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馬房

小説は妄想と捏造甚だしい。 原作のネタばれ、都合の良い解釈。 R18、グロ(精神的にも)、暴力表現などが含まれます。 冒頭にざっと注意を書いてありますので、それを読んだ上での 閲覧を宜しくお願い致します。何かあればご連絡いただければ幸いです。 基本的に右ジャンしか書きません。 萌が斜め上です。無駄にシリアスバイオレンス脳です。 拙い文章ですが、少しでもお楽しみ戴ければ嬉しく思います。 右ジャン、ジャン総受けしか書きません。あしからず。

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強制発情

【強制発情】
・甘い果実の山奥視点






 フェロモン症を発症したジャンを住まわせてから五日が経った。

 ベルトルトとライナーはリビングに置いてある食事用の机に対面して座っており、重々しい面持ちで睨みあっていた。空気もどこかひりついている。
 ジャンのフェロモンに万が一、耐えられなくなったらどうするか。を、二人で協議し合っている最中なのだ。

「あのさ、もしも我慢出来なくなったらどうする?毎日ちょっと危ない……ん、だけど……」
 相談の体で、切り出したのはベルトルトからだ。
「そうだな……正直……、毎朝、頭冷やさねぇと、俺も不味い」
 頭だけでなく、股間も含む。とは流石に言い辛かったのか、ライナーが言葉を濁しながら受ける。
 お互いに、ジャンに好意を寄せている事は知っている。
 叶わぬ恋と半ば諦めている事も。

 ジャンが心配で、自らの住居に住まわせたは良いが、自己処理の回数が増えに増え、どうにか落ち着かせて入るが、体の欲求と、頭の理性が焼き切れるのは今日か明日か明後日か。
 少しでもジャンの残り香を消そうと、窓と言う窓を開け、まんじりともせずに、リビングの椅子に座ったまま二人は項垂れ、それぞれの想いを整理している。
「もし、もしだよ?僕が抜け駆けとかしたら……」
 上目遣いにベルトルトがライナーを見やれば、瞳孔の開ききった瞳と目が合い、首を撫でつけながら、まぁ、嫌だよね。と、ぽそりと零す。
「まぁ、ジャンが選んだんなら、仕方ないと思うぜ……」
 言葉上は納得したような物言いをして見せても視線はうろつき、足元も貧乏揺すりをしたりとライナーは明らかに落ち着きをなくし、口元を摩っていた。解り易い親友兼義兄に対してベルトルトは苦笑を漏らす。

 ならばどうするのか。
 答えは見つからない。

「どっかの国みたいに一人を多数が共有、みたいな……」
 一夫一婦制ではなく、一夫多妻のようなもの。唯一思いついた解決案をベルトルトが呟けば、虚を突かれたように間抜け面をライナーが晒す。
「それ、って、ジャンを俺とお前で共有しようって言う……?」
「僕だってジャンを取られたくないし、ライナーだってそうなんだろ?だったら、それしかないじゃないか、言っとくけど、別に変な性的嗜好があるとかじゃないからね!」
 椅子から半ば腰を浮かせながら、ベルトルトにしては珍しく、早口で捲し立て、ライナーへ強く主張して見せた。
 自分の発言が少々恥ずかしかったのか頬を赤らめつつ、興奮気味に主張してくるベルトルトに、戸惑いながらもライナーは落ち着くように促し着席させる。
「お前の主張は解ったが、俺等が良くてもジャンが受け入れるか?それ?」
 先ず、ベルトルトの提案を受け入れる事を前提としてライナーは話を進める。
 こちらを立てればあちらが立たずとは良く言ったものだ。どうするにせよ、ジャンが受け入れてくれなければどうしようもないのだ。二人揃って失恋も十二分にあり得る。

「何にせよ、現状は様子見しか出来ないよね……、あぁ、フェロモン症って治るのかなぁ……、家に居てもいつ理性が切れるか……」
「外に出しても、またあんな目に遭うと思うと心配だしなぁ」
 ベルトルトが頭を抱え、ライナーが腕を組んで天井を仰ぎ見る。
 ジャンを住まわせる原因になった事件を脳裏に浮かべ、同時に重々しく出せない言葉と共に溜息を吐き出した。

「もしも、もしもだよ?僕等を同時に受け入れてくれるとしたら?ライナーも共有案に異論はないと仮定してだけど……」
 仮定に仮定を重ねて、決してライナーを見ずにベルトルトは話しかけた。
「難しいな……」
 ライナーが共有案に乗り気かと言えばそうでもない。出来るならば、想い人は独り占めしてしまいたいのが人の常だ。
 それが解っているが故に、ベルトルトも仮定として話し、最悪の場合。を強調している。

「ただ、正直、現時点でジャンを諦めきれるかって言うと、無理だな」
 フェロモンに中てられ続けている事実が、想いの現状を如実に表している。
 中てられて辛いと訴えるベルトルトも同様だ。
「受け入れて貰えるかな……」
「さぁな……、あの妙に甘っちょろい性格に期待するしかねぇよ……」
 現実主義者と言って憚らないジャンは、実の所、甘い部分がある。本人も自覚はしているようで、余計に己を律しようとしてか、自分にも他者にも言葉がきつくなる事が多々あった。
 万が一、同性かつ友人であり、まして二人揃って受け入れてくれるとしたら、それは同時にジャンの情に深く入り込めた瞬間だろう。

 暫し無言の時間が過ぎ、夕刻を告げる音楽が町に響く音を聞きながら、あのさ。と、ベルトルトが口火を切った。
「僕、ジャンの処女欲しい……」
 控えめに言いつつも、はっきりとした主張にライナーは体勢を崩し、あわや椅子から転げ落ちそうになった。丁度、落ち着くために飲み物でも淹れようと腰を浮かせ、天板に手をついていた所に、とんだ爆弾発言を受けたせいだ。
「は、何⁉何だって⁉」
 付き合ってもいない内から欲するものなのか。
 いやしかし、主張するだけならば。
「俺だって欲しいぞ」
「………そう」
 ライナーが主張し返せば、どんよりと濁った眼をベルトルトに向けられた。
 知っている。これは不満がある時の顔だ。負けじとライナーも鼻を鳴らして睨み返す。
「何でもライナーの方が先にやるじゃないか。偶には僕に譲ってくれても良くないか?」
「お前がまごまご俺の後ろでやってるからだろ?何を人のせいにしてんだ。お前だってやりゃあ出来る癖に、わざと俺にやらせてんの知ってんだからな」
 日頃の互いに対しての不満まで漏れ出て、雰囲気はやや険悪なものになる。
「言いたい事あるなら言えよ、あ?」
「あの時だって、先にジャンを見つけたのは僕だったのに、さも自分が助けた王子様みたいに振る舞ってさ、僕を除け者にしてたじゃないか⁉」
「んな事ねぇよ!ってーか、助けたのは事実だろ。そう言うお前だって説教しながらぐいぐい行ってたじゃねぇか⁉」
「ジャンに気を付けて欲しいし、僕を見て欲しいんだから当たり前だろ!」
「俺だってそうだよ!ジャンの好感度ポイント稼ぎたいに決まってんだろ!」
 下品な話題は子供のような言い合いに発展し、睨むのは当然で、殴り合いにも発展しようとした最中、二人のスマートフォンが同時に鳴り響き、瞬時にそちらへ顔を向ける。
 内容は『さっきバイト終わって、今スーパーに来てるけど、なんか要るもんある?』とのジャンからの連絡だ。
「要る物……、あったっけ……、あ、昨日ボディソープなくなりかけてたかも……」
「あ、あー……、そう言えばティッシュがなくなりそうだったな……」
 完全に気勢を削がれてしまった二人が、頭や頬を掻きながら足りない物を考え、ジャンへと返信する。

 返信を終えた後の沈黙が少々気不味い。
 わざとらしい咳ばらいをベルトルトがすると、それを合図に椅子に腰を落ち着ける。
「埒あかないから、ちょっと冷静に理論的に決めよう……」
「どうやって……」
 理論的に。とは言っても、そもそもが一人の人間の共有などに倫理も糞もあるのだろうか。ライナーの眉間の皺は深まるばかりだ。
「あれの大きさで決める?」
「あれ……、あれって、あれ?」
 ちらりとライナーが股間に視線をやると、ベルトルトは頷く。
「お前、偶にすげぇ下品だよな……」
 ライナーも下系の下品な冗談は良く口にするが、それは飽くまで冗談の域を超えないものだ。しかし、今のベルトルトの発言は、真剣なだけに、余計にえげつないものに聞こえて仕方がなかった。
「どうでもいいよ。それで、一番おっきい時でライナーってどのくらい?」
 ライナーの言を切り捨て、話を進めてくるベルトルトは中々強引だ。提案するからには相応の自信があるに違いない。目の前で吐かれる発言に閉口しながらも、ライナーは考えてみたが、さてどうだったかと頭を悩ませる羽目になる。
「どうだったかな……、お前は測った事あんのか?」
 問い返せば、ベルトルトも悩み出した。
 同性の他人からでかい。と持て囃されて面映ゆい気持ちになった事は多々あれど、敢えて測った経験がないのは同じである。

 無言でベルトルトはトイレへ、ライナーは寝室へ定規やメジャーを持って向かい、数分後に伝え合うと同時に嫌な表情になった。
「ライナーのが太い……」
「長さ負けた……」
 どちらも一勝一敗だ。何がとは言わないが。
「あ、こうしよう、先に広がった方が後が楽だと思うんだが、どうだ」
「は?どういう意味?」
 何だかんだでライナーも負けず嫌いだ。こうなったらごり押すしかないと意志を固め、勝手な理屈を構築していく。
「だから、太い俺が先にして、お前が挿入する際に楽に入るようにだな……」
「露骨に先行狙ってきたね……」
 最初こそ驚いていたベルトルトも、直様、ライナーの意図を見抜き、失笑して見せた。
「文句あんのか……?」
「僕だって譲りたくないし……」
 協議は平行線。主張が交わる事はない。
 険悪な雰囲気に再度なり始めた時、
「ただいまー、言われたのも買ってきたぞー」
 玄関が開いて呑気な声がリビングまで届き、瞬く間に喧嘩は終了した。

「おう、お帰り」
「お帰り、お疲れ様」
「二人とも帰ってたのか。出迎えご苦労ー」
 日用品や食料の入った重い荷物を床に下し、軽口を叩きながら、紐が食い込んで痛かったのであろう手をジャンがぶらつかせる。
「お茶でも淹れるからゆっくりしてろよ」
「まじで、紅茶がいいな」
「待ってる間、僕とゲームでもしようよ」
「いいぜ、ぷよぷよやるか。今度は負けねぇぞ」
 ほんの数分前まで二人が自分を巡って喧嘩していたとは露知らず、ジャンは落ち物パズル系のゲームを準備をしている。
「お前、アクション苦手なのに、パズル系得意だよなぁ」
「うーん、アクションはごちゃごちゃぼたん押さないといけないから、どうにもね……」
「運動は得意なのに、ゲームには発揮されねぇのな」
「運動とゲームは別だと思うよ」
 他愛ない雑談をしながらでも、頭に過るのはどちらが先にジャンを戴くかの邪な思い。
 お湯を沸かしているライナーをベルトルトが見やれば、考えている事は同じらしく、じっとジャンを見詰めていた。

 お互いに譲る気はない。
 一番はっきりしているのはそれだ。
「なぁ、ライナーとベルトルトって、どっちがつえーんだ?」
 何気なくジャンが発した言葉。ベルトルトとライナーは、共に身長があり、運動能力が高い。どちらに分があるのかが単純に気になったのだろう。
「各々、得意分野が違うからなぁ、何とも言えんぞ」
 ライナーの発言通り、腕力であればライナーが勝る。走力であればベルトルトが勝る。団体戦であればライナーは統率者として優れており、個人戦に於いてはベルトルトが抜きん出ている。どちらがどうとは比べられないものだ。
「喧嘩になった時は、案外、僕がライナーに負けてるかも……、なんか勢いに根負けすると言うか……」
「へー、お前ら喧嘩すんの?意外」
「そりゃ主義主張が違う人間なんだから当たり前だろ」
 実際にさっきしていたし、ジャンに見せないようにしているだけで。との言葉を飲み込み、ライナーは笑って見せる。
「どっちがー、ってのは無粋だったな。すまねぇ」
 あっさりと掌を返して見せたジャンにベルトルトは笑みを浮かべてゲームを再開し、完膚なきまでにジャンを負かしてご満悦だった。
「手加減してやったらどうだ……?」
 あまりの一方的さに、思わずライナーが口を出す。
「ジャンは手加減される方が嫌でしょ?」
「おう……」
「にしても涙目になるまでやるなよ……」
 負けず嫌いが高じて、もう一戦もう一戦とやっている内に、あまりの悔しさで涙目になって震えているジャンを見ながらライナーが呆れかえった様子で告げる。
「ライナー、俺の仇を取ってくれ!」
「えっ、俺も落ち物パズル系は得意じゃねぇんだが……」
「お前アクション出来るし、行けるって!」
 ジャンに泣きつかれ、否とは言い辛くなったライナーが、渋々テレビの前に座してベルトルトの様子を窺えば、やきもちで不機嫌になっている様子がありありと伝わってくるのだから堪らない。
「十回やって、一回でも勝てたら先を譲って上げる。無理だったら僕が先、やらなくても僕が先」
 これはジャン以上に徹底的にやられる。在り得る近未来を幻視しながら憂鬱な気分になっていると、思いもよらない言葉がベルトルトが振ってきた。
 ジャンにとっては意味不明の唐突な発言で、二人を交互に見比べ、きょとんとしているが、ライナーには解るはず。と、ベルトルトは目配せをする。
「自分の得意分野で条件つけるってずるくねぇか?」
「嫌ならいいよ。抜け駆けするだけだし」
 本気か否か、淡々とした口調からは測れないようにみせて、明らかに挑発はしている。
「良く解んねぇけどライナー頑張れよー」
 ジャンが後ろから応援してくれているのだ。俄然ライナーはやる気を出し、勝負に乗った。たかがゲーム、されどゲームである。
「乗った。ほえ面かくなよ……」
 しかしながら、ベルトルトも負けていない。
 無言で集中しながら幾度もライナーを負かしていく。最後の一戦。このゲーム自体に慣れていないライナーは、自分に合ったキャラクターを試行錯誤しながらコツを掴み、どうにか勝利を勝ち取った。かなりのぎりぎりの辛勝ではあるが、勝ちは勝ち。
 ベルトルトはジャンとやり合った後で、最後の最後とあって、集中力が切れ始めていたのだろう、途中で単純な失敗を数度繰り返し、焦りから隙を見せてしまい、ライナーに勝ちを譲ってしまったのだ。
 当のベルトルトは、行き倒れの如く床に転がり、尋常ではないほど落ち込みをみせた。勝てる自信があっただけに悔しさも一入だろう。
「すげー落ち込みようだな、何の勝負だったんだ?」
「風呂……、を、どっちが先に入るか、とか……?」
 よもや、お前の処女をかけて。などと言えるはずもなく、曖昧な笑顔で解り易く誤魔化すライナーに、ふぅん?と、訝しげながらも納得してくれる。

 ジャンが受け入れてくれるならば。柔らかな髪も、白くきめ細やかな肌も、薄く色づく唇も、真っ先に戴けるのだ。などと、夢想し、ベルトルトに足を蹴られながらも無視してライナーは感動していた。
 因みに、その光景を見ながら、ジャンは今日は少し様子が変だな。くらいには感じていたが突っ込むと面倒ごとが起きそうだったため、口には出さなかった。


 そして、ジャンが出て行くと告げた夜。
「おい、ベルトルト、起きてるか」
「寝れる訳ないだろ」
 腹も膨れ、夜も深まり、本来なら眠気に抗えずベッドに沈み込むはずだったが、ライナーはどうしようもなく目が冴えていた。
 ジャンを挟んだ反対側に寝ているベルトルトも同様で、どこか不機嫌な声を発する。
 互いに体を起こし、盛大に溜息を吐く。息を吸えば甘ったるくも心地好い気分になる香りが呼吸器を通り、体の内側に染み込んでいく。自覚するのは例えようもないほど感じる情欲。
「ジャン、絶対薬飲んでない……」
 月明かりが差し込む薄闇の中、額に手を当ててうっそりと呟くベルトルトの声も微かに震え、懸命に抑えているのであろう荒い呼吸が響く。締め切った寝室の中に籠る香り。考えるまでもなくジャンから発せられているものだ。
「俺等が相手だと、なんでこいつはこんなにのほほんとしてんだ?」
「信頼されてるって事なんだろうけど、ここまで意識されてないと若干腹が立つ気もしてくるな……」
 直ぐ側で会話をしているにもかかわらず、すやすやと安らかな寝息を立てているジャンを、ライナーとベルトルトは憎々し気に見下ろす。決してジャンが悪いのではない。二人には見せないようにしていても、本人も辛く、悩んでいるのだ。落ち着ける場所が出来て嬉しかったのだとも理解している。
「ほんと、もう……、無理、かも……、頭が熱すぎてぐわんぐわんしてる」
「あぁ……、俺もだ……」
 ベルトルトの呟きが、ライナーの返事が全てを物語る。
 フェロモン症になったジャンに対して、邪な思いを抱かぬよう最大限信頼を裏切らぬように努めていた。それが今正に限界に達しようとしていた。
「ちんこいってぇ……」
「聞きたくないから黙って……」
 ライナーのぼやきに、ベルトルトが手厳しく窘めるが、同じようなものだ。
 惹き付けられて、情欲をくすぐり誘う香りが、息を吸えば吸うほど染み渡って脳をも侵していく。当のジャンは、寝入った時と同じく落ち着いた寝息を立て、寝返りを打って布団を跳ねのけ、面白い夢でも見ているのか、へへっ。などと寝ながら笑っていた。
「やるか……?」
「ジャンに嫌われたら……、立ち直れない……」
「ちょっと調べたんだが、フェロモンに強く中てられる奴は、発症者からも少なからず好意を持たれてるらしいぞ」
 どこで調べたのか、らしいらしいの曖昧で、都合のいい解釈をライナーが垂れ流す。
 同意はしかねるものの、言わんとする所は察するに余りあり、大きく息を吐いてからベルトルトは唇を引き結ぶ。こちらの想いを切々と訴え、ジャンの深い情を利用してしまえば済し崩しに受け入れて貰える可能性はなくもない。

 最低と言えば最低の発言と行為だった。
 だが、時間が経つごとに、昼間に飲んで辛うじ効いていた薬の効果は薄まり、フェロモンは更に強く、濃く二人を包み込んで、理性の箍を外そうとする。
「らいにゃあ、へへ……」
 ころころとライナーの方へとジャンが転がり、寝言を呟く。平和なのはジャンだけだ。
 ライナーの口角がにやつく形になり、ジャンの頬へ手を伸ばそうとすると、それはベルトルトの手によって叩き落とされた。
「ずるい……」
「寝言だろ……」
「ねぇ、ジャン、僕は?ねぇ?」
 ライナーに嫉妬したベルトルトが、寝ているジャンを揺すりながら問いかける。
 ジャンの眠りは深いのか、頑なに目を空けず、口の中でむにゃむにゃ何事かを呟き、ベルトルトが耳をそばだてれば、『べう……?すきだけど……』との、ぼそぼそした声が鼓膜を優しく揺らかし、ベッドに突っ伏して喜びに打ち震える。
「や、ろう……」
「おう……」
 顔を上げ、目を爛々と輝かせたベルトルトが、決意の一言を告げる。
 一も二もなくライナーも鷹揚に頷き、武骨な手をジャンへと伸ばすと服を脱がしにかかる。

 寝巻を捲れば細くもしなやかな筋肉で整った体躯が露わになり、服に閉じ込められていた香りが二人を襲った。
「くち、可愛いなぁ……、咥えてくれないかな……」
 何がとは言わずとも、現状を鑑みれば理解出来る言葉をベルトルトが漏らし、ジャンの上体を抱きかかえると、唇を奪う。
「あ、俺もキスしたかった!」
 性急に下半身を狙っていたライナーが、非難の声を上げるがベルトルトは無視を決め込んで、息苦しさにもがき始めたジャンの唇を堪能し、話した後は半眼でライナーを見やる。
「約束通り、先は譲って上げるんだからこれくらい構わないだろ。ねぇジャン」
 体を弄り回される感覚や、急に息苦しくなったせいで、楽しい夢は悪夢になったのか、顔を顰めて魘され出したジャンへ、ベルトルトが話しかける。当然ながら明確な返事はないが。
「いいのか?」
「僕から言い出した勝負だしね……」
 舌を打ちながら、ベルトルトが悔しげに言う。
 先に唇を奪えた事で、少しばかり溜飲が下がった故の余裕だが。

 寝ているジャンの服を乱し、肌を愛撫する。
 眠っていながらも、身をよじり、眉根を寄せながらジャンは熱の籠った吐息を吐いた。それがベルトルトとライナーを、より調子づかせ、興奮させていく。枕元に置いてあったハンドクリームを用いてライナーの指が、ジャンの後孔に深々と突き立てられ、濡らしながら解していく。
 同時に、ベルトルトがジャンを抱きかかえながら性器を弄れば緩く勃ち上がり、小さく喘ぐ声を零した。
「ん、あっ、……あ、ぁ」
 静かな夜でなければ聞き逃してしまいそうなほどのあえかな声。
 上がっていくジャンの体の体温。汗ばんでいく肌。
「あぁ、可愛い……」
「綺麗だな……」
 思い思いに放言し、四本の腕がジャンの体を愛撫する。
  
 欲情した獣の夜は、まだ始まったばかりである。

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