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馬房

小説は妄想と捏造甚だしい。 原作のネタばれ、都合の良い解釈。 R18、グロ(精神的にも)、暴力表現などが含まれます。 冒頭にざっと注意を書いてありますので、それを読んだ上での 閲覧を宜しくお願い致します。何かあればご連絡いただければ幸いです。 基本的に右ジャンしか書きません。 萌が斜め上です。無駄にシリアスバイオレンス脳です。 拙い文章ですが、少しでもお楽しみ戴ければ嬉しく思います。 右ジャン、ジャン総受けしか書きません。あしからず。

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気狂いの愛・仄暗い土の下

【気狂いの愛】
・若干R18G注意
・トルトが病んでる感じ
・原作の未来IFっぽい感じ
・雰囲気小話
・色々、諦めてるジャン
・そこそこ幸せ
 【仄暗い土の下】
・不穏なタイトルですが、死にネタではございません→を掘り下げた奴。
・10巻までの知識で書いてますので現在の設定との齟齬、解釈違いなどが多大に含まれると思います
・細かいことは気にスンナ。という心意気宜しくお願い致します
・どこまでも趣味に突っ走って、みんな病んでいる雰囲気
・流血や傷のバイオレンス表現あり
・ジャンがちょろい、なんとなくビッチ気味?
・ベルは下半身に正直
・ライナーは優しいがやや言い訳がましい
・2014/09/18くらいに書いたの





   【気狂いの愛】

 ベッドが体重でへこんで中のスプリングがぎしりと軋む音を上げる。
 己のものではない。ただ寝そべっているだけで身動ぎすらしていないのだから。
 軋む原因は、己の足元に膝立ちで佇み、愛おしげに足先に口付け、肌を撫でる男が動くせいだ。窓すらない、どこかの地下であろう部屋、明かりは小さなランプ一つの薄暗い部屋に溶け込むような黒い髪に、瞳。やや浅黒い肌。二メートル近い身長、恵まれた体格。非力な自分では、左足に嵌められた鉄枷から伸びる極太の鎖が無くとも抵抗は容易く捻じ伏せられてしまうだろう事は想像に難くない。
 そうでなくとも男が愛おしそうに口付ける右の足首、踵の少し上辺りに、はっきりと残る一筋の傷跡が示す。枷を外されたとしても、もう、一生走る事は叶わないだろうと言う事実。
 元々、細身の身体ではあったが、ベッドの上での生活ですっかり筋肉も落ちた。普通の生活行動ですら困難で、この男が居なければどうしようもない。
「ジャン、愛してる、愛してるよ」
 恍惚とした表情で、うわ言のように愛していると繰り返す。己の薄い唇を貪るように口付け、日に焼けず、更に生白くなった肌を掌でなぞる。飽きる事無く何度も犯し、離れるなと懇願する。
 馬鹿だな。と思う。こんな事をしなくとも逃げはしないのに。幼子のように縋り付く大きな身体を抱き寄せ、少し長めの黒髪を撫でてやる。
「ベルトルト、大丈夫、俺もお前が好きだよ」
 こう言ってやると、ようやっと落ち着きを見せ始める。
 攫われ、繋がれ、右足の腱を切られた時は殺されるとも思えるほどの恐怖を覚えたが、殺すならば、小さな羽虫を殺すように能力を以って叩き潰せば良い、刃で切り裂けば良い。そうせず、生きたまま攫ったのだ。恐ろしいほどの執着心だと思う。
 人間一人を抱えて逃げるなど、容易ではない。それでも、殺さず、捨てず、連れて行く選択肢を選んだ。気絶から覚め、抵抗するなと刃を首筋に当てた際も、瞳の中に怯えは見えても、殺意は見えず、微かに振動を感じた。
 そんな震える手で人が殺せるものかと感じた。

 頬を包み込み、愛してると言ってやる。
 男は嬉しそうに目を細め、愛を囁いた唇に食らいつく。
 愛を語る事、身体を提供する事、これ以外に与えられる物がない。
 故に、今日も求められるままに睦み合い、男が満足するまで付き合ってやる。

 もしも、飽きたらちゃんと殺してくれと言っても、そんな事は絶対にないと拒否する。
 じゃあ、死んだら食べろと言えば了承する。全く以って歪んでいる。
 まぁ、もう、どうでもいいのだけれど。

 こいつ等に抱かれるのは嫌いじゃない。




   【仄暗い土の下】

 どすんと硬く、冷たい床の上に落とされた衝撃。横向きに転がった体。

 目が覚めた瞬間、視界に入ったのは、トリガーのついていないブレードの刃を、俺の足首に当てたベルトルトの姿。
「あぁ、起きたんだ。直ぐに終わるから、じっとしてて?」
 そう言って優しげに微笑む。まるで、なんでもない朝の挨拶のように。
 共に過ごした三年間に見てきた表情となんら変わりはない表情で微笑んだ。
 一瞬だけ、こいつ等が巨人との報は嘘で、全てただの悪い夢だったのではないか。壁も無事で、訓練兵団も問題なく卒業して、今頃みんなで憲兵になって、愚痴を言いながらも、同じように笑い合っているのではないか。

 思い描いた白昼夢のような幻想。
 それは、痛みによって引き裂かれた。
 右の足首に刃が通る。刃の冷たさに肌が粟立ち、次の瞬間、熱が溢れた。激痛が足首から全身を貫いて襲ってくる。

 声は出ない。猿轡を噛まされ、出るのは獣のような唸り声だけだ。
 殺される。少しでもベルトルトから逃れようと、冷たい石畳の上を芋虫のように這いずった。手首は紐で縛られ、立ち上がる事すら容易ではない。かちりと自身の血に塗れた刃が首筋に当てられ、動きは止まる。
「駄目だよ、逃げちゃ駄目……。抵抗もしないで、殺さなきゃならなくなる。これ以上、君を傷つけるのは嫌なんだ。お願い。いい子だから。ね?」
 我が儘を言う子供に言い聞かせるかのような口調。今し方、人の肉を裂いた人間の科白とはとても思えない。どろりと刃から垂れた血が、首筋を伝い、無意識に体が震え、息が上がる。目を閉じて、滲んだ視界を払う。瞬きを何度も繰り返し、ベルトルトを見上げれば、その目に殺意はなく、寧ろ怯え。首に当てられた刃から、微かに感じる振動。何故、加害を加える側の人間が、ベルトルトの方が、傷ついたような表情をしているのか。

「僕を独りにしないで……、行っちゃ駄目だ」
 声は震えている。痛みが去った訳ではないが、頭が異様に冴えた。
 足からは未だ血が溢れ、痛みと熱が流れている。
「べ……ぅ……と、う……」
 声を出そうとしても、上手くは出ない。しかし、名を呼んだ事は伝わったようで、刃を投げ捨てるように放り出し、石畳に手を膝をついて、傍らに寄った。嬉しげに歪んでいる表情。
 たかが名を呼んだだけで。
「なぁに?ジャン、あぁ、これじゃ喋れないね。直ぐ外すね?」
 猿轡が外されて、圧迫感が消えて呼吸が楽になる。
「ベルトルト。足……、痛い……」
 喚くような元気はない。
 消え入るような声で、ベルトルトに伝える。
 ただ唯一、殺される事だけはないと、先程の震えから確信はした。
 しかし、足首から先の間隔は既にない。この激しい痛みが去っても、とてもではないが、まともに動ける自信はなかった。、目の前の人殺しに縋るしか方法が無い。
「うん、うん、ごめんね、直ぐに手当して上げるからね」
 ベルトルトは部屋の中を移動し、何やら袋の中をごそごそと探り布切れや針を出してくる。用意周到な事だ。
「出来るのかよ……、お前不器用だろうが」
「麻酔もないから痛いと思うけど、我慢しててね?」
 再度、猿轡を噛ませてくる。大人しく銜え直し、歯を食い縛る。
 ベルトルトが体の上に座って体重をかけ、床に体を固定されてしまう。

 来るであろう更なる痛みに、目をきつく閉じた。
 足を縛って止血し、皮膚を通る針の感触。
 本能的に痛みから逃れようと体が勝手に跳ね、下手くそな傷の縫合が終わった頃には意識を飛ばしていた。

 ふと、激しい争いの音で目を覚ます。
 壁越しに、なにを言っているかまでは解らないが言い争う声と、物が壊れる音、大きな物が叩きつけられたような重い音。それらは暫く続いて、突如、しん、となる。隣で扉が開いて閉まり、足音が近づいて、そっと俺が寝ている部屋の扉が静かに開く。
「あぁ、起きていたのか……」
「ライナー……。さっき起きた」
 ライナーがランプを持って近づいてくる。
 真っ暗な場所に、入り込んだ光に目を細め、瞬かせていれば、ベッドの脇にある小さな机にランプを置いて、ライナーが頬に触れてくる。
「顔色が悪いな、体温も低い……、あの野郎……」
 忌々しげにライナーが舌を打つ。初めて見る表情だ。
「ライナー。お前も顔色悪いぞ」
「俺の事なんかどうでもいいんだよ」
 名前を呼ぶと、ベルトルトと同じく嬉しそうにする。
 掛けられていた布を捲ると、右足の部分には包帯が巻かれ、血が滲んで固まっていた。
 ライナーが眉根を寄せ、痛々しそうに見て、足を撫でた。
「お前は俺等とは違うのにな……」
 ベルトルトが縫合したのは皮膚だけだ。
 未だに痛む足首。指先はぴくりとも動かない。
 俺はエレン、いや、こいつ等のように修復能力など持ち合わせてはいない。もう地面を蹴って走る事は叶わないだろう。一時的な拘束ではなく、永遠に外れない枷を俺の足首につけた。恐らくは、ベルトルトの独断で。
 一旦、ライナーが外へ出て行き、戻ってくれば手には桶、酒の瓶と思わしき物と布。血の滲んだ包帯を解いて、酒で傷を洗い、丁寧に手当をし直してくれた。
「すまん、痛み止めでもあればいいんだが……」
「そんなもん期待してねぇよ。あいつも我慢しろとか言うしよ」
 血を流し過ぎたのか、少し寒い。その癖、足首は異様に熱い。
 細く息を吐き、ベッドに横たわる。酷く怠い。痛い。
「どんな具合だ……?」
「ちょっと、寒い」
 触れてくるライナーの手は暖かく、思わず擦り寄る。
 目を閉じているとぎしりとベッドが軋み、逞しい腕に抱きすくめられた。
「これから熱が出るかもしれん。ゆっくり寝ろ」
 布を引き上げ、包み込まれる。撫でてくれる感触が心地好い。痛みはまだあるが、肌に伝わる温もりが眠りを誘ってくる。とろとろと意識が遠のき、優しい闇が落ちてきた。こんなもの、夢であればどれだけいいか。

   〇◇△▽◇〇

 薄暗い部屋、どこからか光が漏れているのかぼんやりとだが目が慣れてくれば、少しだけ周りが見える。ベッドに転がって、呆けていればいつの間にか寝て、起きて、また呆ける。何もする事が無く、話し相手も居ない。
 見えた所で、何をするでもなく、天井や壁、扉をじっと眺め、無為に時間が過ぎていく。

 痛む足を堪えればトイレにも行けない事もなく、食事、傷の手当てや、体を洗う為に、日に何度かライナーが来た。

 ベルトルトは来ない。

「ベルトルトは、どうしたんだ?」
「お前の傷が治るまで近づくなと言ってある」
 抱きかかえられ、水場まで連れて行かれればライナーの手が体を洗う。
 手は不自由ではないのだから、そのくらい自分で出来るのだが、断る気力も沸かず、なんとなく任せている。
「なぁ、なんで俺を連れてきたんだ?お前等の足手纏いだろ……?」
 気になっている事を訊いても、うん。などと返事にもならない返事を返すだけで、疑問は解決しない。

 人質ならもっと良い人間が居るだろう。
 調査兵団に入ったばかりの新兵など、大した価値もなく、ただ捕えておくだけなら、こんな風に甲斐甲斐しく世話をする必要もない。最低限生きていればいいのだから。食物と水さえあれば人は意外としぶとく生きる。
「なぁ……、ここ、どこ?」
「壁の外のどこか」
 それ以上の答えはない。
 頭から温い水を被せられ、手が滴る水を優しく払ってくれる。
「ライナー、何でここまでしてくれるんだ?」
「……お前は、俺達をちゃんと名前で呼んでくれる」
 質問に対する返事は、あっているような、どこかずれているような。
 深く言及はしない。そうか。とだけ言って黙る。
「少しは歩かねぇと体鈍ると思うんだけど」
「まだ傷は完治してない。力入れると痛いだろ?動いて傷が開いたらどうする、ただでさえ汚ねぇ縫い痕だ」
 傷跡が引き攣れるのは、ほぼ間違いなくベルトルトの下手くそな縫合のせいだ。後から自分で縫い直せば良かったと思ったが、服を縫うようにはいかない。なにせただでさえ痛い傷に針を突き立てるなど想像するだけでも辛いものがある。残念ながら俺に被虐趣味はない。ライナーにやり直して貰っても良かったが。
 そう考えながら、緩い服を着せられ、帰りも同じように抱えられて戻る。横抱きでの、いわゆるお姫様だっこだ。運ぶのにこれが一番楽らしい。部屋に着くと、ベッドに座らせ、湿った髪を撫でてくれる。
「最近冷えてきたからな、部屋に火を入れておく。偶に見に来るから、暑かったら言えよ」
「火の管理くらい出来る……」
 外から持ち込んだらしい薪を、壁に空いた小さな穴倉に入れ、火を起こして部屋から出て行く。ぼんやりとはいえ、昼間は明るくなるのだから空気口はあるのだろう。密閉した空間の中で火を焚いて、気が付いたら死んでました。なんて事故は起こるまい。
 ぼんやりと揺れる火を眺めながら、昔を思い出す。それほど遠くはない、まだたった数か月だ。それなのに、何年も前に感じる。憲兵になる為に過酷な訓練をこなし、それでもまだ笑い合えていた時間が胸を締め付けるほどに懐かしい。
 再び行われた壁の破壊、エレンの巨人化、マルコが死に、俺は調査兵団へ。初めての壁外調査で生きて帰ったと喜び、安堵したのも束の間。計画の詳細も伝えられずにエレンの身代わりとなり、中央へ。今度はアニが巨人で、更にはベルトルトとライナーまで。

 何もかもが慌ただし過ぎた。
 水晶の中に閉じ籠ってしまったアニはどうなったのか。
 二人はアニを取り戻そうとしているのだろうか。俺はそれの交換材料?俯いて首を振る。
 取引に応じるとは思えない。たかが新兵と、秘密を握る捕虜。取引材料にするにはあまりにも格が違う。巨人化の鍵を握るエレンならば少しは話が違うのだろうが、訊いても答えない。はぐらかされる。

 偶に聞こえる巨人の足音。
 外をうろつく巨人か二人のどちらかは判らない。
 答えの出ない思考はとても疲れる。ベッドにうつ伏せに倒れ込み、目を閉じた。

   〇◇△▽◇〇

 触れる感触に意識が覚醒し、重い瞼を上げる。
 外は夜になり、火は消えてしまったのか部屋の中は暗い。
 ライナーかと思ったが、触れる指は細く、どうも手の感触が違う。
「ベルトルト……?」
「うんっ……!」
 喜色を湛えた声が降ってくる。
「どうしたんだ?俺に何か用か?」
 俺が出来る事など無いように思うが。
「ライナーが外に出てるから、会いたくて。少し汗掻いてるね、火を焚いてたみたいだから暑かったのかな?」
 指先が汗ばんだ首筋をなぞる。くすぐったさに身を捩っても追いかけて、首だけでなく、汗に濡れた髪、顔、肌を服の上からじわりと撫でる。頭の横でスプリングが軋んで重いと抗議の声を上げた。
「ベルトルト……?」
「うん、もっと、名前を呼んで。僕を人間で居させて……、ジャン、もっと」
 影の塊がぬるりと動く。ベルトルトには俺が見えているのだろうか。覆い被さり、服を肌蹴させる。ベルトルトの手も汗ばんで、妙な感触だ。

「いって……」
 おもむろにベルトルトが脚を抱え、足首の傷に触れてくる。
「僕の付けた傷……、まだ治らない?もう治らない?ずっとこのまま?もう、僕なしじゃジャンは生きていけない?僕だけ?ずっと一緒だよね?」
 言葉は問いのように聞こえるが、もう自分の中で完結しているのだろう。
 声だけしか聞こえないのに、それは弾んで、喜びに、悦びに溢れて、嫌と言うほど笑っている様子が伝わってくる。

 ベルトルトが傷口に口付け舐め上げた。
 驚きと、ちりちりとした痛みに身じろいで足を引くが、掴む手の力は強く、離してくれない。足に感じる吐息が熱く感じ、異様な雰囲気に緊張して心臓が激しく脈打った。

   〇◇△▽◇〇

「ん、ふっ、あ……」
 鼻にかかったような上擦った声。
 とても自分が出しているとは考えたくない。
「ジャン、ねぇ、気持ちいい?声もっと聞かせて」
 甘えたようなベルトルトの声、火が消えて冷え始めた空気が、熱を持った肌に触れるが、それでも熱を奪っていくには足りない。ささやかな抵抗は容易くねじ伏せられて、丁寧に体を解され、開かれた。獣の交尾のように、四つん這いの状態で、内部を擦り上げる性器に肌が粟立つ。苦痛だけであったものが、次第にぞくぞくと得も言われぬ感覚に。上がった体温に、汗は引く暇もなく肌を伝って流れていく。
「やっ……、それ痛い、べる……」
 大した肉もついていない体を揉みしだき、胸の突起を抓るように引いて痛がれば喉を鳴らす。
 俺が一々、反応を示す事が楽しくて仕様がないようだ。苦しいのか、気持ちいいのか、痛いのか、ぐちゃぐちゃに混ざって判らなくなる。行為は時間が経つほどに激しさを増し、ひたすら啼いて、何度か意識が落ちそうになると頬を張られてまだ、駄目。と、強制的に引き戻される。

 もう勘弁してくれ。
 苦しい、辛い、嫌だ。

 子供のように泣きじゃくりながら何度、懇願したかも判らない。
 快感も、過ぎれば苦痛だなんて初めて知った。
 いや、それよりも、男に抱かれて
 喘いでいる自分が信じられない。

 性器を弄られて、達してしまうのは生理現象と言い訳も出来ようが、腹の中を貫かれて、背筋を通り抜ける激しい感覚は、どう言い訳も立たない。堪えようにも出てしまう気持ちの悪い声を抑えたくて、手で塞ごうにも俺の両手を、ベルトルトが上から手で覆い、押さえ付けて塞ぐ事を許そうとしない。
 どこまでも優しい声で、
「我慢は駄目だよ。聞かせて。僕を呼んで」
 言われるままに、頭が馬鹿になったように名を呼んで、愛してると囁かれれば、心臓が締め付けられて、浅ましく下腹がずくりと疼く。最後は、ほとんど朦朧として、記憶に残っていたのは
なにをか耳元で囁き、微笑むベルトルトの口元と、柔らかく包んでくれた腕の体温だった。

  〇◇△▽◇〇

 名前を呼ぶ声で目を覚ます。
「ジャン……、体は大丈夫か?」
 返事を待つ、ランプの明かりに浮かび上がるライナーは眉間に皺を寄せて、唇を引き結び、瞳には怒りを滲ませている。どうした?と、返事をしようとしたのだが、声が掠れて出てこない。音を出さずに、唇だけで言葉を綴ると、呼吸すら困難になるほど、強い力で抱き締められて、小さく呻く。
 疲労感が激しく、全身が怠い、あちこちが痛む、ついでに言えば今は苦しい。
 正直に言えば、眠っていたかったが様子が尋常ではない。
 肩を叩いて引く事で、苦しいと伝えた。
 ライナーが力を緩めてベッドに横たえ、髪を撫でる。
「ずっと、ついてりゃ良かったな……、そうすりゃあいつもここまでは……」
 どうやら、ライナーはベルトルトの凶行に怒っていたようだ。
 労わるような手付きが心地良い。
「どうする、一応拭ったり、着替えはしてるみたいだが、気持ち悪くないか?水浴びくらいするか?」
 俺は首を振る。すると寝付かせるように、さらりと髪を撫でた後、ライナーは黙って傍に居る。意識を落とす寸前に聞いたベルトルトの言葉を思い出し、ライナーの腕を引く。
「どうした、寝たいんじゃないのか?」
 もう一度引く。声が出ないと解っているからか、ライナーは身を屈めて微かな声も聞き逃さないように、音を出さず動くかも知れない口の動きを見逃さないように見詰めてくる。
 金色の髪を指に絡め、引き寄せた。力を入れていなかったライナーは容易く引き寄せられて唇同士が触れ合う。驚いたように跳ね起き、俺とライナーの間には距離が出来てしまった。
「な、何してるんだお前は……」
 口元を抑えて、動揺した様子でどもりながら問う。
「ベ、ル……、が……」
 嗄れた喉を唾液で潤し、声を絞り出す。
 しかし、痛みに軽く咳き込んで、次に出た言葉は音にならない。

 『ライナーも愛して上げて』ってさ。

「あの野郎……!」
 唇の動きを読んで、言葉を理解するや否や、扉を睨み付けて立ち上がろうとするライナーを引き留めた。手首を掴んだ俺の手を振り払わず、眉を下げて困ったように視線を落とす。
「そんな事しなくていい。俺はお前が抱きたくて、傍に置いてるんじゃない。ベルトルトに無理矢理されたからって、自暴自棄になるな。自分は大事にしろ」
 変わらない落ち着いた声、労わる手付き。優し過ぎて愚かなライナー。
「疲れてんだよ、ゆっくり休むといい……」
 その言葉に、ゆっくりと頷く。
 ライナーが立ち上がろうとするが、再度、手を引いて引き留め、じっと見上げる。

 寒い。

 声を出さずに伝える。
「それなら火を入れるか」
 首を振る。

 それは暑いからいい。

「なら、着る物を……」
 また、首を振り、そして、手を広げる。
 口を開こうとするライナーに向かって言葉を発する前に首を振る。

 一緒に寝てくれ。嫌か?

「別に嫌じゃねぇが……」
 指を掴んで引いて、早くと急かす。
 ライナーがランプの灯を吹き消して、闇が広がればベッドが軋んだ。
 自分よりも太い腕が体に回り、首元まで布を被せられ、じんわりと、布越しに伝わる体温が心地良く、疲れた体は直ぐに眠りについた。

   〇◇△▽◇〇

 ライナーが来る度に、同衾をせがんだ。
 日が経つごとに空気はどんどん冷たくなってきて寒い。
 ベルトルトは、最初ほどではないが、体を求めてくるようになった。
 それがライナーは気に食わないらしく、時に上の階から争う音が聞こえる。
 ベルトルトが腫れた頬を抑えて、修復の蒸気を発しながら部屋へやって着た事もある。逆に、ライナーが動こうとすると痛みに顔を顰めて、気不味そうに笑う事もあった。

「随分、あいつと険悪じゃねぇか。原因が俺なら、俺を殺した方が早いんじゃねぇの?」
 すっかり冷えた部屋の空気を暖めるべく、部屋に火を入れていたライナーが弾かれたように振り向く。沈痛な面持ちでベッドへ寄って、頬を撫で、緩やかに首を振った。
「馬鹿言え、殺すくらいなら、最初っから連れて来たりしねぇ……」
「でも、まともに動けない俺が居るせいで、お前等は自由に動き回れない。性欲処理なら、別に俺が居ないと出来ねぇこたねぇだろ。面倒な我儘も聞かなくていい」
「お前の足はベルトルトのせいだ。お前のせいじゃない。後、別に我儘とも思わねぇ」
 そこで言葉を切り、ライナーが、ぐ、と唇を引き締めた。ややあって口を開く。
「ベルトルトも性欲処理が、したい訳じゃねぇ、お前が……、俺……」
 最後は言い淀み、ぼそりと呟くような声にもならず空気に溶けた。
「はっきり言えよ。あいつは、ベルトルトは、俺を抱く度に欲しい、愛してるってうるせぇくらい言う。お前は?お前が、俺に何を求めてるのか、判らない」
「何も求めてなんかねぇよ。お前がお前で在れば、それで」
「……俺が俺でなくなったら要らなくなるか?正直、この先、まともな神経でいられる自信がねぇ。俺にはお前等しか居ない。お前等に見捨てられたら、生きる術がない。なら、いっそ殺してくれ。俺が俺で、在る内に。どうせなら、必要とされている間に死にたい」
「はっ、お前から死にたいなんて言葉を聞くなんてな……」
「くそみてぇな事ばっかり考えちまうくらいには暇だ」
「俺が憎いか?お前を攫った俺が……」
「……わからない」

 壁を壊し、あの殺戮の日を作り出した本人だと知った時、真っ先にマルコの亡骸が頭に浮かんだ。人知れず死んだ親友。真実が知りたかった。だから、水晶に閉じ籠って逃げたアニに怒りが湧いた。
 壁外へ逃げた二人へ、追撃部隊が組まれた際、当然志願した。問い質す気だった。真実を。
訊いた所で、殺したのは俺達じゃない。そう言われるだけだったのだが。原因には違いなく、マルコの仇を取り、死ぬのも悪くはない。そう思うくらいには憎んだ。が、今は、わからない。としか答えようがないのだ。

 壊れ物のように大事に扱われて、あまつさえ愛してると言われ、わからなくなった。訓練兵時代の、二人と共に過ごした記憶までもが、憎む気持ちの邪魔をした。こんなにも、俺は意志薄弱な奴だったのかと自分自身に失望したものだ。
 赦してはやらない。けれども、憎いかと問われれば、わからなくなる。
「俺に対して下らねぇ償いを続けても俺は赦してやる気はない。でも、俺は、お前等を憎み切れてないのも事実だ」
 自分でもどうするのが最善か、判らない。
 人類の未来の為に、などと美徳を掲げるならば、死んでも超大型巨人、鎧の巨人を倒してしまうのが望ましい。しかし、二人の死に様など、想像すらしたくない自分がいるのだ。赦せないのに、憎めない。相反する感情に反吐が出る。それならばいっそ。
「絶対に殺さない。ベルトルトもそう言っただろう?」
 頷くと少しだけライナーが笑う。愛おしそうに撫でる手。
「鳥の羽をもいで、飼い殺しなんて、いい趣味してるよ。お前等……」
「すまん……、どうしても、お前に傍らに居て欲しかった、愛してるんだ」
 初めてライナーの方から俺に口付けて、愛していると囁き、抱き締めた。
 たったそれだけで離れようとした逞しい体を抱き寄せ、腕を絡めて笑って見せる。
「赦しはやらない。でも、縋る体と愛くらいならくれてやる」
「お前は甘いな、十分過ぎると思うが……」
 額を合わせて至近距離で見つめ合い、再度唇を合わせる。
 口付けは徐々に深く、ライナーの舌が歯列をなぞりくすぐるように咥内を犯す。
 散々、男に抱かれた体だ。刺激に容易く反応し、体温が上がる。一方的に翻弄されるのが悔しくて、腕を首に絡めて口付け、自ら舌を伸ばして絡め合い、顎に唾液が滴る。

 ライナーは馬鹿みたいに優しく抱いてきた。
 ベルトルトは感じる所、そうでなかった所もそうなるように、どこまでも攻め立てて、頭も体も快楽にだけ支配されて訳が分からなくなる。ライナーは、落ちた体力も考慮するように、愛撫も緩やかに、後孔もゆっくりと舌や指で解して、感じて喘ぎながらもふわふわとした感覚。柔らかい羽毛布団にでも包まれて、ゆっくりと沈み込んでいくような快楽。
 なにを、どこをどうされているのか嫌でも解ってしまい、羞恥を煽り、更に神経は過敏になってライナーを受け入れる。
「ライ、なぁっ、きもち、いぃ……、ん、っ」
 ゆるゆると中を擦られ、掌や唇が肌に柔らかく触れて快楽を煽り、蕩けて甘えた声ばかりが漏れ、ベルトルトのように激しくはないのに、確実に追い上げてくる。
「ジャン、俺達を捨てないでくれ」
 切なげに喘ぐ声、体は熱いのに、頭の芯は冷えている。
 赦しを与えない事で縛り付けながら、仮初めの安らぎを与える。
 これが愛だと言うなら、相当、歪んでいる。
 抱き締められて、抱き締める。歪な愛情でも、満たされてしまう事は否定出来ず、傷の舐め合いだとしても、体を繋げば満足感と安定は得られる。
 超大型巨人と鎧の巨人を『倒す』のではなくライナー・ブラウンとベルトルト・フーバーとして、『殺して』やれば、こいつらは救われるのかも知れない。しかし、それでは俺が救われない。行き場をなくした怒りと憎しみを納めておく場所がない。
 それは、臓腑を腐らせて、内部から侵食していく。とても、耐えられない。自身の為に二人を生かす。二人も自分達の為に俺を生かす。一応ながら、利害は一致しているように思う。
 実に、歪んだ馬鹿馬鹿しいものではあるが。
「ライナー……、もっと、強く」
「あぁ……」

 元から、そう多くは入ってなかったのか、ランプの油が切れて、じわじわと明かりが消えた。
 互いの荒い息遣いと、睦み合う水音、名を呼んで求める声。とても長い間、触れ合っていたように思う。気絶するほど激しくもなく、かといって、鬱陶しくなるようなしつこさでもなく、緩急をつけてライナーは俺の体を可愛がる。

 ライナーとベルトルトは本当に真逆だ。
 共に在るからには似通った部分もあるのだろうが、性格も、考え方、行動の仕方も、抱き方も、様々なものが。
「どうした?何かくすぐったかったか?」
 動きを止めて、ライナーが訊いてくる。
 喘ぎながらも、密やかに笑いを零したのが聞こえたのだろう。
「いや、随分、優しく抱くんだなぁ。と思っただけだ……」
「大事なもんは、どこまでも大事にするさ」
 続きを促すように、足を絡めて悦楽の吐息を漏らし、ライナーの肩に噛みついた。
 犬歯が噛み破いた皮膚からは、鉄臭く、生温い液体が溢れ、口元を汚す。感情も、皮膚の下を流れるものも、脈打つ鼓動も、なに一つ変わらないのに、どうしてこうも違ってしまったのか。
 ぼんやりと、そんな事を考えながら、互いに疲れて眠るまで、いつまでも飽く事無く抱き合っていた。

   〇◇△▽◇〇

 足の傷がほとんど癒え、地下の生活にも、抱かれる事も、大分慣れてきた。
 ただ、慣れたと言っても、明かりのない場所で暮らしていると、無性に太陽の光が恋しく感じられる。扉には鍵はかかっていない、痛みもほぼなくなった。足も引きずりながらだが歩けない事もない。ごそりとベッドから這い出し、ゆっくり扉へ近づいて開ける。扉事態は大した障害でもなく、視線を巡らせれば、右手側に地上へと続く石の階段。

 壁に手をつきながら上がっていく。
 ライナーとベルトルトを呼んでみたが返事はない。
 ゆっくりゆっくり上がっていく。上がった先は、半壊して辛うじて形が残った家。巨人によって滅びた村か、ただ捨てられた村なのかまでは判らない。長く暗闇に居たせいで、太陽光が酷く眩しく感じて、目を細め、手でひさしを作りながら、ふらふらと外に歩み出た。
 どこを見渡しても壁は見えない。区切られていない世界がどこまでも広がっていた。

 初めて壁外調査に出た時は、のんびり眺める余裕など皆無だったのだが、今こうしてみれば、世界は広いと改めて知った。
 半ば瓦礫になっている壁に背を預け、抜けるような青空と、どこまでも続く草原をぼんやりと眺め、これを駆け回れたら、どれほど心地好いだろうか。今は指の一本も動かせない足先をぶらつかせて、出来るはずもない夢想をする。

 どれほどそうしていたか、日が傾いて空に茜が差し始め、冷えた体を震わせた。
 二人も、まだ戻って来ない。いい加減戻るか。誰に言うでもなく独白し、壁から背を浮かせて、振り替えり、そこに在ったものに顔が引きつる。直ぐ斜め後ろに、巨人が座っていたのだ。音も立てずに近づき、振り替えるまで何の行動も起こさずに、じっと俺を眺めてでも居たのか。

 約五メートル級か。そいつは、目が合うとにたりと笑んで、後退さろうとして、尻餅をついた俺に、にじりより、巨大な手で掴むと、人形遊びをする子供のように、手の中の俺を、しげしげと眺めると、腕や足を引き、冷えた顔を突く。
 引き千切るでもなく、捕食するでもなく、巨人は俺で遊んでいる。
 無論、巨人にとっては遊びでも、やられているこちらは堪ったものではない。
 引かれれば、関節がぐきりと嫌な音を出して抜け、突かれれば首は折れてしまいそうだ。
 痛みに悲鳴を上げれば上げるほどに、無邪気な子供の如く、巨人は笑い、楽しそうにはしゃいだ。はしゃぎながら、巨人は両手で俺を握り、気味が悪いほど上機嫌に笑い、少しずつ、手に力を込め始めた。
 なにをされるか、悟った俺はもがいたが、たかが人間の非力な腕力で逃れられる訳もなく、ぎしぎし音を立てて体が軋む。

 意識が白みかけた瞬間、大型の大砲を撃ったような爆風。
 辺りを覆う蒸気。捕まれていた手よりも更に巨大な影。
 それは巨人の頭を鷲掴みにすると、握り潰し、うなじも引き千切って殺してしまった。

 地面に落ちて助かりはしても、依然、肩は抜けたまま、身体中が悲鳴を上げている。
 巨大な影が動き、崩れ落ちる。駆け寄る足音。呼び掛ける声に、返事をしようと、口を動かそうとしても、呼吸すら辛く、痙攣するように微かに動いただけだ。
 体が浮く浮遊感と、地下に降りたのか、瞼に透けていた眩しい光が徐々に暗くなった。こうなると、脆弱な人間の体が呪わしい。死んだ方がましだと思えるほどに痛い。まともに眠る事も出来ず、痛みに喘ぎ、限界がくると気絶する。一体、何度、何日それを繰り返していたか、自分では判らない。
 食事もまともに取れず、口移しで何かを与えられていたように思う。

 どうにか体が回復した頃には、ただでさえついていなかった肉も、体力も更に落ちて、何とも貧相な事になっていた。

 目についたのは、どこから見つけたのか、家畜用の鎖と枷だろうか。最低限の距離しか動き回れないよう、長さを調節されて、階段へすら行けない。
 ライナーとベルトルトに過保護な事で。などと、極太の鎖を持ち上げて言ってみれば、二人して仕方ない。と、きたものだ。体を洗う時くらいしか外して貰えず、その移動も、ふらふら彷徨かないよう、抱えられて行くばかり。
 体の痛みも取れ、食欲も回復すると、揃って発情期の犬かと言いたくなるほど盛って、下手を打てば、同時に相手をしなければならず、巨人に襲われた時とは、別の意味で、死ぬかと思った。思い付く限りの罵詈雑言を並べ立てて、罵っても、それだけ口が回るならば結構結構。などと寧ろ上機嫌に笑うのだから性質が悪い。

 体が揺れる度にじゃら、と鎖の音が鳴る。
「おま、えらっ……、いいかげんに……」
 俺が死にかけて、何か思う所でもあったのか、体を気遣いつつではあるが、二人は頻繁に俺を抱いた。日の経過も碌に判らない、この地下で、何度も何度も睦み合い、時にしつこいと本気で怒る。
 ただでさえ、落ちた体力では一人でも大変であるのに、体力馬鹿の二人同時に来られては、怒りたくもなると言うものだ。
「僕の可愛いジャン、愛してるよ。ほら、口開けて?キス……、好きだろ?」
 閉じていても、指をねじ込んで中を犯す癖に。そう思いながらも、拒めない。
「お前、キスされながら犯されんの好きだよな。こっち弄るより反応が良くなる」
 背後から後孔を犯しながら、前の性器を弄られると刺激に体が跳ねて、体が勝手に中に入ったライナーの性器を締め付ける。
「お前等、なぁ……、こ、んな、貧相な、体、どこ、そんなに、盛る要素が、あんだよ」
 ベルトルトが口付けに満足したのか、解放された唇で、息も絶え絶えに抗議するが、お前だから興奮する。などと身も蓋もない答えが返ってくる。

 小さく呻いてライナーが中へと精を吐き出し、性器をずるりと引き抜く。抜かないまま、何度も注がれた精がどろりと垂れて、太腿を伝い、とろみのある液体が伝う感触にまで体が震える。
「女の子みたいにどろどろだねぇ」
 くすくすと笑いながら、指を差し込み、わざと音が鳴るように掻き回して羞恥を煽る厭らしさ。ベルトルトの言も、見た目だけを言っているのではないと理解出来てしまう。
 吐精をせずとも、達してしまうようになった体を揶揄り、悦んでいる。
「ジャン、ほらあと少し、ベルトルトも可愛がってやろうな?」
 ライナーが体を引き寄せ、ベルトルトへと向かって脚を開かせる。
「大丈夫だよ、僕ライナーほどしつこくないから」
 圧し掛かりながら、どこか弾むような声色で告げるが、その分、お前は一回が激しいんだよ。とは抗議しても、いつも通り意味はないのだろう。諦め気味に溜息を吐いて、ライナーを背凭れにしながらベルトルトを抱き寄せる。
「しょうがねぇな……」
 ぽつりと受け入れ許す言葉を吐いて、ライナーの愛撫を、ベルトルトの欲を受け入れた。

 この、仄暗い地下でいつまで俺は、こいつらを愛してやれるだろうか。
 この気狂い共の歪んだ愛情を受け入れ続けてやれるだろうか。
 恐らくは、既に俺もまともじゃない。

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