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馬房

小説は妄想と捏造甚だしい。 原作のネタばれ、都合の良い解釈。 R18、グロ(精神的にも)、暴力表現などが含まれます。 冒頭にざっと注意を書いてありますので、それを読んだ上での 閲覧を宜しくお願い致します。何かあればご連絡いただければ幸いです。 基本的に右ジャンしか書きません。 萌が斜め上です。無駄にシリアスバイオレンス脳です。 拙い文章ですが、少しでもお楽しみ戴ければ嬉しく思います。 右ジャン、ジャン総受けしか書きません。あしからず。

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ジャン誕2020

・これと言ったカプはない愛され系
2020/04/07





 誕生日。
 明日は俺の誕生日か。
 まぁ、関係ないな。

 時間は夜の十時ほど。
 カレンダーにふと視線をやった際に自分の誕生日を思い出し、自嘲気味に笑ってから机の上に山と積まれた書類を眺めた。これを終わらせなければ眠れない。明日は調整日かつ誕生日。そんな日を徹夜の疲れを引き摺ったまま過ごすのはごめん被りたかった。
 せっせとペンを走らせ、ずっと俯いていたせいで凝った肩や首を揉み解し、時に大きく背伸びする。十一時半を回る頃にはどうにか終わりが見え始め、安らかな眠りが約束された事に安堵の吐息を吐いた。
「よし……」
 最後の一文字を書き、ペン立てに筆を収める。
 どうにか仕事は深夜を回る前に終わらせられ、机から立ち上がると防寒に来ていた上着をコート掛けに放る。終わらせたとは言え、どうせ朝一で書き損じ、間違いがないか確認し、ハンジ団長の元へ書類を持って行かなければならないのだが、一応なりとは休みだ。気持ちの軽さは普段とは段違いだった。
 上着を脱いで軽くなった体で寝室に入り、靴を脱ぐとベッドへと身を投げるように倒れ込んで脱力する。この瞬間がとても心地好く、何よりも好きな時間だった。
「明日何しようかな……」
 誰に言うでもなく呟き、適当に花でも買って実家へと帰るか悩む。突然帰ってくるなんて。と、母親は怒るだろうか。面倒がるだろうか。それとも。母親の表情を勝手に想像し、うとうとまどろんでいく。
 半分寝ながら布団の中へと潜り込み、夢も見ない眠りへと沈み込んでいけば直ぐに朝が訪れる。

 はずだった。
「本当に寝てます?」
「寝てるって、体丸めて布団にくるまるの昔からだし、んで一回寝たら簡単にゃ起きねぇ」
 知った声に目は開けないまでも意識が浮上する。一瞬、夢かとも考えたが、それにしては嫌にはっきりと聞こえ、サシャとコニーらしき声に眠いながらも何事かと聞き耳を立てた。
「こんな時間まで仕事。ジャンの隈が消えない理由が解った」
「ジャンは団長補佐やってるから、雑務や書類仕事が尋常じゃなく多いんだよ……」
 訥々とした喋り方をするのはミカサ、それに反応したのはアルミンか、衣擦れの音やひそひそと声を落とした話声が妙に煩く感じたが、皆の意図が判らず起きる起きれないでいた。
「普通に渡したら駄目なのか?」
「こう言うのは非日常感が大事なんです……!」
 エレンの面倒そうな声にサシャが反論し、他の数人が何やら窘めていた。
「ヒストリアからもプレゼント預かってますし、ジャンも喜びますよ」
 浮かれた様子の声。
 贈り物を預かっているとの言葉。
 もしや。一つの考えが頭に浮かび、顔がにやけそうになったため、隠すように布団へ潜り込んだ。
「あ、煩かったんじゃない?さ、早く早く」
 アルミンが急かすと少しだけ足音やざわつき感が増し、程なくして扉が閉まる音が響き、静かになった。なんだろう、見てみたい。そんな気持ちとは裏腹に、疲労が睡魔を呼び寄せ、半端な覚醒は直ぐに暗闇の底へと引き摺り込まれてしまう。
 あぁ、目が開けられない。もどかしい思いを抱えながら真っ暗で優しい世界へと俺は落ちて行った。

「うゔ……」
 朝の陽射しに呻りながら寝惚けつつ体を起こし、開かない瞼を擦る。
 眠る事は眠ったが、完全に疲労が抜けて居ないようだ。しかし、二度寝は返って体が辛くなると経験で知っているため、起きるために深呼吸し、首や腕を回して無理矢理、体を起こしていく。

 昨日なんかあったような……。

 昨夜の寝入り端の出来事が頭を過ったが、一晩経ってみると夢のようにも思えて上手く思い出せなかった。ベッドに座ったまま、二度寝の誘惑に抗いながらぼんやりしていれば寝室の扉が叩かれ、雑に入室の許可を出す。
「よう……」
「フロック……、今から愛の告白にでもしに行くのか?」
 くっついて離れようとしない瞼を強引に開け、入って来た人間、フロックを薄く開けた片目で見れば、手には薔薇の花束を持っていた。特に焦っても居らず、緊急事態ではなさそうだったが、では何の用事でわざわざ寝室にまで入って来たのか解せないでいる。
「ふん、随分愛されてるな……」
「は?」
 フロックは室内を見渡してからつまらなさそうに吐き捨て、俺に花を押し付けて『おめでとう』それだけを言って出て行った。

 何故、フロックが俺に花を?
 そもそも大して気にしていなかったせいか、この時、俺の頭から自分が誕生日である事は寝惚けも手伝ってすっかり抜け落ちていた。
 起床から花を渡されるまで、優に二十分は経っていただろうか、ようやっと瞼を完全に開けた俺は、フロックが視線をやった位置を辿り、気恥ずかしさに顔と言わず体中が熱くなった事を自覚する。

 枕元には可愛らしいリボンを巻かれた袋や箱。
 ベッド脇に置かれた小さな机には溢れんばかりの春らしい花が花瓶に刺され、甘い香りで部屋を満たしていた。今しがた、フロックが持ってきた花束も皆と同じ意味であろう事は想像に難くない。
「は、なん、え……」
 状況は理解したが、さりとて、ではどんな顔をして食堂へと赴けばいいのか、それからたっぷり三十分は悩み、全く出て来ない俺に対して皆が焦れて飛び込んでくるまで、ベッドの中で延々と悶えていた。

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