忍者ブログ

馬房

小説は妄想と捏造甚だしい。 原作のネタばれ、都合の良い解釈。 R18、グロ(精神的にも)、暴力表現などが含まれます。 冒頭にざっと注意を書いてありますので、それを読んだ上での 閲覧を宜しくお願い致します。何かあればご連絡いただければ幸いです。 基本的に右ジャンしか書きません。 萌が斜め上です。無駄にシリアスバイオレンス脳です。 拙い文章ですが、少しでもお楽しみ戴ければ嬉しく思います。 右ジャン、ジャン総受けしか書きません。あしからず。

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

寒い日の闖入者

・2019/05/10くらいに書いたの
・ジャンが人外で猫
・全体的に誰おま
・いけないものに目覚めそうなフロック
・現パロファンタジー?




 面倒くさいもんに懐かれた。

 とある冬の日の事だ。雪の中、鼻水を垂らして震えているミルクティーみたいな色をした長毛の猫が家の前で蹲っていた。
 憐れに思いつつもペット禁止のワンルームアパートでは飼ってやれない。中途半端な同情でとれもしない責任を抱え込むよりは無視が一番だと思い、そのまま部屋に入ろうとしたら、猫が素早く動いて扉の隙間から部屋の中に入り込んできた。先程まで凍えてじっとしていた癖に、やたら機敏で捕まえようとしてもぬるぬる逃げて中々捕まらない。蚤や壁蝨をまき散らされたら困る。
「あーもう、雪止むまで居ていいから、せめて風呂入れさせろ!」
 ベッドの隙間に入り込み、頑として出てこない猫に向かってやけくそ気味に言えば、まるで人間の言葉を理解しているかのように隙間から出てきて、自ら風呂場に向かっていった。俺が呆気に取られていると促すように、なおん。と、鳴く。
「あ、掃除機かけるから……」
 猫は何回かくしゃみをして、俺が掃除機をかけ終わるまで律義に風呂場で待っていた。
 服が濡れても嫌だから猫を洗うついでに自分も入る事にして裸になり、風呂に行くと、猫が低い声で恨みがまし気に鳴く。遅いとでも文句を言っているようだ。図々しい奴め。
「勝手に人んちに入ってきた癖に態度でけぇなお前」
 シャワーのコックを捻り、水が吸い上げられる音が外から聞こえ、先ずは冷たい水が出てくる。俺は避けていたが、ぼけ。と、座っていた猫に思い切りかかってしまい、物凄い勢いで跳び上がった。優に一メートルは跳んだんじゃないだろうか。濡れた毛を逆立てしゃーしゃー俺に向かって文句を言っている。
「うるせぇな。わざとじゃねぇよ」
 暖かいお湯が出てきたシャワーを浴び、頭を洗っていると、今度は自分から湯にかかりに来て変な猫だと思った。よくよく見れば尻尾も二つに分かれてるし、奇形の猫なのか。そして、毛足が長いため解り辛かったが、完全に濡れて毛が寝てしまうとかなり痩せていると分かった。
 粗方、自分を洗い終え、猫にシャンプーをつけて洗うが全く抵抗をしない。お湯感触が心地好いのか、洗面器の中に溜めた湯に浸かってだらっとしている。野良としてどうなのか。幸い、多少毛が絡んで汚れている程度で虫などはついていないようだった。

 ファンヒーターを点け、部屋を暖めている間に猫に必要なものを調べ、近場の二十四時間スーパーで購入してきた。
「おい、トイレここな。他でしたら水ぶっかけて追い出すからな」
 ご飯を食べさせ、食器の水切り籠にペットシートを敷いたトイレを作り、伝わるかは怪しい指示を言い聞かせておいた。
 余計な出費にややうんざりしつつ、疲れを癒すべくベッドに入れば毛が乾いた猫も入ってくる。中々可愛い。この時は、腹が満たされ、寒くなくなれば出ていくだろう。そう思っていた。

 所が、猫は全く出ていかない。
 俺の部屋で寛ぎ、飯を食い、夜は一緒のベッド眠る。可笑しい。
「それさぁ、もう自分の家って認識なんじゃないの。あんたはご飯を持ってきて世話してくれる下僕」
 幼馴染であり、同じ大学に通う学友でもある、女友達のヒッチに講義室で愚痴っていれば、こいつはにやつきながら指摘してきた。
「はぁ?俺の部屋、ペット禁止だし……」
「猫にはそんなの関係ないわよ」
 くっく。と、喉の奥で声を殺して笑い、それはそうと猫の写真はないのか。などと迫ってくる。
「ねぇよ。別に可愛がってないし」
「でも、一緒に寝てるんでしょ?」
「そりゃ、寒いから勝手に潜り込んでくるだけだろ」
 俺が言い返せば言い返すほど、ヒッチは解ってない。と、肩を竦めてわざとらしく呆れ返って見せる。
「あんたは言わば命の恩人よ?そりゃ信頼して懐くわよ」
「あーそー」
 俺が詰まらなさそうに返せば、ヒッチは更に呆れ返ったようで、話にならないとばかりに去って行く。あの猫は滅多に鳴かないから、何とかばれずに済んでいるが、一緒に居れば服や家具は猫の毛だらけで、トイレの始末は面倒だし、朝は時間があるのに飯を寄越せと叩き起こされるし、面倒でしかない。さっさと出て行って欲しい。
 大体、外野は面白おかしく適当な事ばかりを言うが大家にばれたら大目玉を食らうのは俺なんだから不満も出てくるに決まっている。

 俺はうんざりしながら帰途につき、猫と対面して睨み合っていた。
「いい加減、出てけよ。今日とか大分温かいだろ」
 お天気ニュースで放送された日中気温は平均十度以上。風も凪いでおり、この辺りは太陽光が差して体感的にはとても暖かいため、これだけ毛が長ければ耐えられないほどではないはず。
 これ見よがしに窓を開け放ち、外を指さしながら説教する。が、この糞猫は、くあ。と、人を小馬鹿にしたような欠伸をして俺のベッドの上で丸まっただけだ。
「いや、出てっけってば」
 長いふさふさした尻尾を先っぽだけ動かし、はいはい。とでも返事をしているようだった。完全に馬鹿にされている。
「お前、あんま調子こいてっと猫鍋にするからな!」
 がしがしぐりぐり、出会った頃よりは幾分ついた柔らかい肉を揉んで苛めてみるが、ごろごろ言いながらぐねぐね体を悶えさせるばかりで、嫌がらせどころか、喜ばせているだけの気もする。

 気怠く声を漏らし、冬場だというのに妙に暖かい気候を俺も享受する事にした。折角の休みだが、どこかに出かける気力もない。
 ぼんやり寝転がってスマートフォンでゲームをしていれば、猫にみぞおちを思い切り踏まれ、苦し気な呻き声が漏れた。絶対に痛いと解ってやっている辺りが何とも性悪で、無視しようと横向きに寝ても、平均台で遊ぶ子供のように人の体の上を行ったり来たり、挙句に頭に乗ってくる始末だ。猫って何でこんなに性格が悪いんだろう。こんなのどこが可愛いんだ。
「あーもう、雪が止んだら出てけっつったよな俺」
 延々と踏まれる鬱陶しさに音を上げ、出会った頃よりは容易に捕まえられるようになった猫を抱えて窓へ近づく。
「よし、さらばだ。達者でな」
 別れを告げながら、二階の窓から猫を落とそうとすれば激しく暴れ出し、体を抱えていた俺の腕にしがみついて勢い良く駆け上り、顔を踏んづけてから部屋の中に舞い戻った。顔と二の腕はしがみつくために出した鋭い爪で引っ掻かれ、激しい痛みに顔を押さえ、痛みに悶えてのた打ち回る。
 落とすと言っても、直ぐ下にはひさしがあり、端まで行けばアパートを囲むブロック塀も設置されている。猫なら容易く伝っていけるはずで、何も腹癒せに高い所から落として怪我の一つでもさせてやろう。なんて考えてはいなかった。ぽい。と、外へ出し、窓を閉めてさようなら。それだけのつもりが甚大なる被害を被ってしまった。面倒がらずに玄関から出せば良かったとは後の祭りだ。
「いってぇ~……」 
 額から眉間まで引っ掻き傷が出来、鋭い爪で裂かれた傷から血が滴り落ちていく。猫は壁や家具は傷つけず、買ってきた専用のものでしか爪とぎをしなかったため、爪切りを怠っていたツケをここで払ってしまった。
 風呂場の洗面台まで行き、傷を洗って確認すれば、腕も額もかなりざっくりいっている。落ちるまいと必死で駆け上がってきたのだから、加減などは一切されていないだろう。
「治んのかこれ……」
 病院に行くべきかどうか悩む。
 縫うほどではないだろうが、何せ場所が場所だ。
 ただでさえ軽薄そう。黙っていると怖い。などと言われるような顔立ちだ。傷が残れば就職の際の面接で不利になる可能性もある。十分ほど悩みに悩んだ結果、猫を部屋に置いたまま、近くの小さな個人医院へ行く事にした。やはり、専門に見て貰った方が安心との判断ではあるが、暫くかなりの粗食生活になりそうだ。

「傷は若いから時間が解決してくれると思いますけど、猫や犬に咬まれたり引っ掻かれたら、細菌感染してリンパが腫れたり熱出たり痛い思いする場合があるから、来たのは正解でしたね」
 医者の説明では、猫引っ掻き病。
 そんな冗談みたいな名前の病気があるらしい。猫や犬が持っている何とか。と、言う菌が原因だそうで、犬猫には無害だが、人間が感染して発症すると中々に面倒な治療になるようだった。
 血が滲む傷を独特の匂いがする茶色い消毒液で消毒され、大袈裟なガーゼを額と腕に貼られながら医者の質問攻めにあう。
「元野良猫かぁ、じゃあ、感染してる可能性が高いから、注射と、抗菌薬出しとこうかな。近くに処方箋受付薬局あるんで、そこで受け取って下さいね」
 引っ掻いた猫は買った猫か、拾ったのか、病院で検査はした事があるかを密に訊かれ、『勝手に入ってきたのを置いていただけ』と、正直に答えると医者は何度か頷いて直ぐに判断を下した。
 こんな目に遭うなら、やっぱり家に置いとくんじゃなかった。猫へのそこはかとなく湧いていた情も消し飛び、薬局で薬が出るまで待っている間、苛々と足を揺すり続ける。

 帰宅までの道程は、猫が勝手に居なくなってくれている事を願いながらだったが、家に入った瞬間、俺は落胆した。
「人のベッドで呑気に寝てんじゃねぇよ」
 言葉のまま、人に怪我をさせておいて悠々と寝こけている猫に苛つき、首根っこを掴んで床に放り、空いた場所に横になった。

 最悪の休日だ。
 猫が小さく鳴き、俺の頬を舐めてくる。
 謝ってでもいるつもりだろうか。
「申し訳ねぇと思うならさっさと出てけよ。お前が居座るから渋々置いてたんであって、元々飼う気なんかなかったんだし」
 猫と暮らし始めてから独り言が増えた。動物と暮らすとつい、話しかけてしまうようになるそうだが、俺も例に漏れなかったようだ。
「お前と暮らし始めてから服もベッドも毛だらけだし、コロコロの消費半端ねぇし、掃除めんどくせぇし、トイレも飯食うとこも場所取るし、片付けくっせぇし、いい事ねぇよ、まじで」
「出て行かないと駄目か?」
 どうせ解るはずもない。そう思って好き勝手に放言していれば、至近距離から声がしてベッドから飛び起きた。
「なぁ、悪かったって……」
 部屋の中をきょろきょろ見回しても人影はない。
 再び声がして、話しかける声の主を、まさか。との心地で眺める。
「夢か……」
 額や腕がずきずき痛むが、猫が喋るなんて夢に違いない。
 熱でも出てるんだな。
「フロック……」
 やれやれ。と、息を吐いてから布団の中へと潜り、無視をしていれば猫が耳元で囁いてくる。まじで怖い。意味が解らない。動物映画じゃあるまいし、人間の言葉をしゃべるなんて、そんな。
「宅配も受け取るし、なんならご飯も作るし……」
「猫がどうやって……」
 馬鹿みたいだ。猫と会話をして返事をするなんて。そう思いつつ猫を顧みれば、そこに居たのはやたらでかい裸の大男で、俺は目を丸くする。人が入ってきた気配はなかったのに。
 大男は何度かくしゃみをすると、悲しそうに俺を見詰めてきた。
「やっぱ寒い」
 またくしゃみをして、じわ。と、空気に溶けるかのように姿が歪み、元の猫が現れ、俺の懐に潜り込んでくる。毛は完全に冷えており、わざとらしいほど、がたがたぶるぶる震えていた。
 服無しで十度前後は寒いか。
「お前、人間になれんのか?」
「うん、今年で十九歳だし、最近、化けられるようになった」
 生きた年数だけなら俺と同じか。
 猫としては相当な年寄りかも知れないが、化けた姿は若々しい男性だった。誰かが来ても、兄弟か従兄で通じるかも知れない。
「あのさぁ、化けられるなら働いたりは出来ねぇのか?俺、しがない学生だからお前養ったりは正直きついんだけど」
「働く……、働くのかぁ~」
 俺にくっついて体が温まってきたのか、ごろごろ喉を鳴らし出した猫が寝ながらぼやき気味に言っていた。ヒッチ曰く、猫は可愛いのが仕事だから頑張る必要はない。だそうだ。だが、俺はそんなの許さんぞ。
「なんなら猫カフェとかに住めばいいじゃねぇか、飯も貰えるし、可愛がって貰えるし、あぁ、そうだ、猫カフェ行け、人間になれるなら掃除も出来るし重宝されんだろ」
 適当に放言しながら出て行くよう促しておいたが、どうなる事か。
 腕の中の温もりが心地好く、うとうと眠りこけだせば、額と腕の痛みは滲んで消えて行き、俺は夕食も取らずに夢の世界に旅立っていった。

 濡れた刺激で目を覚ませばまだ世界は暗い。猫が俺の額を舐めているらしく、唾液が傷に染みて痛みで跳び起きる。
「いってぇだろ!」
「治そうと思って……」
「削げる!」
 猫のざらざらした舌でしつこく舐められれば、人間の薄い皮膚など容易く削り取られてしまう。傷を舐めるなんてただの拷問だ。
「こんな深夜に起こすんじゃねぇよ……、はぁ……」
 今日はずっと怒ってばかりで疲れる。
 すると、猫の体がゆらゆら揺れて人間になり、また俺の額を舐めだす。姿が変われば形状も変わるのか、舌は人間の物と同じく滑らかになっていたが、男に舐められて喜ぶ趣味はないため気持ち悪い。
「やーめーろって!」
「ちょっと治ったと思う」
「はぁ?舐めたからって治る訳がないだろ。ったく……」
 爺や婆なら怪我したら唾つけとけ。なんて言うが、そんな前時代的な治療法でどうにかなるもんか。

 猫の唾液が付いた顔を洗おうと洗面所に行き、なんとなしに鏡を見れば、俺は違和感に眉を顰めた。爆発した癖毛はいつも通りだが、かさぶたの出来た傷が小さくなってる気がした。幾ら若いと言えど、一日で傷が薄くなるほどの回復力はないだろう。
 水で顔を洗い、まじまじ見たが、やはり違和感が先立つ。額から眉間にかけて中々酷い引っ掻き傷になっていたはずだ。
「なぁ、フロック。傷治すから……」
「治せんのか?」
「ちょっとだけなら」
 裸の大男が扉の隙間から顔を覗かせながらこそこそしているのは一種ホラーだ。しかし、猫が人間に化けるなんて荒唐無稽な事がそもそも起こっているのだから今更か。
「治る?」
「治す」
 額の傷を指差しながら訊けば猫は頷く。
「とりあえず、服着ろ。見苦しいし寒い」
 人間に姿を変えた猫は俺よりも体格が良く、背も高い。二メートルはないが、相応の身長はありそうで、体つきも猫らしく長い手足、引き締まったくびれのある胴体。全体的にしなやかな筋肉。顔だってやや面長で目つきは悪いが鼻筋も通って唇も薄目で形がいい。俺も好きな姿に化けられたら楽そうでいいな、羨ましい。
 こんな爆発頭は面倒なだけだし。クローゼットを漁りながら心の中でぼやいて寒そうに大きな体を縮めている猫にスウェットを渡す。
「あ、人間になれるならトイレも使えるだろ?色々使い方教えとくから、後は……衛生面。風呂とか歯磨きとか、先ずは手洗え」
 猫も長く生きているだけあって、そこまで無理解ではなく教えるのは簡単だった。潔癖ではないが、猫の姿なら兎も角、人間、しかもやたらでかい奴との共同生活で不潔なのはごめんだ。 
「で、治るのか?」
「あぁ」
 猫が俺の膝に跨り、残っていた額の傷を舐める。くすぐったくてざわざわするが、我慢出来ないほどでもない。
「次腕な」
 俺が服を脱ぐと、猫は二の腕に貼ってあるガーゼを剥がし、消毒液の味に顔を歪めながら懸命に舐めている。なんだろうこの落ち着かなさ。腕に舌が這う感覚もさることながら、こんな美丈夫とも見える奴が俺に跪いて奉仕している背徳感とでも言えばいいのか。
 いけないものに目覚めそうだ。
「疲れてきた」
 猫が赤い舌を見せながら訴えたが、まだ傷が残っていたため、無言で腕を差し出せば、自分がつけた傷とあってか、猫は素直に舐めだした。肌に触れる生暖かい息のせいか、舌の濡れた感触のせいか妙な気分になりそうで、しかし、相手は猫でしかも雄だ。と、自分を窘めながら、俺はひたすら天井を眺めていた。

拍手

PR