忍者ブログ

馬房

小説は妄想と捏造甚だしい。 原作のネタばれ、都合の良い解釈。 R18、グロ(精神的にも)、暴力表現などが含まれます。 冒頭にざっと注意を書いてありますので、それを読んだ上での 閲覧を宜しくお願い致します。何かあればご連絡いただければ幸いです。 基本的に右ジャンしか書きません。 萌が斜め上です。無駄にシリアスバイオレンス脳です。 拙い文章ですが、少しでもお楽しみ戴ければ嬉しく思います。 右ジャン、ジャン総受けしか書きません。あしからず。

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

贈り物

・ほんのりエッティ
・ぐいぐい行くジャン君。
・ジャン誕っぽいもの
・【これ】のおまけ





 職場で紅茶が入った紙コップを片手にカレンダーを眺めながら、俺は四月七日がジャンの誕生日だった事を思い出す。

 去年の四月、しでかし後の俺だけが気不味い空気の中で婚約をし直し、ジャンが通い妻として半同棲をするようになって、もう一年。あの日の事は昨日の事のように思い出せるのに、それほどの月日が経った事実に驚きを隠せない。
「早いな」
 思わず言葉が漏れた。
 ひたすら仕事仕事仕事。
 それしか能がなかった人間である俺が、ジャンのお陰で暖かい一年だった。
 忙しいのは相変わらずで、危険職故にいつ命を落とすとも知れない相手、本当にジャンを幸せにできるのか。ちゃんとした伴侶として俺はふさわしいのか悩むばかりだが、もう一年も経てば往生際も考えなければならない。
「どうしたのー?カレンダー見て溜息吐いて?」
「お前には関係ない」
 ハンジが俺を茶化しにやってきたため移動し、ふてくされて文句を背中に投げつけまくる輩を無視して自分の席に戻る。
 高校を卒業したら籍を入れる。ジャンに押されて約束したのは俺だが、十八ならもっと青春を楽しんでも良くないか?就職か進学か、今でも迷っているとも言っていた。まぁ、あれこれ口に出すと『俺と結婚したくないんですか?』だとかジャンが詰めてくるため言えないが。
「リヴァイ、観念した方が身のためだぞ?」
「は?なんだ急に」
 気配もなく表れたエルヴィンに驚きはしたが、表情には出さず顧みる。
 こいつはどこまで人を見透かしているのか判らない。仕事上では頼りになるが、私生活となると悟られたくない部分も多いため、正直に言えば気味が悪いし気色悪かった。おざなりに対応し、ハンジと同じく追い払う。
「私は仮にも上司なんだけどね」
「いい上司は部下のプライベートを尊重するそうだぞ」
「分かったよ。悩みがあるなら相談しなさいね」
 まるで子供に言い聞かせるように諭してエルヴィンは廊下に出ていった。やっと手が空いて食事でもしに行くんだろう。手が空いて真っ先に部下を弄りに来るのは止めろと言いたいが。

   ◆ ◇ ◆ ◇

 四月八日に休暇をもぎ取り、迎えたジャンの誕生日の当日。
 七日に休暇が取れなかった事はジャンに申し訳ないと思うが、十八時頃と比較的早めに帰れたので赦して欲しい気持ちでケンタッキーやらサーティーワンだののアイスを適当に買い込んで帰宅する。
 玄関を開けると美味しそうな匂いが部屋に充満し、リビングへの扉を開けば台所に立っていたジャンが俺に微笑みかける。
「誕生日なんだからゆっくりしていたらどうだ?」
 手に持っていたチキンやアイスを高く掲げてぶらつかせれば、ジャンは喜びの声を上げる。
「アイス、後で食べましょうね」
 ジャンが嬉しそうに受け取ったアイスを冷凍庫へと仕舞い込んでいる間、俺が大きめの皿にキッチンペーパーを敷き、チキンを並べる。調子に乗ってパーティーバーレルを買ってしまったが、ジャンが若いし食ってくれるだろう。
「何を作ってるんだ?」
「オムライスです」
 ありきたりな物しか買ってこなかった俺が言うのもなんだが、誕生日に食べたいものなのだろうか。
「俺が好きで、死んだ母が良く作ってくれたんです」
 あからさまに不思議そうな表情に見えたのだろうか。ジャンがオムライスの訳を話してくれた。ただの好物ではなく、亡くなった母親との思い出か。自分の成長を通して亡くなった母へと思いを馳せる。ジャンらしいと言えばらしい気がした。

「おかずも増えましたし、ご飯にしましょうか」
「じゃあ俺がお茶を淹れよう」
 ジャンが食卓に座り、ケトルに水を入れて設置する。
 紅茶もいいが、油物も多いし烏龍茶にでもするか。
「リヴァイさんが紅茶以外って珍しいですね?」
「基本は紅茶だが、人から色々貰うんだ」
 ティーポットに茶葉を入れ、お湯を注げば匂いで違いが分かったらしい。
 本当に何でも良く気がつく奴だ。

 他愛ない会話をしながら食事を済ませ、明日の予定を決める。
 今日は出かけられなかったため、ジャンが望むならどこでも行くつもりでいたが本人が『おうちでいいですよ』なんて言う。誕生日にはどこかへ出かけて高いディナーにでも。は、最早古くさいのだろうか。
「遠慮してるんじゃないのか?」
「いいえ?リヴァイさんもお疲れでしょうし、俺も家の手伝いやら学業で忙しいんで休みはゆっくりしてたいんですよ」
 欲がない事だ。
 遠慮しいな奴だから本音を隠しているだけかも知れないが、朗らかに微笑む様子に嘘は見えない。最近の若い奴はこんなものなのだろうか。

 洗い物を片付けた後はジャンとゲームでもしながら夜は更けていく。
「そろそろ寝るか?」
 慣れないゲーム画面を見続けて目が疲れた事もあるが、既にもう零時を回っている。
「寝てもいいですけど……」
 じ。とジャンが俺を見詰め首に腕を回してくる。
「ジャン、それは感心しないぞ」
「誕生日は欲しいものを貰う日でしょう?」
 すりすりとジャンが俺に頬ずりし、理性を落としにかかる。
 フェロモンも出てるんじゃないかってくらい、蠱惑的な匂いまでしてくる始末だ。
「ジャン、それはせめて来年まで……、万が一がある」
「避妊したら良くないですか?」
 万が一、妊娠したら負担になるのは本人なのに、あっけらかんと言い放つ。
 俺も人の話でしか知らないが、妊娠した体では日常生活とて大変だと聞くのだから、学業がこなせるとは思えない。無理をして最悪な事態にでもなれば傷つくのはジャンだ。とても容認できる事態ではない。
「リヴァイさん、嫌ですか?」
 ジャンが俺の膝の上に乗り、頬を撫でながら誘う。
 腕を回してきた時点で撥ね付けられないのだから何を言ってもそらぞらしい。

 にこにこと上機嫌に微笑む小悪魔が言う。
「リヴァイさん、俺に誕生日プレゼントを下さい」
 と。

拍手

PR