『どうぞ』と、渡された物にジャンは首を傾げる。
 手の中にある物は、小さな軟膏の容器である。
「これ、切り傷とか裂けた傷に良く効くらしいので使って下さい。フロックさん、下手そうだし」
 髪を短く刈り上げた後輩、確か名前はヴィム。
 もしや。嫌な想像が頭に浮かび、ジャンは息を呑む。
 ヴィムは感情の読めない無表情のまま、敬礼をすると踵を返し、去って行った。
 手の中にある容器を握り締め、ジャンは膝から崩れ落ちそうになる。慣れない事をする際は、誰かに相談したくはなるだろう。だが、よりによって後輩にやるのか。頭痛の湧いた頭を支え、ジャンは羞恥に身を焼かれそうになりながら、自身の執務室へ飛び込み、やり場のない感情をクッションを振り回してぶつける事になったのだった。

拍手

PR