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馬房

小説は妄想と捏造甚だしい。 原作のネタばれ、都合の良い解釈。 R18、グロ(精神的にも)、暴力表現などが含まれます。 冒頭にざっと注意を書いてありますので、それを読んだ上での 閲覧を宜しくお願い致します。何かあればご連絡いただければ幸いです。 基本的に右ジャンしか書きません。 萌が斜め上です。無駄にシリアスバイオレンス脳です。 拙い文章ですが、少しでもお楽しみ戴ければ嬉しく思います。 右ジャン、ジャン総受けしか書きません。あしからず。

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祝福の日はいつ

2018/08/13
・ブライダルコーディネーターリヴァイと、社畜なジャンの話
・友情出演マルコとミケ。
・マルコが結婚してる
・ミケさんが喫茶店の店主
・現パロ





 結婚式場。
 大勢からの祝福を受け、永遠を誓い合う夫婦となる事を宣言する場所。
 その支援をするブライダルコーディネーターと言う仕事にリヴァイ・アッカーマンは就いている。

 昔から、人の一人や二人殺してそうだと言われた人相で、育ててくれた伯父にも似合わないと笑われもしたが、美しく着飾り、幸せを喜ぶ人々を送り出す。いい仕事だとリヴァイは思っている。
 持ち前の神経質さは細かい気配りとされ、顧客からの受けも良く、満足度が高い式場として有名になり毎日が忙しい。金を持った親は、子供の門出と言う事で金を惜しまないため、リヴァイの評価も鰻登りである。
 今日も午前中に一組の夫婦を送り出し、リヴァイは人々の喜びに満ちた表情を思い返しながら休憩室で紅茶を啜っていた。

「アッカーマンさん、ちょっとお願いします……」
「どうした……」
「具合が悪くなって倒れた方がいらっしゃいまして……」
「倒れた?急性アルコール中毒か……」
 同僚が困り果てた様子で休憩室にやって来て、リヴァイの指示を仰ごうとする。
 結婚式は酒を出す祝福ごととあって、時折、はっちゃけ過ぎる愚か者が居るが、そう言った人間の始末も、今働いている式場のコーディネーターであるリヴァイの仕事だった。どうにも、昔から背の低さと人相の悪さから性質の悪い輩に絡まれ続け、荒事に慣れていたお陰か、酔って暴れる来場者の扱いもお手の物で、会社からは重宝されている。
「いえ、酔っていると言うよりは……、ちょっと来て貰っていいですか?」
 どうも気弱な同僚の手には余る案件らしい。
 飲みかけの紅茶を一気に飲み干し、カップはテーブルに置いたままリヴァイは同僚と共に走って行った。

 件の場所に辿り着けば、式場の廊下の目立たない場所で、ぐったりと壁に凭れかかっている男性が一人。目立ったのは長めの色素の薄い髪色に、最悪の顔色。体調の悪さを表すように、眉間に皺を寄せ、苦しそうに呼吸をしている。
「アルコールの匂いはしないな」
 リヴァイは、すん。と、男性に顔を近づけて鼻を鳴らし、匂いを嗅ぐが酒精は全く感じられない。酔って行き倒れた訳でもなさそうだった。
「はい。しかも、受け付けもされてないので、どこの来場者なのかも解らず……」
 具合の悪さを押してやってきたは良いが、受付にも辿り着けず行き倒れたとの予想が妥当か。ブラック企業が云々と騒がれる昨今、働き詰めでようやっと休日を捥ぎ取ったものの、体が限界を迎えたのか。
「解らんものは仕方がない。手の空いている俺が救護室に運ぶ。お前は仕事に戻れ」
「はい。ありがとうございます!」
 頬を軽く叩いても男性は目覚めず、苦しそうに呻っただけだ。
 左腕を持ち上げて肩に回し、横抱きにしてみても、確実にリヴァイよりは高い身長の割に軽過ぎた。きちんとした食事もとれていないのかも知れない。
「全く、最近の若いのは……、無茶ばっかりしやがる」
 どこぞの老害のような口ぶりで、倒れた男性にリヴァイは呆れる。
 派遣や、フリーターばかりを都合良く使い、業務を回す会社が多くなり、正社員になる事が最優先とされる就職難の今の時代。職を失くしては不味いと理不尽でも言われるがままに働いて、体や精神を壊してしまう者も多いとは聞き及んでいる。そんな手合いだろう。
 リヴァイは名も知らぬ男性と、近くに落ちていた男性の物であろう鞄を抱えたまま、体勢を崩す事無く真っ直ぐに救護室に向かい、看病に当たる。
 少々体が熱くなっているようだったため、スーツのジャケットを脱がし、スラックスのベルトとネクタイを緩め、保冷剤をタオルで巻いてから頭の下と首に置いて様子を見る事にした。

 男性の目の下は隈が濃く、やつれ気味で全く眠れていないのではないかとすら思えた。頭や首を冷やす傍らで、蒸しタオルを作って目の上に置いてみる。
 こうまでして来たと言う事は、どうしても祝いたい相手の式だったのだろう。家族か、親友か、それは判らないが、志半ばで倒れるとは哀れな男だ。ただ、ある意味に置いて、行幸とも言えたかも知れない。式の最中に人が倒れれば一時中断をせねばならなくなるためだ。
 それでは祝福をする大事な人間の門出に、汚点をつける羽目になってしまう。

 意識が戻っても、ご祝儀を受け取り、受付だけを済ませて帰らせるのが最善だろうか。
 三十分ほど様子見をしていれば、男性が身じろいで目の上に置いていたタオルを外し、胡乱な眼差しで周囲を見渡していた。状況の把握が追い付いていないのか、まだ具合が悪く意識が朦朧としているのか、両方か、何度も瞬きをしている。
 幾分、顔色はましになったが、良くなったとは言い難い。
「あの、ここは……」
 男性がやっと言葉にしたのは場所への問いだった。
「式場にある救護室です。通路で倒れていらっしゃいました。覚えておられませんか?」
 言葉遣いに気を付けながら説明をしてやれば、男性の表情は泣きそうに歪んで気落ちしたようだった。
「急に目の前が暗くなり出して……、あぁ……、ご迷惑をおかけしました……」
 手を顔に当て、覇気がなく、呆けた様子で男性は謝罪を口にする。
 尋常ではなく疲れ果てている様子が手に取るように理解出来、リヴァイは思わず眉を顰めた。
「きちんと眠れてらっしゃらないようにお見受けしましたので、時間がおありでしたら、もう少し休まれてはいかがでしょうか?」
「いえ、悪いので、帰ります……」
 緩慢な動作で男性が動き、簡易ベッドから降りようとしたが、体勢を崩して落ちかけた。咄嗟にリヴァイは抱きかかえ、強制的にベッドに押し戻す。
「貴方を抱えた際にも思いましたが、成人男性とは思えない細さです。普段がどんな生活かは存じ上げませんが、このままだと死にますよ?」
「でも、他の人も頑張ってて……」
「自己犠牲精神が旺盛ですね。貴方が祝福に来た方は、貴方がそうやって亡くなられた場合、『よくやった』と、喜ぶような方なんでしょうか?」
「マルコはそんな奴じゃねぇよ!」
 暗かった目に光が灯り、激高の眼差しと共に怒声が飛んできた。
 マルコ。マルコ・ボット。確か午後の式の予定に入っていた名前だ。温和で、賢そうな男性だったとリヴァイは思い出す。来場者を席に着かせて入場するまで、祝いの日だと言うのに彼は寂しそうな面持ちで周囲を見渡し、何度もスマートフォンを確認していた。今は式も半ば、ケーキカットの後、花嫁が両親に向かって手紙でも読んでいる頃合いだろう。
「ならもっとご自身を大事にする事ですね。会社に貴方の替わりは居ても、ご友人に貴方の替わりは居ないんですよ。個人的な考えですが、私は友人が自分自身を蔑ろにしていたら怒りを覚えます」
 社会人は取り換えの利く会社の歯車と比喩されがちであるが、会社の替わりも幾らでも在るのだ。噛み合わない場所で噛み合わない部品をやって摩耗する時間は無駄だ。
 相手を慮るばかりが大事にする事ではない。自身を大事にする事も思いやりに繋がるのだ。と、上手くやって行けるのか、将来に不安を持っている新郎新婦を慰めるために良く口にする言葉であったが、思いの外、効果があったのか、男性はぼろぼろと泣き出してしまった。
「だって、俺、毎日みたいに怒鳴られて、どんどん自信が無くなって行って……、今日も、皆、頑張ってるのに、半休なんていい身分だなって凄く嫌味言われて……」
 リヴァイのような見ず知らずの人間に弱音を吐くほど弱り切っているようだ。怒鳴りつけ、人格も行動も否定して自尊心を削ぎ落し、都合の良い社畜に仕上げていくありがちな洗脳と言えばいいだろうか。
「飽くまで持論ですが、『皆』と、良く口にするのは大勢を盾にして、大多数の意見と思わせる事で自分勝手な主張を通そうとする方に多いですね。その周囲の人間が多少、同調する事はあるでしょうが、その方の言う皆は存在しませんよ」
「で、でも、その人部長で……」
「どれだけ人望のある方か、私は存じ上げませんが、自分にとって耳障りの良い言葉しか聞かない、さぞ狭い世界の王様であろう事は窺えます」
 つまり、自分に胡麻を擦る人間しか周囲に置かない小さな人間という意味だ。
 そんな人間に使われていて満足か?踏みつけられて悔しくはないのか。男性の置かれている状況も知らない癖に、初対面にもかかわらず、ずけずけと言い募る。同情や、憐憫ではなく、何となく、腹が立っているだけだ。
 あのマルコと言う男性の友人なら、まだ入社して数年の青年だろう。それをここまでぼろぼろにしてしまう会社や、それに甘んじてしまう男性自身に。どんな理由があるかは知れないが、ここまでやせ細って、倒れてまで守らなければならない場所だろうか。
「無責任な事を申しました。ご友人には来場を伝えておきますので、少しでも休まれて下さい。お名前を窺っても?」
「あ、えっと、ジャンです。ジャン・キルシュタイン……」
「承りました」
 救護室に備え付けの冷蔵庫に入っている緊急用の経口補給液や、栄養補助食品を男性に渡して部屋を去る。

 スタッフ専用の通用口から式の最中である部屋に入り、楽しそうではあるが寂しさを隠せないでいる新郎へ、ジャンの来訪を耳打ちをすれば泡を食ったように立ち上がり、全てを放って部屋から出て行こうとしたため慌てて制止する。
「新婦のお色直しの時間がございますので、その際に」
「あ、は、はい……」
 祝いに来てくれた友人が、倒れて救護室に居るなど心穏やかではないだろう。
 式が進む時間が長く感じるのか、そわそわと解り易く新郎であるマルコは落ち着きを失くし、新婦にまで気遣われている始末だ。
 十分ほど経って、新婦がドレスを着替えるために式場から退出し、空き時間が出来る。
 マルコがトイレと偽って救護室に走り、リヴァイは案内のために同行する。
「ジャン、お前、どうしたんだ……」
 救護室へ入ったマルコの第一声はそれで、顔や肩、腕を確認するように握り、怒り交じりの涙を零していた。
「マルコ落ち着けって、大丈夫だし……」
「大丈夫な訳ないだろ!仕事が忙しいって聞いてたけど、こんなに痩せてるなんて聞いてないぞ⁉しかも倒れるなんて尋常じゃないだろ!何で相談してくれなかったんだ。お前がこんな風になって僕が喜ぶとでも思ったのか?悲しいよ……」
 マルコの嘆きは尤もで、リヴァイにも理解が出来た。
 寧ろ、先程、リヴァイがジャンへ伝えた事を、マルコはそのまま実践している。ちらりと覗き見れば、ジャンは目を潤ませ、マルコの言葉に頷きながら小さく謝っているようだった。

 少しでも改善するといいが。
 友とはいいものだ。

 そんな事を思いながら、リヴァイは救護室を後にしたのだった。

   ◆ ◇ ◆ ◇

 職場での雑事をすっかり頭の隅に追いやった頃、常連になっている喫茶店へ行くと、あ!と、鋭い声が上がり、煩わしさにリヴァイは声を上げた見慣れない店員を睨み付けてしまった。
「あ、すみません……」
 おどおどとしている店員はリヴァイが睨むと謝罪を口にして、カウンターの奥へと隠れるように入って行った。
「ミケ、何だありゃ。新人か?」
「あぁ、最近雇ったんだ。色々器用にこなしてくれるし素直だし、助かっている」
「客を見て驚くような真似をするなと躾けておけ」
 店主と対面するカウンター席に座り、リヴァイは苦言を呈する。
 ただでさえ目つきが悪く、怯えられがちな人相であるリヴァイは、好奇の視線が嫌いだった。お陰で可も不可もなかった機嫌が悪くなっていく。
「驚いたのは確かだろうがな、寧ろ嬉しかったんじゃないか?」
「あぁ?」
 柄悪く、片眉を上げて古い友人であるミケを睨め上げながらリヴァイは声を出す。一方的に顔を合わせて喜ばれるような相手の記憶はない。
「ほら、ジャンおいで。挨拶をするといい」
 名前に引っ掛かりを覚え、ミケが紹介する新人の店
員をリヴァイはじっと眺めるが、記憶にない男であった。
「何でも、とあるお節介に説教されて転職を決意したらしくてな、糊口を凌ぐために取り敢えずうちでバイトしたいと言って来たんだ」
「はぁ、そうか……」
 それがどうした。と、ばかりにリヴァイは二人を交互に眺める。
 一九〇を超えるミケよりも身長は幾分小さい細身の男性だ。こざっぱりと刈り上げた短く色素の薄い髪に、ブランデーのような深みのある色合いの瞳。肌は白く、清潔そうな白いカッターシャツと、黒いベスト、サロンエプロンが良く似合っている印象を受ける。
「一時的な腰掛けバイトなんぞ後々、お前が困るんじゃないか?駄目とは言わねぇが……」
「色々話を聞いてたら面白くてな」
「まぁ、お前がいいなら俺が口出す事じゃねぇしな……」
 リヴァイがちらりと青年を見れば、へらりと笑って返される。
 中々酷い事を言っている自覚はあるため、笑顔を返されるとは思わず眉根が寄った。
「取り敢えず茶をくれ」
「解った。ジャン、ダージリンを淹れてくれ」
「はい!」
 紅茶には口煩いリヴァイへ、店主であるミケ自らではなく、新人に任せる辺り相当見込みがあるのか。
 興味が湧いてリヴァイはジャンの手付きをじっくりと眺めていたが、中々どうしてミケの言うように、器用に上手く紅茶の用意をしている。丁寧且つ手早く、所作も美しい。
「中々いい拾いもんしたんじゃねぇのか?」
「そうだろう?何でも憧れの人がお茶に凝っているらしくてな、離職した後かなり練習をしたんだとか」
 ふふん。と、笑いながら自らの顎髭を弄り、ミケはリヴァイへ耳打ちをしてくる。
「直ぐに転職しねぇでバイトとは暢気な奴も居るもんだと思ったが……、本格的に弟子にしたらどうだ?」
「そうもいかないんだ。ブライダルコーディネーターの資格が欲しいそうでな、今必死で勉強中らしい。先輩としてお前が教えてやったらどうだ?」
「口で教えられる事柄ならお勉強で十分だ。対応や応用は実戦で学ぶしかねぇ」
 リヴァイが素っ気なく口にしても、ミケはにやつく顔を止めず、不快感が溜まっていく。
「あ、あの、どうぞ……、お口に合うといいんですが……」
 ソーサーに乗せたカップを新人店員であるジャンが、リヴァイにぎこちなく差し出し笑いかける。漂ってくる香りは良い。取っ手ではなく、カップの淵全体を指で掴むと言う可笑しな持ち方で飲めば、口当たりも良く、飲み易い温度で香りを残しながら喉を滑り落ちていった。
「悪くない」
「本当ですか、良かった」
 美味い紅茶に、機嫌は幾分好転し、リヴァイなりの誉め言葉を口にすればジャンは嬉しそうに笑った。
 閉店も間際の時間帯、他に客は少ないが、嫌そうな顔一つせず、美味い茶を出す新人。悪くない。正直な所、激務の割に然程給料がいいとは言い難いブライダルコーディネーターよりも、本格的にここで修業をしてみてはどうかと勧めて見るか考えていると、熱っぽい視線に気づかされた。
「何だ?」
「あ、えっと、ありがとうございました。って言いたくて……」
 視線の主はジャンで、ミケは隣でやはり髭を撫でながらにやついている。
「俺は何もしてないが?」
「その、式場で倒れてた馬鹿です……、貴方に諭されて、自分がどれだけ追い詰められてるか気付いて……、ちょっとごたごたしましたけど辞められたので」
 リヴァイは目の前の新人を凝視し、記憶を掘り返す。言われてみれば面差しが似ている。がりがりに痩せこけ、眼の下に隈が住み着いていた顔と違い、少しばかり肉がついて血色が良くなり、髪も切っていたため気付かなかったのだ。
「睡眠薬飲まないと眠れないレベルなのに、寝れないなら、その分、起きて仕事出来るんだからいいや。なんて思ってた自分が今じゃ恐ろしいです。貴方のお陰です。資格とって、同じ所に入れたら言おうと思ってたんですが、ここの常連だとは存じ上げませんでした」
 恐らく、ミケは以前の会社を辞めた理由を訊いて、ブライダルコーディネーターになりたい旨までジャンは馬鹿正直に話し、察したミケがやや面白半分もあって雇ったのだろう。
 ミケを一睨みしてからリヴァイは息を吐く。
「友人とも仲良くやっているか?」
「はい、辞める時にも色々手助けをしてくれて、新婚なのに、奥さんに悪いくらいで……。マルコは検事をやってるんですけど、未払いの残業代とか、就業規則違反とか、本当に驚くくらい動いてくれて、残業代も貰えて、過労で倒れた事も考慮されて自己都合による退職ではないって失業保険も直ぐに適用されましたし、ほんと、心配かけてしまってて……、貴方の言葉がなかったら、頑張らないと。って、意固地になって、それすら気づけなかったかも知れません」
 悲し気に目を伏せるジャンの表情からは、心の奥底までは見抜けないが、事態が好転したのなら良い事だ。
「まぁ、良かったな。だが、ブライダルコーディネーターよりいい仕事はあるぞ?」
 ここの店員とか。流石に差し出がましいかと最後までは言わなかったが、この腕を振るえなくなるのは惜しい気もした。
「マルコも貴方の事を凄く褒めてましたし、俺の親友の人を見る目に間違いはないので大丈夫です!」
 何が大丈夫なのかの根拠が著しく不安になるが、自信満々に言ってのけるジャンの快活な素振りに、本当に元気になったものだ。と、リヴァイは口角を上げる。
「まぁ、どんな道を選ぶかは本人次第だからな。強くは止めないが、お前の紅茶は美味い」
「あ、ありがとうございます……」
 柄にもなく、はっきりとリヴァイが褒めると、ジャンは顔を真っ赤にさせて背中を向けてしまった。それを少々、不満に思いながらも会計を済ませ、ミケではなく、ジャンへ『また来る』と言ってからリヴァイは店を出た。

 甘酸っぱい匂いだな。
 との、ミケの一言は、ジャンの耳にも、リヴァイの耳にも届いていない。

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