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馬房

小説は妄想と捏造甚だしい。 原作のネタばれ、都合の良い解釈。 R18、グロ(精神的にも)、暴力表現などが含まれます。 冒頭にざっと注意を書いてありますので、それを読んだ上での 閲覧を宜しくお願い致します。何かあればご連絡いただければ幸いです。 基本的に右ジャンしか書きません。 萌が斜め上です。無駄にシリアスバイオレンス脳です。 拙い文章ですが、少しでもお楽しみ戴ければ嬉しく思います。 右ジャン、ジャン総受けしか書きません。あしからず。

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順番と繰り返し

・コミックスに収録されてない125~126話のネタバレあり(2020/2/07現在)
・当然ですが捏造だらけなので、広い心で読んでいただければ幸いです
・FJごーかーんっぽい描写あり
・R18
・2020/02/07






 ジャンが膝をついた瞬間、俺の心は酷く満たされた。
 常に背筋を伸ばし、前を見据え、高潔、清廉を体現するかのような人間の心を折った。

 ジャンの力なく垂れ下がった肩、伸びきった指、覇気の消えた眼、沈痛な強張った表情。
 眺めていれば、この上なく歓喜が込み上げてくる。
「なんだと、お前……」
 俺の言葉に対し、回らない頭でどうにか絞り出したらしい反論も、全く迫力はなく、人類の希望であり確実に自分たちの味方になってくれるだろうリヴァイ兵長やハンジ団長の死を伝えれば、ジャンもミカサも青かった顔色が更に血の気を失くしていった。
 実際に、死を確認はしていないが、そこまで教えてやる義理はない。現時点では、頭が回り、人を纏める高い指揮能力を持ったジャン、リヴァイ兵長に次ぐ実力を持ったミカサを制圧する事が最重要任務だ。
 ジャンがこちらの手駒になれば、他の人間もおのずとついてくる。そこにミカサを護衛につければ、これほど強い布陣はない。
「もう疲れただろ、休め。ま、快適な個室とはいかないが」
 うっそりと笑み、銃を突きつけながらジャンの腕を引いて立ち上がらせ、牢へと連れて行く。俺が反体制の罪人として捕縛された際に放り込まれた複数人を一気に収容出来る牢だが、今や立場は逆転し俺が牢へ放り込む。
「流石に男女は分けてあるから、ミカサあっちだ」
 隣の牢を指し、ミカサは別の場所へ。
 下手に相談されて目を覚まされても困る。
 それぞれに隔離し、一時的な安息を与え、自分の立場をじっくり思い知らせる。今はこれでいい。超大型巨人の群れの歩みは遅く、地鳴らしはまだ続いているのだから、焦る必要はない。

 あぁ、無性に笑えて来る。全てが自分の手の中に落ちて行く感覚。異様なほどの万能感。これは実に麻薬だ。手に持った銃を胸元のホルスターに仕舞い、覚束ない足取りで壁際の空いているベッドへ誘導されるジャンの背中を目で追った。
 ベッドに座ったジャンは背中を丸めながら両手で耳を塞ぎ、苦しそうに呼吸をしている。今、どんな感情だろう。恐怖、戸惑い、絶望、不安、安堵、歓喜。様々なものが綯交ぜになり、心を惑わせ絡め取られている事だろう。

 今は精々苦しめばいい。
 俺が救ってやる。

   ◆ ◇ ◆ ◇

 夜に差し掛かり、兵士各位、町の動揺も落ち着き出した頃、ジャンを捕らえた牢へ向かい、門番を務めていた兵士へ連れてくるように言った。
「なんだ……」
「そう邪険にするな、お前にとっていい話をしようって相手によ」
 ジャンはやつれ、飲食もまともに出来ていない様子で疲れ果てているらしく、いつも、俺を見下ろしていた目を伏せ視点が定めず、あちらこちらを彷徨わせていた。

「そう硬くなるなよ」
「……それ」
 勝手に自室にした空き部屋へとジャンを連れて行き、椅子に座らせ、肩を落とした状態で俯いていた目の前に、ワインのボトルを置いてやる。
「安心しろ、ジークの脊髄液は入ってねぇ。そんなものをお前に飲ませたくはない」
 中々に瀟洒な細工をされた手頃な大きさのグラスを二つ戸棚から出し、机に並べて真っ赤なワインを注ぐ。この部屋の住人は、随分、酒好きだったんだろう。貰った給料は全て酒に当てていたのかとでも思うほどの備蓄と、揃えられたグラスの数々。
 この部屋を見つけた際に、真っ先にジャンの顔が浮かんだから招待したと言うのに、あれほど飲みたがっていたワインを目の前にしても全く嬉しそうにはせず、寧ろ陰鬱な面持ちで凪いだ深紅の液体の表面を見詰めていた。
「呑めよ」
「俺は……」
「言っただろ、お前は自由だ。もう何にも縛られなくていい、明日を気にして好きな物を我慢しなくていいし、お前の地位は俺が保証してやる」
 訝し気に眉を顰め、ジャンは隣に立つ俺を見上げてきた。
 揺らぐ瞳。絶望と不安に彩られたこの目を見るのは、トロスト区が巨人にやられ、補給部隊に見捨てられた時以来だ。俺も、ジャンと一緒に調査兵団に入っていれば、別の時に見れたものか。いや、その前に死んでいた可能性の方が高いか。
「なんだそれは……?」
「まぁいいから呑めって、酒好きだろ?」
 グラスをジャンに渡し、そのまま手を握り締めながら唇に押し付け傾けて行く。薄く開いた咥内へワインは流し込まれて行き、喉が上下に動く。
「美味いか?」
「あ、あぁ、多分……」
 手を離して口の端から零れたワインをハンカチで拭ってやり、顔を覗き込みながら問えば表情は泣きそうなものになっていく。何を悲しんでいる。地鳴らしで死んだ連中は、もう酒も飲めなければ食べも出来ないのに。絶望の淵に立たされている仲間も居るのに自分だけ。などと考えてでもいるものか。
 これは勝手な憶測ではあるが、生きた人間にも、死んだ人間にも囚われ続けるこいつなら有り得そうだと思った。
「死んだらそれで終わり。何も出来ない成さない、意味もない。お前は抱え過ぎなんだよ。もう頑張らなくていいから、今は頭空っぽにして呑め」
 ほんの少ししか減っていないグラスに更にワインを継ぎ足し、波打つ液体をジャンに押し付ければ、何度か俺と、グラスを見比べ、ちびちびと口をつけ出した。
「俺は……」
「うん?」
「俺は……、がっかりされたくないだけだ……」
「誰に?」
「……俺に?」
 もう、自分をこれ以上嫌いになりたくなくて。
 小さな声は、グラスの中に落ち込み、言葉を飲み込むようにジャンはワインを煽った。
「ふぅん?あのな、言っただろ?誇りに死ぬ事はないってさ、死んだら終わりだぞ?ただ糞尿の詰まった肉塊になるだけだ。人間は生きてこそだぞ」
 肩を撫でながら耳元で囁き、空のグラスにワインを注いで促せばジャンは杯を空けて行く。
「じゃあ、話をしようか」
「あぁ……」
 椅子に移動し、ほんのりと顔を赤らめたジャンと向かい合いながら微笑んでやる。
「お前、俺の下につく気はないか?」
「それか、いい話って……」
「あぁ、考えてみろよ。お前は元々、憲兵になって安寧の暮らしがしたかったんだろう?エレンの代弁者を務める俺ならお前に安寧を与えてやれるんだ。悪い話か?違うだろ?」
「頭空っぽにしろって言ったり、考えろって言ったり忙しいな」
 ジャンは疲れ切った溜息を吐き、一口分だけワインを含んで飲み下す。
「いい話を頭に入れるために空っぽにしろって言ったんだよ。お前はいつもごちゃごちゃ難しく考え過ぎだからな。世界は案外単純なんだよ。現状に抵抗して無様に死ぬか、受け入れて安定した地位を手に入れるかの二択。簡単だ」
「受け入れたらどうなる……」
「俺に大事にして貰える」
「断ったら……」
「元仲間の誼で一生、部屋に閉じこもる権利くらいは与えてやる」
 ジャンをあっさり殺せば、慕う連中が一気に歯向かってくるであろうと目に見えている。今は生かさず殺さずが正解だろう。
「お前に大事にして貰えるってのは?よっぽど贔屓でもしてくれんのか?代弁者様よ」
 自嘲するようにジャンは肩を揺すって笑うが、俺を見てはいない。それが酷く腹立たしい。

 嗤うジャンの胸ぐらを掴み、引き寄せれば手からグラスが落ちて床で粉々になり、ワインが広がって血だまりのようになった。が、それには目もくれず、唇へ噛みつく。
「おまっ……」
 ジャンは俺を突飛ばし、勢いのまま椅子に落ちるように戻ると、戦慄く手で唇を拭い、信じられない怪物でも見ているような目で見て来る。やっと、真っ直ぐに俺を見たな。
「可愛がってやるのに、何が不満だよ?誇りなんて、生きるのに必要か?屈しちまった方が楽だぜ?」
 割れた硝子を踏み潰し、ジャンの傍らに寄って髪に指を指し込み撫でてやる。風にそよいでいる様子から、柔らかそうだとは思っていたが、実際触ればその通り。猫のように柔らかい髪が指を滑っていく。
 体は猫ほど柔らかくなさそうだが。
「無理するなよ。たった一回『わかった』そう言うだけで、地位が約束される。お前の母親だって、こっちに呼んでやればいい。一番に望んでいたものが叶うんだ。いい話だろう?」
 母親の存在を出せば、険のある目つきが一気に弱々しくなった。
 生存者の確認は未だ追いついていない。もしかすれば、あの地鳴らしに踏み潰された可能性も否めない。だが、リヴァイ達の死を告げた時と同じ、篭絡する事が優先事項であり、事実は後からついてくる。関係ない。
 俺はお前の一番望んでいた物を与えてやれる。ただ頷くだけでもいい。
「いま、すぐ……?」
「答えは早い方がいい。だろ?」
 ジャンの声は震え、何度か唇を開け閉てしたが、噛み締めてしまった。何を迷う事がある。全ては上手くいくと言うのに。
「まぁ、大事にするとは言ったしな、一晩くらいは時間やるよ」
 ジャンがやっと生えてきて、必死で育てていた顎髭を指の甲で撫で、喉奥で笑う。

 その日はジャンを開放し、元の牢へと戻らせ俺もベッドで眠った。

   ◆ ◇ ◆ ◇

「さて、考えたか?」
「朝一番にお迎えとはご苦労なこった……」
 部下に迎えに行かせ、身綺麗にさせてから部屋へ連れてい来るように命じておいたお陰か、ジャンからは清潔な石鹸の匂いがした。
 俺は執務机に踏ん反りがえり、ジャンは立ったまま。敬礼はまではしていないものの、立場の差は歴然。賢いこいつなら、もう現状は把握しているだろう。
「俺はどうなってもいい、だから……」
「はぁ?一晩考えてその答えか?」
 続けようとした言葉は恐らく母親か仲間の延命だろう。しかし、どうでもいい。
 俺の欲しい答えは、肯定する事。それ以外は求めていない。お前意外の誰かの保護なんて、誰がしてやるものか。
「俺はどうなってもいい。はっ、素晴らしい自己犠牲精神だな?涙が出そうだ。あぁ、感動的だ」
 懇願を鼻で嗤い、微かに震えるジャンを睥睨する。
 以前のお前なら、ここで怒りを露わにするか、鬱陶しい説教が始まるのだろうが、今は出来ないだろう。こいつは、俺が平然と人を撃ち抜いた瞬間を見ているのだから、『もし』を想像出来ないほど愚かじゃない。
「なぁ、何度も言っただろ?俺はお前の一番欲しかったものを与えてやれる。断る理由がどこにある?」
「それは……、お前の下につくって事は、人を殺すって事だろ……」
「当たり前だ、戦争なんだから。お前だって、殺しただろう。この手で……」
 俺は立ち上がり、ジャンに詰め寄って筋張った肉付きの薄い手を握り込む。自分はまだ綺麗なのだと勘違いをしてないか、お前も、俺と同類のはずなのに、何故、お前はそう清廉を気取ってられる。
「刃で人の肉を切り裂いた時の感触は覚えてないか?明確な殺意を以て人を撃ち殺した記憶は忘れたか?殺した相手の事なんて、一々覚えられないか?」
「忘れてない!」
 ぎ。と、歯噛みし、ジャンが俺を睨んでくる。
 だが、直ぐに目は逸らされ、表情は苦し気な物に代わる。
「じゃあ、趣向を変えるか……」
 手を握り締めたまま、俺は仮眠室へと向かい、ジャンは引かれるままたたらを踏みつつ、ついてくる。
「自分はどうなってもいいんだったか?」
「あ、あぁ……」
 ジャンは俺の意図が察せず、不安げに仮眠室を見回し、落ち着かない様子だった。それを尻目にコートを脱いでベッドに放り投げ、ボトムの前を寛げる。
「舐めろ」
「っは?」
 ジャンが一歩後退り、息を呑んだ。
「なぁ、殺されるだけで済むと思ったか?」
 俺が首を傾げて訊いて近づけば、ジャンは後退りを続けて壁にぶつかり、そのまま、ずるずると座り込んだ。本当に、こいつは馬鹿だな。自分から逃げ道を失くしていく。
「ほら……」
 両手でジャンの顎を持ち上げ、半ば腰を押し付けるようにして立っていれば、か細い息を吐き、舌先で俺の性器を舐めた。
「うん、いい子だな」
 俺は愉悦に口元を歪め、絶望に塗り潰されたまま性器に舌を這わせる様を観察する。ただ、表面をなぞるばかりでは埒が明かなかったため咥えるように命じ、咥内を犯してやれば苦し気に呻いて、俺が精を吐き出せば床に嘔吐した。
「ほら、立てよ」
「え……」
 まさか、これで終わりと思ってたんなら本当に日和ってやがる。
 ジャンを直ぐ側にあったベッドに押し倒し、腰に穿いたベルトを抜き、ボトムを掴めば手を掴まれた。
「なんだよ。なんでもするんだろ?」
 言葉を勝手に言い換え、諭すように言えばジャンは抵抗しなくなった。
「まぁ、大事にはしてやるって言っただろ?」
 コートのポケットから小瓶を取り出し、指に絡ませてジャンの下半身に沈み込ませていく。
「ま、最初は痛いかも知れんが、慣れるらしいから頑張れよ」
 ジャンの孔に油を丹念に塗り込み、勃ち上がった性器を突き立てれば、可愛げのない悲鳴が上がった。大分、きちんと濡らしてやったとは思うが、足りなかったか。
「処女か……、意外だな……」
 ぼそ。と、呟いてはみたが、ジャンがどこぞの女や男と宜しくやっていたなんて、想像するだけでも吐き気がする。無駄に言葉にしたせいで、嫌な像が脳裏に浮き上がり、それを振り払うかのように腰を揺らし、ジャンの中を蹂躙していく。
「い……だ、ぁ、ぐ……、くそ……、ぅう……」
 気持ちばかり、油を足してはやったが、ジャンは苦痛に呻いて涙を零す。これはこれで悪くはないにしろ、あまり痛がられると萎える。

 一度性器を抜き、うつ伏せに転がしてから痛み止めも入っているらしい軟膏を出し、たっぷり指にとってジャンの孔へ塗り込んでいく。
「こんなもんか?」
 男相手は初めてだから、加減が良く解らない。
 多分、これでいい『だろう』。ジャンならこの程度でどうこうはなるまい。との適当な算段をつけて挿入し直し、後ろから犯していく。
「まだ痛いか?」
 ジャンは答えず、ベッドに顔を押し付けて呻いていた。
 中の感触自体は悪くない。入り口付近できつく締め付けながらも奥は柔らかく包み込んで性器を舐めてくれるような心地。これは下手な商売女よりもいいかもしれない。
「お前、名器って奴か?」
「しっ、るか……!」
 今後の関係も考え、痛みばかりは可哀想かと性器に手を這わせ、弄ってやればぴくぴく尻が揺れる。やはりジャンも男だ。直接的な刺激には弱いようで、息が上がってきた。
 性器を収めた体内も、きゅうきゅうと締め付けて来る。悪くない。
「あー、でそ……」
 ジャンの中を数度抉り、衝動に任せて体内へ精を吐き出した。凄まじい征服感だ。『手に入れた』そんな実感が湧いてくる。
「まぁ、可愛がってやるよ」
 表情は見えないまでも、大人しくなったジャンの後頭部を撫で、宣言しておく。お前は俺のもの。どこにもやらないし行かせない。

   ◆ ◇ ◆ ◇

 翌日に、ジャンが俺と話したい。
 そんな可愛い事を言うものだから会ってやれば、目の下の隈が酷かった。
 きちんと休むように言っていたつもりだったが、あの檻の中で暇と性欲を持て余した連中に輪姦でもされたか。
 俺がそう言えば、忌々しそうに睨んでくる。
 大分、覇気が戻ってきたのはいい事だ。
「地鳴らし……」
「あ?」
「地鳴らしの音が……、煩くて眠れなかったんだ……」
 確かに、ずっと地面から響く振動と音は、煩いと言えば煩い。神経質なジャンなら気になるのか。
「そうか、まぁ、暫くの辛抱だ。直ぐに平たい大地が出来上がる」
「あぁ……、沢山の命を踏み潰してな……」
 ジャンは無意識なのか、いつかの肩から腕にかけて受けた傷を庇うように片手で自分の体を抱き締め、物憂げな視線を床に落とした。怖いのか。可哀想に。
「大丈夫だ。俺の側にいれば災禍はない」
「そうかよ……」
 今一、俺を信用し切れてないのか。困ったもんだ。
 俺だって、色々頑張ってはいるんだが
「それで?話ってのはなんだ?」
「お前の話に乗る。俺は……、もう、戦いたくない……」
「あぁ、賢明な判断だ。お前なら分かってくれると思ったんだ」
「はは、そう、だな……」
 俺は破顔し、喜んだ。対してジャンは胸を押さえ、苦しげに喘ぎつつ声を絞り出す。
 当然、苦渋の決断ではあるだろう。今までの全てを裏切るんだ。でも大丈夫。俺が守ってやるんだから。
「じゃあ、お前はもう俺の片腕だし、参謀として知恵を出してくれないか、得意だろ?」
「そう言うのは……、アルミンやハンジ団長が……、俺は状況判断するだけだ」
 小賢しさはお前に求めてはいない。
 見せて欲しいのは俺に対する忠誠心。
 そう言えば、ジャンは真っ直ぐに俺を見ながら目を潤ませた。可愛いじゃないか。
「どうすれば、皆が纏まると思う?」
 さて、ジャンはどう答えるのか、必死に俺が気に入るよう、かつ要望に応えられる回答を考えている様子に胸が踊る。
 ジャンは何度か深く呼吸をすると、表情を引き締めて俺を見据える。これでも日和った答えならば、また犯して躾けてやればいい。
「イェーガー派にとって、今、厄介なのは反対派に影響力を持つ人間だ。例えばイェレナ。ジークがエレンに取り込まれて消沈はしているが、彼女の手腕は目を瞠るものがある。次に、技術革新をもたらしてくれたオニャンコポンは人柄故に彼を慕う人間は多く、顔が広い」
「それをどうする?」
 俺が問えば、ジャンは一度だけ強く目を閉じ、はっきりと告げた。
「お前が義勇兵にやったように、大勢の前で公開処刑をすれば、反対派は口を噤む」
 俺は鷹揚に頷くと笑みを深めて見せた。
「お前の言う通りだ。あの二人は個別に捕らえてある。大部屋に入れて、仲間とあれこれ画策されも面倒ごとになるしな」
 あの二人の処遇をどうするか悩んでいたが、これで決まった。俺はゆっくりジャンに近づき、頬を撫でてやる。まだ触れる感触が固い辺り、気は許してないのだろうが、追々懐柔していけばいい。時間はあるんだから。
「お前、……オニャンポコンと仲が良かったな。お前がそっちを撃て、いいな?旧体制と決別しておれの隣に立つんだ。出来るよな?」
 ジャンは強張った表情のまま頷くと、もう目を逸らす事はなかった。
「じゃあ、早速招集をかけるか」
「あぁ……」
 廊下に立っていた部下に招集命令を出しつつ、周辺の警戒を怠らないよう伝える。
 俺の心は満たされながらも、不安は常につきまとっていた。リヴァイ兵長、ハンジ団長の存在。イェーガー派に賛同しない分からずや共。
 今更、なにかした所で、易々と引っくり返せる状況ではないが、折角の門出を邪魔をされたくはない。

 それに、オニャンコポンを殺す段になって、ジャンがやっぱり殺せない。などと言い出したら、こいつの手を包んで、一緒に引き金を引いてやらねばならない。

 全く、気苦労が多いな。

   ◆ ◇ ◆ ◇

 車力の巨人が公開処刑の場に乱入し、襲いかかられた俺はジャンの突き飛ばされ命を拾った。が、俺は直ぐに護衛であるミカサの姿が無い事に気がつく。
 あいつは『ジャンの』説得によってイェーガー派に入ったはずだ。元々、ミカサがエレンに執心している事実は、同じ時間を過ごした者なら誰もが知る所であり、大した違和感もなく受け入れた。
 だが、違和感がない事が、違和感なのではないか。処刑に入る前にジャンが行った不審な行動。あれの直後に車力の巨人は飛び込んできた。
「あぁ、くそ……」
 俺は言葉を吐き捨てて立ち上がる。
 ジャンが俺を庇った理由は解らない。まぁ、それは捕まえてから吐かせる。

 理解出来ない事だらけ。
 そんな中、再び裏切られた事実だけを理解した。

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