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馬房

小説は妄想と捏造甚だしい。 原作のネタばれ、都合の良い解釈。 R18、グロ(精神的にも)、暴力表現などが含まれます。 冒頭にざっと注意を書いてありますので、それを読んだ上での 閲覧を宜しくお願い致します。何かあればご連絡いただければ幸いです。 基本的に右ジャンしか書きません。 萌が斜め上です。無駄にシリアスバイオレンス脳です。 拙い文章ですが、少しでもお楽しみ戴ければ嬉しく思います。 右ジャン、ジャン総受けしか書きません。あしからず。

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幼い恋愛事情

・モブ視点
・五歳児フロックとジャン
・でーぶい彼氏の片鱗を見せるフロック(でもちょろ)
・本職の方から見て可笑しい所があったらすみません
・2020/03/15






 私が勤める保育園で、最近、少々困った事が起きている。
 遠くから大きな泣き声がして、またか。と、疲れを感じながらも慌てて五歳児クラスに駆け込めば、案の定な光景が広がっていた。
「ジャン君、どうしたの?」
「ふろっくが、ぼうでぶったぁ……」
 五歳児クラスの中でもませてて、格好つけたがりのジャン君だけど、顔を涙と言わず鼻水まで出して、袖を濡らすほどの大泣き。
「フロック君、なんでジャン君を苛めたの?」
 ジャン君を殴ったのであろう布と綿で作られた柔らかい玩具の剣を握り締めたまま、近くで同じくすんすん泣いているフロック君を見ても、全く要領を得ない。ただでさえ言葉は達者になっても、知識も思考も拙く、成長途中の五歳児に細かな説明を求めるのは至難の業だ。
 これは実に困った。暴力は駄目。と、一方的に叱って収めるのは簡単だけど、結局は一時的で何の根本的解決にもならないのだ。この子なりの理由がある可能性も考慮すれば、耳を傾けなければいけない。しかし、きちんと話せる状態だろうか。
「ねぇ、先生にお話聞かせて?」
「じゃんがだめなの」
 出来得る限り平静に、感情的にならず優しく話しかける。先に泣き止んだのはフロック君で、ジャン君が悪いのだとの主張をしてきた。これでは何も解らない。
「おえ、なんも、して、ない……」
 ジャン君はジャン君で、自らの正当性を主張し、今度は床に突っ伏し、ダンゴムシのようになって泣き出した。他の子供達も感化されて泣き出す子も居れば、怖がって隅っこに行ってしまっている子も居た。私の目下の悩みはこれである。
 二人が謎の喧嘩をしては大泣きし、周りの子も釣られて感情的になってしまい始末に困ると言うものだ。親御さんに自宅訪問をして話を聞いても、特に家では特に変わりはないそうで、疲労が蓄積していくばかり。
 本来しなければいけない業務や、教えるべき習い事が出来ず、周囲がざわついている恐怖から、おもらしをしてしまう子が出れば更に地獄。これを一人でどうしろと。と、私も床に丸まって泣き出したい。この自由人どもめ。
「ね、フロック君。なんでジャン君をぶつの?そう言うのは駄目な事だって解っているでしょう?」
 感情的になってはいけない。
 懸命に自分に言い聞かせ、言葉がきつくならないよう諭していく。
「だって、じゃんが、じゃんが……」
 めそめそとフロック君は泣くばかりで、きちんと話す心の余裕はなさそうだ。おませなジャン君と同じで、結構、小賢しいと言うか、普段は口が達者な子共なのに。
「ふろっくなんかきらい!」
 自分が理不尽に責められていると解ったのか、元凶であるフロック君に、ジャン君が大声で言ってはならない事を言った。それを聞いたフロック君は目を見開き、体をぶるぶると振るわせて握り締めていた剣を振りかぶり、再びジャン君を叩こうとし、きゃ。と、声を上げて、殴られそうになった本人はまた頭を抱えてダンゴムシ。
 慌ててフロック君を抱き留め、振り下ろされる寸前に受け止められた。剣自体は柔らかい素材だから痛くはないが、もう心が痛い。なんでこうなるの。どうして。腕の中で力一杯に暴れ回るフロック君を押さえるのも一苦労。
「じゃんのばか、ばかぁ……!」
 こちらも大泣きどころか号泣と言っていいほど。興奮し過ぎて食べた昼食を吐いてしまわないかひやひやする。
「せんせー……」
「あ、うん、どうしたの?おトイレ?」
 同じクラスの大人しいアルミン君が、おずおずと話しかけて来る。こんな時に何。なんて一瞬でも苛ついてしまった自分に幻滅する。子供好きが高じて保育士を選んだはずなのに。
「あのね、ぼくとごほんよんでたら、ふろっくがおこったの……」
「えぇっと、ジャン君とアルミン君が?」
「うん……」
 アルミン君も困り果ててはいるようだが、二人ほど感情的にはなっていない。暴れるフロック君と、震えるジャン君を懸命に宥めつつ、話を聞いて行く。
「あのね、ふろっくがじゃんにいっしょにあそぼ、っていったの……、でもぼくとごほんよんでたからあとでって……」
 あ、何となく解った。
 フロック君の怒りは、遊びたかったのに断られ、無視された哀しさや、悔しさから来たものか。でも、ジャン君自身は無視したつもりはなくて、『あとで』と、言ったのだから、殴られる理由なんて全く理解が出来ない。昼ドラのすれ違いかよ。
 大きく溜息を吐きたい気持ちになりながら、床に座り込んで未だに泣いているフロック君の頭を撫でる。
「フロック君は、ジャン君と遊びたかったのね?」
「うん……」
 泣くだけ泣いて少しばかり落ち着きを取り戻したのか、フロック君は私の言葉に頷く。
「でも断られたから悲しかったんだ?」
 今度は返事をしない。
 難しい顔をして、考え込んでいる。
 悲しかったんじゃないのかな。
 ジャン君も、ダンゴムシ状態は相変わらずだけど、目に一杯涙を溜めてフロック君を見ていた。感情的になって『きらい』とは言ったものの、いつもは仲良しなんだから後悔をしているのかも知れない。 
「じゃんが……、ほかのやつといるのはだめ」
「んん?」
 好きな玩具を独り占めしたがるような感情だろうか。
「どうして?クラスのみんなお友達なんだから、一緒に遊んでもいいじゃない?フロック君もジャン君とアルミン君とご本読んだら楽しいと思うな」
「たのしくない!だめ!」
 これはこれは。
 私が思うに、フロック君はお調子者な所もあるけれど、こだわりが強いようで自分にとって大事な物に他人が勝手に触れるととても怒る。独占欲が強いのだろうか。そして、それは友達でもあるジャン君にも発揮されている。でも、ジャン君は比較的誰とでも遊ぶし喧嘩もする奔放なタイプ。フロック君からすれば一緒に居たくても一緒に居れない状態が嫌で嫌で仕方なく、ジャン君からすれば好きにしたいのに邪魔される状況が苦痛。
 今までも、大体同じような理由で喧嘩をし、二人して大泣きしている。これはクラスを離すよう提言するべきだった。原因が二人の性格の違いだから、落としどころが見つからない。根本的解決など端から無理な事案だ。疲れた。
「ふろっく……」
 ジャン君がダンゴムシを解除し、涙を拭いて自分の殴った人間の側に寄ってくるから驚いた。言っては悪いが、この子は阿保だろうか。フロック君はまだ武器と言える物も持っているし、不機嫌丸出しの顔だ。また殴られるとは思わないのか。
 案の定、怒っているアピールなのかフロック君は返事もせずに顔を背けている。
「いっしょにおひるねしよ?」
 ジャン君は、他の先生が部屋に居た子供達をこっそり誘導し、お昼寝室に向かわせたのに気づいていたらしい。周囲を良く見ている賢しい子だ。
「いや!」
 泣き過ぎて疲れているだろうに、フロック君は頑なで座り込んだまま動こうとしない。困ったな。無理に抱き上げたら絶対暴れる。
「いこ?」
 私がどうしようか悩んでいると、なんとジャン君がフロック君の頬にちゅ。と、音を立てて口付け、可愛く首を傾げて見せた。小悪魔もびっくりだ。ジャン君のご両親のラブラブぶりが垣間見えてしまう。
 ぽぽぽぽぽ。そんな音が出て来そうなほどフロック君の顔と言わず、耳も首も赤くなりながら何度も頷いてジャン君に手を引かれてお昼寝室に向かって行った。困った喧嘩はするが、あれはあれで相性がいいのかな。
 こそこそとお昼寝室に足音を立てないように向かい、そうっと扉を開けて光が入らないようにしながら覗き込めば、一つの布団にジャン君とフロック君が仲良く入り込んでいた。
「お疲れ、なんであんなに仲いいのに変な喧嘩するんだろうなぁ」
 仕事が出来なくなった私の代わりに、気を利かせて他の園児をお昼寝室に誘導してくれた同僚が、お茶を淹れたから飲みな。そう労わってくれた。
「まぁ、お互いに好きなのは解るんですけどね……」
 職員室で淹れて貰ったお茶お飲み、滞った業務の山を見ないようにしながら、この騒がしさが無くなったらなくなったで寂しくなるのかな。なんて、まだまだ半年以上先の卒園式に思いを馳せるのだった。

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