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馬房

小説は妄想と捏造甚だしい。 原作のネタばれ、都合の良い解釈。 R18、グロ(精神的にも)、暴力表現などが含まれます。 冒頭にざっと注意を書いてありますので、それを読んだ上での 閲覧を宜しくお願い致します。何かあればご連絡いただければ幸いです。 基本的に右ジャンしか書きません。 萌が斜め上です。無駄にシリアスバイオレンス脳です。 拙い文章ですが、少しでもお楽しみ戴ければ嬉しく思います。 右ジャン、ジャン総受けしか書きません。あしからず。

事故で死んだかと思ったら、嫁の腹にいた自分の子に転生してた

※相当特殊な設定なので地雷原。タイトルから察して
2p
・いきなりフロックの死にネタから始まります
・交通事故の流血描写などがあります
・赤子の下から出る小を漏らす描写があります
・一応オメガバース
・死んだけど、どっこい生きてるフロック
・2019/10/18






 俺は目を覚まし、うぎ。と、声を上げた。
 眼はあまり良く見えず、耳も聞こえ辛い。
 自分の声だけが頭の奥から響くような感覚だ。
「どうしたー、お腹空いた?んー、おむつはまだ大丈夫か」
 俺を抱き上げ、優しく声をかけてくれるのは俺の嫁であるジャン。こいつは俺の嫁なんだが、母親でもあると言う意味不明な状況を理解したのはここ数日だ。

 最後の記憶は突っ込んでくるスポーツカーと、それを運転する馬鹿みたいに見た目も頭も軽そうな男の驚いた顔。
 歩行者用信号は青だった。しかし、深夜だったため他に歩行者がおらず、目撃者も居なかったとあって跳ね飛ばされた俺は道路に放置された。地面に自分の血を吸わせながら、冷たくなっていく体と薄れていく意識の中、死にたくない。と、思った。
 ほんの何時間か前に、妊娠検査で陽性だったと伝えてきたジャンの事ばかりが頭に浮かんだ。帰ってからジャンを抱き締め、ささやかなお祝いをしようとコンビニでケーキも買っていたのに、俺の手を離れて道路に落ちたケーキのパックは俺を轢いた車に踏まれたのか潰れてしまっていた。
 悔しくて悔しくて堪らず、これでは何のために周りの反対を押し切ってまで結婚したのか。幸せになりたくて、したくて、お互いに手を取りながら頑張ったはずだった。それがこんな結末か。
「ちくしょう」
 言葉になったかも判らない悪態を吐き、目の前が真っ暗になった事だけを覚えている。

「うーん、おっぱい要らないのか?」
 胸を張りつきながらも乳に吸い付かない俺を訝しがるジャンが頭を撫でてくれた。
 ジャンのおっぱいは大好きだが、残念ながら然程、腹は空いていない。
 俺だ。と、伝えるにはどうしたらいいのか。
 普通なら、信じられないよな。
 死んだはずの夫が、自分の子供になっているなんて。
「甘えたかっただけか、父ちゃんにそっくりだなお前」
 伝えられないもどかしさに、うー。と、俺が呻れば、抱き締めたままゆらゆら体を揺らしてくれた。揺らし方が上手いのか、とても眠くなる。早く大きくなりたい。

 次に目を覚ましたら、おむつが気持ち悪かった。
 ぎーぎー叫べばジャンが慌てて寄って来て、おむつを見て直ぐに抱きかかえ、ベッドから床に下ろすと綺麗に尻を拭いて新しいおむつを着けようとしてくれたが、じたばた足を動かして拒否をした。
 体は赤ん坊だが、心は大人な訳で、おむつが嫌で嫌で仕方なかったからだ。
「もー、大人しくつけさせろって、また漏らして泣き喚く事になるぞ」
 ジャンの言葉に動かしていた足を止める。
 深夜で眠かったからか、おむつを嫌がる俺に根負けしてジャンがそのまま寝た事があった。これ幸いとおむつ無しの快適生活だと思ったのに、体が動かせないせいで思い切り漏らした屈辱は忘れ難かった。トイレに行けない事を失念していた俺が悪いのだが、あの背中まで自分の小便で濡れた不快感は忘れようがない。
 未だ、自分で寝がえりすら打てず、引っ繰り返った亀のように手足をばたつかせるだけ。その苛々から叫んだりしてジャンが睡眠不足になっているのは、正直悪いと思ってはいる。
「ジャン、後は私がやっておくから、あんたは寝といたら?」
「でも、俺が抱っこしてないと寝ないしなぁ……」
「そうねぇ……、じゃあ、お夕飯の準備は私がしておくから、一緒にゆっくり寝てなさい」
「ありがと……」
 間近でされた会話だったから、どうにか聞き取れた。
 そうか、良く見えなかったから解らなかったが、ここは俺達が住んでたアパートではなく、ジャンの実家らしい。
「フロック、母ちゃんと一緒に寝ようか」
「うぎ」
 ジャンの実母。
 俺からすれば義母になるが、俺達が付き合っている事にも良い顔をしなかったのに、やはり自分の子供は可愛いのか、俺が死んだのだから。と、帰ってくるように説得したんだろう。実際問題、妊娠したばかりの体で無理は出来ない。精神的にもたった独りで耐えられるような状況ではなかったに違いない。
 小さな手で顔に触れば、いつも綺麗で滑らかだった肌がかさついているようにも感じる。育児疲れと言う奴か。
 せめて、自由に動き回れるようになりたい。以前の記憶があるだけに、この体に納まっているのは中々に拷問だ。

「フロックちゃんはあんまり泣かないのねぇ」
「そうだな……、はは、助かってるよ」
 泣かない代わりに苛々して叫んだりはしているが、まだ様々な器官が未熟故に、そこまで大きな声にはなっていないのかも知れない。
 視界に色はついていないが、徐々に見えるようになってきて、久々に見たジャンの顔は少々やつれ、かなり痩せたように見えた。俺がやった指輪も指に合わなくなったのか、チェーンを通して首に指輪を二つぶら下げていた。一つは俺の指輪かな。

 オメガとベータの結婚なんて、茨の道でしかない。
 周りからは何度もそう言われた。優秀な雄であるアルファを産めるオメガのジャンには、つがいになる事を望む相手からの見合い話が幼少時代から幾つも来ていたそうだった。

 高校を卒業したら好きでもない人の元へ嫁がなければならない。でも、あの人達の物を見るような眼差しが気持ち悪くて堪らない。そうジャンは零していた。
 オメガ性を持った人間であれば、アルファ性を持った人間とつがう事が当然で、発情期や、フェロモンの関係から見ても、そうする事が最善なのだろうが、若かった俺はそれを間違っていると思った。
 俺から告白をしてジャンと付き合い始めた時も、周りはいい顔をしなかった。ベータ如きがオメガと。だとか、オメガはどうせ、アルファと結婚するのだから、最終的には別れる事になるのに可哀想。そんな風に何度も何度も言われ、別れるよう自分の両親からも説得されたりもした。
 それでも俺は反発してジャンとの付き合いを続け、アルバイトで貯めた金で日帰り旅行をした際に、初めて口付け、体を繋げた。いつもの快活さや、皮肉屋な性格はどこに行ったのか不思議なほど、しおらしく、健気で可愛かった記憶は強烈に脳裏にこびりついている。

 俺が守るんだ。
 俺が幸せにするんだ。
 そんな決意をして高校を卒業と同時にジャンの手を取って家を出て、二人で暮らし始めた。婚姻届けを提出した際に、窓口に居た男性から、訝し気な視線を受けたが無事受理されて、晴れて夫婦に成れた時も嬉しかった。
 ベータとオメガでは、子供が出来辛い。そう聞いていたのに、妊娠報告が来た時も浮かれに浮かれた。あの事故さえなければ、今、赤ん坊を腕に抱いていたはず。
 恨むべきは高卒で職業選択の余地もなく、営業職に就いた自分自身か。糞のような理由で呼び出し、こちらの話を全く聞かずに延々と余計な話をし続けた顧客か、頭の軽そうな若造か。はたまた全てか。
 こうして、またジャンと過ごせる機会を賜れたのは、どんな神の悪戯だろう。他人ではなく、嫁の腹に居た我が子に魂を移すなんてのは悪魔の所業にも思える。
「うー……」
 考え過ぎて頭が痛くなり、ぐずっていたらジャンが慌てて寄ってきて、俺を抱き上げた。
「どうした?腹減ったか?」
 言葉を伝えられない事がこんなにももどかしいとは。
「ういー……、うー」
 俺は呻きながらジャンに縋りつき、額をぐりぐり胸に押し付ける。
 抱き締められない、伝えられない悲しさから涙が溢れてくるが、こんなものジャンを困らせるだけだ。

 やったのが神でも悪魔でも構わない。
 こんな悪戯をするくらいなら、一気に大人になる薬を寄越せと叫びたかった。

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