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馬房

小説は妄想と捏造甚だしい。 原作のネタばれ、都合の良い解釈。 R18、グロ(精神的にも)、暴力表現などが含まれます。 冒頭にざっと注意を書いてありますので、それを読んだ上での 閲覧を宜しくお願い致します。何かあればご連絡いただければ幸いです。 基本的に右ジャンしか書きません。 萌が斜め上です。無駄にシリアスバイオレンス脳です。 拙い文章ですが、少しでもお楽しみ戴ければ嬉しく思います。 右ジャン、ジャン総受けしか書きません。あしからず。

くそったれな人気投票

・いつかのmブレが似合うキャラランキングのネタ
・原作、訓練兵時代
・ジャンとアニちゃんとマルコ、ちょっとライナー
・思いついたので突貫工事で書いた





 今日の訓練もきつかった。
 でも風呂に入れたから気分がいい。
 そんな事を考えながら宿舎の自室に帰っていく途中で、俺は床に落ちていたしわくちゃの紙切れを発見した。
「落とし物?」
「うん、メモみたいだな?」
 浴室へと向かう廊下に俺とマルコ以外に人気はない。
 先に出ていった奴か、後から来た奴かは解らないが、慌ててポケットに突っ込もうとした紙が落ちた感じに見えた。こんな紙切れに自分の名前なんて書いてる奴は居ないだろうが、一応、裏返してみる。
「あ?」
「どうした?」
 裏を見た俺が不信がる声を上げればマルコが手元にある紙を覗き込み、表情を一気に強張らせたようだった。表題は『強姦したら面白そうな奴』なんて文字が躍っている。こんなの、絶句しても仕方がないだろう。
「これ……」
 覗き見たマルコの声色も低く周囲を憚るような物になる。
 俺の全身には鳥肌が立ち、手がぶるぶると震えて思わず紙切れを何度も破り、ぐしゃぐしゃに丸めて寝間着のポケットへと押し込む。異様に息が上がり、さっきまでの気分の良さはどこかへと完全に吹き飛んでしまった。
「おい、どうかしたのか?」
「あ、ライナー……」
 俺の尋常じゃない様子に、後から出てきたベルトルトとライナーが驚いていたようだった。
 子細を問われるが、口にもしたくない。
「何でもない……」
 無視をするように足早に自室へと戻り、火の点いたストーブの中へと千切れた紙切れを放り込んで直ぐさまベッドに入った。
 あの紙に並んでいた名前は一瞬しか見ていないが、同期の名前が何人かあったように思う。それがまた嫌悪感に拍車をかけた。憲兵団へ入るために上位を争う間柄ではあるが、当然、同じ訓練兵である仲間達を憎んでなんかいない。エレンとだって意見が合わずに口汚く喧嘩はするが、本気で非道い目に遭えなんて考えた事もない。

 あんなメモを書いた奴を思いつく限りの言葉で罵倒しながら目を閉じ、見えた名前の中で気になった人物を思い浮かべた。
 確か、アニの名前があったはずだ。あいつはそんじょそこらの男にも引けを取らないほど強いが、それでもかなりの小柄で、良く一人で居るから狙われたら本当に危ないかも知れない。

   ◆ ◇ ◆ ◇

「よ、よぉ、隣いいか?」
「別にいいけど?」
 朝食時にアニに声をかければ睨まれたし、絶対嫌がられてるのは感じたが、気になるんだから仕方ない。
 でも、隣に座ったからってどうする?変な目で見てる奴が居るから気をつけろ。なんて言った所で俺が不審がられるだけだ。さりげなく近くに居て、変な輩から遠ざけてやるくらいしか思いつかなかった。
「なんか用?」
 他にも席は空いている。
 普段、碌に話もしない俺が隣に座ったんだから、そりゃあ訝しむくらいはするだろう。
「えーっと……、今日、対人格闘あるだろ?だから……」
「一緒にサボってくれって?あんたは他に相方が居るだろ?」
 面倒そうにアニがぼやき、パンに齧り付く。
 しげしげと顔を見るのは初めてだが、凄い美人だ。
 だからって、あんな下劣なものに使っていいとは思わないけれど。
「その……」
「まさか、あんたまで格闘技教えろって言いたいの?」
「お、おう……」
 どう言い訳をしようか必死で考えていれば、エレンの後追いみたいで悔しいが、アニの方が勝手に解釈してくれて助かった。
「全く、エレンといい、あんたといい、自分のためにか弱い乙女を酷使するなんて酷いじゃないか」
「ほんとにな……、悪い」
 あの紙切れを落とした最低な輩を思い浮かべながら同意すれば、アニが俺を凝視する。
「な、なんだよ……?」
「いや……、茶化されなかったの初めてだから、驚いた」
「はは、お前も驚いたりすんだな」
「するよ、人間だし」
 俺に素の表情を見られた事が恥ずかしかったのか、アニがほんのりと頬を染めて俯きながらスープを啜る。いつも澄ましてるから解りづらいけど、可愛いとこあるじゃねぇか。
「はは、あーっとパンやるから宜しく……」
「賄賂なんて憲兵志望らしいね。貰っといて上げる」
 本音としてはしっかり食べておきたかったが、少しでも近くに居る理由が欲しかったから身を切るしかなかった。
 アニは俺がやったパンは後で食べるつもりなのか、トレイに置いたまま席を立って持って行く。それを目聡く見つけたサシャに絡まれているが、完全に無視している辺りは流石だ。

   ◆ ◇ ◆ ◇

「ちょっと酷くねぇか……」
 何度も地面に転がされ、砂にまみれて俺はぼやく。
 俺が一方的にぼこぼこにされるばかりで、これじゃアニを庇ってやる段じゃない。でも、逆に考えればこれだけアニが強いと見せつけている事にもなるか?いつもサボってる俺がやられてた所でどれ程の効果があるかは不明だが。
「あんたは上背があるんだから、もっとそれを生かせばいいのに」
「どういう事だ?」
「私は小柄だから相手の力を利用しての投げ技が主だけど、あんたは身長があって手足が長いし、関節極めたりとか、締め落としたりとかも出来そうだけどね」
「お前は出来ねぇの?」
「やろうと思えば出来るよ。だけど、さっきも言ったけど私は小柄だから相手の首とか腕を捕まえるのが難しいんだよ」
 なるほど、身長があれば相手に覆い被さって無力化したり、捕まえたりし易いのか。
 待てよ。なら益々アニが危ないじゃねぇか。
「お前さ、訓練終わったら直ぐに女子の宿舎に戻って外に出たりすんなよ?」
「は……?なんでさ……」
 凄い眼で睨まれて、迫力に思わず一歩下がってしまう。しかし、怖じては居られない。
「いや、ほら最近、なにかと物騒だし……?」
 特に思い当たる事件はないが、相手もまさか女子宿舎にまで忍び込んだりはしないはずだ。なんならミカサや、アニとは比較的仲良くしているミーナも居る。訓練兵団内の施設でこれ以上安全な場所はない。
「なんか知ってるの?」
「いや……⁉」
 咄嗟に否定しようとして声がひっくり返ってしまった。これじゃ『何か知ってます』と、白状しているのと変わらない。
「あんた……」
 アニの声が一際低くなり、構えをとる。
 まさか、アニは自分が狙われている事を知ってて、俺が例の紙切れの仲間だと思われたか。不味い、凄く不味い。
「ち、ちが、俺はお前が……!」
 心配なだけ。そう誤解を解こうとしたが、言い終わる前に凄まじい蹴りが体を掠め、地面に尻餅をついて震え上がる。

 じり。と、アニが近づいてくる。情けない事に瞳孔が全開になった眼に見据えられ、蛇に睨まれた蛙宜しく俺は完全に動けなくなってしまった。
「アニ!アニ待ってくれ⁉」
 若干、走馬灯が見え始めた時、マルコが止めに入ってくれたため、アニの気が逸れる。
「あの、聞いてくれ、ジャンは君を守ろうとして……、な?そうだろ?」
「う、うん……」
「はぁ?」
 マルコが俺に確認するように声をかければ、アニは構えを解いて呆気にとられたように俺を見る。
 悍ましすぎて詳細までは伝えられなかったが、アニを含めた他の同期へ不埒な真似を妄想しているような輩が居た事。妄想で済めばいいが、碌でもない人間はどこにでも居るから気になっていた事を正直に伝えるとアニは益々呆れたようだった。
「馬鹿じゃないの……」
「まぁ、ジャンなりに心配だったんだよ」
 あまり立ち話ばかりしていると教官に目をつけられるため、マルコと訓練に勤しんでいる振りをしながらの会話。マルコは擁護してくれるが、アニは盛大に溜息を吐いた。
「あのさ、こう言っちゃなんだけど、人の心配をする前に自分の心配したら?」
「なんでだ……」
「アニ、何か知ってる?」
 俺の問いはマルコによって遮られ、アニは肩を竦めてまた溜息。
「あんたの事、犯してやりたいとか下品な話で盛り上がってた連中なら知ってる」
 アニは良く人気のない場所で寛いでいるらしく、いつだったか空き倉庫で昼寝をしようとした際に、外から下世話な会話が聞こえだしたばかりか、そいつらが倉庫の扉を塞いでいたものだから出るに出られず嫌でも気持ち悪い内容を聞く羽目になったとぼやいていた。
「ジャン、昨日の紙、お前の名前もあったんだよ……」
 マルコが頬を掻きながら苦く笑い、実に言い辛そうに口にした衝撃の事実。
「あんたさ、直ぐ涙目になるしひょろっちいし、馬鹿みたいな連中に目つけられそうだもんね?」
 守る対象と思っていたアニにけちょんけちょんに言われ、俺は少しばかり目頭が熱くなる。
「お前のそう言う優しいとこ、僕はいいと思うよ」
 マルコの慰めも今は恥ずかしいだけだ。
「まぁ、心配してくれたのは感謝しとくよ。とりあえず、あんたは自分を守りな」
 言うだけ言ってアニは俺の前から去り、ちょっかいをかけてきたライナーを思い切り蹴り飛ばして鬱憤を晴らしているようだった。ライナーも怒られるの解ってるんだから、要らん事しなきゃいいのに。いや、あいつなりに孤立しているアニを心配して構ってるのか?

 俺がひっくり返されたライナーを見て現実逃避をしていると、マルコに肩を叩かれ意識を引き戻される。
「とりあえず、安心出来るようになるまで僕の近くに居るんだよ?」
「はい……」

 マルコの有無を言わさない言い方に、俺は頷くしかなかった。

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