忍者ブログ

馬房

小説は妄想と捏造甚だしい。 原作のネタばれ、都合の良い解釈。 R18、グロ(精神的にも)、暴力表現などが含まれます。 冒頭にざっと注意を書いてありますので、それを読んだ上での 閲覧を宜しくお願い致します。何かあればご連絡いただければ幸いです。 基本的に右ジャンしか書きません。 萌が斜め上です。無駄にシリアスバイオレンス脳です。 拙い文章ですが、少しでもお楽しみ戴ければ嬉しく思います。 右ジャン、ジャン総受けしか書きません。あしからず。

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

【貸】

・19歳の大学生フロジャン
・ゲップとかちょい下品
・それとなく純真?フロック
・2021年7月13日ワンドロ





「また?」
 ジャンは訝しげに眉を顰めつつフロックを見やる。
「ちゃんと返してるだろ?」
「そうだけど……」
 言いながら、ジャンはフロックに小銭を渡す。

 ここ数ヶ月、フロックがやたらと小銭を貸してくれと頼んでくる。
 金額事態は少なく、同額の小銭が出来れば直ぐに返してくれるため、最初こそ気にかけてはいなかったものの、あまりにも頻繁だと疑問に感じてしまう上に、フロックは常に金欠か。と言えばそうでもない。
 財布にはきちんとある程度のお金は入っており、本人が口にした通り、きちんと返金してくるのだから何が問題かと言われれば、一々煩わしい。以外に思う所はない。が、これが唯一にして最大の問題である。購買、自動販売機、コンビニエンスストアとあらゆる場所で要求をされるのだから、これではどんな善人とて面倒に感じるだろう。持っているのなら自分の財布から出せば良い。なのに、フロックは一々ジャンに集るのだから困っていた。
 貸したくない気持ちがある訳ではなく、意図が解らないため若干の気持ち悪ささえ感じだしてしまう始末だ。
「あんがとー」
 フロックは笑顔で小銭を受け取り、自動販売機に入れて飲みたかったジュースを購入している。

「はい、返す」
 おつりで出てきた小銭と、財布に入っていた小銭を合わせて直ぐに返され、ジャンは益々首を傾げざるを得ない。
「なぁ、なんで持ってるのに俺に借りる訳?」
「んー……、内緒」
「はぁ……?」
 勿体ぶるような理由なのか。
 追求するのも面倒になったジャンは渡された小銭を自分の財布に入れ直し、炭酸の入った清涼飲料水を一気飲みしているせいで忙しなく動くフロックの喉仏を眺める。
「そんなの良く一気に飲めるな……」
「う゛ぉう……」
 声とゲップが同時に出たのか、小汚い音を出すフロックを実に嫌そうな表情でジャンは数秒ほど見詰めていたが何も言わずに踵を返して講義室へと向かう。
「学校がケチで碌にクーラーもつけてくれねぇから暑くて仕方ねぇんだよ」
「まー、暑いけどなぁ……」
 冷え性気味で、あまり冷房を好まないジャンでも流石に汗ばんでくるような熱気。とてもではないが窓辺には近づきたくない。

 炭酸の一気飲みの理由は話すのに、小銭の借金は言えないような理由なのか。フロックの基準が今一理解できず、謎は無駄に深まっていく。
「あの爺、無駄話が多くて眠いんだよなぁ」
「必要と思うから言ってんだろ」
「あのぐだぐだは個人的な趣味だろ」
 これから受ける講義を担当する教授の悪口をフロックが零し、ジャンが控えめに窘めはしても、確かに。と、同意する部分もあったため強くは言わない。
 長机が並ぶ室内にて適当な位置に二人で並んで座り、やや退屈な講義を受ける。

 その帰り道、暑さに呻いて氷菓でも買おうとドラッグストアへ。
 店内の冷凍食品コーナーで涼みつつ、フロックは簡素なレモン風味のかき氷、ジャンはコーンの上に渦を巻いたアイスが乗っている物を選んでレジへ向かう。
「貸して」
「金はあんだろーが」
「貸して」
 レジの目の前でのやりとり、店員が困ったようにジャンへと視線を寄越す。
「じゃあ、俺が纏めて……」
「いやいい、貸してくれ」
 奢って欲しいのではなく、ただ貸して欲しいだけ。をフロックは頑なに主張し、アイスの溶け具合が気になった事と、後ろに人も並びだしたため、小さく溜息を吐きながらジャンは小銭をフロックに手渡す。

 何がしたいんだか。

 近場の公園の木陰に座り、二人で冷たい菓子を囓って元気の塊のようにはしゃいでいる子供達を眺めていれば、唐突にフロックがとんでもない発言をした。
「なんか借りてたらずっと一緒に居てくれるかなー、とか思って」
「ふぁ……?」
 ジャンが最後の一口を口の中に放り込み、咀嚼中だったため可笑しな声になったが、戸惑いは十二分に伝わったようで、フロックは目を細めながら語りかける。
「お前って意外と律儀だし、頼られたらうきうきするだろ?だから」
 どんな理由であれ、頼られたら放っておけないジャンの性格を利用して、簡単に貸し借りができる小銭を借りていたのだ。と、フロックは唐突に白状した。
 何を思っての白状かも、どういう意味の告白かも察せず、ジャンはアイスクリームを飲み込んだ。
「なぁ、これからもよろしくな?」
「ほあ?」
 砂埃のついた尻を叩きながら、フロックはジャンへ満面の笑みを浮かべた。
 これからも細々と貸せという意味か、あるいは友人として宜しくと言いたいのか、楽しげな笑みからは、何一つ汲み取れなかった。

拍手

PR