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馬房

小説は妄想と捏造甚だしい。 原作のネタばれ、都合の良い解釈。 R18、グロ(精神的にも)、暴力表現などが含まれます。 冒頭にざっと注意を書いてありますので、それを読んだ上での 閲覧を宜しくお願い致します。何かあればご連絡いただければ幸いです。 基本的に右ジャンしか書きません。 萌が斜め上です。無駄にシリアスバイオレンス脳です。 拙い文章ですが、少しでもお楽しみ戴ければ嬉しく思います。 右ジャン、ジャン総受けしか書きません。あしからず。

美の化身

https://twitter.com/pwkj_cos/status/1205509528793436160?s=20
つかもとさん(@pwkj_cos)のイラストに僭越ながらSSをつけさせていただきました。
報われないモブネタ好きです。

・モブ→ジャン
・現パロ
・モデルジャン





 あぁ。
 ファインダーを覗いた瞬間、思わず出た溜息。
 決して落胆ではない。これは、本来の意味の感嘆の意である。
 目の前に居るのは一人のモデル。布一つ纏っていない裸体でありながら性的な淫蕩さはなく、ただただ美がそこにあったのだ。

 依頼を受けた当初、女性向け化粧品のPRに何故、顎髭を蓄えた男性モデルを起用したのか意味が解らなかった。奇抜なコマーシャルを打ち出し、話題性を狙ったのだと下世話な事ばかり考えていた。だが、私の考えは間違っていたのだ。
 カメラを構え、切り取られた世界を覗いてやっと気づけた。彼の妖艶な惹きつけられる魅力に。
 極端な話、見目の良い『だけ』の人間ならば幾らでも居るのだ。そして、見目の良さ『のみ』で売り出し、一時的に売れたとしても世間からは直ぐに飽きられてしまう。
 写真を撮る仕事を続けてきて、いつも実感する現実だ。見目だけを誇る人間は、若さに固執し、変化を恐れる。そして、人気を取り戻そうと無茶な話題作りをして反感を食らったり、甘い言葉を囁いてくる悪人の魔の手に落ちてしまう。

 しかし、彼はどうだろう。
 モデルとしての経歴はそこそこ長い。
 現場に来る前に、彼のマネージャーから資料として渡された過去の仕事データを確認すれば子供服モデルをやっていたようで、そこには溌剌とした少年が写っていた。手足が長く、切れ長で三白眼の目つきの悪さを生かした小生意気な顔立ちに、何を着ても似合うスタイルの良さを売りにしていたようだ。
 十五歳になり、学業に専念するためにモデルを一時休業し、戻ってきた彼は十九歳になっており、今回は、復帰しての初仕事だと資料に書いてあった。十九歳の『今』を写した参考写真は、スマートフォンで雑に全身像を撮ったのか、実に味気ない、全く彼の魅力を引き出せていない写真だったと記憶している。

 私はファインダーを覗きながら、生唾を呑み込む。
 十九歳と成った彼は、溌剌とした少年の殻を脱ぎ捨て、全くの別人とも見える揚羽蝶の如き変貌を遂げていた。
 スタイルの良さは勿論健在であり、それどころか更に精練されていた。やや面長な輪郭から少年らしい丸みを帯びた頬は消え失せ鋭利になり、それぞれの配置、形は実に完成されたものに変わっている。
 す。と、伸びる細い眉、切れ長の目は怪しく光る琥珀色の瞳を縁取り、生え揃った長めの睫毛は瀟洒な装飾を成された額縁のように美しさを際立たせている。
 通った鼻筋は男性ながらも繊細、薄い唇は大き過ぎもせず小さ過ぎもせず、彼の顔立ちに似合った形の良いもの。顎に薄く蓄えた髭も彼の美しさを助長させこそすれ、汚らしい印象は一切抱かない。
 美の女神に愛された人間とは、彼を指すのではないのか。

 感動に手が震えそうになりながらも懸命に堪え、シャッターを切った。
 その瞬間、彼の背後に見えたモノ。

 顔こそ見えなかったが、彼を愛でるが如く肩に添えられた両の手、長い髪を緩く耳にかけ、身を寄せた姿には心の底から、彼の存在が愛おしくて仕方がないのだと、半ば鬼気迫る感情の波をぶつけられた心地になった。
 あぁ、『やはり』、彼は美の女神に愛されているのだ。と、私は確信を得る。

 夢中でシャッターを切った。
 きっと、彼はいつまでも美しく変化し続けるだろう。
 願わくば、それを一生、撮り続けたい。私の生涯は、産まれた意味は、カメラを掴んだこの手は、そのためにあるのだと。

 私の女神よ。
 どうか。
 どうか。

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