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馬房

小説は妄想と捏造甚だしい。 原作のネタばれ、都合の良い解釈。 R18、グロ(精神的にも)、暴力表現などが含まれます。 冒頭にざっと注意を書いてありますので、それを読んだ上での 閲覧を宜しくお願い致します。何かあればご連絡いただければ幸いです。 基本的に右ジャンしか書きません。 萌が斜め上です。無駄にシリアスバイオレンス脳です。 拙い文章ですが、少しでもお楽しみ戴ければ嬉しく思います。 右ジャン、ジャン総受けしか書きません。あしからず。

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事故で死んだかと思ったら、嫁の腹にいた自分の子に転生してた=その八=

・フロたん禿げるの巻
・若干の授乳描写など





「大分髪が伸びたよなぁ、目にかかってるし、散髪するか」
 夕食を済ませ、ジャンが居間のソファーで寛ぎつつ俺の髪を指で梳きながら何気なく呟く。
「初散髪だし、動画でも撮っとくか?」
 俺に許可を求めているようでありながら、ただの独り言。
 一々返事をすると、ジャンが面白がって延々と話しかけてくるため徐々に面倒になって半分くらいは放置する事にした。癖でなんとなく返事をしている時もあるが。
 しかし、
「うぃ」
 今回は、自分でも髪が鬱陶しくなってきていたため、頷く動作も含めてはっきりと返事をした。動画は要らんが散髪はして欲しい。
 全体的にさっぱりさせて欲しいとの意思表示のために、自分でももさもさ両手で髪を弄ると、本当に伸びたな。と、感じる。こう、小さな変化で生きている。なんて実感して、しみじみと物思いに耽っていたが、
「ぬ……」
 自分の頭皮を撫でていれば、少しばかり違和感を感じて呻った。
 なんだろう、妙につるっとしているような。
「どうした?」
「んー?ん?」
「頭の後ろがどうかしたのか?」
 違和感のある部分をジャンに見て貰おうと、手でぺとぺと叩いて示せば、細い指が俺の髪を掻き分けて探り出した。髪を弄られるのは気持ちいいんだが、嫌な予感が先立って落ち着かない。
「あれ?え……?これ……」
 どうしたんだ。
 何があった。
 本当に嫌な予感しかしない。
「どうしたんだい?」
 風呂から上がってきた義母がタオルとドライヤーを片手にジャンに問う。怖いからそっちだけで話さないで早く教えて欲しいんだが。
「いや、これ、さぁ……、ちょっと見て貰ってもいい?」
「あせもでも……、あらまぁ……」
 ジャンと同じく義母も絶句している。
 早く言えよ。
「二人揃って何してるんだい?」
「これ……」
 今度は飲物を淹れに来たらしい義父まで来て、ジャンが示す俺の頭を覗き込む。
「こりゃ、見事な禿げだな」
「赤ちゃんでこんなの初めて見たかも……」
 義父がさくっと切り込み、義母が止めを刺す。
 我儘かも知れないが、もうちょっと表現を柔らかくして欲しい。薄くなってるとか、珍しい事じゃないとか、まだ慰めになるような言葉をだな。夫婦揃って直球で言いやがってからに。
「ぇぅ……」
 現在に限らず、前も毛量が多くて髪質が強いから、絶対に禿げないだろう事が自慢だったと言うのに、まだ一歳とちょっとで禿げるなんて。あまりにも辛くなってほろほろ涙を零せば、ジャンが掻き分けていた髪を戻し、懸命にあやしてくれるが禿げた事実が辛くて泣き疲れてしまうまで涙が止まらなかった。

 起きたらジャンの部屋にあるベビーベッドに寝かされており、薄暗い中で自分の髪を弄る。
「ぅぬ……」
 後頭部に間違いなくある部分的に滑らかな感触。
 このまま、つるっぱげになったらどうしよう。切なくなってくると感情が込み上げて、また涙が勝手に出てくる。赤ん坊って感情に素直だな。
「どうした?おっぱいか?」
 ジャンが眠そうにしながら覗き込んでくる。
 そう言えば、腹が空いているような気がしないでもない。
「ん……」
 抱っこをせがむように両手を伸ばし、抱き上げて貰えば直ぐに乳をまさぐる。厭らしい意味は無い。これは赤ん坊の本能だ。仕方ないんだ。
「どうすっかなー……」
 俺が腹を満たすために乳を吸っていると、ジャンが解り易く禿げている部分を指で触っている。余計に剥げそうだから止めて欲しい。

 翌日、朝食の湯豆腐にやたら胡麻が振りかけられていた。
 嫌いではないものの、若干、多過ぎて口の中がもさもさする気がして喉に引っかかり、お茶が欲しくなってくる。頑張って完食した後は病院行き。受付を済ませ、何もする事がない無為な時間を過ごしてから診察室に入ればいつかの天敵が現れた。
 また会ったな、丸眼鏡の糞髭。
「おや、今日はご機嫌斜めだねぇ。あ、いつもか、はっはっは」
 俺がじと。と、睨みつけていれば、飄々と笑って受け流す。
 無力な赤子と思って舐めやがって。
「それで、円形脱毛でしたっけ?」
「はい……、今の所、後頭部の部分に一個だけなんですけど」
 診察用のベッドに下ろされ、糞髭に頭を弄られる。
「んぎぃ!」
 不愉快過ぎて逃げようとするが、ジャンが暴れる俺に困って泣きそうな顔をしたため、渋々大人しくしてやった。お前のためじゃないぞ糞髭。
「うーん、これは乾燥して皮膚が剥けてる様子もないし、今の所、様子見で大丈夫でしょうね」
 つるっと剥げている部分を触りながら放たれた言葉に、偶にはいい事を言うんだな。と、糞髭相手に感心した。
 曰く、自己免疫疾患がどうのと説明し、先ずは親御さんが不安になり過ぎて弄り回したり、過剰に気にしない事。刺激を与え過ぎるのは勿論良くないし、側に居る人間がストレスを抱えているとそれが子供の精神状態に負担がかかり酷くなる可能性があるからとかなんとか。
 後は、食事療法を進められた。野菜や果物、たんぱく質をバランスよく摂取するように。らしいが、俺、野菜あんまり好きじゃないんだけどな。なんかこう、臭いし、えぐみとか苦いし、口の中が気持ち悪くなる。出来るなら、肉だけ食って生きていたい。
「この子、嫌いな物が入ってると絶対に口開けなくて……」
「うぅん、幼児あるあるだね。無理に口に入れると余計に嫌がるようになるかも。って不安もあるでしょ?」
 ジャンが激しく頷き、助けを求めるように糞髭を見詰める。
 お前が見詰めるのは俺だけでいいんだよ。
「ぬぃ」
 ジャンの腕を引き、こちらに意識を向けさせ抱っこをせがむと直ぐに抱き上げてくれた。
 だが、話しはまだ続いているようで、俺が食べられる物を積極的に与える、まだ授乳期間である事からジャン自身も無理のない範囲で栄養価のあるものを中心に摂取するよう助言をされていた。俺にかまけて自分はパンだけなど、適当な食事をしている姿も見ているため、良い助言ではある。
 一応医者なだけあって母子共に健やかになれるよう考えているようだ。だからって好きにはならないがな。

「栄養なぁ……」
 病院から出て、スーパーで買い物をしながらジャンがぼやいている。
 乳は血液から出来るので、栄養価は乳を与える本人の栄養状態に左右されるらしい。料理上手な義母が居るため欠乏とまではいかないが、俺に吸われて多少なりとは貧血や、栄養不足になっているだろうとの予想は出来た。子育てって大変だ。
 幼児を乗せられる車の形をした買い物用カートに座らされているため、何を買っているのかは見えないが、パンコーナーや乳製品のコーナーで立ち止まっていた様子から、予想は大体つく。チーズだの牛乳だの、後は俺の好物でもあるパンのヒーローが描かれたスティックパンだろう。

 家に帰りつけば、ジャンも幾分、疲れを見せていたが、よし。と、気合を入れて料理をし出した。
 俺達以外は不在なため、構ってくれる人間がおらずとても暇だ。暇過ぎて緩く点けられたファンヒーターの前で猫の如くごろごろごろごろ転がっていれば、次第に美味しそうな匂いがしてくる。
「後焼くだけだから少しだけ待っててな」
 台所から戻ってきたジャンが俺の隣に座り、甘い香りのするホットミルクを飲みながら寛ぎだした。何が出来るのか楽しみにしながらジャンの膝に体を乗せて甘えていれば、程なくしてちーん。と、軽快な音が鳴る。
「お、美味そう」
 出てきたのはチーズがたっぷり入ったグラタンで、野菜も随分細切れになって入っているようだ。
「あーん」
 小さな匙で掬い取り、ジャンが熱を飛ばして俺の口元へ。
 それ、色的に絶対人参が入ってるだろ。顔を背けて口を閉じて頑として口を開けずにいれば、今までならジャンが先に折れたのだが、今回は引いてくれなかった。
「フロック、一口でいいから食べてごらん?ほら、あー」
「んー……」
 グラタン自体はいい匂いがするけど、人参は土臭くて嫌いだ。
「あー……」
 めげないな。
 そんなに食わせたいのか。
「美味しいぞ。ほら」
 ジャンが一口食べて見せ、匙を変えて一口分を掬い取って俺へ向ける。
 一回食べて嫌だったら食わなきゃいいか。
「お、偉い偉い」
 丁寧に下処理をしたのか、食べてみればえぐみや臭みはなく、甘さが際立って美味かった。これなら食えない事もなく、俺が自ら匙を持って食べればジャンが嬉しそうに表情を綻ばせる。
「もっと料理勉強しないとなぁ」
 俺の頭を撫でるついでに禿げた部分もちら。と、確認し、溜息を吐く。
 別に、一緒に暮らしてる時も下手な印象はなかったけどな。今は正に子供舌と言えばいいのか、大人になってからは判らなかった苦みや臭みに敏感になり、以前から嫌いだったものが余計に嫌いになった感はある。
 苦労させるな。とは思うが、俺のために創意工夫をしてくれているのは純粋に嬉しい。
 後は、禿げた部分にさっさと毛が生えてくれればもっと嬉しいな。うん。
 ま、俺自身も色々考え過ぎないようにしておく事にしよう。

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