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馬房

小説は妄想と捏造甚だしい。 原作のネタばれ、都合の良い解釈。 R18、グロ(精神的にも)、暴力表現などが含まれます。 冒頭にざっと注意を書いてありますので、それを読んだ上での 閲覧を宜しくお願い致します。何かあればご連絡いただければ幸いです。 基本的に右ジャンしか書きません。 萌が斜め上です。無駄にシリアスバイオレンス脳です。 拙い文章ですが、少しでもお楽しみ戴ければ嬉しく思います。 右ジャン、ジャン総受けしか書きません。あしからず。

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事故で死んだかと思ったら、嫁の腹にいた自分の子に転生してた=その十三=

・赤子の嘔吐描写あり
・嫌々期フロック
・一日でぐったりするジャン君
・調子こくフロック





 春も近くなり、気候の穏やかな朝。
 義両親と俺、ジャンが揃って食卓に着き、他愛ない会話をしながら一日を始めようとしていた。が、
「いぃぃやぁぁぁぁぁぁぁ!」
 俺の絶叫で穏やかな空気は掻き消され、困り顔の大人達に囲まれる。
 発端は、フロックは思ったより手がかからないから、そろそろ俺も働こうかな。なんてジャンが言ったからだ。そうなると、俺は言葉も理屈も、倫理も理解しない幼児に囲まれた監獄に放り込まれる羽目になる。
 手がかからない。そう言うなら目一杯手をかけないといけなくしてやろうじゃないか。
「ほら、フロック。お前の大好きなグラタン……」
「いやないー!」
 本能のままに泣き叫び、グラタンを食わせて宥めようとするジャンを威嚇するが如く両手に装備したフォークやスプーンを振り回す。
「フロックちゃん、急に癇癪起こしてどうしたのかねぇ……」
 義母も今まで嫌々期など微塵も見せなかった俺の変貌に驚き戸惑っている。
「フロック、ほら、大好きなお馬さんだよー」
「いやないぃぃ!いやぁぁー!」
 喉が裂けそうなくらい叫び、俺が一人で居る際に良く握り締めている馬のぬいぐるみを義父が差し出してきても叩き落す。最近、買って貰ったものだが、別にぬいぐるみが好きなんじゃなくて、鬣がジャンの髪色に似ていたし、可愛かったからジャンが構ってくれない時の代わりに持っているだけだ。
 今は代替品に用はない。恥を忍んで赤子の権利を使い捲って邪魔してやる。
「どうしたんだほんとに……」
 ジャンが俺を困り顔で見詰めながら呟き、義父はぬいぐるみを持ったままおろおろし、義母と言えば何やら考え込んでいる。
「もしかしてだけど、ジャンが外で働こうかな。って言った意味解ってるんじゃないの……?」
「まだ、こんなちびだぜ?」
「でも、フロックちゃんって大人の話を良く聞いてるし……、結構、理解してない?」
 義母とジャンが俺の頭上で話している。
 中々いい線行ってるな。
 いいぞ、察しろ。
「うぅん……、不思議な感じはある子だよな」
 ジャンが俺をあやすために椅子から抱き上げ、泣き過ぎて嘔吐いている俺の背中を擦ってくれた。凄い咳と変な蛙みたいな声が出る。ちょっと苦しい、やり過ぎた。
「ほら、フロック落ち着け、げーしちゃうぞ」
「おぶ……」
 ジャンの介抱空しく俺は抱っこされたままの状態で吐いた。ジャンの肩や背中が吐瀉物でどろどろに汚れ、諦めの入った乾いた笑いを漏れていた。結局吐いたがこれでも我慢したんだぞ。一応。
「ちょっと、お口の中洗おうか……」
 げろ臭いのは俺も嫌なので、素直に従う。
 ジャンが着替えた後、俺の小さな歯を磨いてくれ、義両親は既に仕事に行ったので二人きり。そしてジャンに尽くして貰って大満足だった。
「フロックは歯磨き嫌がらないで偉いなー。他の親御さんに訊いたら結構、抵抗されるって言うし……」
「うひひ……」
「ん、くすぐったかったか?」
 偶に優しく磨かれ過ぎてくすぐったくはあるが、今のはまんまと有耶無耶に出来た達成感から出た笑いだ。ま、勝手に解釈させておこう。
「はい、お仕舞い。良く頑張りました」
 口に水を含んで洗面器吐き出すと、ジャンが頭を撫でて片付けのために席を外す。
 俺が吐いたせいか、室内の空気がちょっと臭い。すっきりしたついでに庭に通じる硝子戸まで歩き、鍵を開け、戸を引いて換気をする。俺って偉いな。
「わっ、フロック、一人でお外出ちゃだめだぞ」
「んーんんー」
 慌てた様子でジャンが小走りに駆け寄り、俺を抱き上げた。
 開けはしても俺は座ってただろうが。心配性だな。いや、これでいいのか。目が離せないと思われた方がいい。最近、俺が一人で何でもしようとするせいか、ジャンも黙って見守る態勢が増えて来たしな。
「んひっ……」
 これでジャンは外に働きに行く事を考え直すだろうし、俺は幼稚園だか保育園に入れられずに済み、二人の蜜月は続く訳だ。
 ジャンの肩に額をぐりぐり擦りつけ、嬉しさから笑いが込み上げてくる。
「今日は甘えん坊だなぁ。誰かからそうしろとか言われたのか?」
「だれ?」
 そう言えば、以前、ジャンは変な事言ってたな。
 以前の俺の写真を見せながら、側に俺が居ないか。とか訊いてこなかったか。幽霊の俺が側に居て、指示を出してるとでも思ってるんだろうか。赤ん坊にしては小賢し過ぎるせいか。
「幽霊とか、妙に怖く演出される事多いし、別に信じちゃいなかったんだけど……、フロックなら会いたいな……」
「めのまえ、いるー」
 俺はここに居る。
 生きてるし話も出来るぞ。
「え……?」
「いるの」
 ぺちぺちジャンの頬を叩き、自分を指差す。
「あぁ、お前じゃなくてお父さんの方だよ。名前が一緒だからややこしくてごめんな」
 どっちでも同じなんだが、幼児の口では説明が難しいな。
 いいか。追々解らせてやる。
「あ、フロック、そろそろねんねしよっか」
 いつも昼飯の前に寝かしつけられる時間に差し掛かり、ジャンが小さな布団の上に俺を寝かせる。特に眠くはないが、赤子のサイクルだし仕方ない。渋々横たわったまま目を閉じた。傍で体温を感じながら歌ってくれる心地好さは悪いもんでもないしな。
 こう、物分かりが良過ぎるのも手がかからない。と、思われた原因だろうか。抗ってみるべきか、しかし、布団に横になった途端、眠気が襲ってくる。条件反射って奴か。
「んーんー」
「どうした?おしゃぶり要るか?」
 眠気に抗おうと試したが、別に欲しくないおしゃぶりを口に咥えさせられると余計に眠くなった。赤子って単純だな。もう無理だな。
 かく。と、意識が落ちていき、遠くからぱたぱた歩く音がした。俺の昼飯でも仕込んでくれるんだろう。

 目を覚ましてから昼飯を食い、それからは、ちょっとでもジャンが離れるとむずがってやった。
「本当に今日は甘えん坊だな。トイレ行くから、な……?」
「あい……」
 幼児用の椅子に俺を座らせ、ジャンが足をもじもじさせながら廊下へ出て行った。少しばかり可哀想な事したな。どんどん落ち着きを失くし、顔色が青褪めてくるから我儘にも限界を感じて今度は黙って見送ってやった。こう言うのは適度にやらないとな。
「ひまぁ……」
 ただ、ジャンが居なくなると直ぐ退屈になる。
 べったりの弊害と言えば弊害だが。ジャンもトイレで少しばかり息抜きでもしているのか長い。
 そして、俺の目の前にはジャンの飲みかけの珈琲。久しく飲んでないからちょっと欲しい。余程慌てていたのか、いつもは俺の手に届かない位置に置くのに、今日は届く位置にあった。
 しめしめとばかりにコップを手に取る。ジャンは砂糖を入れるタイプだから、子供の舌にも苦くはないはずだ。
「いひひ……」
 久しぶりの香りを胸いっぱいに吸い、赤子にはやや重い大き目のマグカップを両手で支えながら一口。淹れてから時間が経っているお陰で特に熱くはないが、インスタントではなく、きちんとドリップした物なのか中々美味かった。
「はっ、おま、珈琲飲んだのか⁉」
 トイレから戻って来たジャンが自分のマグカップに口を吐けている俺を見て驚いていた。
「うまーい」
 出来たらお変わりくれ。
 幼児椅子についている簡易机の上にマグカップを置き、叩いて要求してみるが希望は通らなかった。それどころか、ジャンは慌ててどこかへ電話をかけていた。
「あの、フォルスターです。子供が置いてた珈琲飲んじゃって……、えっと、マグカップの半分くらい、百ミリちょっと……?あ、はい、はい……」
 ジャンは一言も聞き逃さないように相手の話を聞いているようで、神妙な面持ちで何度も頷いている。電話先はあの糞医者か。
「うーん、具合はどうだ?吐きそうとか……」
 ジャンが電話を切り、俺に向き直って体調を訊いてくる。
「だいじょーぶ!」
 寧ろ美味かったので、もう一杯。
 マグカップを両手で持ち、突き出しながら再要求してみたが、そっとコップを奪われて幼児用の麦茶を入れた哺乳瓶を渡された。
「いやん」
「飲んでくれよ、水分とってカフェインを出した方が……」
 余程麦茶を飲ませたいのか、ジャンが俺を抱き上げて投げ捨てられた哺乳瓶を拾い、顔に押し付けながら飲ませようと苦心しているが、今は別に喉は乾いていない。顔を背けて哺乳瓶を避け、手足をばたつかせる。
「いやないー」
「びちびち跳ねるな。んもう、飲めってばー……」
「いやー」
 ジャンの側に居たいのは山々だが、要らない物の強要は宜しくないぞ。岸に打ち上げられた魚のようにうごうごしていれば、ジャンは諦めたのか床に下ろしてくれた。
「嫌々期って、急に来るんだな……」
 そうだろそうだろ、外に出ている暇なんかないぞ。
 敷かれている布団の中に逃げ込み、お茶を飲まない態度を示していればジャンが疲れ切ったような溜息を吐いて布団に潜り込んでいる俺の側に横たわる。
「はぁ、やっちまった。刺激物を勝手に飲んだり食べたりしないように気を付けてたのになぁ……」
 誰に向けるでもなく吐き出された言葉。
 そう言えば、俺が動き回るようになってからは調味料なども全て高い棚の上に置かれるようになった。踏み台を使っても絶対に届かない場所だ。冷蔵室の中身も俺が冷凍室と野菜室の引き出しを開けて登るから手の届く下段には俺が興味を示さない野菜類しか置かなくなったし。
 ジャンは床に突っ伏して、自責の念に駆られているようだ。
 原因は普通に俺なんだけどな。
「きにすにゃ……」
「するわ……、お前が健康に育たないと、あの世でフロックに合わせる顔がねぇだろ……」
 有名な墓に自分は居ないと歌う曲ではないが、あの世に俺は居らんぞ。
「ここいりゅじょー」
「ふふ、だからお前じゃないって」
 少々口が回らなかったが、ジャンは聞き取ってくれ、また同じ名前だから勘違いをしていると思ったらしい。幼児とこうして会話が成立してる時点で怪しんで欲しいんだけど、中々考えがそこまで至らないようだ。夫が自分の産んだ子共になってるなんて、常識範疇から大分外れてるから仕方ないか。
「そろそろお昼寝しよっか、あ、先に歯磨きするか、結構砂糖入れてたし……」
 俺が面倒で渋い表情をすると、お前が珈琲飲むからだ。なんて責任転嫁をされた。いや事実だが。ジャンに支えられつつ二度目の歯磨き。口の中の珈琲の匂いと甘ったるさが消えてすっきりした。
「さて、ねんねの時間だぞ。……寝れるか?」
 大丈夫だろ。
 多分。
 眠気は一切ないが。
「ほんっと、子供って予想つかないなぁ……」
 ジャンがぼやきつつ俺を寝かしつけているが、眠りは一向に訪れない。歌って貰っても、優しく体を叩いて貰っても、眠気は訪れず。完全に珈琲のせいだ。しかし、俺は優しいので寝た振りをしてやる。
「寝てくれたか……」
 ほっとしたような声と、頭を撫でる暖かな手。
 それは次第に動きが鈍くなり、俺の体の上に落ちたまま動かなくなる。
 薄目を開けて確認すれば、ジャンは転寝をしてしまっていた。以前は一緒に寝ていたが、今の俺は寝ていない。
「むふぅ……」
 そうっとジャンの手を避けて移動し、妙に上がっているテンションに鼻を鳴らす。
 なんだか、何でも出来そうな万能感。ジャンの額に口付けて頭を撫で返してやった。いい気分だ。
「いっしょ……」
 ジャンの首に下がっている指輪を握り、自分の指に通してみるが当然合う訳がない。幼児の手なんて大人の手のなん分の一だって話だしな。
 無性に込み上げてくる笑いと落ち着かなさ。なんだか走り出したい気分になって薄く開いていた扉から廊下に出て周囲を見渡すと玄関が目に入った。
「さんぽ……」
 思い付いたら直ぐに行動。
 台所から踏み台を引き摺って音を立てないよう玄関にゆっくり置き、独りで靴を履いて鍵を開けて外に出た。玄関扉は重かったが、外開きだから体重をかければ案外容易く開いてくれ問題はない。
「へっへっへ……」
 浮かぶ白い雲に遠く広がる青空、ぽかぽか暖かい太陽光。
 気分が良くなり、玄関から一気に飛び出して家の前で一踊り。
 折角だし、公園まで行ってみるか。
 俺は自由だ。
「うっうーぅー」
 下手くそな鼻歌を歌いながら、ちまちま歩いていれば、擦れ違った近所のばあさんがぎょっとした様子で振り返っていた。この歳で独りの散歩とは、俺は凄い。驚くのも仕方ない。

「フロック⁉」
 公園へ続く道程の途中で疲れたため地べたに座り込み、ぼけっと空を眺めながら体力を回復させていれば、ジャンの声がして振り返る。そして、失敗を悟った。
「よ、よか……」
 ジャンは息を切らし、俺の前に跪く。
 部屋着のまま、裸足で追いかけて来たらしい。その後ろには先程擦れ違ったばあさんが駆け寄ってきていた。表情からは困惑の色がありありと表れている。
「すみません、ありがとうございました……」
「いいのよ。私も直ぐ保護して上げてれば良かったんだけど、お靴も履いてたし、どこかで貴方が見てるのかも。なんて思って……。でも、やっぱり気になってねぇ……」
 言動から察するに、初めてのお使い的な展開を考えていたが、やはり可笑しいと感じてばあさんが家を訪ね、ジャンに外で俺を見かけた旨を報告して現在に至るようだ。別に迷子になってた訳でもないし、放って置いて欲しかった。が、裸足で飛び出すほど慌てさせたのも事実だ。手をかけさせるにしてもやり過ぎたか。
 ばあさんに別れを告げ、ふらふらしているジャンと共に帰宅。
「ごめちゃい」
「ふざけんなばか……」
 酷く疲れた様子で玄関に座り込んだジャンに、力いっぱい可愛い子ぶりながら謝ってみたが、今回は通じなかったようで、じっとり淀んだ眼で額を弾かれた。そこまで痛くはないが、これは完全に怒らせたのか。
「あし、だいじょぶ?いたいいたい?」
 頑張って話を逸らそうと、ジャンの脚を撫でてやる。
「俺の脚なんてどうでもいいよ……」
 それだけ呟き、ジャンは片手で目を覆うと黙り込んでしまった。脚は、道に硝子片でも落ちていたのか傷は小さいものの血が出ている。
 俺も反省し、靴を脱いで救急箱を探しに行こうとしたら勢い良く掴まえられ、ジャンの胸に抱きこまれてしまった。しかし、怒るでもなく、泣くでもなく何も言わない。暫くそうした後、風呂場まで俺を伴って鈍い動作で行き、足を洗っていた。
「お着換えしようか」
 足を洗った後は自分の部屋へ行き、俺と自分の服を着替える。そればかりか、お出かけ用の抱っこ紐を出し、俺を抱え上げた。出かけるのか。糞髭の所か。嫌だな。
「いやー」
「駄目。抱っこされてろ」
 ジャンは短く俺を叱り、出かけるでもなくダイニングに戻るとソファーに座ったまま、俺を抱き締め、虚ろな目で何もない空間を見続けていた。もしや、何らかのトラウマを刺激してしまった感じか。
 参ったな。ここまでやるつもりじゃなかったんだが。調子に乗り過ぎたか。
「ジャン、おでかけでもするの?」
 帰宅してきた義母に訝しがられ、ジャンは緩やかに首を横に振る。
「どうしたの?」
 何かしらの事態が起こったらしいと感知した義母はジャンの隣に座り、言葉に耳を傾ける。話を聞き終われば俺ごとジャンを抱き寄せ、背中を撫でてやっていた。
「今日はびっくりの連続で大変だったのね」
「そんな言い方、餓鬼じゃないんだから……」
「母ちゃんにとっては、あんたはいつまでも子共だよ」
 義母が語り掛けるように優しく言えば、ジャンはくしゃ。と、顔を歪ませた。
「そう言うとこが嫌なんだよ……」
「ふふ、怖かったわね……」
「……うん」
 ジャンの声に水気が混じり、俺を強めに抱き締める。
 そのジャンは義母に抱き締められ、背中を擦られていた。
「フロックちゃん、元気なのはいいけど、やんちゃは駄目よ?」
「あい……」
 義母にくりくりと額を突かれ、叱られてしまった。
 朝からご機嫌斜めを振る舞っていた俺だが、ジャンの様子を見て幾分の反省はした。後悔は特にしてない。

 俺が全く懲りていない事に、薄っすらジャンは気づいていたのか、それから一週間ほどは抱っこ、あるいはおんぶ紐でいつも拘束される羽目になってしまった。だが、これはこれで悪くない。どっちにしろジャンが家、というか俺の側に居て欲しい希望は叶っているので、毎日機嫌良く過ごしていた。

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