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馬房

小説は妄想と捏造甚だしい。 原作のネタばれ、都合の良い解釈。 R18、グロ(精神的にも)、暴力表現などが含まれます。 冒頭にざっと注意を書いてありますので、それを読んだ上での 閲覧を宜しくお願い致します。何かあればご連絡いただければ幸いです。 基本的に右ジャンしか書きません。 萌が斜め上です。無駄にシリアスバイオレンス脳です。 拙い文章ですが、少しでもお楽しみ戴ければ嬉しく思います。 右ジャン、ジャン総受けしか書きません。あしからず。

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事故で死んだかと思ったら、嫁の腹にいた自分の子に転生してた=その六=

・ワンドロの『流れ星』
・双子座流星群が十二月にあった





 ジャンがくあ。と、欠伸を一つ。
 十二月の十五日。
 今の時刻は早朝の三時五十分ほど。

 寒い中、ジャンが俺を外に連れ出し、縁側に座りながら、かれこれ二十分ほど星を空を眺めていた。
「おー、ぱらぱら降ってるな……、ほら、フロック、綺麗だぞ」
「んーい……」
 正直、俺は眠いんだが、ジャンが付き合って欲しそうだから頑張って起きていた。自分の健気さに感動すら覚える。

 降っているのは雨や雪ではなく、流星群。
 空に幾筋の光が流れる様を、白い息を吐きながら見上げていた。
「お星さまが流れてる時に、お願い事するとそれが叶うんだぞ。なんかお願いしとけ」
「うい」
 俺の髪を撫でながら与太話を教えるジャンに、敢えて反抗はせずに返事だけをする。
 そんなもんで願いが叶うなら、世の中億万長者だらけじゃないか。ジャンは案外、乙女な所があるからな、仕方ない、乗り掛かった舟だ。付き合ってやろう。
「そろそろ一杯降るぞ」
 スマートフォンで時間を確認し、そろそろ四時に差し掛かろうとした頃、空を見上げれば流星群の名に相応しい勢いで星が流れ出した。
「きれーだな」
 ジャンが目を細め、微笑みながら俺に話しかけてくる。
 わざわざこんな朝早くに起きて、星を見るためだけに寒い中座り込んで、こいつじゃなきゃ絶対に付き合わない。まぁ、今は赤子だから、ほぼほぼ抗う術はないんだが。
「んー……」
 呻った後、くしゃみをすれば、ジャンが自分のコートを脱いで俺に頭から被せた。
「ごめん。寒かったな、もう入るか」
 硝子戸の出入り口から家に入り、星を見るために電気を消していたため、薄暗い中でファンヒーターのスイッチを入れ、その前に俺を下ろした。がち、ぼー。と、音が鳴り、温かい風が直ぐに出てくる。
 頭から被せられているコートが上手い具合に暖かい空気を溜めてくれて、一気に全身が暖かくなる。ジャンは暗い中でお茶でも淹れようとしているのか、台所で火を扱っていた。
 ちら。と縁側の硝子戸を振り返れば、まだ星は降り続けている。

 事故で死ぬなんて、糞ほどの不運だった前世、で、いいのか?取り敢えず、前よりは幸福を約束して欲しい。俺はもう老衰するまで死ぬ気はないし、ジャンが事故や病気で死ぬのもなし。
 星に願った所で、どこまで効果があるかは半信半疑だが、言うだけはただだし、神社でお願い事をする時のように両手を叩き、長寿と幸運を約束された人生をお願いしておく。
「ん、星が一杯降ってて楽しいな」
 コーヒーを淹れ終えたジャンが俺の隣に座り、窓越しに落ち着き出した流星群を俺と共に眺めている。星が降る光景に喜んで手を叩いているとでも思ってるんだろうな。普通はそうなんだろうが、俺の場合は中身が一応大人だから喜んでる訳じゃない。滅多に見れない綺麗な光景だとは思うが、はしゃぐほど餓鬼じゃない。
「俺も一杯、お願いしといたからな」
 香ばしい匂いを漂わせるコーヒーが入ったカップをファンヒーターの上に置き、ジャンは俺の髪に指を絡ませながら愛おし気に見詰めてくる。体が大人だったらいい雰囲気で、このままベッドに行くんだけどな。大人の利点と子供の利点、どっちも捨てがたく、どっちも欠点が多い。
「もうねんねか?」
 俺がジャンの膝の上に寝転がると、コートを布団にして背中を撫でてくれた。
 何を願ったのかは知らないが、きっと自分の事じゃないんだろうな。こいつはそういう奴だ。俺がきちんと見ててやらないと。

 ヒーターの温かさと、ジャンの膝の心地好さ、朝早く起こされたせいでただえさえ眠かった俺は直ぐに眠ってしまい、気が付けばベッドに寝かされて、隣ではジャンも寝ていた。
 すぅすぅ。と、寝息を立てて眠っているジャン。目の端が少し赤い。
 またこっそり泣いてたのか。馬鹿だな。

 ジャンの小指ほどもない大きさの指で赤くなった目元を擦り、懐に潜り込んで再び眠る。
 どこまで星如きが叶えてくれるかは知れないが、宝くじくらい当たっても罰は当たらないと思う。

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