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馬房

小説は妄想と捏造甚だしい。 原作のネタばれ、都合の良い解釈。 R18、グロ(精神的にも)、暴力表現などが含まれます。 冒頭にざっと注意を書いてありますので、それを読んだ上での 閲覧を宜しくお願い致します。何かあればご連絡いただければ幸いです。 基本的に右ジャンしか書きません。 萌が斜め上です。無駄にシリアスバイオレンス脳です。 拙い文章ですが、少しでもお楽しみ戴ければ嬉しく思います。 右ジャン、ジャン総受けしか書きません。あしからず。

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ハロウィン

・年齢操作
・現パロ
・一応ハロウィン
・しょた→おにフロジャン
・ジャンやフロックの母親捏造
・ハロウィンがほとんどおまけ
・2019/10/29
『わんどろハロウィン』に、なるはずだったけど時間オーバーしたのでワンドロには載せてません。






「これやる」
「今日は何だ?」
 五歳児の小さな手に握られたものを受け取り、ジャンは引き攣りそうになった顔面を懸命に抑えた代わりに、小さな声を上げる。都会では珍しい蛇の抜け殻。一体どこで見つけて来たのか訊けば、内緒。と、得意げにフロックは笑い、ジャンの自宅前にある一軒家へと駆けて行った。
 約一年ほど前、ジャンが住む向かい側の家にフロックが引っ越してきてからと言うもの、妙に懐かれてしまい、以降、やたらと繰り返される贈り物の数々。それは子供らしく、自分が行った場所で拾って来たものが大半だ。
 小さな花に始まり、河原で拾った石ころ、海で拾った丸い色つき硝子、今回のような抜け殻、偶に生きた虫。大人から見ればがらくたでも、子供にとっては宝物。それを渡して喜んで貰おうとする気持ちを裏切れず、バッタや芋虫でも引き攣ってはいたが笑顔で受け取れた自分を褒めたいほどだった。
 子供が好きかどうかと訊かれれば、どちらかと言えば苦手に属するが、懐かれれば悪い気はしない。なんとなく捻くれてはいるが、決してフロックは悪い子ではなく、感情表現自体は素直で解り易く、可愛げはあった。
 玄関を開け、家に入る寸前に振り返り、手を振ってきたフロックへ手を振り返してからジャンも帰宅し、自室に向かうと本棚の上に置いてある紙箱をとって蓋を開くと蛇の抜け殻を中に仕舞う。歴代の贈り物が入った箱である。生きた物は流石に庭に離したが、花などは母親の助言によって押し花になり、本に挟むための栞に姿を変えて箱の中に仕舞われていた。
 いつまでこの可愛らしい行動が続くのか、いっそ楽しみではあった。

「じゃん、これ」
「兄ちゃんつけろ」
「じゃんはじゃんだし」
「もう、生意気ばっかり言わないの……」
「じゃんだもん」
 中学生にもなって母親と手を繋いでいる幼児と仕様もない口喧嘩をしながら、近所にある保育園で配られたらしいハロウィンのイベントを知らせるチラシを受け取る。
「ふーん?俺の家も入ってんの?」
「おばちゃんがいいっていったって」
 イベントとは、仮装した子供が各グループに分かれて各家を訪問すると言うもの。
 基本的に、協力するのは保育園に子供を通わせている親のみだが、近所でジャン自身もそこの卒園生とあって、母親が知らない間に快く承諾してしまったようだった。お互いの自宅に挟まれた道で話していれば、
「そんなとこで喋ってないでお家入んなさい。奥さんもお茶でもどう?」
 玄関からジャンの母親が声をかけてくる。
 おやつも用意しているから中へ入れとの事だった。
「たべる!」
 ジャンよりも、フロックの方が早く反応してジャンの母親の元へと向かい、頭を撫でられてご満悦のようだった。その後ろでは慌てて追いかけたフロックの母親が申し訳なさそうに頭を下げている。
「今日もうちでご飯食べるかい?」
「うん!」
「そんな、いつも悪いですし……」
「いいのよ。フロックちゃんもうちの子に懐いてるしね」
 フロックの両親はケーキ屋の自営業で忙しいらしく、ほとんど家に居ない。
 手の空いている両親のどちらかが保育園の迎えに行った後は、基本的に店で様子を見ながら仕事を熟しているそうだったが、クリスマスは元より、甘いものが主流になるイベントで繁忙期に入ると負担が大きいのか、偶にシッターを頼んでいた。しかし、彼の母親が言うにはフロックの気難しい性格故にシッターも長く続かないようで結局は家に一人か、店で暇を持て余して構って貰えない心労から暴れたり、吐くまで泣いたりと目に余る行動もあり、困り果てていたようだった。
 それを見かねた人の良い母親がこうしてなにくれとなく面倒を見ているのが現状だ。
「そうなの、忙しいわねぇ、じゃあ、お茶は落ち着いてからしましょうね」
「すみません。お礼はまた後日に……」
「あら、返って申し訳ないわね、また太っちゃいそう」
 ほほほ。と、ジャンの母親が照れ臭そうに笑い、まだ仕事が残っているからと店へとんぼ返りするフロックの母親を見送る。
「フロックちゃんはおばさんやジャンと遊んでくれる?」
「いいよ!」
 ジャンの母親は、昔こそ看護師として働いていたが、一度体を壊してから一線を退き、今は昼までのパートと家事で家計を助けていた。ジャンは決して母親が嫌いではないが、一人息子である自分が中学に上がり、独りで大概の事は出来るようになると小言が増えた事が目下の悩みである。
「なんで俺まで遊ぶ候補なんだよ。勉強させろ」
「いいじゃないの、あんただってこのくらいの頃はママ、ママってひよこみたいについて回って可愛かったのに、なんでこんなに生意気になったのかねぇ」
「かねー」
 母親と手を繋いで家に入るフロックが、けらけら笑いながら言葉尻を真似てジャンを揶揄って来る。む。と、口を曲げ、ジャンがフロックの後頭部を指先で突けば『ぎゃくたいだー』などと、痛くもない癖に頭を抱えて泣き真似をしてくる小賢しさ。
「どこで覚えたんだそんなの」
「てれび」
 詫びとして向き合う形での抱っこを要求され、学生服を脱ぎもせずに居間のソファーで母親が用意したパイ生地をチョコレートで包んだ歯触りのいい菓子と紅茶を摘む。
「じゃん、ぼろぼろこぼしすぎ」
「うっさい、お前もだろ」
 ただでさえ崩れやすいチョコレート菓子は幼児の手をべたべたにし、力加減を知らないために握り潰して服を屑だらけにしていた。対策として、床に母親が事前に新聞紙を敷いてはいるが、このまま動けば服についたものを落として回る事は想像に難くない。
「ボーロでもおいときゃいいのに」
「だって、前にフロックちゃんが嫌いだって言ったから……」
 フロックの頭に落とした屑を払ってやり、台所に居た母親を見ながらジャンがぼやいたが、提案はあっさりと却下されてしまった。
「あれ、くちのなかぼえぼえする。いや」
 恐らく、口の中が乾くと言いたいのだろう。
「お茶飲めお茶」
「にがにがいや」
「あぁ、お子ちゃまはミルクか?」
 ジャンが先程、揶揄られた仕返しとばかりに鼻で嗤えば、フロックは唇を尖らせ、持っていた菓子を放り投げると汚れた手でジャンの顔を触り出した。
「うえ、ちょ、やめろ!」
「ばーか!きらい!」
「じゃあ嫌いな奴の膝にいつまでも乗ってんじゃねぇよ、ばーか」
「きらーい、きらーい!」
 癇癪を起したように脚をじたばた動かし、悪態を吐いても膝から退こうとしないフロックに反撃するが、意地でも退く気がないのか、嫌いと言いつつ学生服にしがみついて頬を寄せ、顔や手についていた汚れを移していく。
 面倒で気難しいと言えば気難しいが、要は寂しくて甘えたがりなのだろう。
「早いけどご飯前にお風呂行っといたら?」
「分かった、フロック、一緒に風呂行くぞ」
「ん……」
 不機嫌ながらもコアラのように抱き着いたままのフロックをジャンは抱え、少々痺れた足を解すように揺らしてから屑を落とさないよう風呂場へ向かう。
 汚れた服を洗濯機に放り込み、一緒に風呂掃除を済ませて体を洗う。初めて一緒に入った時は『ちんちん』などと言いながらフロックがジャンのものを掴んで引っ張った事は懐かしい記憶である。今は手が伸びてきたら叩き落すようにしているため被害はない。
「寒くなってきたからちゃんと温まってから出るんだぞ」
 相変わらずコアラのようにくっつくフロックを膝の上に乗せ、沈まないようにしながら溜まっていく湯を眺めてのんびり寛ぐ。
 ハロウィンの日がどうなる事やら。と、愁いながら。

 十月三十一日。
 ハロウィン当日の夕方。
 ささやかながら飾りつけをした玄関で、赤いマントに黒い服、頭には角を着けて小鬼の仮装をしたフロック並びに園児達をジャンが対応していた。本当なら部活もあるのだが、用事があるからと頼み込んで早めに上がらせて貰い、量販店で買った安物の魔女帽を被り、学生服にマント代わりの白いシーツを纏った頃にインターホンが鳴って園児達が可愛らしい甲高い声で『とりっくおあとりーと』と、高らかに叫んだ。

 ジャンは魔女らしく意地悪に笑い、先頭に立つフロックへ話しかけた。
「お菓子はあるけど、どうしよっかなー」
 母親が選んだ菓子を詰め、ラッピングした袋を絶対に届かない高い位置で揺らし、ぶーぶー不満を垂れる園児達を揶揄ってやる。毎回すんなり貰えると思うなよ。社会の厳しさを教えてやろう。などと、自身も学生の分際で考えていた事が見透かされているのか、後ろに立っている保育士達は微笑ましそうに笑っているだけである。
「お菓子やらなかったらどんな悪戯するんだ?」
 玄関先でしゃがみ込み、フロックのぷにぷにした頬を突いてジャンはにやつく。
 フロックが小さく短い手で袋を奪おうとしても、すい。と、位置を上げて渡してはやらない。次第にフロックの頬が膨らみ始め、フグのようだと笑っていれば、思い切り飛んでジャンへと体当たりをした。
 所詮は幼児。完全に舐めてかかっていた上に、つま先立ちで居たジャンは突然の攻撃によろめき、尻もちをついた拍子に菓子袋から手を放してしまう。
「ふろっく、おまえ……」
「ばーか!」
 菓子袋を手にしたフロックは快哉を上げ、他の園児達から持て囃されながら意気揚々と保育士の元へと帰っていく。

 玄関に残されたのは、飛びつかれた瞬間、フロックの唇が触れて驚いるジャンだけだった。

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