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馬房

小説は妄想と捏造甚だしい。 原作のネタばれ、都合の良い解釈。 R18、グロ(精神的にも)、暴力表現などが含まれます。 冒頭にざっと注意を書いてありますので、それを読んだ上での 閲覧を宜しくお願い致します。何かあればご連絡いただければ幸いです。 基本的に右ジャンしか書きません。 萌が斜め上です。無駄にシリアスバイオレンス脳です。 拙い文章ですが、少しでもお楽しみ戴ければ嬉しく思います。 右ジャン、ジャン総受けしか書きません。あしからず。

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事故で死んだかと思ったら、嫁の腹にいた自分の子に転生してた=その十=

・写真写り悪い、写真撮るの嫌いなフロック
・めそめそジャン君
・色々捏造
・年末年始
・短い






 年末か。
 テレビでは大掃除特集やら年末セールの特集をやっており、それをジャンと義母は熱心に見ていた。
 義父は、お高めの珈琲豆を自ら挽いて皆に飲んで貰おうと手挽きミルでがりがりやっていたら、テレビの音が聞こえないからと義母に叱られ、ミルと共に書斎に引き籠ってしまった。善意の行動は解るが、タイミングが悪かったようだ。
 二人共テレビに集中しており、俺も構って貰えず暇で仕方がない。ソファーに座るジャンの脚の間に座り、あーだこーだと話す二人の話を黙って聞いていた。
「あんたが小まめにしてくれてるし、大掃除は要らなさそうだけど、年末準備くらいはしといた方がいいかもね」
「んー、適当にレンジフードでも掃除しとくよ」
「買い物は?一緒に行かなくてもいいのかい?」
 義母が訪ねれば、ジャンは首を振る。
「あんまり、人ごみにフロックを連れて行きたくないから……」
 そう。と、だけ言うと、義母は義父を呼んで出かける準備を始めた。珈琲は帰って来てからゆっくりと飲む事になったらしい。
「じゃあ、年末は犯罪も増えるから鍵はきちんと閉めて、何かあったら直ぐ逃げる、連絡する。いいね?」
 度々義母の厳重注意にジャンは頷く。
 防災グッズや貴重品が入ったリュックを台所の隅に置き、裏口から逃げ出せるようにしている辺り、冗談で言っているような様子はない。いつでも心配なんだろう。
「いってらっしゃい」
「てらー」
 ジャンに抱っこされた状態で義両親を見送る。
 どうせ、俺は殆ど食べられないので年末と言っても何の楽しみもない。
「さてと……」
 居間に戻るとゴムマットが敷かれたスペースに俺を置き、ジャンは気合を入れて台所に行った。先に自分の仕事を終わらせるつもりのようだ。ここには玩具箱があり、ベビージムなどが置いてある。勝手に遊んでてくれって事か。
 取り敢えず玩具で遊んでは見るが、特段はしゃぐような事もない。最近の玩具は精巧だな。そんな感想を抱いたりはするが、知育道具など直ぐに飽きてしまう。真っ白な絵本とクレヨンを渡されても、『創造しろ』『学べ』などの押しつけがましさがうんざりするのだと思う。スマートフォンでも与えて貰った方が余程楽しいんだが。
 まぁ、知育系は俺があからさまに速攻で飽きて投げ出すため、最近は買ってこなくなったが。

 適当にボールを出し、ベビージムの中にぶら下がった玩具めがけて投げる。
 湾曲した棒が十字に交差したてっぺんに飾ってある風見鶏もどきに当たったら十点。その真下にぶら下がっている馬の玩具に当たったら五点。周囲の鈴が連なった物、星、月は三点。勝手に配点を決め、一つしかないボールを投げては拾いに行き暇を潰す。メモしてる訳じゃないから、やってる間にどれに何回当てたか判らなくなって放り出すのが常だ。
「お前、それ良くやってるよなぁ。ぶつけごっこか?」
「んぬ」
 台所で一仕事終え、戻ってきたジャンが俺を覗き込みながら訪ねてきた。概ね間違ってはいなかったため頷けば、ジャンはベビージムの側に座り、投げて転がったボールを拾って転がしながら戻してくれた。
「お前って、本当に自分から色々やるよな。誰かから教えて貰ってるのか?」
「んー?」
 変な事訊くな。
 俺が直接、関わるのは義両親とお前だけだろうに。
「子供の内は不思議な物が見えるって言うしな……、お婆ちゃんに、お爺ちゃんに、俺、それ以外に誰か居たりするのか?」
「にぇ?」
 奇妙ではあるが、ジャンの表情は真剣だ。
 誰か。本当に何言ってんだ。赤ん坊は幽霊が見えるとかか。ホラーは好かんぞ。俺が解り易く表情を顰めれば、ジャンが緩く頭を振る。
「分んないよな。ごめん、ちょっと部屋に行くから、ここで大人しくしてるんだぞ?」
「うい」
 俺が了承すれば、自分の部屋に上がっていったのか居間から出て階段を昇って行った。

「ぶいー」
 ジャンが居なくなって暇になり、並べた玩具を蹴飛ばしながら歩くと言う怪獣の真似事をしていた。大人だったら怒られる行動だが、幼児なら可愛い可愛いと持て囃されるし、やってみると案外、気分がいいんだこれ。日常の苛々が解消される。
 一通り蹴飛ばし終わると、また暇になった。ジャンが中々戻ってこない。時計を見れば二十分以上経っている。あれかな、片付け始めてつい夢中に。とか、懐かしいものが出て来たもんだから読み耽ってるとか。
 仕方ない、迎えに行ってやるか。

 台所に置いてあった小さな踏み台を引き摺って居間へ持ってくると、それを使って廊下に繋がる扉を開け、階段を一段一段、全身を使って登っていく。幼児にはちょっとした登山だなこれ。
「じゃー」
 いつも二人で寝ている部屋の扉を叩き、外から呼びかければ内側に開いて驚いた表情で出迎えられた。
「え、登ってきたのか?」
「ん」
 結構疲れた。
 扉の前についたら立ってるのが億劫になって座ってしまったが、努力は認めてくれ。
「なーに」
「んん?あぁ、何してたかとか?」
「あい」
 驚いていた表情が一変して優しく微笑み、抱き上げて暖房も点けていない部屋に入っていく。廊下と変わらないくらい寒い。風邪引くぞ。
「えっとな、アルバム探してたんだけど、案外写真ないなー。って探してたら、つい見ちゃってたんだ。ほら、これがお前のお父さん。卒業アルバムだから学生の頃だけど」
 見易いように本を抱え、クラスの集合写真の中から不細工に写っている俺を指差す。
「何と言うか、物凄く目立つタイプじゃなかったし、写真撮ったりするのはあんまり好きじゃなかったみたいで写ってるのほとんどないんだよな」
 写真か。
 そう言えば、真面目な顔で写ろうとしたら睨みつけてるし、笑ったら気色悪いしで写真嫌いなんだよな。
「顔は格好いいと思うんだけど、表情の作り方かなぁ?変な写り方するんだよな」
 風呂上がりに鏡で見たらいい男なんだが、写真だと不細工で萎えるんだよな。風呂上がりマジックと思ってたが、ジャンにはいい男に見えてたのか。ならいいか。
「笑った顔も、お調子者丸出しなんだけど愛嬌あったしなぁ、なんで写真だとこうなんだろ……」
「まる……」
 そんなに?まじか。
 辛くなってくるから、そろそろ止めろ。
「もっと写真撮っとけば良かったな……、式も挙げてないから、二人で撮った写真もなくてさ」
 ジャンが呟きながら写真の俺を指先で撫でる。
 俺もこんな事になるなんて思ってなかったからな。
「葬式は家族葬だったんだけど使える写真がなくてさ、何にも無くて……、フロックのお父さんやお母さんにも散々罵倒されたよ。お前なんかに唆されたからうちの子がこんな目に遭って死んだんだ。って……」
 火葬した骨も俺の両親に奪われそうになって、戻して貰うために土下座したらしい。俺のジャンに何させてんだあの糞爺と糞婆。俺に対してそんなに愛情があったなんて初耳だぞ。下衆の勘繰りだが、金とかも要求してそうだな。
「お前の事も……、本当は伝えた方がいいんだろうけど、お前まで居なくなったら、俺……」
 子供を産んだ事は俺の両親には伝えていないらしい。
 親権自体は産んだジャンにあるだろうが、流れから考えて、孫をこっちに寄越せ。なんていい出しかねない。
「ごえんしゃい」
 うちの両親が悪かったな。
 苦労かけてすまん。
「なんでお前が謝るんだよ」
「だいじょぶ、しゃーわせ、たのし」
 お前との付き合いや、結婚生活は悪くなかったぞ。
 別に後悔なんかしてないし、今だって不自由ではあるものの、何だかんだ楽しくやってる。問題はない。
「誰からの言葉だよそれ」
 俺が肩を叩きながら言えば、ジャンが俺をきつく抱き締めながら嗚咽を上げて泣き出してしまった。
「だいじょぶだいじょぶ」
「うん……」
 俺の小さな方に顔を埋めて泣いているジャンの肩を叩いてやり、慰めてやる。本当に愛情深い奴だな。
「お前、お父さんそっくりだし、成長したら瓜二つになんのかな……」
 涙に濡れた眼で俺を見詰め、ジャンは優しく頬を撫でる。
 どうかな、解らんが鏡で見る感じはそれっぽい。
「将来が楽しみだな。どんな人と一緒になるんだろうなお前は……」
「じゃん」
 お前意外居る訳ないだろ。
「はは、ママと結婚する。とか今から言うか……」
 餓鬼の戯言じゃなくてだな、俺はお前の夫で、お前は俺の妻だ。
 将来は決まってんだよ。
「じゃーん」
 指を突きつけ、頬を押せばジャンは涙目のまま、くすくすくすぐったそうに笑った。
 これは信じてないな。俺の執念深さを舐めるなよ。精通したらさっさと襲ってやるから覚悟しとけよ。
「下戻るか、冷えてきたし」
 俺が頬を膨らまし、茶化すジャンに不貞腐れていると誤魔化し気味に笑い、俺を抱っこしたまま卒業アルバムを仕舞って階段を下りて行く。
「あ、そろそろいいか」
 台所に行き、レンジフードの網の部分を外して浸けていたらしい。
 小まめにするけど、手を抜けるとこは抜くんだよな。
 やっぱ変わってないな。
「じゃ、ちょっと洗ってるから、お前は……、そこの掃除でもしててくれ……」
 俺が蹴散らした玩具の残骸達をジャンが胡乱な眼差しで見詰め、そっとマットの上に下ろしてくれた。片付けか。面倒臭い。
 でもまぁ、年の瀬だしな、大掃除は参加出来ないから、自分の分くらいするか。

 玩具箱の中に全部仕舞い終わった頃、ジャンが戻ってきて片付いたスペースを見て目を輝かせた。
「お前凄いな!天才かも……」
 お、いいな。
 もっと褒めろ。
 褒めたら伸びるタイプだぞ俺は。
「偉い偉い」
「いぇへへへ」
 褒められて頭を撫でられ、ふんふん鼻を鳴らしていればジャンは嬉しそうに笑っている。泣いてるよりそっちの方がいいな。
「いい子はご褒美上げようなー」
 ジャンが台所に戻り、冷蔵庫を開ける音がしてプリンを手に戻ってきた。
「うぉー」
「ほら、あーん」
「あー」
 食べさせて貰えば至福の甘さと滑らかさ。
 プリンを考えた奴って天才だよな。
 一口で人を幸せにする。
「あー、あ」
「慌てるなって」
 ジャンが匙でプリンをすくってまた一口。

「ジャンー、ちょっと手伝って―」
「はーい」
 食べ終わった頃に義両親が帰って来て、大量の荷物を搬送してきた。
 段ボールって、どれだけ山ほど買って来たんだ。
「なんだこれ、買い過ぎじゃねぇの……」
「今時は年始年末でもお店開いてるけど、やっぱり備えあればって母さんが聞かなくて」
 ややげんなりしている風の義父が台所にて冷凍食品を片付けながらぼやいている。大きな蟹美味そうだな。でも、俺は食わせて貰えないんだろうな。
「かにー」
「そうだな、フロックは物知りだなぁ」
 俺が食いたいと主張すれば、ただ物の名前を言っただけと受け取られ、しょんぼりした。
 身の詰まった蟹。ズワイではなくタラバ。絶対に美味いに決まっている。
 この日ほど、この身を憎んだ事はない。
「えぇ、どうした……!?」
「さっきまでプリン食ってご機嫌だったのに……」
 悔しさのあまり泣き出したらジャンが慌てて俺を抱き上げ、玩具置き場へ行ってボールを掴ませてくれるが、俺の悲しみはボール如きでは癒されない。
「かにぃ……」
「蟹が怖かったのかな……?」
「かなぁ、フロックには見せない方がいいか……」
 違う、俺も食いたい。
「むぃぃぃぃぃぃい!」
 食べたさにじたばた暴れ出せば、義父は慌てて蟹を仕舞に行き、蟹を買ってきた義母は戸惑い、ジャンは意味が解らないまま俺を慰め続けると言う地獄絵図が誕生してしまった。

 食べたい物が食えないって辛い。

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