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馬房

小説は妄想と捏造甚だしい。 原作のネタばれ、都合の良い解釈。 R18、グロ(精神的にも)、暴力表現などが含まれます。 冒頭にざっと注意を書いてありますので、それを読んだ上での 閲覧を宜しくお願い致します。何かあればご連絡いただければ幸いです。 基本的に右ジャンしか書きません。 萌が斜め上です。無駄にシリアスバイオレンス脳です。 拙い文章ですが、少しでもお楽しみ戴ければ嬉しく思います。 右ジャン、ジャン総受けしか書きません。あしからず。

乱される香り

【乱される香り】
・開幕エロ






 包まれる甘い香りに、甘ったれた声。
 唇を吸えば唾液すら甘ったるく、快楽が脳を酔わせていく。

 らいな。と、耳元で囁かれる名前。
 胸の奥が熱くなり、幸福感に満たされた。
「ジャン……」
 快楽に蕩けた眼を自身へ向けるジャンの頬を撫で、体を繋げながら唇にもライナーは食らいつく。肌と肌を密着させ、体を震わせながら吐精すれば、ジャンの腰がびくびくと跳ね、脚が絡みついてくる。
「おなか、あっつい……」
 唇を離せば、酩酊状態にあるかのような幼稚な言い回し。しかしながら、中に出されたライナーの精を喜ぶようにジャンの体内は蠢いてライナーの性器にしゃぶりついている。
「お前の匂い嗅いでたら、無間に出来そうだな……」
「おれが、しぬ……」
 体力的にも、ライナーの方が勝り、まして抱かれる負担が大きいジャンからすれば至極当然の苦情。決して本気で死ぬまでやるようなつもりはないにしろ、延々と肌を合わせ、繋がって居たくなる心地好さは尋常ではなかった。
「ただいまー。どんだけやってるのさ、外まで匂い漏れてた」
 二人が睦み合っている現場に、不躾にやってきたのは同居人のベルトルト。さも当然の光景として目の前の現状を受け入れており、手に持っていた袋からコンビニエンスストアで買って来たのだろう簡易的な栄養補給に使うゼリー飲料に、水の入ったペットボトルが出てきた。
「薬飲んでなかったら、匂いが本当に凄いな、もう酔いそうだ」
「らって、きの、も、おまえら、がぁ……」
 休日の前日とあって、夜に腰が立たなくなるまでジャンは二人に可愛がられてしまい、気絶するように眠ってしまったがために、フェロモンを抑制する薬を飲みたくても飲めなかったのだ。そして、また朝に欲情され、現在はライナーに可愛がられているのだから一体、どうしろと言うのか。
「うんうん、僕等のせいだよね。知ってる」
 ベルトルトはベッドに座り、ライナーに抱かれるジャンの髪を優しく撫で、ゼリー飲料を口元へと持って行く。
「はい、ちょっと遅いけど朝ご飯替わり」
「へぁ……」
 男に抱かれながらの朝食。
 あまりに異様過ぎて脳味噌の処理が追い付かず、ジャンは奇妙な声を漏らした。
「何かお腹に入れないと薬飲めないでしょ?僕のは呑んでたけどあれご飯じゃないしね?」
 ジャンは無言で吸い口に唇を寄せ、喉を上下させながらゼリーを呑み込んでく。薬を飲めば状況が少しはましになるかと呆けた頭で考えたからではあるが、ベルトルトの下品な冗談に反応したくなかったからでもある。
 実際に、起き抜けに欲情され、口に含んだベルトルトの性器を懸命に奉仕した挙句、咥内に出された精液を飲み下した。美味しいはずのない精液が異様に甘く感じたから、頭がぼやけたまま飲んでしまったのだ。
「はい、良く出来ました。薬。詰まらせないようにね」
 ゼリー飲料を飲み終わり、フェロモン症の薬を口に含まされ、ペットボトルの水で飲み込んだ。薬が効き出すまで、ざっと三十分ほどだろうか。フェロモンが収まれば少しは。などとジャンは期待するが、うっとりしたベルトルトの眼差しを見て、幾分、心は絶望に染まる。
「はぁ、なんでジャンってこんなに可愛いんだろ……」
「そろそろ動いていいか?」
 律義にジャンが薬を飲み終わるまで、動かずに待っていた、ライナーがジャンへ伺いをかけるが、ジャンとしてはもうそろそろ体力の限界であるため抜いて欲しかった。なのに、二人にじ。と、見詰められると胸がざわつき、腹の奥がどうしようもなく疼く自分も居て、頭を抱えたくなる。
「ジャン、僕ももう一回……」
 自らの顔を覆っていたジャンの手をベルトルトが握り、甘えたような口調で懇願して来る。
 決して、二人は横暴な獣ではない。精を吐き出して欲情が落ち着けば、こうして動いたり、会話や気遣う理性はあった。
「わか……った……」
 元々は友人としての好意だったはず。
 なのに、窮地を救われ、好意を告げられながら抱かれてからどうにも自身の心も揺れ動き、二人に対して熱い情が日々膨れ上がっていく様子が自分でも感じられた。
「ぃう、あ、あー……」
 ライナーが濡れた中を掻き回すように腰の律動を始めれば、ジャンの口からは、はしたない声が零れ、勝手に腰が跳ねた。くすくすとベルトルトが笑いながら唇を合わせて来る。
 二人はジャンの体液を甘いと表現したが、ジャンにも二人の体液が極上の甘露の如く甘く感じられ、口に含めば途轍もない幸福感に満たされた。抗えないほどの、心地好さと共に。
「べる、らいな……、あ……」
 ライナーが二度目の精を吐き出し、性器を自身の体内から引き抜けば、腹の中から消えた熱に喪失感を感じ、切なげな声をだしてしまう。もう、十分過ぎるほど抱かれているのに、この浅ましさ、はしたなさは何なのか。と、羞恥も湧き出すが、
「じゃあ、次僕ね?」
 ベルトルトに抱き寄せられ、耳元で囁かれれば、体の芯に灯った熱は急激に高まるばかり。
 ぐったりとしているジャンを俯せにし、背中から伸し掛かりながらベルトルトは性器を押し込んでいく。愛おし気に名前を呼びながら。
「突っ込まれる時、やばいくらい厭らしい面するよな」
「はは、バックからだと見れないから、ちょっと勿体ないよね」
 二人がジャンには解らない会話をし、同意して笑い合っていた。ライナーはジャンの髪を撫で、じっくりと顔を見詰めている辺り、件の表情を目に焼き付けているのだろう。先程も散々見ただろうに、飽きないのか。そんな風に思いはすれど、ベルトルトの動きによって思考は白んでいく。
「あっ、ん、あ、これ、やば……」
 ベッドに俯せての行為は、ベルトルトの性器によって中を抉られる快感と共に、自身の性器がシーツに擦れてもたらされる快楽にまで襲われ、頭が可笑しくなりそうだった。
「あぁ、可愛いな、ちょっと激しくするね」
 言葉通りにベルトルトが動きを速め、ベッドが激しく軋みだし、濡れた水音と共に甘い疼きが全身を駆け巡っていく。
「んっ、んんー、ぅ、ふ……、んん……」
 激しくしたかと思えば今度は奥へと押し込み、動きを失くしてベルトルトはジャンを抱き締め、可愛いな。なんて言いながら、ベルトルトはジャンのうなじに歯を立てて噛り付く。本来であれば、痛い。と、苦情物の刺激だったが、今のジャンはどこに刺激を受けても快楽に変換してしまうようで、引き攣った悲鳴とは裏腹に、電流のような快楽が走り抜けていった。
「すご……、中めちゃくちゃびくびくしてる……」
「腰を自分で揺すってんのもいいな」
「ち、がぁ……」
 無意識を指摘され、ただでさえ熱い体が羞恥によって更に火が灯った。
 ベルトルトから受ける刺激によって、勝手に体が痙攣しているだけであって、快楽を得ようと動いているつもりはなかったが、結果的には同じになっている。
「ちょっと起きようか」
 低く優しい声と共に腰を持ち上げられれば尻を高く上げた態勢になり、ジャンの性器が合った位置のシーツと肌が一瞬だけ糸を引いた。
「一杯出てたんだな」
 まるで、幼子を褒めるようにライナーがジャンの頭を撫でるが、本人は吐精した感覚などはなく、どろどろに汚してしまったシーツが視界に入った事で混乱していた。
「ライナーはもういいの?」
「おう、大分落ち着いた」
 散々ばらにジャンを抱き、薬の効果もあって二人を惑わすフェロモンも大人しくなりだしたとあって、ライナーは大分、冷静になってはいるが、顔や、耳、ベルトルトが齧ったうなじを弄り回して遊んでいる。
 表情は意地悪いものではなく、実に優し気に見詰めている。こんな状況でなければ懐くくらいはしてじゃれつきたいくらいには。
「ぃあ、あっ、……はぁ、べる……」
 ライナーに、ベルトルトに犯され続け、誰の精液かも判らないものが尻から太腿を伝い落ちるくすぐったさにももどかしさが湧き起る。
「ひ、ぁ、あー……」
 ライナーと同じく、ベルトルトも奥へ奥へとマーキングのように精を送り込み、確認するかのようにジャンの腹を撫ですさる。
「お腹ぷっくりしてるね」
 中から押し込まれたベルトルトの性器が腹の肉を押し上げ、更に言えば二人に出された精液が溜まっているのか薄らと膨らんでいた。
「ジャンは痩せてるから、殊更解り易い感じだね」
「ほんとだな」
 ライナーまで面白そうにジャンの腹を撫で、二人して楽しそうだ。
 やられている本人は疲労困憊で、さっさと倒れ込んでしまいたいと言うのに、いつまで人で遊んでいるのか。なんて怒りたい心境になってくる。そんな元気もないのだが。
「もー、いい、だろ……、も、はら、いっぱい……」
 ベルトルトが性器を抜けば、支えを失くして腰が落ち、ジャンはぐったりとベッドに横たわる。既に指の一本すら自由に動かす気力すらなかった。昨夜と今朝、合計で何時間この大型犬二匹の相手をしていただろうか。考える事すら億劫で仕方がない。
「体流して上げるねー」
「俺も後で行く」
 こいつらの体力は無尽蔵なのか。
 ジャンは呆れながらも抱きかかえて連れて行って貰う分には異を唱える事はない。尻目には、ライナーが惨状としか言いようのないベッドからシーツをはぎ取っている姿が見え、今日は洗濯機が大忙しだと予想をつける。

   ◆ ◇ ◆ ◇

「お前等さー、体力やば過ぎじゃねぇの?」
 お風呂でも散々に遊ばれ、ジャンはリビングのソファーに横になりながら、ライナーの手ずから昼食のお粥を食べさせて貰っていた。驚くほど全く動けないからだ。最早、介護状態と言っても過言ではない。
「そうか?まぁ、ずっと運動部だったしな」
「いや、俺もそうだし……」
 大学に入ってから、これといった運動部には所属していない。しかしながら、ジャンとて中、高と陸上部に所属し、相応に良い成績を残してきたのだ。体力はあるつもりだったため、体の負担を加味しても、ここまでの消耗はいささか解せないでいる。
「ジャンはどちらかと言えば瞬発力だし、持久力がないんじゃないかな?」
「俺とベルトルトは、趣味が筋トレみたいなもんだしな」
「ライナーだけだろそれ。僕は本読む方が好きだし」
「は?お前もしょっちゅう腕立てとかしてるだろ」
「軽い運動は脳の活性化にいいんだよ」
 意味不明な喧嘩を始めた二人へ密かに呆れ、お粥もほぼなくなったためソファーの背凭れに向かって寝返りを打つ。たったこれだけでも大きく深呼吸をしなければならないほど疲れる。
「なんか、疲労回復によさそうなの買ってくるね……」
「あ、俺も……」
 食べた食器を台所に置き、ライナーが寝室から毛布を持ってきてジャンの体にかけてから部屋を出て行く。
「別に、お前等ばっかのせいじゃないけど……」
 薬の事はさておき、抱かれている間はジャンも二人を求めていたのだ。だから、余計にフェロモンが強まった可能性すらある。
「ふぇろもん……」
 ライナーとベルトルトが、元からジャンへ肉欲交じりの好意を向けていた事は、フェロモンに中てられた事からも察せられるが、果たしてそれだけなのか考える。
 フェロモン症などにならなければ、健全な友人関係を築けていたのだ。こうなってしまった事は、今更悔いても意味がなく、今が嫌だとは言わないが、何故こうなったのかは考える。
 全ての発端はこの病気。自分へと好意を持つ相手を引き付けるフェロモンを発する至極、面倒な能力とでも表現すればいいのか。

 そもそもフェロモンとは。
 種類は色々あるが、確実に子孫を残すために体が成熟したと周囲の異性に知らしめ、誘引するためのもの。フェロモン症は、これが一番近いだろう。
 だが、動物的に考えれば、ジャンは雄であるため、本来なら自らの子孫を宿してくれる雌に向けて発せられなければならない。だが、引き寄せられたのは同性の雄二人。この食い違いが『病気』と、称される所以なのか。
 性フェロモン以外で有名なのは、女王物質と呼ばれる物。他者を従わせ、逆らえなくする絶対王者になるための選ばれしものだけが出すフェロモンである。群れを形成し、同種の生殖能力を奪い、君臨するためのもの。
 万が一だ。自らの意思に関係なく、フェロモン症患者が出すフェロモンに中てられたがために、自らの性的嗜好や、好意の在処すら捻じ曲げられ、二人が己に従っているのだとしたら、過剰なまでの甲斐甲斐しさも納得出来てしまう。

 元々、面倒見は良かったが、ここまでではなかった。
 恐らく。

 フェロモンによって狂ってしまったのだと想定すれば申し訳なさが先立ち、気分は憂鬱になっていく。ジャンが他者を利用し、支配、制圧する事を好む人間性であれば話は簡単だったが、残念ながらそうではない。
 二人が誰かに好意を抱いて愛を育んでいたとしたら、それを邪魔してしまった事にもなり、人としての意思を歪め、従わせているかもしれない事実。ちくちくと罪悪感が胸を突き、体の気怠さもさることながら、気分まで更に落ち込んでいく。
「ただいま!」
 帰宅の声が重なり、競い合うようにしてライナーとベルトルトはソファーの前に駆け寄ってくる。首だけを動かして顧みたその姿は、さながら大型犬二匹がご主人様に褒めて貰いたがっているようで微笑ましいが、やはり哀しさが勝った。
「どうかしたのか?」
 袋から取り出した栄養ドリンクの蓋を開けながら、ライナーが不思議そうに眉根を寄せているジャンを見詰める。
「吐きそうとか?」
「いや……」
 ベルトルトがドラッグストアで貰った袋を広げながら問うが、多くを語る元気はない。
「とりあえず飲んどけ、ちょっと不味いかも知れんが」
「冷えピタあるよ。あと、効きそうな湿布」
 小さなストローを栄養ドリンクの瓶に刺し、ライナーが差し出してくる。袋の中に見えるオレンジジュースや、グレープフルーツジュースはビタミン補給だろうか。
 仰向けになって栄養ドリンクを飲ませて貰い、額には冷えピタに腰や関節には痛みを緩和する冷たい湿布を張られ、少々寒い気もしたが、毛布に潜り込めば程良い加減になり、うとうと眠気を誘う。
「ゆっくり休め。あ、待て薬は飲んでおけ」
「あ、あー、うん……」
 落ちそうになる瞼を何度も瞬かせ、差し出された薬を口に含み、オレンジジュースで嚥下した。医者が聞いたら怒りそうな飲み方であるが、とても起きてはいられなかったが、飲まない訳にもいかないのだ。
 大目に見て欲しい。
「お休み」
「ん……」
 甘いオレンジの味に唇を舐め、毛布に顔を埋めて夢の世界に誘われ、微温湯の心地好さに身を委ねた。

   ◆ ◇ ◆ ◇

 一日たっぷり休んだお陰か、体の調子は六割がた戻り、世話になりっ放しもどうかと寝床から起き出して朝食の準備をしていれば、ライナーに包丁を奪われ、ベルトルトからは横抱きにされてソファーへと拉致された。
「なんなんだよ」
「まだ本調子じゃないだろ?顔色悪いよ」
「そうそう、ゆっくりしとけよお姫様」
 俺はお姫様じゃない。
 文句は空しく口の中で消え、ベルトルトを背凭れにしてぼんやり朝のニュースを眺める。なにやら、フェロモン症研究の権威がフェロモン症にかかったとかで、コメンテーターが好き勝手な放言をしている様が中々に不愉快だった。
「勝手な憶測で語りやがってまぁ……」
 ぼそ。と、呟けば、ベルトルトが慌ててチャンネルを変え、日曜日特有のヒーロー番組が放送されていた。弱きを助け、強きを挫く。現実世界ではこれほど上手くはいかないが、フェロモン症を寛解させる治療法が確立すれば、二人を開放してやれるのに。などと気分は再び沈んでいく。
 先程のコメンテーターの科白『フェロモン症なんて死ぬ訳でもないんだから、なった所でね。いいじゃないですか。薬で抑えられるんでしょう?』。世間からの偏見の目。見ず知らずの相手から襲われた際の恐怖に記憶にこびりつく苦痛や嫌悪感。薬を飲まなければ日常生活すら危うくなるかも知れぬ不安感。何一つ、想像すらしないから放言出来る科白。
 加えて言うなら、もしかすれば、二人の人間の人生を歪めてしまったかもしれない罪悪感もある。
「お前等が助けに来てくれた時は餓鬼の頃、憧れてたヒーローみたいに見えたよ」
 ヒーローが敵を倒し、弱き者へと手を差し伸べる。
 フェロモンに中てられる前だ。きっと、あれは二人の本心であろうと安心出来た。こうして、向けられる好意も本物と感じられたら、どれだけ良かったか。
「そっかな……」
「ほら、出来たぞ」
 ベルトルトが照れ臭そうに頬を掻き、ライナーは耳が赤くなっている。どちらも照れており可愛い光景ではある。なったものは仕方がない。開き直るには、まだまだ時間がかかりそうだった。

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