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馬房

小説は妄想と捏造甚だしい。 原作のネタばれ、都合の良い解釈。 R18、グロ(精神的にも)、暴力表現などが含まれます。 冒頭にざっと注意を書いてありますので、それを読んだ上での 閲覧を宜しくお願い致します。何かあればご連絡いただければ幸いです。 基本的に右ジャンしか書きません。 萌が斜め上です。無駄にシリアスバイオレンス脳です。 拙い文章ですが、少しでもお楽しみ戴ければ嬉しく思います。 右ジャン、ジャン総受けしか書きません。あしからず。

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愛される子供

・リヴァジャン?
・相変わらずモブに襲われちゃうジャン君(未遂
・嘔吐描写あり
・やっぱ序章
2018/12/29





 正当な王が壁内を治めるようになった。
 団長及び兵士達、多大な犠牲を払いシガンシナ区を取り戻した。するべき事は膨大で、一日の纏まった休みなど碌にありはしない。なのに。各兵団の幹部、及び貢献度の高かった兵士、政権を担う貴族達が入り乱れ、慰労のためと銘打たれた祝賀会が開かれた。

 何が慰労だ。寧ろ疲れが溜まる一方だ。

 企画したのは罰を免れはしたが、暇を持て余した一部の無能な貴族だ。
 せめて、何かをしなければ爵位を剥奪されるとでも焦ったのかは知れないが、この催しは兵団各位への媚売りが目的だろうと簡単に推測が出来た。
 先程まで人に囲まれていた人類最強と名高い兵士であるリヴァイは、壁に凭れながら小柄な体躯をテラス戸の側に垂れた分厚いカーテンに隠すように立ってワインを呑んでいた。
 人類の希望であるエレン、新たな能力を得たアルミン、並びに勝利に貢献した一〇四期生の子供等も呼ばれ、堅苦しいロングコートの正装に、慣れない場で緊張しながらどうにか役割をこなしているようだった。ふと、窓の外を見ればフロックが独り、バルコニーに出てまだらな明かりが灯った町を眺めていた。戴冠式に於いて胸に刺さる言葉を吐き、弱者の立場から血を吐くような提言をした子供の存在は記憶に新しい。
 一〇四期生の中心となっているエレンや、上官に酷く噛みついたとあって、仲間に入り辛いようだった。声をかけるべきか否か。迷っていると一つ離れた先にあるテラス戸が開き、緩やかな冷たい空気が室内に流れ込み、直ぐに途切れた。
 外を注視していれば、ジャンがフロックに声をかけているようだった。何を話しているかは硝子に遮られて聞こえない。冬も深まり出した昨今、寒いだろうから中に入れとでも気を使っているものか。

 気遣いも空しく伸ばした手を叩き落とされ、ジャンは苦笑しながら、また二、三ほど言葉を交わして室内に戻って来た。
「壁の花をダンスに誘ったんですけど振られました」
 自分等を眺めていたリヴァイの存在に気が付き、ジャンは動かせる右肩を竦めて冗談を飛ばす。
「まぁ、そんな日もあるだろう……」
 リヴァイは冗談が上手くない。
 言ったとしても、大体、思惑通りに通じず、周囲を委縮させるか、戸惑わせるばかり。ジャンへも上手い返しが思いつかず、当たり障りない感じになってしまった。
「お前は、本当に周りを良く見ているな」
「そうですか?」
「あぁ」
 リヴァイが見るに、一〇四期生の子供達は、危ういながらも統制がとれている。エレンは我武者羅に突き進んで活路を開き、ミカサが護り、アルミンが知恵を出し時に引き留める。
 サシャやコニーは機動隊として優秀でありつつ、場を和ませる能力に長けていた。これは稀有な能力だ。人間の精神はそれほど強くはない。終わらない緊張状態は精神を摩耗させ、本人も気づかない内に心を壊していく。
 クリスタ、否、ヒストリアも、あの細い肩に重責を担う中、仲間達の存在には随分と助けられただろう。そして、ジャンは一歩下がって全体を見、細やかな配慮を見せる場合が多い。良く見るものは、他者の足りない言葉を補足したり、動き易いように手助けをしたりだ。それ以外にも賢く、目敏いが故の苦労はあるだろう。
 今回も、孤立しているフロックを気遣っての行動だろうが、いい成果は得られなかったようだ。
「苦労をかける」
「何言ってるんですか、特別な事はしてないですよ」
 自分が如何に重要な仕事をしているのか自覚はないようだ。
 こう言ったものを放っておけば、内部分裂を招く恐れがある。サシャやコニーとはまた別に、周りを良く見て現状を把握し、調和を維持する人間は決して目立たないが重要なのだ。ジャンは未だ肩の傷は完治しておらず、本来であれば、負傷兵として祝賀会の参加を見送っても良かったはずが、快く受け入れた。皆が気がかりだったのだろうとリヴァイは判断している。
「いや、お前の働きにはいつも助けられている」
 リヴァイがそう言うと、ジャンは目をぱちりと瞬かせ幼い表情を見せた。普段、大人びている子共が、不意に見せるものが愛らしく、ふ。と、口角を上げて眺めていた。
「助けになってるなら、良かったです」
 ほんのりと頬を赤らめ、整えられた刈り上げを撫でながらジャンは頭を下げ、失礼します。との言葉を置いて皆の輪の中に戻って行った。

 リヴァイも声をかけてくる貴族を気怠いながらも対応し、時間を潰していく。
 夜も更けだし、話す事も尽き出したのか話し声が少なくなり、音楽隊も物静かな音楽を奏でるようになってきた。布がかけられた丸い机の上に乗った料理もほとんどが空。酒類も大して出ておらず、酔い潰れて運ばれたか、目立たないように帰途についた者も居るのか、目に見えて人の数が減っていた。
 壁際に設置されている布張りの長椅子に座り、一〇四期生の子供達もぐったりと気疲れをしている。エレンなど、解り易く表情が無の境地に達していた。ただでさえ、ハンジの硬質化実験で疲弊していると言うのに、延々と途切れる事無く人に話しかけられ、倒れる、あるいは暴れなかっただけでも上出来と言えた。
「おい、ジャンはどこだ?」
「え、着飾ったおじさんと話していたのは見ましたが……、どこかは……」
 リヴァイが声をかければ子供達は一斉に立ち上がり、疲れてはいるが、たらふく食べて満足げなサシャが困った様子で室内を見渡した。が、その程度で見つかるのなら、リヴァイもわざわざ声をかけはしない。
「ふむ、休んでていい、俺が探してくる」
 以前から、出資者である貴族の夜会にエルヴィンと同行していたリヴァイは、好みはしないにしろ、ある程度こう言った場には慣れている。ジャンは不慣れな酒を勧められて酔い潰れ、部屋の外に転がされているのか。最悪の発想をすれば、性質の悪い者にかどわかされたものか。
 女子であるサシャやミカサ、男子でも小柄で中性的なアルミンには気を配っていたが、ジャンが居なくなるとは予想だにしていなかった。

 室内を幾ら見てもジャンらしい人間の姿はない。
 重い扉を開き、大理石の床に紅色の絨毯が敷かれた廊下を探すがやはり姿はなく、徒労に終わるばかり。祝賀会を開かれている部屋に持って行くためか、大きな水差しを持って歩いていた燕尾服の年若い男の使用人を捕まえ、ジャンらしい人間を見なかったか問い質す。
「見たか見なかっただけでいい」
 使用人は解り易く動揺し、目を左右にきょろきょろと動かしながら、リヴァイの質問には答えない。
「おい、俺は気が長い方じゃない。知っている事はさっさと言った方が身のためだ」
 リヴァイは使用人を睨み据え、更に一歩距離を詰める。
 顔色を青褪めさせ、酸欠の魚のように口元を戦慄かせながら使用人は、怒りを隠さないリヴァイに怯え、片手で水差しを抱き締めながら右手をうろつかせた。
「なんだ?」
「い、ちばん、奥の部屋、介抱するからと、おへ、部屋を用意しました」
 使用人が指を差すのは廊下の突き当り。来賓用の寝室だろう。その部屋の扉を見れば確かに脇にかけられている燭台が灯り、誰かが中に居るのだと示している。
「解った。行け」
 無言で頭を縦に振り、使用人は逃げ出すように小走りでリヴァイから距離を取っていく。振り向きもせずにリヴァイは指し示された部屋に踏み込んで行った。

 果たしてジャンは居た。
 ベッドに横たわった状態で、苦しそうに表情を歪めたジャンの細い体に馬乗りになり、服を脱がそうとしていた男性が手を止め、驚愕に強張った表情でリヴァイを見ていた。
「部下が世話をかけて申し訳ありません。後は私が引き継ぎますのでどうぞ、会場にお戻り下さい」
 エルヴィンに叩き込まれた慇懃な態度で、リヴァイは貴族らしい中年男性に向かって掌で廊下を指し、出て行けと促す。男性は何度かリヴァイとジャンを見比べ、逡巡していた。人類最強の兵士の申し出と、目の前に在る極上の獲物の捕食。どちらを優先するか。
「いや、顔色が悪そうだったのでね。部屋を用意させたんだ」
「聞いております。部下がお手を煩わせてしまい申し訳ございません。お気遣い感謝いたします」
 男性は、以前とは打って変わって世論に受け入れられた調査兵団、ないし最強と称されるリヴァイを敵に回すのは理に適わないと判断し、襟を正しながら空々しい言い訳を吐きながら退出していった。遠ざかる背中を見送り、リヴァイは舌を打つ。
 心情的には蹴り殺しても良いほどではあるが、問題行動を起こせば一気に世論が覆りかねない。腹立たしい。しかし、優先するべきは兵団の維持と、ジャンの身柄だ。
「ジャン、意識はあるか」
 ベッドに走り寄り、声はかけたが、横たわって赤ら顔でぼう。と、胡乱な間差しをリヴァイに向けるジャンは、起きているのかどうか。
「聞こえているなら瞬くだけでもいい」
 リヴァイの言葉に反応し、ジャンが何度か目を瞬かせる。
「あいつに何か飲み物を渡されて呑んだか?そうなら一回閉じろ」
 ジャンは一度、リヴァイを見詰めながら瞼を閉じる。
 大事には至らなかったが、他人に渡された物をむやみに口にするなと教育する必要がありそうで、別の意味で頭が痛くなった。ジャンの事だ。勧められ、気を使って断りも出来ずに飲み干してしまったのだろう。
 リヴァイはベッドの下にあったくず入れを手に取り、枕元のサイドボード上に用意された水差しからグラスに水を注いでジャンの体を起こすと、唇に押し付ける。
「飲め」
 少しグラスを傾ければ零れた水が顎と首を伝い落ち、服やベッドを濡らすがリヴァイは気にせず強引に、ジャンへ次々と水を飲ませていく。
「吐け。腹の中を空っぽにしろ」
「え、う……」
 潤んだ眼でジャンはリヴァイを見詰め、緩く首を振る。

 自ら吐けないとすれば。
 リヴァイは袖を捲り、ジャンの口の中に手を入れて嘔吐を催すよう喉の奥を刺激する。舌の付け根を指で押さえ付ければ、ごぽ。と、音を立てて胃の内容物がせり上がり、リヴァイの手を汚しながらくず入れの中に吐き出された。
 ジャンが涙と鼻水、涎を流しながら吐き切ってもリヴァイは喉奥に指を入れ、出ないとなると更に水を飲ませて嘔吐を促した。ジャンの口から吐き出されるものが水だけになると、ようやっと捕らえていた体を解放し、胸元を飾るクラバットを解いてジャンの涙や鼻水、吐瀉物で汚れた顔と自らの手を拭いて、汚物塗れになった屑入れに捨てた。
「少しは頭がはっきりしたか?」
「は、い……」
 無理矢理、指を押し込まれ吐いた弊害か、喉が灼けるように痛く、ジャンは咳き込んでいるが、含まされたものが抜けたのか、酷い眩暈と、全身を襲う虚脱感は多少なりとは抜けていた。
 リヴァイが水差しの中に残っていた水で手を洗浄し、水差しと共に置かれていた布で拭くが、吐瀉物の匂いは水で流した程度では取れず、リヴァイは眉間に皺を寄せていた。
「すみません、こんな事させて……、俺は……」
「別に気にするな。だが覚えておけ、やばい薬で体の自由を奪って手籠めにするのは腐った貴族や、破落戸の常套手段だ。隠蔽に加担していた貴族はほぼほぼ駆逐したとは言え、腐った野郎が全て消えた訳じゃない。基本的に、貴族は平民を人間とは思っちゃいねぇからな」
「そんな……」
「お前には信じられなくても、そうなんだ」
 悲し気に表情を歪めるジャンへ、怒るのではなく、リヴァイは諭すように言う。汚いものを散々、見て来た経験から言うのだ。綺麗なものばかりを見て、愛に包まれて育った子供には信じられなくても仕方がないが、現実はそこまで優しくはない。
 仲間の裏切りを経験し、策謀、様々な人間の悪意を目の当たりにして、今も免れたとは言え、事実、手籠めされそうになっていた被害者であるのに、それでも人間を信じようとするのは、愚かと言えば愚かだが、清らかで無垢とも言える。優しく抱き締められ、尽きる事のない愛情に包まれて育つとこうなる。との見本のようにすら思えた。
「お前は悪くない。しかし、自分を護れるのも自分だけだ。いいな。そこだけは理解しろ」
「はい……」
「その、なんだ……、もっと早く気づいてやれなくて悪かった」
 今し方、言った事と相反するようだが、本心だった。
 きつい言葉を投げつけはしたが、リヴァイとは生きて来た場所も違い、まだ半分しか生きていないのだ。世相から大人に成る事を強制され、成長はしているが、本来であれば親の庇護を受ける年齢でもある。
 親代わりとは差し出がましいが、人生と命を預かっているのだ。無駄にしていいものは何一つとしてない。先のシガンシナ区でも、勝利のために、どれだけの人間が絶望のどん底に叩き落とされたか。死体の一つもない状況で死を知らされた身内のくずおれる様は何度も見て来た。心の内の激情は計り知れないほどのものだろう。
「俺が間抜けだっただけで……」
「いや、こんな事でお前が傷つく必要はない」
 戦いの中であれば、兵士としての役割があり、兵士に子供も大人もないと言えるが、平時の中に人間としての尊厳を奪われるような役割があってはならないのだ。忌避出来る苦難ならば、払ってやるのも上官としての務めである。
 リヴァイは眩し気に目を細めながら、武骨な指でジャンの髪を梳く。
「戻るぞ。他の奴もお前を探している」
「は、はい」
 くすぐったそうな笑みを浮かべ、ジャンが立ち上がろうとするが、体が上手く動かないのかよろめき、ベッドに腰を落としてしまう。
「はは、えっと、後で行きます……」
「肩を貸して下さいくらい言え」
「兵長にそんな……」
「あ?チビだから身長が足りませんとでも言いたいのか?」
 リヴァイが藪睨みすれば、ジャンが首を振るが、ただでさえ体調の優れない時分に激しく動かしたせいで眩暈が起こり、ベッドに手をついて項垂れた。
「ほら、手が要るだろうが」
「ありがとうございます」
 何とも言えない表情でジャンは苦く笑い、祝賀会の部屋前で待っていた仲間の元へ帰る。皆へは飲み過ぎたためと言い訳をしておいたが、聡い者は気付いていたかも知れない。リヴァイには人の頭の中までは読めないため解らないが。

 帰りの馬車の中で、気が抜けたのか転寝をしてしまっているジャンを眺めながら、『放っておけない奴だ』との認識を持った。自分を見つけたケニーも、こんな気持ちだったのか、不思議な気持ちに思いを馳せながら、リヴァイは窓の外をぼんやり眺めていた。

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