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馬房

小説は妄想と捏造甚だしい。 原作のネタばれ、都合の良い解釈。 R18、グロ(精神的にも)、暴力表現などが含まれます。 冒頭にざっと注意を書いてありますので、それを読んだ上での 閲覧を宜しくお願い致します。何かあればご連絡いただければ幸いです。 基本的に右ジャンしか書きません。 萌が斜め上です。無駄にシリアスバイオレンス脳です。 拙い文章ですが、少しでもお楽しみ戴ければ嬉しく思います。 右ジャン、ジャン総受けしか書きません。あしからず。

ー 事故で死んだかと思ったら、嫁の腹にいた自分の子に転生してた=その十四=

・フロック閉じ込められるの巻
・製造されるフロックの黒歴史
・家族でわちゃわちゃ






 数日間、ジャンに抱っこされながらの満足生活をした後、午後を回った頃に宅配で届いた巨大な箱に俺は目を丸くする。
 ジャンは危ないから。と、俺を二階のベビーベッドの中に閉じ込め、
「脱走しちゃ駄目だぞ?」
 そう厳命してから部屋を出て行った。
 俺が夜中に脱走するせいか、ベビーベッドも開閉口に南京錠がかけられ、強化されたな。とは思っていたが、もしやあの巨大な物体は俺を閉じ込めるための物では。
 下に行って確認したい気持ちはあるが、流石に柵を超えて床に下りるのは難しい。ベビーベッドの中に放り込まれた馬のぬいぐるみや、歯固めの玩具、振り回しても大丈夫な柔らかい棒やボールを不貞腐れながら投げ、時間を潰していれば満足げな表情で戻ってきたジャンに再び抱っこして貰えた。
「さ、一杯走り回っていいぞ」
「あぅ……」
 廊下に下ろされ、玄関に設置された物に俺は唖然とした。
 がっちりと壁に固定された木製のベビーゲート。ジャンがスマートフォンでやたら調べていたから、嫌な予感はしていた。結構背が高い上に、今正に義父が簡単に開閉出来ないよう南京錠を設置している所だ。
「父さんありがと」
「ちょっと出入りが不便になるけど、危ない目に遭うよりはね」
 ジャンに抱っこされた俺を困ったように見ながら頭を撫でて来る。俺が寝てる間に、色々作戦を練られていたようだ。
「ジャン、裏口もいいわよ」
「おー、ありがと」
 ジャンがいそいそと見に行き、俺もちまちま後をついていけば、台所から裏庭に通じている裏口もしっかり封鎖されていた。そこまでやるか。
「いつもあんたにべっとりだったから必要ないかと思ってたけど、やっぱり子供は予想がつかないねぇ」
 義母も俺を困った存在のように見詰めてくる。
 数日前の脱走事件は、カフェインでテンションが爆上がりした結果の黒歴史だから、あまりほじくってくれるな。
「ゔぃぃ……」
「なんだよ、脱走出来なくなったのが不満か?」
 呻りながら床に座り込んだ俺の頭をジャンがにやにやしながら突く。
「にぇ!」
 じたばた暴れても、ジャンの勝ち誇った表情は消えない。
「いやぁぁぁぁぁぁぁ!」
 衝動のままに床に転がりじたばたごろごろ暴れれば、逆に楽しそうにジャンは俺を麺棒のように転がして遊んでいる。
「ゔぇぁぁぁぁぁぁぃ!」
 無性にむかつくから止めろ。
 小さな体で最大限の抵抗をしても、ジャンはけらけら笑っている。俺が勝手に脱走出来なくなったのが嬉しいらしい。もしや。と、久々のずり這いで縁側の硝子戸まで行けば、しっかり補助錠がつけられていた。自分で換気すら出来なくなってしまった。
「にゃあ……」
 硝子戸の側で太陽光に当てられながら敗北を確信し力尽きたように床に俯せる。これだから幼児は嫌なんだ。出来るようになったと思ったら、直ぐに妨害されてしまう。
「フロック、ご飯にするか?」
「いやっ!」
 俺は怒ってるんだ。
 飯如きで懐柔出来ると思うな。
 抱っこしようとするジャンの手を暴れて振り払うが、それでも笑っている。
「タイトルつけるなら打ち上げられた魚?」
「うーん、言い得て妙だな」
 気が付けば、義父が最新のスマートフォンで俺を撮っていた。レンズが三つついた謎にぞわぞわ来る奴。持っているからには義父は平気なのだろう。
「とゆなー!」
 がば。と、起き上がり義父に突撃していくが、当然、身長差のせいでスマートフォンを奪えないし、撮影を止める事も出来ない。何度も跳んで手を伸ばすが面白がられているだけだ。
「はは、怒ってる怒ってる」
 皆して俺を笑いものにしやがって。
「ぬぃっ……」
「うわ⁉」
 義父のズボンに飛びつき、ベルトを思い切り引っ張れば、体勢を崩して自分を支えようとするし、ジャンが慌てて庇おうとしてくる。二人が抱き合ってほっとしている間に落としたスマートフォンを奪い、録画を切って動画を削除しようとしたが、そっと優しい手がそれを阻んだ。
「本当にフロックちゃんはやんちゃねぇ?」
 義母が呆れたような面持ちではあるが、ころころと笑っている。
 義父自身はジャンが受け止めて事無きを得て、問題がなかったから笑えるのだろうが、大分、やんちゃでは済ませていいのか疑問はある行動だった。自分で言うのもなんだが。
「あたた、腰が……」
「病院行くか?」
「いや、そこまでじゃないかな」
 ジャンと義父が背後で不穏な会話をし、義母が窘めるように俺の頭を軽く撫でるように叩いた。
「あんまり、あの子を心配させないで下さいね?」
 俺は義母も科白に目を瞬かせ、きょろきょろと左右を見渡す。
 それは俺に言ったのか。
「ふふ、なんてね」
「母さん、俺ちょっと父さん寝かせて来る」
 ジャンが義父を背負いながら、義両親の寝室へと行き、俺は義母と二人きりになった。
「フロックちゃん、お父さん居るの?」
「んーん……?」
 俺は俺だからな。
 床に座り、しゃがみ込んで俺を見下ろしてくる義母を見上げて首を左右に振った。
「貴方って不思議よね。学習能力が高いのかしら。ジャンがまだ一歳二歳の頃は、喋れてもここまで自分の意思を表現したり、大人の言葉を理解して行動してたかどうか……」
 少しだけ、ぎくりと心臓が跳ねた。
 義母は、ジャンを育てた経験から俺に対する違和感を抱いているようだ。中身が幼児ではない。と、ばれても問題はないとは思うが、今までやらかしたものが一気に黒歴史になるな。いや、体は幼児なんだからそれに引っ張られてた部分もあるが。
「フロックちゃん、私はね、ジャンと貴方が何事もなく幸せでいてくれればいいと思ってるの。だから、急いで大きくなろうとしなくていいのよ?」
「ぬぅん……」
 そうは言っても、俺は早く大きくなってジャンと元の関係になりたい。
「そりぇ、かしえ……」
「だーめ」
 それはそれとして、黒歴史二号を消したいのでスマートフォンを貸せと要求しても、背中に隠された。代わりとばかりに、むき身の黄な粉棒を渡される。今日のおやつか。
「こえじゃない……」
「それ食べて落ち着きなさい」
 ぽすぽす頭を撫でられ、義母が立ち上がって俺が絶対届かない場所に義父のスマートフォンを置き、録画を止めていた。
「割れなくて良かった……」
 裏表、じっくり眺めて義母が安堵の吐息を吐く。
 あれ高いからな。壊れたら大参事なのは解っているが、悔し紛れに黄な粉棒を口に入れればもそもそしているが甘くて美味しい。
「あ、もうおやつやったのか?」
「それが一番大人しくなるかと思って」
 ほほほ。なんて義母は笑っているが俺の機嫌はまだ直ってない。
「ぶーたれながらおやつ食ってんなぁ……」
「じゃんだっこー!」
 手についた黄な粉まで舐めとり、食べ終わった俺はジャンに抱っこをせがみ、外を指差す。くさくさするから外に行きたい。
「とりあえず、お手て洗おうか、うわ、ちょ……」
「へひっ」
 蜂蜜、黄な粉、咥えて涎でべたべたになった手をわざとジャンの顔にぬすりつけて憂さ晴らしをする。一通り嫌がらせを済ませて腹癒せをすれば、素直に手洗いに応じてやった。
「ごめん、ちょっと顔洗ってくるから、着替えさせといて……」
 お出かけ前にジャンは顔を洗いに行き、二階に行って義母にお出かけ用の服に着替えさせて貰っていれば、ジャンを苛めた報復なのか、俺が嫌がるぴらぴらしたピンクを着せらそうになり抵抗する。
「これいや!」
「なんで、可愛いわよー?」
「いやー!」
 俺は可愛いより格好いいのがいい。
「ジャンも小さい頃こう言うのばっかり着せてたのよ。可愛かったわー」
 その写真は見たいが、俺は着たくない。
「いやぁぁん……」
 抵抗空しくピンクのふりふりを着せられ、嫌過ぎて泣けて来た。
 ジャンなら最初、嫌がった時点で諦めるのに、義母は熟練の技なのか、抵抗していてもいつの間にか色々着せられていた。魔法の手なのか。
「お、可愛い」
 二階に上がって来たジャンは、躊躇いなくスマートフォンを構え、ぴらぴらを着た俺の写真を撮る。
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
 黒歴史三号を作るな。
 がさがさと、嫌われ者の黒い生物のように這ってジャンのベッドまで行き、布団を引き摺り下ろして籠る。
「フロックー?出ておいでー?」
 外からジャンが呼びかけるが俺は頑として出て行かず、中で服を脱ごうと悪戦苦闘していれば、ぬくぬくした布団の中で、いつの間にか眠っていた。

 起きたらもう夕方。
 服も脱がされ、ベビーベッドで寝かされていたようだ。
 周りに人は居ない。皆、一階に居るんだろうか。
「じゃーんー、じゃー!」
 ぼやぼやする顔を腕で拭い、ベビーベッドを揺らしながら大声でジャンを呼べば小走りに駆け上がってくる音がして知らず顔が緩む。
「起きたか。ご飯にするか?」
「すいたー」
 一度寝れば、くさくさ気分は落ち着いて、腹が減っていた。
 飯を楽しみにしながら抱っこされてダイニングまで行けばピンクのぴらぴらを着て寝こけている俺の写真がプリントされ、写真立てに入れられて壁に飾られていた。
「げぅ……」
 位置的に、絶対に俺が届かない場所だ。
 しっかり対策をされている。
 あの脱走のせいで、大分警戒されているようだ。
「どうしたー?お腹空き過ぎてご機嫌斜めか?」
「めし……」
 黒歴史三号が製造された事実にげんなりし、いつか捨ててやると意気込みつつも、腹は減ったので飯を要求しておいた。

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