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馬房

小説は妄想と捏造甚だしい。 原作のネタばれ、都合の良い解釈。 R18、グロ(精神的にも)、暴力表現などが含まれます。 冒頭にざっと注意を書いてありますので、それを読んだ上での 閲覧を宜しくお願い致します。何かあればご連絡いただければ幸いです。 基本的に右ジャンしか書きません。 萌が斜め上です。無駄にシリアスバイオレンス脳です。 拙い文章ですが、少しでもお楽しみ戴ければ嬉しく思います。 右ジャン、ジャン総受けしか書きません。あしからず。

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番犬の躾

・グッズのでぃーらーパロ
・番犬エレ
・バーテンダージャン
・まぁまぁ不穏に慣れてるジャン






 カジノ内に併設されたダーツバーにて、遊びに来た客へとルール説明をしている最中、遠くから女の悲鳴とざわめきが聞こえ、視線をやれば遠目に男の胸倉を掴み、唸り上げている番犬が居た。

 何があったやら。
 つい最近、派手に暴れるなと指導されたばかりだと言うのに。
「あのぉ、あれは……」
 騒ぎによって気もそぞろになっていた俺に、ゲーム説明を受けていた女性客が不安そうに声をかけてくる。黒いベストにシャツと革手袋、派手な赤い薔薇の柄が目を引くパンツに革靴、赤いネクタイを身につけた番犬が吠え立てる様は、昼の世界に住む人間には恐ろしく映るだろう。
「あぁ、大丈夫ですよ。狂犬に見えますがあれでも噛みつく相手はきちんと見定めてますから」
 にっこりと微笑み、当たり前に遊戯に興じるだけであれば、あの犬は噛みついてこない。そう諭してやる。確かに暴れすぎな嫌いはあったが、よくよく見れば今正にひねり上げられている男は以前から要注意人物としてリストに挙げられていた人物だ。

 娯楽施設とは言え大きな金が動くカジノの特性上、どうしても調子に乗る、あるいは絶望を味わった人間を狙うハイエナ、甘い毒を吐く悪魔が入り込む。それを追い払う、ないし退治するのが番犬の役割である。
「では、説明は以上です。どうぞご遊戯をお楽しみ下さい。私は少々失礼致します」
「あ、はい……」
 どこか女性は落胆したように眉を下げつつも頷いた。
 初心者のようだし、慣れた人間が居た方が安心するのは解るが、あの番犬を早く宥めてやらないと、より大変な事になってしまう。

「おい、エレン、もう止めろ」
 バーをライナーに任せて騒ぎの中心へと赴き、更に殴りつけようと番犬が振り上げた腕を掴み、叱責すれば、
「あぁ?」
 と、拳を赤に染めた番犬が俺にまで唸りを上げる。
 しかし、
「また、リヴァイさんに躾けられたいのかお前は」
 この番犬が一番、頭が上がらない飼い主の名前を挙げれば唸り声は途端に小さくなった。
 興奮しきった頭が少しばかり冷静になったのか、顔を腫れ上がらせ、鼻血を出して気絶している男を引き摺りながらスタッフルームに入って行く。とりあえず、客の目につかなければいい。もう大分、手遅れ感は否めないが。
「お騒がせして申し訳ございません。善良な皆様へは番犬が噛みつくなどあり得ませんので、どうぞご遊戯をお続け下さい」
 『ここで悪さを企てればあぁなる』そんな牽制と共に、慇懃な態度で周囲を取り囲んでいた客へと頭を下げ、俺もスタッフルームへと入っていく。
 すると、案の定、番犬は飼い主に躾を受けて白目を剥いていた。
「ジャン、もう少し早く止めろ」
「すみません、お客様の相手をしていたので対応が遅れました」
 粗末な言い訳をすれば、飼い主に睨み付けられる。が、事実なのだから仕方が無い。
 俺だって四六時中、この馬鹿犬を見張ってなんか居られないのだから。
「まぁ、騒ぎを起こしたのはともかく、薬の売人を嗅ぎつけたのはお手柄だからな、目を瞑ってやる」
「そうだったんですか」
 番犬が締め上げた男を一瞥する。
 確か、主に女性を狙い、依存性の高い粗悪な薬を売る売人とリストには書いてあった。
 本人に薬物への興味や購入の意思がなくとも飲み物や食べ物に混ぜて薬物に依存するように仕向け、金ばかりかその女性の人生をも食い潰す悪魔の一人。こんな輩が店内に蔓延っていると、店の評判にも関わるため、確かに逃がさなかったのはお手柄だ。
「処置終わりました」
 スタッフルームの更に奥から番犬の幼馴染であり、俺の憧れでもある女性が出てくる。
 『処置』。要するに、この悪魔に狙われた女性を介抱、いや、胃洗浄辺りでもしていたんだろう。汚れを防ぐためのエプロンとゴム手袋を取れば派手さはないが、黒を基調にした生地に黒い絹糸で瀟洒な刺繍が施され、アクセントとして赤い結び紐をつけた旗袍が出てくる。
「ミカサ、被害者は大丈夫なのか?」
「えぇ、エレンが直ぐ異変に気付いてくれたし、薬も出し切ったから暫く休めば大丈夫だと思う」
 もう被害者が出た後だったから余計に噛みついてたのか。
 気持ちは分からないでもないが、せめて裏でやればいいのに。この番犬は、そういう所が気が利かない。
「じゃあ、私はホールに戻るから」
「俺も行くか」
 気絶している番犬の代わりとばかりに二人がホールへと出て行った。
 残された俺は悪魔が逃げないようにしっかり拘束し、床に伸びている番犬の側へとしゃがみ込む。
「おい、エレン、リヴァイさんはもう行ったぞ」
 手の甲でぴたぴたと頬を叩き、番犬を起こしてやると、もの凄く細く目が開く。これで起きてるのがバレてないと思うんだろうか。
 浅はかな。
「薄目で確認しようとすんな。観念して起きろ」
「解ったよ……」
 額を指で弾けば渋々と番犬が目を開け、飼い主に殴られたのだろう腹を顔を歪めながら擦っていた。
「内臓ぶっつぶれるかと思った……」
「やたら噛みつくんじゃなくて、こう、きゅっと締めて気絶させるとか、まだ穏便な方法があるだろ」
「何言ってんだ、難しいんだぞあれ」
 俺が以前、飼い主がやっていた方法を動作つき見せれば、番犬は不満げに口を尖らせる。
 考えてみれば、確かに繊細な技術が必要な技は幼馴染みの彼女の方が得意そうだ。
「絞め技とかぶん投げるのは出来るのになぁ」
「寝技も得意だぞ」
「はぁ?寝言は寝て言え」
 何故か急に盛って俺の首に腕を絡ませ、迫ってきた番犬を無下にあしらい、
「俺も仕事に戻るから、そのゴミ片付けとけよ」
 そう言ってからホールへ続く扉へと向かう。
 番犬は非常に不満そうだ。

 飼い主と幼馴染みが席を外したのだから、餌やり役の俺は番犬にご褒美を与えなければならない。頭では理解しているが、ここは職場であり、今し方、暴れ回って興奮している番犬の世話は正直荷が重い。
 だから、
「おい、ご褒美は帰ったらな」
 いじけていた番犬が耳と尻尾をぴん。と、立てて目を輝かせながら俺を振り返るが、それを見ない振りをして扉をくぐり、直ぐに閉める。

 荷は重い。かと言って、この役目を他へ譲る気はさらさらないから、結局あいつに甘い自分を振り返り、羞恥心を誤魔化すために程良く酒を入れて帰ろうと決意した。

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