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馬房

小説は妄想と捏造甚だしい。 原作のネタばれ、都合の良い解釈。 R18、グロ(精神的にも)、暴力表現などが含まれます。 冒頭にざっと注意を書いてありますので、それを読んだ上での 閲覧を宜しくお願い致します。何かあればご連絡いただければ幸いです。 基本的に右ジャンしか書きません。 萌が斜め上です。無駄にシリアスバイオレンス脳です。 拙い文章ですが、少しでもお楽しみ戴ければ嬉しく思います。 右ジャン、ジャン総受けしか書きません。あしからず。

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事故で死んだかと思ったら、嫁の腹にいた自分の子に転生してた=その十一=

・フロックの黒歴史
・だらだら正月を過ごす二人
・ぷくぷくしだしたフロックに運動させたいジャン






 正月早々、特番ではなく録画してある幼児向け番組を見せられ、ジャンに体をいいように弄繰り回されている。
「ばんざーい。くるっと回って、はいにっこり」
 ジャンは笑っているが、俺はぶすっと不貞腐れている。
 幼児の踊りなんぞ興味はない。なのに、好き勝手に手足を動かされ、踊りの真似事をさせられている。
「お前、ほんとぼけーっと見てるだけだよなぁ。お歌のお兄さんやお姉さんの周りで皆楽しそうに踊ってるだろ?」
 俺が全く自分から動こうとしないために教えようと強行したようしたようだが、手を離せば床に寝そべって一切動かなくなった俺に諦めた様子で背中を撫でる。
 仕方ないだろ、中身は大人だぞ。偶には感心するような番組もあるが、大体は俺の好むようなものではない。まして、幼児と大人の男女が躍る姿を真似て一緒にやるなどやるはずもない。
「めーしー」
「食うしかないのかお前は」
 大分喋れる言葉が増えたが、俺の楽しみは基本飯しかない。
「ちょっとぷくぷくし過ぎな気がするんだよなぁ」
 最近、大分、寝てるジャンの乳を勝手に吸ったりしてるせいか、腕や足がむちむちのハムっぽくなってきたのは知ってるが、赤子だし大丈夫だろう。これから色々伸びるんだから。
「ほら、にゃーんにゃーん」
 ジャンが両手を丸めながら頭に当て、上半身を左右に振る。自分がやる事で、俺を釣ろうとしてるんだろうが、それは俺が癒されるだけだな。
「にゃーにゃー」
「寝転がったまましても意味ないんだよ、ほらたっちしてー」
 嫌だ。
 梃子でも起きない。
 お前がやるから面白んであって、俺はやりたくない。
 床に伏せたまま、見上げながらジャンの声真似をしてみればもう一度見れるかと思ったが、困らせただけだった。つまらんな。
「どうしたら興味が湧くかなぁ」
 録画している内容を変え、俺の反応を見ているがどれも別に興味は湧かんな。早い所、諦めて欲しい。
「これとかどうだ?」
 録画している中から選ばれたのはやはり教育番組だが、同じ子供向けでも見る年齢層が高く設定されているのか少々毛色が違い、多少演技も入ったストーリー仕立ての番組だった。まだこっちの方が楽しめるかな。
 音楽の知識を学ばせるための物語が進み、広いステージに出ると小学生くらいの男女が音楽に合わせて踊り出した。何度も見せられているため、これは人気の歌手が子供達のために作った曲で、踊りと一緒に子供達の間で大人気になっているとは知っている。俺は興味ないけどな。俺がジャンばかりを見て全く意識をしていない様子に落胆したか、小さく呻ってソファーに腰を落ち着けた。
「体は動かした方がいいんだぞー、お散歩増やすか?公園の回数増やすかな……」
「いやー」
 公園は嫌いではないが、他の餓鬼の相手が面倒なんだよな。
 ちょっと前に行った時なんて最悪も最悪。こっちが先に遊んでた砂場に何も言わずに割り込んだ癖に人をスコップで殴っといて殴り返されたら泣いて母親召喚。またその母親が俺が正当防衛を訴えても我が子可愛さに庇ってきぃきぃ喚く糞婆で人の話なんぞ聞きやしない。
 加害者の分際で被害者ぶって逆切れかますから話にならず、穏便に済ますために結局ジャンの方が頭下げてるし、苛々頻度が高い。家に帰ってから、ちゃんとお前が悪くないのは解ってるからな。そう言ってくれたことが救いだ。苛々要素は他にもあるが。
「お出かけ嫌?」
「さむーいやー」
 俺が匍匐前進でファンヒーターの前に行けば、ジャンは頭が痛くなったようで目頭を押さえる。
「甘やかし過ぎ……、構い過ぎ?うぅーん……」
 頭を悩ませているようだが、俺なりに気は使ってるんだぞ。
 夜中に勝手に乳飲むのも、一々ジャンを呼んで起こすのも悪いな。と、思ったからであって、優しさだ優しさ。そのままジャンと一緒に寝ていたら、ベビーベッドから脱走している事にしこたま魂消ていた表情も面白かったが。
「はー、なんか飲も……」
 悩み疲れたのかジャンがソファーから立ち上がり、台所に行ってホットミルクを作って戻ってきた。その間俺はファンヒーターの前でごろごろして怠惰を極め、暖かい幸福をこれでもかと味わい、うとうしながら涎を垂らしていた。

「ぅぇ……」
 呆けながら起きて周囲を見渡せば、ジャンも俺に釣られたのかソファーの上でクッションを枕に眠っていた。これは本格的に暇だな。腹も然程空いてないし。
 いつもテーブルに置いてあるウェットティッシュで顔を拭き、涎で汚れた顔をさっぱりさせてテレビをつける。格付けとかの再放送がやっていたが、新しい芸能人は良く知らない。学生の時分ならば兎も角、働き出してからは仕事に慣れるので精いっぱいで家帰ったらすぐ寝てたし、今の状態になってからはあまりバラエティなどは見せて貰えないので本当に解らない。
 それなら、まだ解り易い幼児番組でも見ている方がマシだろうか。適当に録画してある番組を再生しては消し、結局、餓鬼共が踊ってる番組をボケーっと見ている。
 丁度、踊りの解説をやって、歌のお兄さんとお姉さんが『さぁ、みんなもいっしょにおどってみよう』と、画面越しに呼びかけている。何度も見たからなんとなく覚えてはいるが。

 ちら。と、ジャンを顧みて、眠っている事を確認して暇潰しがてら画面に合わせて体を動かしてみる。少々体が重いような気がしなくもない。やっぱり太り過ぎなのか。
「あえーうーやー、ぅ、ぃー」
 声を出してみながらやっていれば、なんだか楽しくなってきた。
 元々、体を動かすのは嫌いじゃない。それに付随する根性論だとか、失敗したら盛大に馬鹿にされたり、やたら格下に見られる風潮が嫌いなだけで。
 両手を頭の上に掲げ、体を曲げると体勢を崩し、尻もちをついた。疲れた。
「ぅいー」
 テレビではまだ歌って踊っているが、やり切った感を出しながら体を伸ばして床に転がれば、いつの間にかジャンが起きており、スマートフォンで俺を撮っていた。
「にゃー!?」
 いつから撮っていた。
 どう考えても黒歴史だろうが。
「よこしぇ!けしぇ!」
 疲労も他所にばたばた駆け寄り、ジャンのスマートフォンを奪おうと試みたが、ジャンが腕を伸ばせば俺の手はもう届かない。腕に飛びついて半ばぶら下がってみるが、けらけら笑っているばかり。
「俺が見てるから恥ずかしかったのか?」
「ちあー!?」
 間違ってはないが、兎に角消してくれ。
 ぎゃあぎゃあ喚いていれば、間の抜けた『ただいま』との声が玄関からして、義母が帰ってきた。
「何騒いでんの?」
「あ、見て見て、フロックがさー」
「ぎょあー!」
 叫んで妨害を試みても立ち上がられてしまえば、最早、俺の抵抗はないも同じ。ジャンの足をよじ登っても物ともしない。
「あらあら、んっふふ……」
「ぴこぴこ動いてんの可愛いよな」
「あんたの時も、こうやって簡単に撮れる物があればねー」
「馬鹿みたいに撮ってただろ……」
「親には大事な記録ですー。でも、お父さんのパソコンにデータ保存するか、DVD辺りに焼き直さないと、もう再生する機械がね……」
「ぬぃぃぃ……」
 ジャンの記録は俺も見たいが、俺のは消せ。後生だ。
 脚にぶら下がって呻ってみるが、全く効果はないのか俺を見下ろして笑っている。糞、幼児の限界が。
「これもいつか古い画像になんのかなー」
「なるでしょうね。フロックちゃんが大きくなった頃には、また別の物が出てるだろうし」
「けしぇー、それー」
 機械の歴史はどうでもいいから、それを消してくれ。
「あっはっは、やだよー」
「フロックちゃんも現代っ子ね。いつの間にか理解しててスマホもすいすい使うし、年取ったら覚えるのも大変なのに、当たり前に周囲にあると違うのねー」
「けしぇー、けしぇー……」
 脚に縋りついていてもさりげなく無視されてるわ、恥ずかしくて泣けてくるわ、変な妖怪じみてきた。
「はいはい、構ってやっから泣かない泣かない」
「けってー」
 ジャンが俺を抱き上げてあやしてくれるが、肝心のスマートフォンは尻のポケットに仕舞い、消す気は微塵もないのだと理解出来た。覚えてろよ。

 悶々と過ごした日中。
 ジャンがしっかり寝ている様子を確認して夜中にベビーベッドから抜け出し、枕元にある充電中のスマートフォンに手を伸ばす。確か、ジャンは人差し指の指紋認証で鍵を解除してたはずだ。
 毛布の中に頭を突っ込んで隠れている手を探し出し、起こさないようにジャンの手を引っ張り出して検知部分に指を当てる。しかし、指先が荒れているのか上手く認証してくれない。何度も失敗していれば、指紋認証ではなく四桁のパスワードを入力しろと出た。詰んだかこれ。
 いや、待て、考えろ。ジャンの誕生日はどうだ。0407。
「ぬぅ……」
 弾かれてしまった。
 どうしよう、他に思いつく番号がない。義母や義父の誕生日は知らないし、車のナンバーか。うんうん頭を悩ませ、駄目元で俺の誕生日である十月八日を入力して見れば、見事に鍵は解除された。ハレルヤ。
 小躍りしたい気分になったが、先に動画の削除が先だ。写真を保存してあるフォルダを開き、最新動画を削除して満足げに鼻を鳴らす。これで俺の黒歴史は消えた。

 ついでとばかりに写真をスライドさせて見て行けば、ジャンの両親や俺の写真や動画が大量にあった。ジャン自身は俺を抱っこしているものばかりで、単独の物はほぼほぼない。
 写真、思い出を撮っていなかった事を大分、後悔している様子だったから、両親とのわだかまりが解けた辺りで出かけたりした際に、頻繁に撮るようになったんだろう。

 古い物の中に、俺も居た。
 背景はぼろいアパート。
 風呂上がりなのか濡れた髪に首にタオルをかけ、パンツ一枚で寝こけている姿。
 間抜けな格好に涎を垂らした間抜けな顔。他にも何枚か寝ている姿が撮られていた。起きていると俺が嫌がるから、寝顔をこっそり撮ってたのか。と言っても三枚くらい。一瞬、消そうか悩んだが、もう二度と撮れない写真で、恐らく大事にしてくれてるんだろうからそのままにしておいた。
「ふ……」
 俺って優しいな。
 きちんと充電器にスマートフォンを繋ぎ直してジャンのベッドに潜り込み、ついでに腹も満たす。
「んん、ふろ……?」
「んにゃ」
「また脱走したのか……」
 大分、寝惚けているジャンが、勝手に乳を吸っていた俺の頭を撫で、また寝落ちた。
 腹が満たされた後は暖かいジャンの懐で眠り、迎えた朝。

「ジャン、昨日の動画、良かったら送ってくれない?私の友達が見たいって」
 義母が俺の黒歴史を拡散しようとしているが、甘いな。もう既に削除済みだ。
「いいよ、じゃあ送るから……」
 俺用の味のあまりしない卵焼きやらチャーハン食べながら得意げになっていた。ジャンは案の定、スマートフォンを見ながら首を傾げている。
「間違えて削除したかなー……、待っててバックアップあるから」
「あらそう?会うの明日だし急がなくていいからね」
 義母とジャンの会話を聞いて、思わず椅子から転げ落ちそうになった。
 しっかり固定されているから実際に落ちる事はないが、気持ち的にはどんぞこだ。バックアップとは、失念していた。バックアップの消し方までは知らない。終わった。俺の黒歴史はデータが破損しない限り永遠にあるんだ。
「フロック、もうないないか?」
「ぅぅ……」
 食事の手が止まった俺を不審がってジャンが覗き込んでくるが、頼んだって絶対に削除はしてくれまい。
「たぃ!」
「えっ、ちょ……!?」
 癇癪交じりに食いかけの卵焼きとチャーハンを投げ飛ばしてぎゃーぎゃー泣き、俺は足をばたつかせながら悲しさと怒りを発散させ、散々暴れた後は死んだように椅子の上でぐったりすると言う、解り易く不貞腐れた態勢をとってジャンを困らせていた。
 もうちょっと大きくなったら、あんなもん絶対消してやる。

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