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馬房

小説は妄想と捏造甚だしい。 原作のネタばれ、都合の良い解釈。 R18、グロ(精神的にも)、暴力表現などが含まれます。 冒頭にざっと注意を書いてありますので、それを読んだ上での 閲覧を宜しくお願い致します。何かあればご連絡いただければ幸いです。 基本的に右ジャンしか書きません。 萌が斜め上です。無駄にシリアスバイオレンス脳です。 拙い文章ですが、少しでもお楽しみ戴ければ嬉しく思います。 右ジャン、ジャン総受けしか書きません。あしからず。

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もふもふ大進撃

・ポメガバース
・お疲れじゃん君
・健全だけど、最後だけちょっと…
・フロもお疲れ




 英雄だなんだと持て囃されようが調査兵団はいつでも人手不足。
 殊、幹部陣ともなればやる事は山積みで、月が真上にさしかかった頃にようやっと寄宿舎へ帰途につく日もままあった。

 ただでさえ多忙の日々である。
 加えて、今日は急遽舞い込んだ侵略者への対応に追われ、捕虜の管理、負傷者を搬送し、死亡者の確認と、血なまぐさい事柄に一つ一つ対応しながら心労と疲労は限界に達し、ジャンは表情を取り繕う事もできずに足を引きずるように歩いていた。
 幾ら考えないようにしていても、脳裏には敵味方問わず倒れていく姿がちらつき、心が虚無に落ちていくような絶望感が広がるばかり。
「はぁ……、うん……とにかく寝ないと……」
 顔を両手で擦り、誰かにではなく、自分に言い聞かせつつベッドへの単独行進。
 こうも気分が落ち込むのは疲れているせいなのだ。ぐっすり休み、太陽光を浴びれば少しは気分も変わる。いつもの事。この自分への説得もいつもの事。
 もう今日のやるべき事はやったのだから、きっともうなにも起こらない。自室へ向かってひたすら歩いていれば何事もなく辿り着ける。はずだったが、廊下に奇異なる物体が一つ、否、一匹落ちていた。

 板に横たわる毛玉。
 一見、モップの先のようにも見えたが、よくよく観察すれば、小さな犬がぷひゅー、ぷひゅー。と、寝息を立てながら、誰の物とも知れない兵団服に包まれて熟睡をしているようだった。
「どこの悪戯犬だぁ……」
 溜息と共に出た言葉。
 犬は毛足が長い絨毯の如くふかふかとした毛並みをしており、中央貴族が好みそうな愛玩犬に見えた。視察にでも来た出資者の貴族が連れてきたはいいが、やんちゃが過ぎて脱走の上、誰かの服を引っ張り出した挙げ句に大胆にも寄宿舎の廊下でご就寝。のような図とも考えられたが、訪問の報告は受けていない。となれば迷い犬、或いは寄宿舎に住む誰かしらが密かに飼育している可能性が考えられた。
 どちらにせよ、放っても置けずにジャンはよく眠っている犬を服ごと抱き上げ、転がっていたブーツも拾って自室へと入った。
「誰の服だこれ」
 起きる気配が微塵もない犬をベッドに寝かせ、服を広げてみれば一式揃っていた。何なら下着までボトムの中に収まっており一体、どんな状況であればこのような抜け殻が出来上がるのか、ジャンは首を傾げる。
 赤ん坊程度の大きさしかない犬が服を丸ごと盗むだろうか?出来てブーツ一足を咥えて駆け回るが精々では?などと、誰かの抜け殻を丁寧に畳みながらジャンは頭を悩ませるが、睡魔が直ぐ背後まで迫っていたため思考はまとまらない。

 一先ず考える事は止め、ベッドに潜り込んで目を閉じはするものの、脇に寝かせている犬をなんとなしに撫で回す。
 暖かでふかふかした毛並みに心がじんわりと熱を持って行くような感覚。小さな生き物に対する愛おしいの気持ちなのか、一度撫で始めれば放しがたく、ジャンはうとうとしながらも犬をぎゅっと抱きしめる。
 犬は苦しかったのか、ぎゅるる。と、小さく唸りはしても相変わらず起きる気配はない。相当疲れているようだ。余所から連れてこられた場合でも、宿舎で密かに飼われていた場合でも、どちらにせよ外を知らないだろう犬が飼い主とはぐれて不安を感じていた可能性は否めない。
 朝になったら直ぐに飼い主を探してやらねば。との使命感を感じながら、ジャンはとろとろと睡魔の腕の中に落ちていった。

ーーーーーーーーーーー

 翌朝、目を覚ませば食堂に行く時間。
 早く行かなければと寝ぼけている頭を振り、ジャンはベッドから降りるが、ふと違和感に気がつく。
 犬が居ない。なんなら畳んで机に置いていたはずの兵団服もブーツも消えていた。

「夢?」
 疲れすぎて小動物を愛でる夢でも見たのか自分の頭の具合を心配したものの、ベッドには件の犬のものらしい赤毛が落ちており、昨夜の温もりが夢でない事を教えてくれた。
 服まで消えているという事は、こっそりと飼い主が取り戻しに来たのか。とも考えられるが、犬を保護したとは誰にも伝えていない。そうなると保護の瞬間を誰かが見ていたはずだが、昨夜、周囲に人の気配はなかったはずで、あるいは、目を覚ました犬自身が飼い主の服を持って出ていったのか。
 ジャンはちら。と、出入り口の扉に視線をやり、あんな小さな体で取っ手を回し、扉の開閉など出来るのか悩んではみたが、事実居ないのだから誰かが連れて行ったか、自分で出て行った事は間違いないのだ。

 ジャンは欠伸を一つすると時間を見ながら服を着替え、洗顔も済ませて食堂へと赴く道すがら、それとなく犬の姿を探したが、飼い主が余程、巧妙な人物なのか影も形もない。
 万が一、誰にも伝えず飼育をしているとすれば、調査兵団であれば最悪の場合、永遠に主が帰って来ない事態もありうるはずで、人知れず餓死も視野に入れなくてはならない。
 海の発見で多少、食料に融通が利くようになったとは言えども国の全てが豊かとはまだまだ言えず、安易に食料を犬に割くような余裕はないが、見て見ぬふりも気分が悪いもの。

 さてさてどうやって飼い主を探し出すか。
 豆のスープを匙で口に運びながらジャンは周囲を観察していれば、昨日から着替えていないのか衣服にちらほらと赤毛をつけた男が目に入る。
 特に犬好きとは聞いていない。だが、なにかしらで犬との縁が出来て情が移ってしまう可能性もないとは言えない。しかし、自分と同じ毛色の犬など飼うだろうか。
「なんか用か?」
 気になってついつい不躾に見ていた事に気づかれ、男、フロックがジャンを睨め付けながら声をかけてきた。
「あー、その、後で聞きたい事があるんだがいいか?」
「ここじゃ言えないような事か?」
「そこまで重要なもんじゃないけど、直ぐ終わるから昼飯前でもどうだ?」
 ジャンが苦笑気味に微笑めば、フロックは不機嫌に了承し午前の訓練が終わった頃、食堂の近くで再度顔を合わせて犬の事を尋ねた。

「知らん」
「あー、そうか、分かった」
 ぶっきらぼうに返され、話は即終了。
 あまりにも情報がなさ過ぎて、念のためにも他の寄宿舎に住む者にも訊いてみたが、誰も犬の存在を知らなかった。
 本格的に自分の頭が心配になったジャンだったが、寄宿舎の自室の床に犬のものらしい赤毛が落ちていたため、やっぱり居たよなあの犬。と、胸をなで下ろしたものの、結局、犬の事は分からずじまい。
 自由を謳歌する犬だったのか、だが、野良犬とは考えがたい毛質と無防備さ。気にしないようにしてても、ぴゅーぴゅーと間抜けな寝息を立てる犬が頭に浮かび、仕事の邪魔をする。

「ジャン、悩み事?」
 集中力が欠けていたからか、一緒に書類を片付けていたアルミンに指摘されてしまい、ジャンは素直に昨夜の出来事を話す。
 すると、アルミンは渋い顔つきになり腕を組んで唸りだした。
「そもそも寄宿舎では動物の飼育は禁止だし……、動物を飼ってるなら誰も気づかないって事はないと思うんだけどなぁ……」
「だよなぁ。やっぱ外から入り込んだのかね?」
「かもね。フロックの服についてた毛は……、どっかのタイミングで犬に盗まれたのを取り戻したんじゃない?もしくは、犬を見つけて抱っこしたとか」
「フロックが?」
 例の犬は、素直に小さくて可愛かった。と、言える。
 そして人間に対して警戒心はほぼないようで、尻尾を振りながら上目遣いに見られたら抱っこの一つもしたくなるだろう。などと勝手に納得し、仕事に戻った。
 迷い犬であればそれはそれで気になるのだが、最早、兵団敷地内に居ないのであれば探しようがなく、アルミンにも諦めるよう説得されてジャンの犬への感情は縮小されていった。

 ーーーーー

 ジャンが初めて犬と邂逅した日から数週間、幾ばくか早く自室へと戻れたジャンはベッドで横になり、明日の事を考えながらうとうとしていた。
 すると、がしゃ。がしゃ。と、扉の取っ手が跳ね、ジャンは音に驚いて飛び起きる。
「おい、誰だ!」
 誰何をしても返事はない。
 ないが、取っ手が跳ねてラッチが緩んだのか薄く扉が開き、隙間を押し開けながら赤色の毛玉が侵入してきた。
「お前……、え、やっぱ近くで飼われてたのか……?」
 犬に尋ねたところで返事はない。
 面倒くさそうに耳の裏を足で掻きながら、大仰な人間臭い溜息を吐かれただけだ。
「餌とかは持ってないけど……」
 何故、自分の部屋に犬が尋ねてきたのか要因が分からなすぎて、ジャンは何度も目を瞬かせた。頻繁に餌を提供していたならば懐かれもしようが、やった事と言えば一宿させただけに過ぎない。そのために尋ねてきたとすれば、そんな義理堅い犬など存在するのか。
 犬は混乱するジャンを余所に、我が物顔でジャンの膝の上に飛び乗り、寝転がった。ただ、そのまま寝ようとはせず、ジャンをじ。と、見つめ、何かを催促しているようにも見えて困惑は深まるばかり。
 犬は再び大仰な溜息を吐き、立ち上がるとジャンの手に頭を押しつけながらベッドに転がった。
「撫でろ。って……?」
 ジャンが声を漏らすと、犬がそうだと言わんばかりに鼻息を吹かす。
 以前は寝ているだけだったため、どんな性格かは知りようがなかった。ここまで横柄な犬が存在する事実に驚きながらもジャンは柔らかい感触への欲求にあらがえず、小さい体を抱き上げて優しく撫で、堪能するべく頬ずりまでしてしまう。
「なんか、あー……、じわっと疲れがとれる……」
 これが俗に聞く『癒やされる』なのか、ふわふわした暖かい塊を抱きしめながら、ジャンはうっとりと目を閉じ、頭や背中を撫でながらいつの間にか眠ってしまっていた。
 目を覚ますと当然のように犬は居らず、夢を疑うが、やはり犬の毛がしっかりとベッドのシーツに落ちていたため存在は確認できた。

 それからというもの、犬は一週間に一度はジャンの部屋を訪れるようになり、撫で回し、撫で回されて満足して眠る。が常態化していた。

「お、来たかー。おいでー」
 どこからやって来ているのか、気がかりはあれど犬は餓えていたり、凍えたりしているような様子はなく、この仔は寝床だけを求めて来ているのだと勝手に解釈をして度々一夜を共にしていた。
 そんなある日。
「今日は少し夜更かししても大丈夫だし、散歩でも行くか?それとももう眠いか?」
 仕事に一区切りがついたお陰で、午後休と共に翌日が休みになり、時間の空いたジャンは上機嫌で犬に構いながら、このまま本格的に飼育をしよう。犬を飼うなら寄宿舎を出てどんな家がいいか。まで考え始めてしまっていた。
「飯は何が好きなんだ?犬ならやっぱ肉か?あんま頻繁にはやれないけど……」
 他の飼い主が居る事も考えられたが、ジャンは犬が自分を選んでくれれば嬉しいと感じ、普段以上に犬を撫で、構い倒していた。
「他の人の所にも行ってんのか?そっちにも挨拶行ったりしないとかなー」
 犬の顎下を撫で、ぎゅうぎゅうと抱きしめて語りかける。
「お前、いつもくっついて寝るし、結構甘えん坊で寂しがりだよな。それだとお家に独りぼっちはなぁ」
 仕事も仕事であるから共同で飼育する考えも浮かんだが、さてはて、相手が承諾するか否か。
 それに、相手が部下であれば上司と一緒は嫌がる可能性も高い。そうなれば、このささやかな癒やしを相手から奪ってしまう忍びなさもあり、考えれば考えるほど目の前の壁は高そうに思えた。
「俺はお前と一緒に居たいけど、お前はどうなんだ?ん?」
 答えるはずもない犬に問いかける滑稽さもなんのその、犬かわいさに客観視が出来ていないジャンは声を弾ませて語りかけていた。
「あー、かわいい-」
 ぐりぐりと犬の頭に頬を擦り付け、額に唇を寄せて愛でていれば、途端に膝に感じた重み。
 目の前には良く見知った男性が全裸でジャンを見つめており、瞬間、頭の中が真っ白になってしまう。
「……一緒に居てやってもいいぞ」
「は?犬は?」
 手首を掴み、ジャンを押し倒しながら男性、フロックは言葉を発するが、先ほどまで抱きしめていた犬はどこへ消えたのか。しか頭に浮かばないジャンは答えになっていない返事を零した。
「俺が疲れたら出てくるよ」
「は?」
 理解が及ばないジャンを置き去りに、フロックはうっそりとした笑みをうかべながらジャンの額に唇を落とし、
「明日家でも探しに行くか」
 と、勝手に予定を決めてジャンの体に手を伸ばすのだった。

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