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馬房

小説は妄想と捏造甚だしい。 原作のネタばれ、都合の良い解釈。 R18、グロ(精神的にも)、暴力表現などが含まれます。 冒頭にざっと注意を書いてありますので、それを読んだ上での 閲覧を宜しくお願い致します。何かあればご連絡いただければ幸いです。 基本的に右ジャンしか書きません。 萌が斜め上です。無駄にシリアスバイオレンス脳です。 拙い文章ですが、少しでもお楽しみ戴ければ嬉しく思います。 右ジャン、ジャン総受けしか書きません。あしからず。

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ぞんびといっしょ

・スクカゾンビネタ
・前半愛はない感じの酷い話
・後半はそれなりにらぶらぶ
・R18
・無理矢理展開
・2019/11/01






 朝、寝坊した。
 午前は嫌いな科学の授業も入っていたから、これ幸いと二度寝。
 昼休みが始まる前くらいに、だらけつつ学校に行くと学生達が暴徒のようになっていた。明らかに正気を失い、ゾンビ映画の宜しく人を襲っている。

 皆、白目を向いて逃げ惑う人間を追いかけ回し、噛みつかれた奴は同じように理性を失い、仲間を増やすためか、まだ理性の残っている人間を追いかけ回していた。俺も襲われそうになったが、正気をなくしているからと言って身体能力が上がっている訳ではなさそうで、椅子を投げたり、ロッカーを倒したりしながら逃げればどうにか撒く事が出来て助かった。

 一体何が起こったんだ。
 何かのふざけたイベントか。
 夢かとも思ったが、最悪な事に現実らしい。
 この世に神が居るとしたら本気で唾を吐きかけてやりたい。
 体育倉庫に逃げ込み、鍵をかけて俺は震え上がる。昨日まで仲良く話していた友人も、ゾンビみたいになって学校内をうろうろ歩いていた。特に崇拝している神は居ないが、誰でもいいから助けてくれ。
「なんでこんな目に……」
 泥と埃臭い倉庫の中で俺はぼやいた。
 昨日まで、授業が怠い。金がない。社会格差がどうのと友達と下らない会話をしていたのに、何故こんな事になっているんだ。
「ちくしょう……、なんなんだよ……」
 俺は大きく息を吐き、ぐず。と、鼻を鳴らして涙の浮いた目を服で拭う。
 昼食を一緒に食べる約束をしていた友達はどうなっているだろう。同じように逃げられていればいいが。
「腹減ったな」
 恐怖を紛らせたくて無意味な独り言が出る。
 だが、事実ここにずっと籠っている訳にもいかない。食料も水もなく、何よりトイレの問題も無視は出来ず、閉じこもっていた所でどちらにせよ死んでしまう。
「軍隊とか、強い奴が助けに来てくれないかな……」
 ゲームや映画のように、都合良く救世主が現れ、救ってくれる未来を妄想しながら天井付近に作られている小さな長方形の窓から、音を立てないように外を覗くと暴徒達の気配はなかった。もう学校内に残っている普通の人間が居なくなり、獲物を求めて学校外に出て行ったのか。町も大混乱を起こしてそうだ。

 体育倉庫の鍵を開け、気配を窺いながら校庭へ出た。
 見晴らしのいい遮る物のない場所だ。直ぐにでも走り出せる準備と心構えをしておかねば。煩い心臓を宥めながら、学校内に入り、トイレを済ませて食堂へ行った。あまり物でもいいから何かないだろうか。
「あ、ジャン……」
 食堂の厨房に、見覚えのある後ろ姿が見えて思わず声をかける。
 こんな不安と恐怖だらけの状況で知っている者の姿を見つければ、駆け寄らずにはおれなかった。が、直ぐに後悔した。俺の声に振り返ったジャンは、理性をなくした連中と同じだったからだ。
「ひっ、ぎゃあぁぁ!」
 慌てて踵を返し、まろびながら厨房から逃げようとしたが、残念ながら身体能力自体はジャンの方が上だ。奴は足が速く、厨房を出る前にあっという間に追いつかれた。唯一勝っている所と言えば腕力のみ。
 飛びつかれ、勢いのまま床に倒れれば、ジャンはぐる。と、喉を鳴らしながら俺に噛みつこうとしてくる。鈍く光る白い歯に怖気立ち、顔と肩を押さえ、力比べになる。誰か、誰か。心の中で叫ぶが都合良く助けてくれる救世主なんて現れやしない。
 次第に、押し潰される形になっている俺は体力が尽きてきて、腕に力が入らなくなってきた。徐々に押され始め、汗ばんだ手が布の上を滑り、外れた瞬間、首に噛みつかれ、終わった。そう思った。俺も化け物になってしまうのだと。
「んぁ……?」
 肉を食い千切られるかと思うほどの力で噛みつかれ、死を覚悟していれば、ジャンが声を上げた。意味不明な唸り声ではなく、寝起きの声にも似たすっとぼけたものだ。
「うわ、フロック、首から血出てんぞ」
 ぱちぱちと目を瞬かせ、自分がやった癖にぬけぬけと驚いて見せるジャンの頬を張り飛ばし、俺の体の上から退かせるとファラオジャケットの中に着こんでいたシャツを掴んで拳を振り上げる。
「なにっ、なんだよ!?」
 口の周りを真っ赤にしながら自分を庇うジャンが腹立たしい。
 お前のお陰で俺も化け物だ。腹立たしさに任せて拳を振り下ろそうとしたが、はたと気づいた。ジャンは今、喋って視線が動いている。暴れていた奴は皆、一様に白目を向いて、獣のように呻るばかりで喋ったりはしていなかったはず。
「なに……」
 じ。と、見詰める俺の視線を居心地悪そうにジャンが受け止め、不安げに瞳が揺れた。突然正常に戻ったのは何故だ。
「おい、何があったんだ?」
 ジャンも状況の整理が追いついていないらしく、殴られないと判ると自分を庇っていた手を下ろし考え込み出した。
「今何時だ?」
 俺はポケットからスマートフォンを出し、今が午後二時過ぎになっている事を告げると、ジャンは頭を掻き毟る。
「あー、っと……、確か、ハンジ先生の科学の授業でなんか……、冷凍された新種のウイルスがどうとか言ってて……、皆に見せるとか……」
 自身の記憶が途切れた部分を懸命に思い出そうとしているのか、言葉はたどたどしいものの、要点は解かった。
「俺は前列でそれを見てて、急に爆発が起きたんだ。そっから記憶がねぇ……」
「バッドボーイ気取ってる癖に真面目に授業出てんじゃねぇよ」
 全く関係ない悪態を吐き、服を掴んでいた手を離すと俺は冷蔵庫に向かった。とにかく腹が減っている。調理せずとも食べられそうな林檎を手に取り、適当に洗って齧った。甘酸っぱくて美味い。食べている間も噛まれた首がじんじん痛む。きっと人間として最後の食事だ。しっかり味わっておこう。
「くそ……」
「フロック、あの、首……、手当て……」
「はぁ?今からしてどうなんだよ。どうせ俺も理性をなくした化け物になるんだ……」
 無性に涙が込み上げてきて、辛い。
 要は、ハンジ先生が持ってきた新種ウイルスとやらの容器が何らかの理由で爆発し、中に入っていたものが空気中に拡散。近くで見ていた人間が吸い込んで感染し、感染した連中が理性をなくした媒介者となって更に感染者を増やしていくバイオハザード。
 ウイルス如きが人間を操るのかは判らないが、実際に起こっているのだから仕方がない。

 件のウイルスは、恐らく空気感染はしないはずだ。
 それなら、もっと爆発的に広がっているはずで、学校の敷地内に入った時点で俺も感染し、正気では居られなくなっている。ジャンのように、実験を前列で見ていた連中は、特に運が悪かったと言えるだろう。
「俺……、どうなるんだろう。焼却処分とか……」
 ジャンが冷蔵庫を背に、膝を抱えながら項垂れ震えている。
 正気を失っている間の記憶でも戻ってきたのか。
「熱処理でウイルスが死ぬならそうなんじゃねぇの?お前のせいで俺も巻き添えだ」
 食べ終わった林檎の芯をごみ箱に放り投げ、全てをジャンのせいにして文句を垂れる。
「他にねぇかな……」
 再度、冷蔵庫を漁っても直ぐに食べれそうなものはなく、いつもビッフェ形式で食事が置かれている場所は赤っぽいもので汚れていたり、床に零れてぐちゃぐちゃに踏み荒らされて、とても食べられそうにない。
「あの、良かったら作ろうか……?」
「作れんのかよ」
 今は正気のようだから、普段が上手いのなら出来るのだろうが、ジャンが料理上手だなんて聞いた事がない。
「まぁ、一応……」
 ジャンが手を洗い、冷蔵庫から卵や野菜を取り出すと、小慣れた様子で料理をし出した。学校ではバッドボーイを気取っているから、おくびにも出さなかっただけなのか。フライパンを揺らして皿に置かれたのは綺麗な形のオムレツ。そこにケチャップをかけ、スプーンを添えて俺の前に差し出してきた。
 削ってみれば中に刻んだ野菜が入っており、野菜は好きじゃないんだけど。そう思いながらも腹が減り過ぎていたため口に入れれば、驚くくらい美味しかった。あっという間に平らげ、物悲しくなっていれば次はキャベツたっぷりのペペロンチーノが出てきた。俺が食べている間に作っていたらしい。
「簡単なのばっかだけど」
「美味い」
 しっかりニンニクの風味と唐辛子の辛さが利いている美味しいパスタだった。これも直ぐに平らげ、満足に膨れた腹を擦る。
「美味かった?」
「美味かったけど、取り敢えず顔洗えよ」
 唇に赤くついた俺の血。
 口紅のようだと言えばまだ可愛らしいが、顎まで伝っているため、ただのホラーでしかない。ジャンは俺の指摘で気付いたのか、手鏡をポケットから出し、自分で驚いていた。阿保か。
「まだついてるか?」
 口の中を濯いだり、顔を洗ってさっぱりした様子のジャンが俺の元へと戻ってくる。
「あぁ、いいんじゃねぇの」
「せめて、こっち見てから言えよ」
 俺が今の状況を知るため、ニュースサイトを見ていれば、この町が軍によって閉鎖された事実を知る。実質、逃げ遅れた生き残りの人間は見捨てられたと同義だろう。あぁ、なんて憐れな。
 シェイクスピア張りに嘆いて見ても、閉じ込められた事実は変わらず、俺も次第に化け物に。
「あれ……」
 良く考えてみろ。
 噛みつかれた人間は直ぐに理性を失い、獲物を求めてうろつく化け物になってはいなかっただろうか。なのに、俺は呑気にジャンと喋り、食事などをしている。可笑しくはないだろうか。それとも、既に化け物になっている自覚がないだけなのか。だが、首は血が固まって、痛みも少しずつ引いている。免疫や血小板などの体の組織が動いている証拠だ。
 厨房を出てこそこそ周囲を窺いながら探ってみれば、やはり化け物になった連中は意味不明な唸り声を上げてうろつくばかり。比較的安全そうな厨房に戻り、行儀悪く調理台に座って腕を組んで考える。
 俺は感染してない。いや、感染しない?そして俺の血を飲んだであろうジャンもごく普通の交流が出来る人間に戻っているようだ。俺が周辺を探っている間も、心配そうに後ろについてきていたのだから間違いない。
「お前さ、体に変なとこあるか?」
「ん……」
 俺に問われ、ジャンが自身の体を触り、首を傾げて困ったように呻る。
「敢えて言うなら……、お前の首の血がやたら美味そうに見える……」
 びく。と、肩を跳ねさせ、俺は調理台を降りてジャンから距離をとった。思考が正常に戻っても、可笑しくなった体は元に戻っていないらしい。
「あ、でも、別に襲いたくなるようなのは……」
 誤魔化し気味にジャンは言うが、信じられない。
 俺の首ばかりを見ているんだから。
「人を食いたいとかじゃないのか?」
「食うって言うか……、舐めたい」
 ジャンは腹を擦り、首を傾げる。
 兎に角、俺の血が魅力的に見えるようだ。
 吸血鬼みたいだな。
「痛くしないから舐めていいか?」
 自覚したら欲しくなってきたのか、ジャンが俺に迫ってくる。
「変な菌とかついたら嫌だから嫌だ」
 件のウイルスには感染せずとも、別の病気にはなりそうだ。
「俺は別に病気とか持ってないし頼む」
 厨房の隅まで追い詰められ、うるうるした眼で見詰められる。これが可愛い女の子なら兎も角、自分と身長の変わらない野郎とは。やはり神は残酷だ。
「美味しい……」
 乾いた血を舌で舐めとり、自分の付けた歯型に口付けるようになぞる。気味が悪いとも感じるが、思春期男子らしく、変な気分にもなってくる。相手はジャンだぞ。馬鹿か俺は。
 首に残っていた血の塊を舐め終わり、満足したのかジャンは余韻を味わっているようで、唇を舌でなぞりながらうっとりしていたが、解放された俺は、異様にむらついている最悪な状態になっていた。
 ジャン相手に、嘘だろ。
 ちょっとばかり股間が痛い。
「どうした?」
 全く俺の大変な状態に気付いていないらしいジャンが憎たらしい。
 俺はジャンの手を引き、調理台の上にうつ伏せにさせ、尻を突き出すような格好にさせる。中々いい眺めだ。ベルトのバックルに手をかけ、外そうとすれば俄かにジャンが焦り暴れ出す。
「じっとしてろよ。我慢してたらまた俺の血をやらんでもない」
 俺の言葉にぴく。と、ジャンは反応し、途端に大人しくなった。相当俺の血が気に入ったようだったから、思い付きで言ってみれば効果覿面。これ幸いとジャンのベルト外し、デニムパンツを下着ごと下ろせば形のいい小振りの尻が出てきた。背中の線から腰の引き締まり具合も悪くない。
「お前のせいで勃ったんだから責任取れ」
「う、ぇ、そんな……」
 無茶苦茶な理屈で自分を正当化し、ジャンの尻を撫でるが抵抗はない。
 調理用に置かれていた油を使ってジャンの尻孔を濡らし、俺の性器を挿入すれば大分、中は狭くてかなり締め付けがきつい。男相手にも女相手にも随分遊んでいるとの噂があったのに、処女だったようだ。性器もピンク色で、使用経験があるかも疑わしい。
「ほら、血やるから力抜けよ」
 首の傷を引っ掻き、血の付いた指を差し出せばジャンは迷う事無くしゃぶりつき、それに夢中になっている。お陰で強張っていた体が幾分、柔らかくなり、きつさが和らいだ。
 まだ締め付け感はあるが、具合自体は中々いい。性器を中へ押し込み、腰を掴んで揺さぶると、自慰では得られない快感が脳を酔わせた。ジャンの表情も、なんだか呆けていて気持ちいのかとも思える。
「この町、もう軍に閉鎖されてるらしいぜ。多分、出ようとしたら射殺だろうな。完全に感染した上に発症して化け物になったお前は間違いなく殺処分だろうよ」
「う……ぁ……」
 ジャンの体を揺さぶりながら、絶望的な未来を耳元で囁く。
 あるいは、貴重な被検体として意識のあるまま切り刻まれたり、焼かれたり、ありとあらゆる実験対象になる可能性も示唆しておく。
「やだ……、ぁ……」
「あぁ、嫌だよな?じゃあ、俺から逃げるなよ?」
 体の具合もいい。
 料理も上手い。
 何より対話出来る相手を失うのは惜しい。
 ジャンは何度も首を縦に振り、次第に心地好くなってきたのか俺に犯されるばかりではなく、自分からも求めてきた。いい感じだ。
「俺が死んだら血も貰えなくなるんだから、精々守れよ」
「うん……」
 正面から抱き合いながら、首の傷をジャンが舐めてくる。
 ジャンに言った事は、俺にも該当すると賢いこいつなら解るだろう。だから、大事な血の供給源として俺を大事に大事にしてくれるに違いない。

 絶対に死んでたまるか。
 どんな状況だろうが、しぶとく生き抜いてやる。

   ◆ ◇ ◆ ◇

    それなりの幸せ

 例の事件から数か月。
 家人不在となった馬鹿でかい屋敷をねぐらにして俺はジャンと共に暮らしていた。
 あれから周囲に気をつけつつ、一応なりとはお互いの家に帰ってみたが、どちらの家族も杳として消息が知れくなっていた。ジャンは諦めが悪く、家の中を何時間も、それこそ同じ場所でも何度も確認しながら、か細い声で『母ちゃん』と、呼び、泣きそうになっていた姿が印象的だった。学校では全く知らない顔だ。

 住処を見つけ、暮らしだした最初は不安だった電気や水道は、封鎖された枠の外に供給施設があるため、備品が壊れでもしない限り支障はなく、食料にしても、スーパーなどにいけば電気は通っており、冷凍食品も利用出来た。缶詰も十二分に置いてある。生鮮食品などは諦めざるを得ないにしても、然程、空腹に悩む事はなかった。
 用意するのは自分の分だけで済む。
 そこも気楽ではあった。

「美味いか?」
「ん……」
 屋敷の一階にあるダイニングにて、瀟洒なデザインが施された椅子に座る俺の股間に顔を埋め懸命に性器を舐めているジャンの頭を戯れに撫でてやる。
 上目遣いに見てくる眼は、極上の酒を呑んで、心地好い酔いに身を任せている時のように蕩けていた。ジャンにとって、俺の血液や、精液がご馳走になるらしいと知ったのは直ぐだった。
 抱いている際に、良い匂い。そう言って自分から欲しがったのだから、解らないはずもない。

 ジャンは、ウイルスに真っ先に感染し、化け物になる不幸を被ったが、ある種、運がいいとも言えた。
 全ては偶然だろうが、俺の血液から抗体を得て理性に加え、認識や判断力を取り戻した。そして、驚いた事に食料を摂取する必要がなくなり、眠らずとも活動が出来、疲れを知らない体になったようだった。半分化け物で、半分人間と言った所か。
 ジャンの例を見て、もしや。と、試しに、外に転がっていた奴にも俺の血液を与えてみたが、ウイルスに冒されてから時間が経ち過ぎていたせいか、抗体が返って悪さをしたようで、もがき苦しみながら全身から腐った血を吹き出して死んでしまった。悪い事をした。
 外をうろつく化け物の一部には、人食いバクテリアに冒された人間のように細胞が壊死しているのか、時間の経過と共に手足が落ちたり、皮膚が崩れ始めている者も居た。まだ人の形が保てている間は良かったが、こうなると本当にゾンビのようだった。こんな事が現実に起こるなんて、ハンジ先生はどこからこんなウイルスを持ってきたのか。あるいは、弱体化されて安全なはずのウイルスが、試験管の中で突然変異でも起こしていたのか。解らん事ばかりだ。

 先の通り、電気は通っており、回線も生きている。スマートフォンや、パソコン、テレビも利用出来るため情報の獲得には事欠かない。助けを求めようとすれば求める事は不可能ではない。が、ここから逃げ出して、そのまま普通の生活に戻れるのかは疑問でしかなかった。
 いつか俺が想像したように、実験動物にされて死ぬ羽目になるのなら、現状維持が余程いいとも思える。だが、先は分らない。医者も居ないこの町で、病気にでもなれば自分の免疫しか頼れず、それで治らなければ苦しみながらじわじわ死んでいくだけ。
 暇だと嫌な事ばかりを考えてしまい、気分を紛らわすために、体温の低いジャンの体を貪っては泥のように眠る日もあった。

 そんな俺に気付いてか、ジャンは甲斐甲斐しく俺の世話をしてくれる。
 ジャンは独りで外を歩いても、化け物達に仲間と認識されているのか襲われるような事はなく、定期的に屋敷の外に出ては食料や、水を持ってくるし、俺が襲われそうになったら全力で護ってくれる。ご褒美として血液や、こうして舐めさせてやれば満足みたいだし、生活に関しての不満は全くない。
「はぁ……」
「ごちそーさん」
 俺が吐精し、息を吐けば中に残ったものも吸い上げてジャンは唇を舐め、満足げに笑う。ある意味、これが食事か。俺は気持ちいいし、すっきりするから幾らしてくれても構わないが。
「んじゃ飯作るな。何がいい?」
「お前の作ったのなら何でもいいけど」
「嬉しいけど困る奴だなー」
 苦笑しつつも手や口の洗浄を済ませると、ジャンは直ぐに台所に向かって調理に取り掛かる。
 ジャンが作ったものは、本来、嫌いで避けていた物も美味しく食べられるため、本当に何でも良かったが、食事に関しては拘りがあるのか、それとも、自分が食べられなくなったから、せめて俺に好きな物を食わせてやりたいのか、毎日、持て余している暇を潰すように手間暇をかけて料理をしてくれていた。
 ここまで献身的にされると、最初こそ性欲の解消や、寂しさを紛らわすための存在でしかなかった相手でも情が湧く訳で、今や俺の方がジャン無しでは居られなくなっている。眠れないジャンをベッドに引き込んで添い寝をして貰うのは、ほぼ毎晩。無論、性行為を伴う場合もあるが、ただくっついてるだけでいい日もある。するかどうかは気分次第にしても、ジャンが側に居ないなど、もう考えられない。
 ジャンを失うくらいなら、助けなんて来なくていいと思う事すらある。
「それ、煮込むのどんくらいかかるんだ?」
「料理の本によると、弱火で一時間くらい」
 作っているのは牛筋の煮込みらしい。
 俺はタイマーを探して一時間後にセットし、ジャンの手を引いて寝室まで行く。
「さっき抜いたばっかりなのに?」
「まぁ、暇だし……」
「本読んだり、ゲームでもしてたらどうだ?」
「なんか飽きた」
 各家から、使用者の居なくなったゲーム機やゲームソフト、娯楽の本、雑誌などは幾らでも得られた。しかしながら、この町は外界と断絶された陸の孤島。当然、新しい物は入って来ない。インターネットに繋げばどうにかならなくもないが、やれる時間が無制限にあると、楽しいのは最初だけで逆にやる気が削がれていくと知った。
 手慰みにやる事はあっても、熱中するほどでもなくなった訳だ。残る楽しみと言えば、快楽に耽るくらいが関の山。寝室に辿り着き、俺が縋るように見詰めれば、仕方ないな。とばかりにジャンは小さく息を吐き、服を脱ぎだす。
 元々、色素の薄い男ではあったが、化け物になってから更に白くなった。青白いとも言えるが。肌に触れれば体温は低く、二十度もあるかどうか。それでも、生きた人間の柔らかさや匂いは健在で、緩やかだが心臓も動いており、抱き締めて貰えば心が安らぐ。
 俺が怪我をしないよう、病気にならないようジャンが本当に大事にしてくれるのも非常に居心地がいい。
 性急にジャンを押し倒して中へと性器を押し込み、腰を揺すり、口付ける。
 ここが地獄の中の唯一の楽園だ。

 あの厨房に居たのがジャンで良かった。
 今はそう考えている。

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