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馬房

小説は妄想と捏造甚だしい。 原作のネタばれ、都合の良い解釈。 R18、グロ(精神的にも)、暴力表現などが含まれます。 冒頭にざっと注意を書いてありますので、それを読んだ上での 閲覧を宜しくお願い致します。何かあればご連絡いただければ幸いです。 基本的に右ジャンしか書きません。 萌が斜め上です。無駄にシリアスバイオレンス脳です。 拙い文章ですが、少しでもお楽しみ戴ければ嬉しく思います。 右ジャン、ジャン総受けしか書きません。あしからず。

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善意の土産

・花粉症フロ君
・お土産買ってくるジャン君






 ただいま。
「そこから動くな!」
 ジャンがそう言って自宅であるアパートの一室に入れば、同居人であるフロックが怒声を放ち、ハンディ掃除機を片手に周辺の空気から、着ていたコートなどを吸っていく。
「うん、こんなもんか……」
「お疲れ……」
 返事の代わりに大きなくしゃみが返って来て、鼻水が出たのか掃除機を抱えたままフロックはダイニングまで小走りに駆け込むとティッシュで鼻を噛んでいた。
 鼻を啜りながら、掃除機を持ったついでとばかりに周辺の埃や落ちているであろう花粉を吸っていく。

 何を言おうかフロックは重度の花粉症なのだ。学生の頃から、花粉が飛び始める時期になると学校にもティッシュ箱と袋を持参し、マスクと眼鏡は絶対に外さず。だが、それでも辛そうにくしゃみをしたり、目を擦らないようにしつつも痒いのか目を瞬かせていた。
「毎年毎年、辛そうだな……」
「んー、もうこの世の杉を全部燃やしてやりてぇ……」

 フロックとジャンは、今年から同じ大学に通う予定があり、お互いに言いたい事ははっきりと言う気質で、自分の事は自分で出来る人間であるとして生活費を浮かすために同居を開始した。実際、仕様もない小競り合いはありつつも大きな喧嘩もなく過ごしている。
「不穏な事は思うだけにしとけよ。じゃ、俺風呂行くから……」
「おう、悪の根源は綺麗に流してきてくれ」
 ジャンは苦笑し、自室に入れば、朝は乱雑に置かれていた私物が整理整頓され、部屋も髪一本落ちいない状態になっていた。どうやら、居ない間に掃除をしてくれたようだ。
 自分が幾ら気を付けていても、同居人であるジャンが花粉をくっつけてくれば意味がないため掃除したくなる気持ちは理解出来る。ジャン自身は花粉症ではないため、そこまで神経質になった経験がない。実家でも、ちゃんと自分で掃除しなさい!と、母親に叱られていた程度にはずぼらである。
 同居をするにあたって、お互いにあれこれ強要しない事、干渉し過ぎない事を条件にした事もあって無駄な喧嘩で心労を溜め、ただでさえ辛い花粉症を悪化させたくないとの理由だろうか。

 ジャンが風呂から上がっても、フロックはハンディワイパーや、粘着テープを使って掃除をしていた。エアコンも不安定な椅子を踏み台にして専用のスプレーで洗浄していたくらいだ。少しでも辛さを軽減したいのだろう。
「フロック、これやるよ」
 ジャンが自室で着替え、帰宅前に寄ったドラッグストアで買ってきたスプレー型の花粉症対策グッズを渡す。
「なんだこれ……?」
「肌につけると花粉やウイルスの付着を軽減してくれるらしいぞ」
「ほう……、ちょっと顔洗ってくる」
 フロックの目が輝き、台所で手早く顔や目を洗い、早速とばかりに目を閉じた顔に向かって噴霧する。
「案外綺麗に霧状にならないな……」
 思ったより大きな粒が出て、綺麗に塗るためには手を使った方が良さそうな気がした。ジャンが提案がてら、スプレーを手に向かって噴霧し、化粧水を塗るようにして手に馴染ませ、顔につけていく。
「どうだ?」
「劇的な変化はないな……」
「これにマスクと眼鏡で外に出ても大分違うかも知れないし、家にいる間とか使ってみれば?」
 フロックがスプレーの説明書をじっくり眺めながら深く頷く。
 少しでも害を減らそうと、あれだけねちねち掃除をする人間だ。興味はあるのだろう。
「土産の礼にちゅーでもしてやろうか」
「要らねぇよ」
 フロックの仕様もない冗談にジャンはけらけらと笑い、寛ぐためダイニングの直ぐ側にある台所にコーヒーを淹れに行く。
「ジャン、俺の分も―」
「はいはい、コップくらいは自分で持って来いよ」
 機嫌のいいフロックに釣られてジャンも気分が良くなり、インスタントでも香ばしい香りを漂わせる粉を二つのカップに入れていく。

 今晩こそは、隣の部屋から聞こえてくるフロックの盛大なくしゃみで叩き起こされない事を願いながら。

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