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馬房

小説は妄想と捏造甚だしい。 原作のネタばれ、都合の良い解釈。 R18、グロ(精神的にも)、暴力表現などが含まれます。 冒頭にざっと注意を書いてありますので、それを読んだ上での 閲覧を宜しくお願い致します。何かあればご連絡いただければ幸いです。 基本的に右ジャンしか書きません。 萌が斜め上です。無駄にシリアスバイオレンス脳です。 拙い文章ですが、少しでもお楽しみ戴ければ嬉しく思います。 右ジャン、ジャン総受けしか書きません。あしからず。

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わんわんわん

・犬になるジャン君
・ゲキ重感情フロック君
・特に事件も起こらずだらだらしてます
2021年11月01日






 疲れた。
 帰ったらジャンに癒して貰おう。

 同棲している恋人に甘える自分を想像しながらフロックはマンションの階段を上り、玄関の鍵を開けて絞めていたネクタイを緩める。
「ただいまー、美味いもん買ってきた……」
 鞄とコンビニスイーツの入った袋を置こうとしたら、ミルクティー色の毛玉が目に入った。
 くぅん。と、小さく鳴くソレ、綺麗な毛並みのラブラドールレトリバー。そこそこ大きい。
「ジャンー?誰かの犬預かったのか?」
 あの人の良い馬鹿の事だ。
 誰かが旅行に行くとかで飼い犬を預かったんだろう。
 俺も犬は嫌いじゃないから良いけどさ、せめて一言言えよ。と、思いつつ念のためにスマートフォンを確認する。もしかしたら、俺が気付いてないだけで連絡が来ていた可能性があったからだが、メールは俺が今から帰宅する事を告げる物だけだ。既読すらついてないんだが。寝てるのか?
「ジャン?」
 名前を呼びながら台所、居間、浴室、寝室、最後に便所を覗いても姿はない。犬のおやつでも買いに行ったのか。そうは思えど違和感が凄かった。やたら律儀なあいつが俺に断りもなしに犬を預かる。何の説明もしていないのに家を空ける。今までそんな真似をした記憶は無い。
 くぅん。犬が鳴いて俺のズボンを咥える。
「首輪もついてねぇな……」
 俺は床に片膝を突いて犬と向き合う。
 毛足の長い首元を撫でても固い感触がなかったため探れば首輪をしておらず、どこの飼い犬かも解らない。もしや、迷い犬という奴か?
「あいつ、もしかして飼い主探し回ってんじゃねぇだろうな……」
 独り言を呟き、スマートフォンを取り出してジャンの番号をコールするが、寝室から音楽が聞こえてきた。
「はぁ……?」
 俺が訝しげな声を上げれば、再び犬が切なげに鳴く。
 連絡手段も持たずに外に出るか?いや、ゴミ捨てくらいならありえるが、今日はゴミ出し日じゃないし、コンビニ。は大体持って行くな。偶々持っていなかった可能性もあるが。
「はいはい、構ってやっから落ち着けよ」
 くんくんくんくん犬が煩い。
 食べる気が無くなったコンビニスイーツを冷蔵庫に放り入れ、買い置きのビールを取り出して今のソファーで寛ぐ。テレビは別に興味無いし、スマートフォンで何を見るでもなく適当に犬と戯れる。随分と懐っこいな。
 世の中、旅行に行くために邪魔だから捨てるような屑も居るようだし、こいつも実は捨てられたんじゃないか。もしかしたら俺も捨てられたのか。まさかな。関係は良好だったはずだし。
 良好だったよな?
「俺捨てられたんじゃないよな?ジャンの持ちもんあるし……」
 自分で自分を説得して慰め、納得をする。
 犬はなんとも言えない低い声で呻っていたが、何を言っているのかは解らない。なんとなく、苦虫を噛み潰したような表情だなと思った。犬って意外に表情豊かなんだよな。世話をした経験は無いが。
「ジャンどこ行ったんだろうな。まじつまんねぇ」
 飲みきったビールの缶を握り潰し、適当にソファーの前にあるローテーブルの上に放置する。ジャンが居たら臭くなるから水洗いしてちゃんと捨てろ。って叱ってくるんだろうけど、居ないから張り合いもない。片付ける気にもならない。
「なー、お前ジャンがどこ行ったか知らねぇ?俺あいつが居ないと生きてる意味ねぇんだけどー」
 スーツに犬の毛がつくのも構わず、ふかふかした柔らかさを堪能しつつ抱きついて愚痴を零す。俺はジャンにベタ惚れもベタ惚れだ。あいつが俺を受け入れてくれなかったら、恐らくはストーカーだとか、やばい方向に行ってたに違いない。
「ジャンが居ないと飯食うのも面倒臭いし、俺死んじゃうかも」
 犬の毛に顔を埋めてうだうだうだうだ。
 ここでジャンが帰ってきたら恥ずかしい奴だよな。なんて思いつつもぼやきは止まらない。
 如何に俺がジャンを好きか犬に語り聴かせる。端から見たらきっと危ない奴に違いないが、幸いここに居るのは俺と犬だけ。どうでもいい。
「んー?」
 ぼやきつつ、犬にしがみついて毛を撫でて居たのだが、ふわふわの感触がつるっとした肌触りに変わったものだから、顔を上げて犬を見れば、そこにはでっかい犬じゃなくてジャンだった。どんな手品だ。
「ちょっと……、風呂入ってくる」
 素っ裸のジャンが俺の手をそっと外して立ち上がり、浴室へと入っていく。俺はそれを呆けながら眺めていた。

 ジャンは直ぐに風呂から上がり、俺にも入るように勧めてくれたため、素直に入った。と言うか、謎の出来事で頭が混乱しすぎて言われたままになっていた。が、正解か。
「あー、あのー……」
 俺が風呂から上がると、ジャンがビールを片手に気不味そうに口火を切った。
 なんでも、疲労が過ぎると犬になるんだとか荒唐無稽な事を言い出した。なんじゃそら。
 しかし、ジャンが居なかったら犬が居て、犬が居なくなったらジャンが出てきたのは否定しようがない事実だ。犬はずっと俺が羽交い締めにしてたんだから逃げられるはずもない。信じるしかないのか。
「お前がそんな特異体質とは知らなかった」
「中学卒業したくらいからでなかったしな……、あの、嫌になったり……」
「なんで?」
 別に正体が犬だろうが人間だろうが、ジャンがジャンなら俺はどうでも良い。
「俺の愛を舐めるな」
「はは、そらどうも……」
 ジャンは苦笑しているが、本気だぞ。

 ソファーに座り、ドライヤーで髪を乾かした後で、ここぞと膝枕をして貰う。
 柔らかく髪を撫でてくれる感触が心地好い。
「犬のお前も可愛かったから、またなったら撫でさせろよ」
「なったらな」
 ジャンが更に困ったように笑う。
 犬になると困る事でもあるんだろうか。
 ま、今日は流石に突然すぎて驚いたし、また今度話を聞くとしよう。
 


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