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馬房

小説は妄想と捏造甚だしい。 原作のネタばれ、都合の良い解釈。 R18、グロ(精神的にも)、暴力表現などが含まれます。 冒頭にざっと注意を書いてありますので、それを読んだ上での 閲覧を宜しくお願い致します。何かあればご連絡いただければ幸いです。 基本的に右ジャンしか書きません。 萌が斜め上です。無駄にシリアスバイオレンス脳です。 拙い文章ですが、少しでもお楽しみ戴ければ嬉しく思います。 右ジャン、ジャン総受けしか書きません。あしからず。

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愛を伝える日

・人様とネタ被りしてる感じなんですが書きたかったので書いた
・現パロバレンタインフロ→→ジャン小話
2020/02/16







 ジャンはちら。と、隣を見て首を傾げたい心地になりながら自宅までの帰り道を歩く。
 何故、同級生とは言え、特別、仲が良い訳でもないフロックと並んで歩いているのか不思議でならないのだ。家は近くない。部活が同じでもない、しかし、今は一緒に隣合って歩を進めている。
「あの、なんか用……、とか?」
 決して一緒に遊んだ時間がないとは言わない。
 学校で喋らないとも言わない。
 しかし、帰り道で一緒になったのは初めてで、何かしらの用件があるとしか思えず、ジャンはあまり目を合わせないようにしつつ問うてみた。
「俺さ……」
「うん……」
 戸惑いを隠せていないジャンとは対照的に、神妙な面持ちを作りながらフロックは切り出す。
「今日、チョコ一個も貰えなかったんだ」
「あ……、あぁ、そうか……」
 二月十四日。
 お菓子会社の陰謀だとしても、一般的に普及し、受け入れられた『恋する人へお菓子送る日』。ジャンも朝からそわそわしながら学校へ行き、机に入っていたチョコレートに浮かれた記憶は新しい。
 通っているのはお菓子持ち込み禁止の学校。バレンタインデイとあって、いつもより教師が目を光らせているせいか、密かに持ち込むために掌よりも小さく、黒い包装紙で包まれたチョコレートと、その包装紙の裏に書かれた『Jへ、Fより心を込めて』そう小さな字へ綴られていた言葉に浮かれない人間は居ないだろう。
 受け取ったジャンが、昼休みにこっそりと食べた一口サイズのチョコレートは口の中で蕩けるようで、甘過ぎないそれは、とても気持ちを和ませてくれるものであった。
 あまり、人付き合いが上手いとも言い難い自分が貰ったのに。フロックにささやかな憐憫と優越感を持ちながら、ジャンは曖昧に返事をする。
「なぁ、可哀想だと思わないか?」
「お、おぉ……?」
 フロックは鷹揚に頷き、真っ直ぐにジャンを見詰めてくる。
 可哀想だろうか。チョコレートを貰えなかったからと言って嫌われている訳ではない。ジャンがミカサを密かに想うように、何かしらの原因で諦めていたり、恥ずかしさから想いを伝えられない人間も居るだろう。
 貰えなかったら可哀想か。と、そんな議論を始めてしまえば面倒臭く絡まれそうな気がして、ジャンは返事に困っていた。
「可哀想だよな?お前は貰ってるから俺の気持ちなんて解んないだろうけど」
 びく。と、一瞬だけジャンは肩を揺らす。
 親友のマルコにすら伝えていないチョコレートの存在を、何故フロックが知っているのか。食べる際も、封鎖された屋上へ続く人気のない階段の踊り場で食べ、人が居ない事はしつこく確認したはずなのだ。
「朝、机から四角いの出て来ただろ?」
「あ、あー、うん……」
 よくよく考えれば、フロックの席はジャンの斜め後ろにある。
 机から出てきたチョコレートに驚き、確認するべく手の中で転がしていた行動を覗き見られていたのだ。そして、放課後の今、絡まれているのだろう。どんな感情かは、ジャンには知れないが。
「俺って可哀想だよな?」
「まぁ、ある意味……」
 ジャンが口を濁しながら返せば、フロックは嬉しそうに顔を綻ばせ、だよな。と、元気に返してくる。貰えなくて落ち込んでいるかと言えばそうでもなさそうで、貰ったジャンに怒っているようにも見えなかった。
 何を考えて、こんな風に絡んでいるのか理外の範疇である。
「可哀想な俺に、チョコくれ」
「えぇ……、なんで俺に言うんだよ」
 強引に肩を組まれて意味不明な要求をされる。
 生真面目なジャンは校則に従い、学校に菓子などは持ち込んでおらず、貰ったチョコレートは既に胃袋の中である。上げる菓子などは持っていない。
「いいだろ、お前は貰ったんだから、ちょっと幸せ恵んでくれてもさ」
「それならエレンの所にでも行けばいいだろ。先生も爆笑するくらい山ほど貰ってたんだし」
 アルミンも同じく、ミカサも同性、異性問わずから沢山のチョコを渡されていた。
 一個二個なら叱りもしようが、三人合わせて山のように持っているとなると、先生も笑うしかなかったのだ。貰った物は仕方ない。帰ってから噛み締めて食べるように。との注意を受け、一時没収のみで目溢しを貰っていたのだ。
 幸い、ジャンが貰った小さなチョコの存在は発覚せず、昼休みに噛み締める事が出来たのだが、こんな風に絡まれるとは想像だにしていなかった。
「お前、弁当も自分で作ってるし、菓子作りも上手そうだしな」
 料理とお菓子作りは違う。
 料理は感覚でも作れてしまうが、お菓子は全てをきっちり計量し、ほんの些細な手心でも失敗してしまうものである。ジャンは難しさを語りたかったが、話しがずれていきそうで口を噤む。
 なぁなぁなぁなぁ。フロックはしつこく、発情期の猫の如く煩く、背中に縋りついてくる。
「仕方ねぇな……」
 ジャンが諦めればフロックは実に嬉しそうに破顔した。
「先に言っとくけど、大したもん作れねぇからな」
 自宅に着き、鍵を開けて入ればフロックも当然のように家に上がり込み、リビングのソファーで寛ぎだした。図々しい奴だ。と、ジャンは呆れながら台所に立ち、昨夜、母親に作ったマグカップで作れるガトーショコラの材料を混ぜていく。
 薄力粉、ココア、砂糖、サラダ油、牛乳、それらをマグカップに居れ、捏ねていき、電子レンジで加熱。その間にお湯を沸かし、お茶の準備もしておき、過熱が終了した音を聞いて紅茶を淹れ、我が家の如くスマートフォンを弄って遊んでいるフロックの前に差し出してやった。
「おー、すげー」
「混ぜてチンしただけだけど」
「いや、すげーよ?」
 目を細めながらフロックはガトーショコラへと食いつき、美味しそうに食べている。ここまで喜んで貰えれば、決して悪い気はしない。
「ホワイトデー楽しみにしとけよ!」
 ジャンが食べるフロックを眺めながらお茶を飲んでいれば、瞬く間に食べ切ったのか、マグカップを置いて宣言をする。
「いや、別に要らないけど……」
「そう言うなよ」
 フロックはお茶を飲み、意気揚々と帰っていく。
「じゃ、またなー」
 元気良く手を振り、フロックは何度もジャンを振り返りながら帰っていく。貰えなかった。なんて、落ち込んでうじうじするよりはいいか。
 絡まれた事自体は不運な気がしないでもなかったが、作った物を嬉しそうに食べて貰えた事自体は嬉しく感じた。

 機嫌良く、跳ねるような調子で帰っていくフロックを幾分、いじらしく思いながらジャンは見送り、ホワイトデーが楽しみにになるのだった。

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