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馬房

小説は妄想と捏造甚だしい。 原作のネタばれ、都合の良い解釈。 R18、グロ(精神的にも)、暴力表現などが含まれます。 冒頭にざっと注意を書いてありますので、それを読んだ上での 閲覧を宜しくお願い致します。何かあればご連絡いただければ幸いです。 基本的に右ジャンしか書きません。 萌が斜め上です。無駄にシリアスバイオレンス脳です。 拙い文章ですが、少しでもお楽しみ戴ければ嬉しく思います。 右ジャン、ジャン総受けしか書きません。あしからず。

男の中の男

・スクカ
・バッボポルコ
・危機感の薄いバッボジャン
・ライナーは最後にちょっと
・人のつぶやきに乗っかって出来たネタ





 街をぷらぷらと彷徨い、適当に店を冷やかして居たら如何にも悪そうな格好の人間に声をかけられた。
「兄さん、決まってるね」
「俺等いいとこ知ってんだけど一緒に遊ばない?」
 大人な不良に憧れがあった俺は褒められた事にいい気になり、まんまとついて行った。

 そして、十分ほど経った頃、俺は酷く後悔する。

 二人組に連れて行かれた店は、一見ナイトクラブのように見えたが空気はどことなく煙たく、鼻腔にまとわりつくような甘ったるい独特の匂いが充満しており、赤紫色の照明もかなり薄暗くて近くに居る人の顔すら禄に見えないような空間だった。

 俺は目をこらして薄暗い店内を見渡す。
 ショーなどは行われていない。
 酒をたしなんでいるらしい影も在るが、ほとんどのグラスはテーブルに置きっぱなし。そして、ソファーの上で蠢く人、人、人。経験が無くとも見て理解できてしまうほど、ソファー席のそこかしこで重なり合い、男女を問わない厭らしい声が室内に響いていた。

 異様な光景に俺が一歩後ずさり、入り口へと踵を返そうとすると手首を掴まれて引き摺られる。
「お、俺帰る!」
「無粋な事言うなよ」
「そうそう、解っててついてきたんだろ?いいもんやるしさ」
 どちらが何を喋っているのかすら良く解らない。
 とにかく逃げなければ危ないと頭の中で警鐘が鳴るばかり。
「いい、要らない……!」
「あんまり我が儘言うと、痛い目見るぜ?」
 言うが早いか、腕を思い切りねじ上げられてしまい、痛みで声が詰まって出せなくなった。
 目に熱い水が込み上げてくるが、そんなもので手加減をしてくれるような人達ではないと、今理解した。楽しそうに笑う声が直ぐ側で聞こえて体が震える。

 ぐいぐいと店の奥へと引き摺られ、抵抗しようとする度に腹や足、顔に衝撃が走る。
 足の速さには自信はあったが、なにせ一対二では分が悪すぎた。もう、いっそ抵抗しない方が痛い目を見ずに済むんじゃないか。諦めかけた時、俺達の方へと真っ直ぐに歩いてくる人影があった。

 もしや店員さんか。
 助けを求めたらどうにかしてくれるだろうか。
「あ、あの……」
「その餓鬼、こっちに渡せ。知り合いの知り合いだ」
 助けを求めるまでもなく、影はいきり立った二人組をあっという間に黙らせ、俺の手を引いて入り口へと歩いて行く。
 途中、影の人が店員らしい影と二三ほど会話をしてから外に出れば、安堵から止めどなく涙が溢れ出て、みっともなさに逃げ出したくなった。
「おい、送ってやる」
「ぶえ……」
 泣きすぎてまともな返事すら出来ない俺を大型バイクの後ろに乗せ、影の人はどこかへと向かう。
 繁華街の灯りに照らされた横顔は精悍な顔つきで、濃い金の髪がライオンのたてがみのようで、とても格好いい人だった。

 どれくらい走ったか、降ろされたのは見慣れた家の前。
「おい、ライナー!居んだろ!」
 びーびーと何度も呼び鈴を鳴らし、玄関前でがなり立てる影の人。
 中からばたばたと慌てた足音がして扉が開かれれば、やはり良く知っている学園の王様が目の前に現れた。
「これ、お前のだろ?なにふらふら遊ばせてんだ。このドベが」
 舌打ちをしながら、あからさまに不機嫌な声でライナーへと怒る影の人と首根っこを掴まれて差し出される俺。この二人、知り合いなのか。
「ジャン、お前どうしたんだ!?」
 意外な人間の繋がりに驚いたのも束の間、汚い顔の俺を見てライナーが仰天し、影の人と共に家に招き入れてくれた。

 リビングに通され、ライナーから暖かい濡れタオルを貰って顔を拭く。
「じゃあな」
「ポルコ、すまない……」
「あぁ、折角、女連れて遊びに行ったってのに台無しだ」
 影の人ことポルコは文句を言うだけ言うとさっさと退散してしまい、心配そうな表情で俺を見詰めるライナーと二人きりになった。
「何があった?」
「えっと、話せば長い事ながら……」
 そう前置きしたが、長くもなんともない。
 調子に乗った俺が危ない人間にのこのことついて行き、怖い目に遭いそうになった所で偶然、居合わせたライナーの知り合いであるポルコに助けられた。との情けない経緯。
 訊けば、ポルコとライナーは幼馴染みだそうで、間接的にだが俺を知っていたらしい。お陰で助かった訳だ。
「なんにせよ、無事で良かった」
 ライナーがぐしゃぐしゃと俺の髪を乱しながら撫で回す。
 いつもなら子供扱いするなと怒る所だが、流石に神経が削れまくった後だと心が落ち着いた。
 気分が落ち着き出すと、助けてくれたポルコの事を脳裏に思い浮かべる。

 精悍な顔立ちや髪は元より、立ち振る舞いの無駄のなさ。
 黒い革のジャケット、革のパンツ、厳めしいブーツを難なく着こなす様。
 大型のバイクもよく似合い、なにより強かった。あの、性質の悪そうな輩を秒殺してしまったのだから。

 あの場所に居たという事は、彼も相応に悪い人なのだろうが、自分に利益がないのに幼馴染みの知り合いと言うだけで助けた上に見返りを要求するでもなく、きちんと安全な場所に連れて行ってくれる優しさが、
「かっこいい……」
 ぼけっと宙を見つめながら思わず呟いた。
「ジャン?」
「なぁ、あの人、どんな人?」
 あれこそ俺が格好いいと思う男の中の男だ。
 俄然、ポルコに興味が湧いて俺は戸惑っているライナーに詰め寄る。

 ライナーは中々、渋ってポルコの情報を教えてくれなかったが、『嫌いになるぞ』の一言でなんでも教えてくれ、後日、お礼もかねてポルコの元へ訪ねる予定も取り付けた。

 また会える日が楽しみで仕方ない。
 俺は体の痛みも忘れて浮かれに浮かれていた。

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