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馬房

小説は妄想と捏造甚だしい。 原作のネタばれ、都合の良い解釈。 R18、グロ(精神的にも)、暴力表現などが含まれます。 冒頭にざっと注意を書いてありますので、それを読んだ上での 閲覧を宜しくお願い致します。何かあればご連絡いただければ幸いです。 基本的に右ジャンしか書きません。 萌が斜め上です。無駄にシリアスバイオレンス脳です。 拙い文章ですが、少しでもお楽しみ戴ければ嬉しく思います。 右ジャン、ジャン総受けしか書きません。あしからず。

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ネクタイ

・フロのループタイでの妄想
・小煩いジャン君
・2020/08/27






 またお前。
 そう言いながら正面から歩いてきた男に見据えられ、俺は眉を顰める。
「新兵にとって誰が上官か解り易くするためのループタイなんだから、ちゃんとしろよ」
「上官の顔も覚えられない部下なんか要るか?」
 注意をしてきた小煩い男、ジャンと睨み合う。
 以前は同じ身長だったと言うのに、食い物が良くなったせいか、元々の素質か、今では少しとは言え見上げなければならないのが少々癪だ。
「新兵の時は緊張して上官の顔をじろじろ見たり出来ない奴も居るんだよ」
 屁理屈をこねて窮屈なループタイをつけたがらない俺に、喧しく構ってくるのはジャンくらいなものだ。
「優秀な英雄様達とは違って俺はおこぼれで貰った評価だからな。お前と違ってそもそも人が近寄って来ねぇよ」
 俺が皮肉気に口元を歪め、鼻を鳴らせばジャンは困ったように眉を下げ、一つ息を吐いて兵団コートのポケットへと手を突っ込み、中から紐を取り出して見せた。
「またそんな事言うだろうと思って俺の予備持ってきた。どうせ持ち歩いてすらないんだろ」
 ジャンの言う通り、俺に与えられたループタイは自室の引き出しの中に収められたまま、日の目を浴びる事の方が珍しいくらいだ。俺も煩わしい雑事は嫌いだし、暇じゃない。
 兵団の雑事は『優秀な英雄様』方にやって貰おうと思い、敢えてループタイは付けていなかったのに、ジャンが問答無用でループタイを俺の首につけ、襟を正して丁寧に紐を絞ると満足そうに笑った。
「似合ってるよ。格好いいぞ」
「お前のだろ?別に俺は……」
「いいよ、今持ってるのを失くさないようにする。あ、外すんじゃねぇぞ」
 俺の肩を叩き、ジャンが傍を通り過ぎていく。俺の視線はその背中を追い、顔も名前すら知らない兵士に声をかけられているジャンを視認して声をかけられなくなってしまった。

 顔を正面に戻し、他人の手で付けられたループタイに触れれば、ほつれ一つない滑らかな紐に、飾り石の硬質な感触を指先に感じた。
 ジャンの声は遠ざかり、既に俺を見ても居ない。だから、さっさと外してポケットなりに突っ込んでも良かったが『似合っている』『格好いいぞ』。その声が耳の奥にとどまって離れず、ループタイを締める際に近づいた頭から香った清潔な石鹸の匂いまで思い出してしまい、どこか落ち着かなくなった。

 外すのではなくほんの少しだけ首元を緩め、深呼吸をした後、背筋を伸ばして軍靴を鳴らしながら廊下を歩く。
 一時の気紛れではあるが、このままつけてやっていてもいいか。

 そんな気にはなった。

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